キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

突然の失踪・復帰で世間を騒がせたKANA-BOON飯田佑馬の明日はどっちだ?

こんばんは、キタガワです。

 

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少しばかり前の話になるが、6月19日にKANA-BOONのベース・コーラス担当である飯田佑馬(めしだゆうま・左から二番目)が、音楽活動を一時休止することを発表した。


これは個人的にはwowaka氏の逝去やNUMBER GIRLの再結成に次ぐ、2019年7月8日現在の日本ロックシーンにおいて最も重大なニュースとしてピックアップされるべき事件であると思っている。


僕がそう感じる理由はひとつ。彼が自身の意思で失踪したためである。


そう、彼は突然失踪した。バンドのメジャーデビュー5周年を記念したライブを直前に控え、ニューシングルの全国各地でのPR活動の最中、忽然と姿を消したのだ。


結果として5周年記念ライブは中止を余儀無くされ、その日を境にKANA-BOONは一切のメディアに姿を見せなくなった。最前線でのがむしゃらな活動が大事となる若手ロックバンドにおいて、これらの活動が頓挫したことは極めて大きな損失である。


そして問題なのは、これらが全て『飯田の失踪』という一個人の事情によって引き起こされたことだ。


前述したように、飯田は結果的に何事もなく帰還した。失踪の理由については音楽活動の中での個人的なプレッシャーの高まりであったとし、その後は精神病との診断が下されたことが決定打となり、当面の活動休止とする結果に至った。今後KANA-BOONはサポートメンバーを入れながら、飯田抜きでの活動を行うとしている。


さて、今回の記事ではそんな飯田佑馬の『明日はどっちだ?』と題し、今後の彼がどのような末路を辿るのか考えてみたいと思う。


いきなり結論を述べてしまうが、僕個人としては飯田は近いうちにほぼ間違いなく、KANA-BOONを脱退すると思っている。


そう考える理由はいくつかあるのだが、やはり『自分の意思で失踪して迷惑をかけてしまった』というのが何よりも大きな理由である。


例えば中止が発表されたKANA-BOON5周年記念を祝うライブ『KANA-BOONのOSHI-MEEN!』は、彼らを含め計4組のアーティストの出演が発表されていた。もちろん大多数の観客のお目当てはKANA-BOONである。


こんなことを書くと角が立つだろうが、他の3組にとってこの開催場所であるZepp DiverCityという会場はあまりに広い。実際ズーカラデル、ヒグチアイ、PELICAN FANCLUBの3組に関しては個人的にライブを観たことがあるが、500人のキャパでもソールドアウトは難しいほどの集客だったのを記憶している。


そんな中での今回のライブ。Zepp DiverCityのキャパは2500人のため、KANA-BOON含めた4組のアーティストは、さぞかし強い期待と熱量を持って挑む予定だったはずである。中にはKANA-BOONの楽曲をカバーするつもりのバンドもいただろうし、憧れの夢舞台に立つ感動を脳内でイメージしていた人もいるかもしれない。


……しかしその想像は叶わなかった。飯田ひとりの失踪という、あまりにも自己中心的な理由によって破綻してしまったのだ。


まずKANA-BOONは、そんな思いを抱いて出演する予定だったアーティストたちに対して、深い謝罪を行う必要がある。そのライブのために予定を組み、期待していたアーティストたちを裏切ったのだ。ある程度のお金と謝罪は不可欠である。ちなみにその場には療養中のため、当の責任者である飯田はいない。逆に残されたメンバーは「何で俺はあいつのために謝っているんだろう……」と思いながら、ペコペコと頭を下げ続けなければならない。


更にはチケットもソールドアウト。そのため必然的に集まる予定だった2500人分のチケット代は全てキャンセルになるため、KANA-BOONないしは所属事務所が代わりに支払う義務が生じる。その額はチケット代3500円とドリンク代600円、そこに2500人をかけると単純計算で1025万円となる。


ひいてはライブハウスへのキャンセル金やチケット販売会社への迷惑代、お金以外にもファンからのクレーム地獄や各種コンビニエンスストアの返金対応など、最終的な損害は多岐にわたる。


ここまでの迷惑をかけておきながら、いけしゃあしゃあと「すいませんやっぱり復帰します」は通らない。日本社会においては、何かしらの問題を起こした人物は制裁を受けるのが通例だ。政治家であれば辞職し、教師であれば強制異動。サラリーマンあれば減俸と、必ずそれ相応の対価を支払って然るべきなのだ。


そのため飯田が正常な人間であれば、自分から「脱退します」と明言するのが普通だ。というよりあれほど迷惑をかけ、飯田の代わりに各所に陳謝したメンバーとの絆が再修復するとは到底思えない。聞けば唯一オリジナルメンバーでないのが飯田らしく、高校も他のメンバーとは別であったと聞く。KANA-BOONの中で、果たして飯田が強固な人間関係を築いていたのかという面でも、疑問が残る。


総じて良心の呵責に苛まれ、自分から「脱退します」と明言するのが一番良い方向に収束すると思うのだ。サポートメンバーを加えて活動を継続すると語っており、今夏の大学祭にも出演が決定しているKANA-BOON。これからも一切歩みを止めるつもりがないことは、ファンも承知のことだろう。


思い返せば日本のロックシーンにおいて、失踪したメンバーはほぼ必ず脱退している。Kidori Kidoriのンヌゥ然り、the cabsの高橋國光然り、Base Ball Bearの湯浅将平然り。どのバンドも公式に発表された最初の報は「メンバーと連絡が取れません」。次は「無事戻ってきました」。そして最終的には「脱退します」だ。


これらの歴史に照らし合わせると、今の飯田は「無事戻ってきました」の状態で止まっている。ということは、次なるバンドの選択肢はひとつに絞られる。


飯田は一体どのような人生を辿るのだろう。それこそ前述したthe cabsの高橋はメインソングライティングを手掛けていたため、その後は別バンドを組むことが出来た。だが基本的に『失踪』という最悪の行動に及んでしまった人間は社会的イメージの悪さから、バンドシーンに帰還することはほぼ不可能だ。新たにバンドを結成することも、何かしらのサポートをするのも難しいだろう。


僕はKANA-BOONの音楽が好きである。だからこそ今後も彼らの音楽を聴き続けていたいと思うし、ライブにも足を運びたい。しかしながら眼前に飯田の姿が見えた瞬間「この人って失踪していろいろ迷惑かけたんだよなあ」と思ってしまうのも申し訳ないが、確固たる事実なのだ。


彼は良いミュージシャンだ。しかし今回の記事で書いた通り、脱退はほぼ避けられない。だからこそ、僕個人のもうひとつの気持ちとしては「現実にならないでほしい」とも思ってしまうのだ。


彼の今後の人生が華々しいものになることを、願ってやまない。

 


KANA-BOON 『眠れぬ森の君のため』Music Video

全国ツアーに全部参加するのは、どれだけ好きなアーティストでもやめておけ

こんばんは、キタガワです。


当ブログを愛読してくださる方々には周知の事実だろうが、僕はライブが好きである。


基本的には地元である島根県で拝見することが多いが、どうしても観たいライブがあれば雀の涙ほどの貯金を切り崩し、フットワーク軽く県外に行くこともある。


なぜそこまでしてライブに足を運ぶのか。その理由はひとつ。ミュージシャン……。いや、『音楽』は、ライブでこそ真の魅力を発揮するものだと思っているからだ。


今の時代のCDは何でもありだ。PCの打ち込みを多用しようが、声にオートチューンをガンガンかけようが、管楽器やコーラス隊を大量に入れても文句は言われない。極端な話をするならばAKBグループのように、音楽そのものに価値がなくとも成立してしまう。


そんな多様化つつあるミュージシャンの真髄が問われるのは、間違いなくライブである。ライブにおいては小細工は一切通用しない。CD音源よりも遥かに肉体的で、心に訴えかけてくる『最高のライブ』を求め続ける今の生活はとても幸せで、たとえ借金をしようが異端だと咎められようが、辞めるつもりは毛頭ない。むしろもっとライブを観たい。そう考える毎日である。


そんなライブだが、様々な場所に赴いたりツイッターでエゴサーチするたびに、ある言葉を発する人が一定数いる。それこそが「今回のツアー全部行きます!」という人。


タイトルで粗方予想は付くだろうが、僕はそうした考えには否定寄りの意見を持っている。今回の記事では「ツアーは全通すべきでない」という理由を列挙していく所存だ。


……別にそうした人たちに異を唱える訳ではないのだが、ツアーに全て参加する人に限って、ツイッター上で「だんだん飽きてきた」だの「たまには驚きがほしい」だの、的外れな意見を語っている場合も多い。ならば行かなければ良いだけの話だし、自分の意思で参加しておきながら否定的な意見を述べるのはお門違いだと思ったりもする。


総じて今回の記事は、ライブ好きの単なる戯れ言として、あまり深く考えずに読んでいただければ幸いである。

 

 

①時間が消える

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他県に『遠征する』という響き自体は格好良いのだが、実際問題そう簡単なことではない。


1ヶ所ならまだしも、複数の遠征はバスや飛行機、電車を使わなければ不可能である。もしもあなたが定職に就いておらず、かつ貯金もたんまりある状態であれば何も言うまい。しかし現実はそうではないはずだ。


連日連夜キツい仕事をこなし、週2回の休日は自宅で静養。たまに気が向けば美味しいご飯を食べ、明日への活力とする……。おそらくほとんどの人はそんな生活を送っていると思われる。


この状態においての『遠征』は、大学生やニートが暇潰しで行くようなそんじょそこらの遠征とは意味合いが大きく異なるはずだ。


基本的にライブは18~19時スタート。となれば終演はどう足掻いても20時を回ることになる。そこから最寄り駅に向かって飛行機に飛び乗ろうとしても、居住地へ直行する便などほぼほぼ無く、1泊を余儀無くされる。余程の人でない限り、この時点で最低2日間の休みが必要となる。


精力的にライブ活動を行うアーティストであれば、更に過酷な日々が待っている。特にバンドは機材車をゴロゴロ言わせながら、ライブを3日連続敢行したりするのもザラである。それを追いかけるとなればもう地獄だ。上司からはすれば「毎月リフレッシュ休暇かよ」と苦言を呈されることは避けられず、間違いなく今後職場で肩身の狭い思いをすることだろう。


パチンコやアミューズメントパーク、カラオケやソーシャルゲームなど。「時間がいくらあっても足りないよ!」と嘆く娯楽は数あるが、おそらくは何よりも時間を消費するもの。それが遠征なのだ。

 

②金が飛ぶ

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考えてみれば当たり前の現象で、時間の消費と比例して必然的に金も消えていく。


前述した宿泊の話にも繋がるが、遠征はライブ代のみならず交通費や宿泊費、飲食代やドリンク代といった出費がかさみ、最終的に当初予定していた予算をかなりオーバーしてしまうことが多々ある。


常人からの第一声は「凄いね」でも「羨ましい」でもない。「よくそんな金あるね」だ。僕個人の例を挙げよう。かつて某バンドの日本武道館公演に参加した際、まずチケット代6000円。飛行機代往復30000円。更にはホテルや食費などもろもろ込みで60000円ほどの金が吹き飛んだ。ちなみにこれは1泊あたりの計算だ。


要はツアーに全て参加する人というのは、これの何倍もの多額の金を僅か1ヶ月ほどの間に使ってしまうということだ。正直こんなことは「そのアーティストのおかげで死なずに生きていられる」とか、「命の次に大事な存在」とでも見なさなければ絶対に不可能である。


迸るのは一生添い遂げる確固たる覚悟。そう、彼らは本気である。

 

③セトリがほぼ同じ

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僕がツアー全参加否定派の大きな理由がこれだ。セトリとは要するにセットリスト……曲順のことだ。


ツアーのセットリストというのは、基本的には全公演同じである。何十分、ないしは何時間行われるライブにおいて、これほどのネタバレはないだろう。演奏する曲を全て知っている状態……。それは言わばタネがバレバレの手品。カンニングしたテストだ。どれだけ嬉しい選曲だろうが、実際一度観た後ではあら不思議。予定調和も甚だしい、感動もへったくれもない演奏になってしまう。


今まで様々なライブを観てきたが大規模な演出を必要とする大物アーティストほど、セットリストが全く同じになる確率は高い。なぜなら毎回異なったセットリストにするためには、練習の回数も増やさなければならないし、会場ごとの演出も大幅に見直す必要があるからだ。


……というより、そもそもツアーという行為自体が『お金と時間が足りず、遠征が難しい人のために行うもの』であるため、アーティストにとっては何度も何度もツアーに参加するファンがいるとは露程も思っていないのだ。だからこそセットリストは基本的に変えない。


にも関わらず、遠路はるばる湯水の如く金と時間を溶かして後を追ってくるファンがいたとするならば、もし僕がアーティストなら絶対に恐怖を感じる。もちろん「わざわざ来てくれてありがとう!」という気持ちもなくはないが、それを超越したストーカーじみた怖気が付き纏い、ライブどころではない。

 

④純粋に飽きる

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何でもそうだが、同じものを見続けると必ず起きるのは『飽きる』という至極当然の結果だ。


CD音源にはないライブならではのアレンジ。突然客席に立ち入り、ファンに手を振りキャーキャー言われる中での歌唱……。それは素晴らしい。素晴らしいが、その興奮と感動は絶対に1回目がピークである。2回目は「おっ、ここらで来るぞ?来た!」という思いに変わり、3回目以降になると「はいはい知ってます」になる。


そして人間というのは性格の悪い生き物で、何度も同じ場面を目撃すると次第に冷めたりイラついたりしてしまう。タイムリープもののアニメ『Steins;Gate』にて代わり映えのない日常を何度も繰り返した主人公が精神を病み、いっそ友人らを殺したりレイプしてでも違う結末を見てみたいと頭を過るシーンがあるが、それと似ている(似てないかもしれない)。


塾で先行して完璧に解けるようになった数学の解き方は授業で丁寧に教わったところで「俺出来るから次いってよ」となるし、いくら大好きな作品でも何度も見るのは苦痛のはずだ。ライブにおいては更に辛い。内容も曲順もMCも、そのほとんどが同じだからだ。流石に柔和な人間でも「つまらんわ」と激怒するレベルの予定調和が、眼前で2時間に渡って繰り広げられるのである。これはキツい。

 

 

……さて、いかがだっただろうか。ツアー全通する人への反対意見。


冒頭にも記したが、僕が今回の記事を書いた理由は『ツアーに全部行く人ほど不平不満を垂れ流す傾向にある』と感じたためだ。それらを見るたびに「お前らは本当にファンなのか?」と疑問を抱いてしまう。意見を述べるのは個人の自由なので仕方がないのだが、その意見が他のファンの目に触れるのは良くないと思うのだ。


僕は以前『フェスの出演者発表に文句を言うな』、『アンチコメントは総じて害悪』といった内容の記事を書いたことがある。人の感情は他者に左右されやすいものだ。自分では白だと思っている事柄であっても、誰かが『黒』と言った瞬間に考えが黒寄りになるような、そんな間接的な被害は実に多い。YouTube然り、ブログ然り。そしてライブの感想然り。


ライブツアーに全て参戦する方々は、ぜひ今一度自身の行動を振り返ってもらいたい。知らず知らずのうちにファンを傷付けていないか?アーティストにマイナスイメージを植え付けてはいないか?あなたのツイートを間接的に読んだ『別のファン』がいることを失念していないか?


今回の記事が、何かを思い返すきっかけになれば幸いである。


逆に今回の記事を読んで不快になった方がいらっしゃれば、誠心誠意謝罪致します。

映画『ダイナー』レビュー(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。

 

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今回鑑賞したのは、つい先日公開したタイムリーな映画『ダイナー』である。


なぜこれほど早いタイミングで鑑賞に至ったのかと言えば、何を隠そう自分自身が漫画版『ダイナー』の愛読者であるからだ。


何ヵ月か前だったか、映画化決定の一報を見た際は大層驚いたものである。何せ原作は一種のグロ漫画。斬首シーンや拷問は当たり前。挙げ句の果てには首をスイカ割りの如く縦にバッサリ斬ったり、四肢切断までやってのける。


しかしながら今は『売れた作品は実写化する』というのが通例の世の中である。そのため実写化するだろうなと予想できてはいたものの、同時にイメージした瞬間に「絶対R-18だろこれ」と思ったのも事実だ。


にも関わらず、この映画はR18ではなかった。……というより年齢制限すら付けられておらず、更には有名なイケメン俳優やアイドルを大勢起用するという、原作ファンとしては首を傾げてしまう情報ばかりが浮き彫りになり、個人的には「これってどうなの?」とビクビクしながら当日を迎えたわけだ。


で、結論から言うとかなり面白かった。普通に良作で、原作を読んでいない人でも100%楽しめる、極上のエンターテインメント作品に仕上がっていたのだ。


少しあらすじを語ろう。空虚な生活を送っていた主人公・オオバカナコは、ある目的のために即金で30万円が必要となってしまう。そこで選んだ(というより騙された)アルバイトこそ、藤原竜也演じるボンベロがオーナーを務める飲食店、ダイナーだ。


表向きは普通の飲食店ではあるが、その実態は殺し屋のみが集う裏飲食店だ。そのため来店するのはヤバい客ばかり。ケンカやセクハラ、殺人も日常茶飯事だ。無表情で俺様運営を強いるボンベロは、戦々恐々と給仕するオオバに語る。「仕事をするか死ぬか選べ」。かくしてオオバの地獄のような生活が始まる……。そんなストーリーだ。


大前提として、この映画はある意味では期待を大きく裏切られる内容となっている。理由はひとつ。ストーリーが原作と大幅に異なっているからだ。 オオバがダイナーに来た理由も、来店する殺し屋も、そこで起きる事柄もほとんどがオリジナル。ラストに至っては、そもそも原作が未だに続いているため完全なる創作である。


だが内容は文句なしに面白い。だから何も言えなくなってしまう魅力がある。他の実写映画を挙げれば『ミュージアム』や『予告犯』といった作品はそのまま原作に沿った作りで成功を納めたし、逆に『バクマン。』や『デスノート』は原作を大幅に改変して展開する作品も評価が高かった。とどのつまり、いくら原作をこねくり回そうが別に面白ければ無問題なのだ。


とにかくダイナーは面白かった。料理の再現度は恐ろしく高く、高揚する場面もしっかり押さえた作り。日本国内の様々な映画と比較しても、上位に位置する完成度の高さだ。少しばかり無理のある箇所も多々あるのだが、それらを全部蹴っ飛ばして「良かった」と言える魅力に溢れる作品だ。


……もしもボンベロに「ここで働きたいか?」と言われたら絶対にNOだが。

 

ストーリー★★★★☆
コメディー★★☆☆☆
配役★★★★☆
感動★★★☆☆
エンターテインメント★★★★☆

総合評価★★★★☆

 


映画『Diner ダイナー』本予告【HD】2019年7月5日(金)公開

【ライブレポート】ミオヤマザキ『47都道府県完全無料ワンマンツアー 「2020年1月11日ミオヤマザキ横浜アリーナやるってよ。」』@松江Aztic Canova

こんばんは、キタガワです。

 

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7月2日、ミオヤマザキ『47都道府県完全無料ワンマンツアー 「2020年1月11日ミオヤマザキ横浜アリーナやるってよ。」 』島根公演に参加した。


タイトルにも冠されている通り、今回のツアーはミオヤマザキ初の47都道府県制覇、かつ完全無料という破格の値段設定で行われるライブだ。

 

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更にライブ終了後はほぼ強制参加の『チケット手売り会』なるものが開催され、ミオヤマザキのメンバーひとりひとりと直接会話し、会話をしないと出られないというシステムまで取っていた。


日本におけるロックバンドとしては明らかに異質なこのライブにおける意味合いはひとつ。自身最大キャパとなる横浜アリーナのライブに向けた勢力拡大である。


横浜アリーナのキャパは12000人。彼らが今年行った日比谷野外音楽堂のちょうど倍となる収容人数だ。一見無謀にも思える試みではあるが、本編のMCでtaka(Gt)が「何でこんな辛い思いをしてまで全国回ってるかって言うと、一度目を見て話した人たちで埋めたいんよ」と語っていた通り、彼らは楽曲とファンの力を本気で信じている。愚直に大真面目に、それに向けてあらゆる手段を尽くす。そのための47都道府県ツアー、そのための手売り会なのだ。


会場に足を踏み入れると、そこには開演20分前にも関わらず大勢の観客が。客層は女性がかなり多く見受けられ、開演前から黄色い声が飛び交っていたのが印象的だった。


ライブ開始を数分後に控え、突如会場内に「本日はご来場いただいてありがとうございます!」というHang-Chang(Dr)の声が響く。ここでは本日のライブの趣旨を説明すると共に、先日喉を痛めたボーカルのmioについて、喉の負担を極力減らすためにmio本人によるMCは行わないことや、ライブ終了後の手売り会は筆談で応じることを明言。


加えてぼっちで参加した観客の緊張を解すために、ツイッターにて「ミオヤマザキやばたにえん」と繰り返し呟く『魔法のおまじない』を今すぐ行うように指示。TLに「ミオヤマザキやばたにえん」との文字がズラリと並ぶ光景は圧巻で、笑いが込み上げてくる。


定時を少し過ぎた頃、暗転。「ミオヤマザキです、よろしく」とmioが発し、雪崩れ込んだ1曲目は『女子高生』。

 


ミオヤマザキ『女子高生』(Official Music Video)


マイナーコードと打ち込みを多用したゴリゴリのサウンドに、先程まで厳かな雰囲気だった会場のボルテージは瞬時に上昇。あちらこちらでヘッドバンギングが多発し、一様に跳び跳ねまくる空間に変貌した。


ある種の匿名性を前面に押し出すミオヤマザキらしくライブ中は暗い照明に徹しており、メンバーの表情はほとんど伺い知れない。しかしながらヘッドバンギングを促す様や楽器のコード進行などははっきりと確認でき、むしろミステリアスな存在感でもってこの日のパフォーマンスに一役買っていた印象を受けた。


事前に声の不調をアナウンスされていたmioの歌声は想定していたよりも遥かに良く、ステージを所狭しと動きながら高音やビブラート、ロングトーンまでも完璧に歌い上げていた。通常ハードロックなサウンドに打ち込みが加わるとボーカルは聴こえにくいことも多いのだが、今回のライブにおいては話は別。爆音のサウンドにも一切負ける気配のない、ロックバンドのボーカリストとして圧倒的な存在感を放っていた。

 


ミオヤマザキ 『鋲心全壊ガール』(Official Music Video)


「会いたかっただろ?楽しんで帰れよ」というmioの一言からは『斉藤さん』、『鋲心全壊ガール』と矢継ぎ早に続いていく。時折オートチューンも織り混ぜつつの鬼気迫るパフォーマンスに、会場の熱量はどんどん底上げされていった。


『鋲心全壊ガール』後は本日初となる長尺のMCへ。事前に告知されていた通りmioの喉の負担を軽減するため、MCはギターのtakaが担当。


前日は鳥取県、そして後日は山口県での公演を控えているミオヤマザキにとって中日に位置したこの日。とりあえずライブハウスから車で5分ほど走った先にあるイオンに行き、昼食としていきなりステーキを食したそうだ。


イオンの一角にある七夕コーナーについても話が及ぶ。願い事が書かれた短冊を確認した一行は、その中にあった「セックスがしたい」と書かれた短冊を発見。浮気や性行為、水商売を題材にした楽曲を多く発表してきたミオヤマザキにとっては「私たちらしいなあ」と思ったという(ちなみにmioは「私もしたい」と短冊に書いて飾ったそう)。


来たる横浜アリーナでのライブへの思いも吐露してくれた。12000人のキャパを埋めるには相当な覚悟と行動力が必要となること。今回47都道府県ツアーを敢行したのも「ミオヤマザキを愛してくれる人たちで最高のライブを作りたい」という意思の果ての行動であること……。「本当にみんな来て欲しいんよ!」と切実に語るtakaと一切茶化さず話に耳を傾けるメンバーを見ていると、その思いがどれだけ強く重いものなのか分かる。彼らは本気だった。


その後は『婚活ハンター』、『Que sera, sera』、『CinDie』、『un-speakable』といった新旧織り混ぜた楽曲群で進行。mioは「首を振れ!」と煽り倒し、どしゃめしゃのサウンドの渦に引き込んでいく。観客もそれに呼応するように歌い踊り、大盛り上がりで時が過ぎていく。

 


ミオヤマザキ 1stフルアルバム「anti-these」収録『正義の歌』


ラストの楽曲は『正義の歌』。mioによる「くそくらえ。もう一回言いますね。くそくらえよ!」の叫びに合わせての狂騒は筆舌に尽くしがたいものがあり、この日一番のカオス空間となった。更にダメ押しの「私の正義が誰かを救えますように!」の絶唱と一面に広がるヘッドバンギングの海で完全燃焼。大量のハートマークが掲げられる中、大団円で幕を閉じた。


約50分。ミオヤマザキの全てを把握するには明らかに短かったものの、彼らの断片的な魅力を知るには有意義な時間だったと思う。


ライブ終了後、ミオヤマザキはアナウンスにあった通りファンと交流していた。これは決して誇張ではない。メンバー全員は列に並んだファンの元を練り歩き、握手をし、写真を撮り、本当にひとりひとりに対して大幅な時間を割いて話をしていたのだ。


「目の前にメンバーがおり、その全員と会話ができる」というこの交流は47都道府県を回る今回のツアーで必ず行っている。しかし本来アーティスト写真やメディアで一切顔を出さない姿勢を貫いているミオヤマザキにとっては、これらの活動はかつての活動とは180度異なるものだ。


なぜこうした活動をするのか。答えはもちろん『横浜アリーナ完売』の一文字を見るためだ。正直横浜アリーナでライブをすると発表された当初は「いくらなんでも無謀だ」と思ったものだが、「次のライブも絶対行きます!」と満面の笑顔で語るファンを見ていると、横浜アリーナを埋めるのもあながち不可能ではないなと思えてくる。


……もしかしたら、もしかするかもしれない。ツアーは続く。ミオヤマザキは今後もスレ(彼らのライブの通称)を勢力をどんどん拡大していくだろう。「ミオヤマザキ、横浜アリーナ完売したってよ」というスレが立つ日が来るのも、そう遠くはないのかもしれない。

 

【ミオヤマザキ@島根 セットリスト】
女子高生
斉藤さん
鋲心全壊ガール
婚活ハンター
Que sera, sera
CinDie
un-speakable
正義の歌

6月のブログの裏話

こんばんは、キタガワです。


毎回この裏話に関しては5000文字くらい行くので、正直「これ書かなかったら他の記事2個くらい書けるじゃん」と思ったりもするんですが、とにかく。改めまして、6月のブログの裏話です。


ちなみに今月の総記事数は9記事でした。確か前回「15記事書きます!」みたいなこと書いたんですけど、あのブログ更新した直後には「絶対無理じゃん」と思いまして。


それはいろんな要因が重なった結果でもあって、どう足掻いても15記事は無理でしたね。しかしながら自分を見つめ直す時間も多く取れましたので、来月こそは15記事……。少なくとも10記事超えは目指したいと思います。


総じて今月は個人的に、充実した月だった気がします。ライディング活動についての不満はありましたけど、ライブもたくさん行けましたし、自分らしいストレスの発散方法にも気付けて。まあバイト以外では本当に誰とも話さない生活なんですけど、これもこれでひとつの幸福の形なのかなとも思い始めました。頑張ります。


さて、以下より今月のブログの裏話について書き進めたいと思います。普段通り時刻は午前3時。日本酒1本を空にするまでの執筆となります。長文乱文ご容赦下さい。


それではどうぞ。

 

 

amazarashiライブレポ

半年ぶりくらいに広島に行きました。大学時代に4年間ほど暮らしてた場所なんですが、やっぱり広島好きですね。本通りの空気感とか、アストラムライン乗ってると感慨深い気持ちになりました。


今回でamazarashiのライブ観るのは5回目。今までで一番優しいセットリストでしたね。B面曲やマイナーなアルバム曲はほぼなしで、ずっとライブでやってきたノリの良い曲のオンパレードでした。


ツアーのたびに映像を一新するamazarashiですが、今回のライブは(言い方は悪いですが)ほぼ今までを遡った作りだったのが驚きました。後で家にあるDVDを全部見返してみたんですが、それこそ『ライフイズビューティフル』や『ヒーロー』なんかは2016年のライブの映像だったので、感動しましたね。『月曜日』は泣く寸前で堪えました。危なかった。


さすがに5回目なので新鮮さは薄れる一方ではあるんですけど、やっぱり最高です。ライブというより2時間の映画見終わった感じで、多分一生追い続けるバンドなんだろうなと思います。8月のサマソニも是非観たいですね。


あと別件ではありますが、大学時代の後輩と話せたのは何より嬉しかったです。あまり話せなかったんですけど、ライブ楽しんでくれましたかね。就活とか人間関係とかいろいろ悩んでるだろうなと思って誘った今回のライブなんですけど、何かを持って帰ってくれたなら幸いです。またいつか会いましょう。

 

Amazonプライムのメリット・デメリット

実はこの記事、あまり覚えてないんです。下書きメモというのがありまして、普段から「こういう記事書こうかな」みたいなのをメモとして記してるやつなんですけど、そのストックがかなり溜まってきておりまして。


もちろん本文は一切書いてないので。いつもはそこから書こうとするとかなり時間がかかるなと思ってほぼ頓挫するんですが、この記事に関してはそこから引っ張り出して書きました。


でも「書けないな」ってなって、確かアルコールを2リットルくらい飲んだ状態で無理矢理書きました。何か「気付いたら書けてた」感じで。ほぼ記憶がないですね。ある種のトランス状態に陥ってたんじゃないかと。


僕がアマゾンプライムに入った理由は『ドキュメンタル』と『化物語』が観たかったからです。それだけですね。僕の家Wi-Fiないですし。なので実際に2ヶ月使ってみて、思ったことをまとめました。


本心を言ってしまうと「○○オススメですよ!」みたいな記事が多すぎる世の中にイライラしてたのもあります。僕自身もう2年間ブログやってるので分かるんですけど、ああいう記事って大体アフィリエイト(記事が読まれたらお金が入る)なんですよね。で、リンクをクリックしてもらったら更にお金が入るっていう。


だからデメリットは書かずにメリットだけ書いて、あとは記事内に載せたリンクで飛んでもらってっていう……。要は金目的に記事書いてるやつばっかりなんですね。


僕はそういうの大嫌いなので。なので全くそうしたアフィリエイト活動をしてない僕のブログで真実を語ってやろうと思いました。メリットがあるならデメリットもあって当たり前なわけで、それを記さないブログはブログじゃなくて、ただの守銭奴の営業ですから。アマゾンプライムの真実を書けただけでも良かったと思います。……記憶ないですけど。

 

映画『TAG』レビュー

ここから映画記事が続きます。それには理由があって、主に音楽記事に時間を使っておりました。


それこそ先々月くらいに『wowakaさんについて』と『ビリーアイリッシュの全曲レビュー』っていう記事を書いて、そのふたつの記事に2週間以上かけまして。なので必然的に、その時は月間で5記事くらいしか上げられなかったんです。


なので「ブログ全然書いてねえじゃん」と悩むことも多かったんですが、結果的には賞を頂いたりもして。なので先月くらいからブログのモチベーションが下がってたんです。ブログの更新頻度が減った理由も「今以上に音楽の文章に時間を使いたい」と思ったからで。


なのでその分次のAviciiとかZAZENとか、そういうのに時間をかけてたわけです。でもそうするとブログの更新が止まっちゃって、自分の精神状態が悪くなるきっかけにもなり得るので。なので場繋ぎとして映画レビューが多くなりました。


普通に息抜きとして映画観たかったのもあります。で、それでプラス映画記事も書ければ万々歳だろうと思ってました。

 

映画『スノーマン』レビュー

「面白くないなあ」と思いつつダラダラ観てたんですけど、後で調べたらめちゃくちゃ評価低くて笑いました。確かレビューサイトで2.6くらい。


定期的にグロ映画が観たくなるので借りてみました。微妙でしたね。途中で寝ようかと思いました。


この映画については語ることないので話変えるんですが、僕は基本的に夜は日付変わるまで酒飲んでて、その流れで文章書くことが多いんです。いろいろ考えてしまうたちなので、今でもふわーっとした感覚で書くのがベストな気がしてます。


でもそんな状態で映画観るとどうなるかって話なんですが、もう全部面白く感じてしまうんですよね。頭グラグラしてるし既に楽しいし。そんな状態で映画観たら、多分ほとんど星5になるレベルだと思って、「これじゃいかんな」と。


なのでこの記事くらいから、酒飲みながら映画を観るのは極力止めました。映画レビュー書いてるなら正しい見方して然るべきだと思ったので。なのでこの『スノーマン』に関してもシラフで観てたんですが、全然面白くなくてですね。でも同時に心の中で「酒飲んで観てたらこんなのでも星4とか付けるんだろうな」とも思いました。

 

映画『ミックス。』レビュー

2017年公開の映画。実は今回で観るのは3回目なので、もう内容は全部知ってる状態でのレビューになります。


確か当時はブログで映画レビュー自体やってなくて、観たらツイッターでチラッと感想呟くくらいだったんですけど、それこそ今年あたりから「今年観る映画は全部レビューしよう」と思い始めてたのもあって、記事にしました。


母親が「何か面白い映画が観たい」って言ってたので借りたんですけど、喜んでくれて良かったです。普段一緒に映画とか視ないので。あとエンドロールが流れた瞬間に親父が帰宅したのも面白かったですね。あと数分早かったら感動とか台無しになってたので、奇跡的なタイミングだったなと。


文句無しの星5。これからもいろんな人に勧める、個人的には一生ものの映画だと思います。

 

Aviciiニューアルバム『TIM』の存在意義

本文にも書きましたが、数年前のEDMシーンを作った立役者って間違いなくAviciiなんですよね。


でも2019年の今はかなり変わってきてて。特にアメリカですか。それこそトランプ政権や世の中に苦言を呈する曲が増えて、それに伴って歌詞をどんどん捲し立てるヒップホップが増えていって。盛り上がり一辺倒のEDMはかなり下火になってるんですよね。Aviciiが無くなったのは数年前ですけど、まさか彼もここまで音楽市場が変わるとは思ってなかっただろうなと。


このアルバムはAviciiが亡くなった後、家族やプロデューサーが半分くらい完成されてたものを無理くり完成させて発売したっていう、かなり賛否が分かれた作りで。


僕自身「どうだろなあ」と思いながら買ったんですけど、普通に良かったです。毎年勝手に『音楽アルバムランキング』っていう記事を書いてるんですが、間違いなくランクインはするだろうなと。それくらいハマりました。


特に『Heaven』が好きです。「僕は死んで天国に行ったんだ」って歌詞なんですけど、ちょっといろいろ考えてしまいますね。泣けます。

 

フェス主催者へのリプライについて

普段は酒飲みながら書いてるんですけど、このときはカフェ行ったり酒飲みながら書いてて。でも筆の進みが一向に落ちないんですよ。やっぱり自分は怒りを原動力にした方が書けるなと思いました。まあそれは置いておいて。


事の発端はサマソニのツイッターです。今年の8月に行く予定があるんですが、毎日公式ツイッターチェックするくらいには楽しみにしてて。普段聴く音楽もサマソニの出演者ばっかりですし、YouTubeで演奏動画を3時間くらい観てしまう……。今の僕にとってはサマソニが一番の楽しみでもあり、つまらない現実を生きる理由でもあるんです。


そんな中サマソニのツイッターに対して、毎日毎時間「○○を出せ」とか「運営はクソ」みたいなことをリプライで送る人がいて。今調べてみたらその人300近いリプライを送ってるっぽいんですけど。それがチラチラ目に入ってきてですね。


あとは今年のロッキンやフジロックのリプライも罵詈雑言の嵐で、それを観るたびにイラついて来たのが書いた理由です。


それこそ今までも『米津玄師は宗教だ』とか『フィッシャーズがMステに出るのかどうか』みたいな文章を書いてきたんですけども、特に最近は音楽に対して盲目な人が多すぎやしないかと。フィッシャーズやポピパがロッキン出るのも面白いと思うんですよ。レッチリとベビメタが別のステージ出るのも新鮮だし、今年のサマソニが邦楽が4割占めてるのも別に良いじゃないですか。いろんな事情があってそうしてるわけだし、外野が口出しするのは野暮だろと思って筆を取りました。


あ、でもサマソニに関してはMGMTとThe 1975が被ったのと、Two Door Cinema ClubとBananaramaが被ったのはめちゃくちゃ嫌でした。すいません。

 

ZAZEN BOYSライブレポ

いやー、頭おかしかったですね。今までいろんなライブ観てきましたけど、一番頭おかしかったです。というか全員狂ってました。あの光景は一生忘れないと思います。


今年再結成したNUMBER GIRLも同じで、ZAZENも向井秀徳バンドなんですよ。で、怖いのはその向井がライブ中何やるかっていうのは完全なるアドリブで、観客もメンバーも全く知らないんです。


本来向井がギター弾く場面でハイボール作って飲み出すのはまあ序の口で、いきなりテンポを超速にしたり、いきなり「ハッ!」って言ってスタートしたり。今回最前列で観たんですけど、よく見たらそれを向井がちゃんと指揮してるんですよ。指1本上げたら1拍で終わるとか、手を握り混んだら次で終わるとか。


めちゃくちゃ狂ってますよ。だからメンバーはまばたきも呼吸もせずにずっと向井を凝視してるんです。何やるかわからないから。普通バンドのライブって観客が腕挙げたりモッシュしたりするんですけど、そういうのも全然なし。緊張続きの2時間でした。


あのライブのためだけに広島行ったんですが、後悔はないですね。次の日のバイト辛かったけど。

 

打首獄門同好会ライブレポ

今月唯一地元で観たライブです。この機会なので書きますが、島根県にロックバンド来てくれるの本当に嬉しいんですよ。バンドが定期的に来る県は一番近くて広島なんですけども、往復7000円かかるんです。島根は大好きではありますが、なんか、ねえ。


話は変わって打首。レポートも書きましたが前回観たのは去年の11月、東京の赤坂でした。前回も最高だったんですが、今回も良かったです。Canovaの音響は「ん?」ってなることが多いんですが、今回はかなり楽しめました。打ち込み使わずにギター、ベース、ドラムでズドンとやる形は無駄なものを削ぎ落とした感じでいいですね。


ライブは個人的に『どれだけ非日常の空間を演出できるか』を重要視していて。それこそ上に書いたamazarashiやZAZENのライブがそうで、CD音源を超越した何かを感じたいわけです。それを踏まえて打首、最高でしたね。プロジェクター使っておふざけ映像流しまくるっていう、「島根で何やってくれてんだ」みたいなライブでした。


言い方は悪いですけど、「こんなライブが毎月観れたなら島根県も悪くないな」と思えるライブでした。あっぱれ。

 

……さて、いかがでしたか、6月のブログの裏話。


日本酒が完全に空になりましてハイボールに移行した状態で書いてます。最近「飲みすぎじゃん」と本気で心配されるようにもなったんですが、何か今が一番幸せな気がしますね。夢追っかけて好きに生きてっていう……。世間的にはクズなんでしょうけど。


今月はライブレポートにかなり時間を割きました。先月も書いたんですが、やっぱり僕はブロガーではなくて音楽ライターとして生きたいなと強く実感した月でもありました。


それこそ東京(広島でもいいんですけど)で暮らして、定期的に音楽の文章書いてライブ行って、毎月馬鹿みたいにCDに金使ってっていう生き方が幸せなのかなと思いました。島根はどうしてもバンドが来ないので。予感ではありますが、再来月のサマソニが終わった後くらいに何かしら大きな行動を起こしそうな気がします。

 

あと人間関係的にも最近は悪くないので。ストレスフリーな状態が続けばベターかなと。取り敢えずは7月。あまり気負わずに頑張れたらなと思います。それでは。

【ライブレポート】打首獄門同好会『獄至十五ツアー』@松江Aztic Canova

こんばんは、キタガワです。

 

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6月23日、打首獄門同好会『獄至十五ツアー』の島根公演に参加した。


打首獄門同好会にとってこの日は、日本武道館前の勢力拡大計画として行われた47都道府県ツアー『戦国絵巻』、そしてROTTENGRAFFTYとの対バンとして招かれたライブに次ぐ、通算3回目の島根県ライブとなる。


しかしながら、今までのライブ会場はいずれも出雲市に位置した『出雲アポロ』。その場所は同じ島根県ではあるものの、島根県の中心部からは34キロも離れている。


つまり今回は打首史上初の島根県の県庁所在地・松江市でのライブとなる記念すべき日でもあったのだ。


フロントマンである大澤会長(Vo.Gt)も期待に胸踊らせていたようで、事前にオススメ料理をツイッター上で募集するなど上機嫌。昼食には結果的に3000円超えの高級うなぎ丼を食したようで、準備は万端だ。


この日のチケットは完全ソールドアウト。スタッフからの「もう一歩前へお進みください!」の声が幾度も聞こえるほどに、パンパンの客入りとなった。


盟友GOOD4NOTHINGが存分に温めたフロア。ステージには所狭しと置かれた機材の他、もはや打首のライブではお馴染みとなった大きなスクリーンと小型モニターが鎮座し、期待値をぐんぐん高めていく。


定時になり河本(Dr.Vo)、junko(Ba.Vo)、大澤がオンステージ。「こんばんは、打首獄門同好会です!」との大澤の一言から、観客は大歓声と共に一瞬にして前方に密集。演奏前から一種の蒸し風呂状態となった。


オープナーを飾ったのは最新アルバムでも1曲目に位置していた『こどものねごと』だ。


僅か1分少々の時間にロックのエッセンスをふんだんに盛り込んだ、単純明快な盛り上げソング。打首ならではの7弦ギターと5弦ベースの重厚なサウンドが鼓膜を刺激し、観客の熱量を底上げしていく。


大澤によるこの日限りの「オッケー松江!」の絶叫に対して、観客は一様に「遊ぼうぜ!」のレスポンスを返していく。楽曲の後半では早くもあちらこちらでダイバーが出現し、湯気が立ち込めるカオスな空間に変貌。島根県民と言えばシャイな性格で有名だが、今日この日に関しては話が別。皆日頃のリミッターを解除するかのように踊り狂っていた。


その後は3月6日に発売されたミニアルバム『そろそろ中堅』の楽曲を軸に演奏していくのだが、特筆すべきはスクリーンの映像。CD音源では間接的な笑いとして届いていた箇所が極めて直接的に目に飛び込んでくるのだから噴飯ものである。

 


打首獄門同好会「Shake it up ’n’ go 〜シャキッと!コーンのうた〜」


パ行の最初の文字が連発される『パ』のラストで島根県の会社が製造・販売を手掛ける『パスチャライズ牛乳』が表示されたかと思えば、エースコック株式会社の大人気商品を歌った『YES MAX』では、既視感を覚えるあのロゴが大写しに。続く『Shake it up 'n' go~シャキッと!コーンのうた~』はPVがそのまま投影され、キャラクターのあまりの可愛さに笑みがこぼれてしまう。


ここまで4曲。メンバーも観客も既に汗だくだが、一向に休まる気配はない。「今日がツアーの折り返し地点」と語っていた打首、むしろ火に油を注ぐ勢いでもって限界突破を図る。


続く『島国DNA』、『ニクタベイコウ!』では、海鮮料理と肉料理の数々がドドンと視界に入るドSっぷり。

 


打首獄門同好会「ニクタベイコウ!」


気付けば20時を過ぎ、世間一般的には晩御飯の時間帯である。夕方からモッシュ・ダイブを繰り返してきたライブキッズからすると、この食べ物ソングの流れはさぞかし拷問だったろう。しかしそれは演奏前に「今日の打ち上げは海鮮料理と聞いている!」、「松江は肉も有名らしいじゃないか」と語っていた大澤も同様らしく、空腹をバネにしたがむしゃらなパフォーマンスで会場を沸かせていた。


演奏が終わり、話は大澤の地元である浜松市の話に。


聞けば大澤は浜松市の『やらまいか大使』という観光大使に任命されているそう。そのため県内外で浜松市をPRする立場にあると言い、ここでは『浜松まつり』について話が及ぶ。


『浜松まつり』とは毎年ゴールデンウィークに開催される年中行事のひとつで、子どもの誕生を祝う目的で行われるという。「オイショーオイショー」との掛け声を発しながら凧を揚げたり街を練り歩いたりすると言い、祭りの期間中は市をあげて盛り上がるのだそうだ。


しかし大澤いわくいわゆる『ヤンチャ系』の若者によって、昨今の浜松まつりはその姿を変えつつあるという。かつては街を一列になって練り歩く形であったのが今では大きな輪を作り、中心の旗を軸にグルグル回るという、新しい風を吹き込む形へ変わっているらしい。


当日の様子を動画で流しつつ、大澤は「これってライブのサークルと同じじゃないか?」と一言。「この場で浜松まつりを開催してもよろしいか?」との流れから『HAMAMATSU』へ。


〈そんなわけで紹介するのは 私の地元浜松市〉

〈静岡県の西部に位置する けっこうおっきな街ですよ〉


浜松市の名産品や観光地、オススメスポットのみならず、ゆるキャラやうんちくまでも網羅したまさに『THE・ご当地ソング』とも言うべき歌詞の連続に、会場からは笑いと共に「そうなんだ」という意味合いの「へえ~……」の声が上がる。


かと思えばサビ部分に差し掛かった瞬間には肩車されたひとりの観客を「オイショー!オイショー!」と取り囲みながら叫ぶ特大サークルが出来上がっており、緩急をしっかり付けたパフォーマンスで魅了。大澤も「何度かライブでやったけど、お客さんが肩車するのは今までにないパターンだったね」とご満悦。

 


打首獄門同好会「はたらきたくない」


その後はキラーチューンを連発する磐石のセットリストで進行。「おかしいと思わないか?ゴールデンウィークが終わってから祝日が1度もないなんて」と始まった『はたらきたくない』、「今は冬だ。今は冬だ」と事前に観客を洗脳させた『布団の中から出たくない』、一旦ステージを降りた後、ドでかい被り物を被って再登場した『New Gingeration』……。そのどれもが圧倒的な盛り上がりでもって迎え入れられており、観客は一様に忘我の境に入って楽しんでいた。


次なる『デリシャスティック』は、この日の大きなハイライトとして映った。

 


デリシャスティックPV


『デリシャスティック』の意味とはズバリ『うまい棒』である。まずは袋に大量に入ったうまい棒をリレーし、観客全員に配っていく恒例の時間に突入。その間は物販紹介で場を繋いでいくのだが、終始ボケを織り混ぜつつ笑いに包まれながら進行。


当初はTシャツを画像付きで「普段着にも着やすいやつー」、「かわいいやつー」と説明付きで紹介していたのだが、終盤のキーホルダーや缶バッジといった小物類に関しては「他にはこんなのがありまーす」と超速でスクロールして終了するというグダグダっぷり。そのスピード感は大澤に「こんなに適当に紹介したのは初めて」と言わしめるほど。


うまい棒が全員に行き渡ったところでようやく『デリシャスティック』に突入。コーンポタージュ味やサラダ味といったポピュラーな味はもちろんのこと、レッドロブスター味やカニシューマイ味のような現在では入手困難な味も歌詞に入れ込む作りは圧巻。


僕自身「いろんな味があるんだなあ」と感心しながら観ていたのだが、ふと配られた手元のうまい棒を見ると、そこには歌詞には入っていない『なっとう味』と書かれていた。……うまい棒の味は僕らが思っている以上に多彩らしい。


後半に差し掛かり、ここからは怒濤のハイカロリー楽曲が続く。「食べ物の曲ばかりやってきましたが、絶対歯磨きしましょうね!」と雪崩れ込んだ『歯痛くて』、おじいちゃんおばあちゃんの嬉しくも悲しい心中を代弁した『まごパワー』、超有名楽曲のカバー『おどるポンポコリン』と、出し惜しみ無しのフルスロットルで駆け抜けていく。


本編ラストは『日本の米は世界一』でシメ。

 


打首獄門同好会「日本の米は世界一」


前半に披露された食べ物ソング2曲はいずれも海鮮料理と肉料理と、ある種のジャンル分けがされていたのが特徴的だった。しかしこの楽曲で描かれるテーマは更に幅広い『米』である。


スクリーンには刺身定食や焼肉定食、更にはカツオのたたき定食やステーキ定食と、陸海の枠を超えた料理が渾然一体と表示される。その光景は観ているだけでも涎が出そうになる。


そんな歌詞の数々がキャッチーなサウンドと共に押し寄せてくるのだからたまらない。ダイバーとモッシュが続出する、この日一番のカオス状態と化した。


「最初から!最初から!」という鳴り止まないアンコールの声に答えて再登場した打首メンバー。正真正銘最後の楽曲として披露されたのは『フローネル』だ。

 


打首獄門同好会「フローネル」


冒頭で「風呂入って速攻寝る計画」とある通り、この楽曲では『風呂に肩まで浸かった瞬間』と『温かい布団にもう一度潜った瞬間』が何より幸せなのだということが歌われている。


さて、この楽曲をライブで演奏される際は暗黙の了解として、サビ前の「幸せって……?」の問いに対して大澤が完全なるアドリブで対応する場面が2箇所、終盤でjunkoが『私○○ですけどね!』と語るアドリブパートが1箇所存在する。


もちろんアドリブなのでグダグダになる場合もあればカッチリ填まる場合もあるわけで、逆に言えばこの3箇所こそが『フローネル』においての最大の見所であり、重要なポイントなのだ。


それを踏まえて今回の『フローネル』である。まず風呂場に向かう前の準備段階として大澤が選んだのは「幸せなことって言えば、今日のライブはソールドアウトしたじゃないか!」との一言。そしてその喜びを携えてお風呂に向かう流れ。1箇所目、まずはクリアである。


問題は難易度が上昇する2箇所目。この箇所では『出勤時間が近付いてナイーブになっていたが、“あるうっかりミス”で実は休日だったことに気付き、また二度寝する』という流れを作らねばならない。


まずナイーブな事柄については、島根県ではお馴染みの『秘密結社鷹の爪』を引き合いに出し『世界征服を謳うブラック企業で務めている社員』を演じることでクリア。そして間髪入れず「そういえば打首のライブのために有給を申請していた!」と完璧な流れでフィニッシュ。


junkoのアドリブパートに関しては、直前に出演したGOOD4NOTHINGのMAKKIN(Ba.Vo)がMCで「最近おねしょをした」と話していたことを踏まえ、「私おねしょはしない派ですけどね!」とイジってクリア(直後にMAKKINがマイクを奪い取り「でも一回くらいあるでしょ?」と語る一幕もあったが)。


汗と笑いに包まれたまま突っ走り、最後は「お風呂最高!」の大合唱で幕を閉じた打首。去り際に「またライブハウスで、あるいはスタジオで会いましょう」と叫んだ大澤の顔は晴れやかだった。


個人的に打首のライブ参加は3回目を数えるのだが、やはり抜群に面白かった。


今回はミニアルバム『そろそろ中堅』のリリースツアーということもあり、セットリストの大半はこのアルバムの楽曲だった。


しかしながら彼らが脚光を浴びたのは『日本の米は世界一』や『布団の中から出たくない』といったユニークな楽曲群がSNSで話題となったのがきっかけ。そのため『そろそろ中堅』を軸に展開する今回に関しては、元々の楽曲を知らない状態でライブに臨んだ観客も一定数いたはずだ。


にも関わらずライブ終了後の観客は皆、満面の笑みを浮かべていたのが印象的だった。全身びっしょりの汗にまみれ、口々に感想を言い合い、物販には長蛇の列ができている……。その光景は『打首のライブは最高だった』という事実を何よりも雄弁に物語っていた。


鬼気迫る演奏とエンターテインメントを携えたライブパフォーマンスは、ニューアルバム『そろそろ中堅』に収録された楽曲の追加によって、更に強まった。今年で結成15周年を迎えるが、今の打首は敵なしだ。この先もきっと、ファンが予想もしない奇跡を次々と起こしてくれることだろう。


一頻り思いを巡らせながら、すっかり暗くなった道を歩いて帰る。帰り際、口を衝いて出たのは「良かったなあ……」という心からの一言だった。ふとポケットに手を入れると、『デリシャスティック』で配られたうまい棒があった。そして納豆の風味が鼻を刺激するそれを食べながら、僕は再び余韻に浸るのであった。

 

【打首獄門同好会@島根 セットリスト】
こどものねごと

YES MAX
Shake it up 'n' go~シャキッと!コーンのうた~
島国DNA
ニクタベイコウ!
HAMAMATSU
はたらきたくない
布団の中から出たくない
New Gingeration
デリシャスティック
歯痛くて
まごパワー
おどるポンポコリン
日本の米は世界一

[アンコール]
フローネル

 

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【ライブレポート】 ZAZEN BOYS『ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION』@広島クラブクアトロ

こんばんは、キタガワです。

 

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6月21日、ZAZEN BOYSのツアー『ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION』広島公演に参加した。今回はその当日のレポートを記す。


全8公演、ZAZEN BOYSにおいて久方ぶりの大規模なツアー。今回ライブ会場に選ばれた広島クラブクアトロは700人以上が収容可能な大バコではあるが、平日にも関わらず後ろまでパンパンの客入りとなり、一切のBGMが流れない無音空間の中、静かな緊張感に包まれていた。


しかしその裏では、今までの彼らのライブとは異なる雰囲気も漂っていたように思う。


理由は主にふたつ。まずひとつ目にZAZEN BOYSは、今年中にニューアルバムの発売を控えているということだ。前作『すとーりーず』から数えると約7年もの月日が経過したが、その間新曲は1曲たりともライブで披露されることはなく、ファンにとってはやきもきする期間が続いていた。


そんな中で発表されたニューアルバムの一報である。そのため新曲が披露される可能性が高いことは集まった観客も理解しているはずで、いわば今回のツアーは『ニューアルバムの雰囲気を最も早く知ることができるライブ』とも言えるのだ。


そしてもうひとつは言わずもがな、NUMBER GIRLの再始動が発表されたことだ。フェス参加やツアー開催も決定し、今夏から少なくとも向井秀徳(Vo.Gt)はそちらに重点を置くこととなるだろう。


事実ザゼンのライブ予定は7月中旬を最後にぱったり途絶えており、以降はNUMBER GIRLのスケジュールでビッシリだ。このツアーが終われば、次にザゼンがライブを行うのはいつになるのか分からない。アルバムリリースツアーさえも行わない可能性すらあるわけだ。


……つまり総合すると今回のライブは『予想がつかない』ということ。セットリストも構成も、その全てが霧に包まれている。さあ、今宵のマツリセッションの行方は如何に。


完全無音のフロアで待機すること数十分、定時を5分ほど過ぎて暗転。向井、MIYA(Ba)、カシオマン(Gt)、松下(Dr)の4名がゆっくりと配置に着く。


一曲目は『Fender Telecaster』。中でも開幕を告げる冒頭の数十秒間は絶頂だった。全員が向かい合わせになり「ワンツースリーフォー!」の合図で同じタイミングで音が鳴った瞬間、会場の温度が一段階引き上げられるのが分かる。

 


ZAZEN BOYS - Fender Telecaster @ TOUR MATSURI SESSION


誰かがワンテンポでもズレたら瞬時に破綻する状況下において、すさまじい集中力で進行していく。その姿はさながら武士の斬り合いだ。ふと周囲に目をこらすと、観客は皆一様に一挙手一投足を見逃すまいと目を釘付けにしており「ヤバいものを観ている」という実感が会場を支配していた。


曲終わり「マツリスタジオからやって参りましたザゼンボーイズ」と向井が発すると、大きな拍手が送られた。


その後は『破裂音の朝』、『Maboroshi In My Blood』、『Honnoji』といったキャリア全体を網羅する磐石のセットリストで進行。


特筆すべきは演奏面。カシオマンは虚空を見つめて高難度のフレーズを弾きまくり、MIYAは首がもげそうになるほどヘッドバンキングを行いながらスラップを連発。松下は鬼のような形相でバンドメンバーに目を配り、体重全体を乗せた重いドラミングを披露していた。


向井はと言えば時折傍らに置かれたハイボールをチビチビ飲みつつ、曲間に「ハッ!」「シャッ!」とアドリブを入れまくる力の抜きっぷり。かと思えばバンドメンバーに拍のタイミングを指示するバンマスらしさも垣間見え、絶対的な存在感を放っていた。


アドリブと言えば『COLD BEAT』にて突然向井が「ずぼっとハマったポテサラ」と『泥沼』、『ポテトサラダ』の一説を引用したかと思えば「とりあえず生中」「あと……おしんこ」「金宮1合」「そのあとにまたポテサラ」と、気の向くままに居酒屋のメニューを列挙する一幕も。


そして何度も「ポテサラ」を連呼した後に再び曲に戻るという、CD音源では3分にも満たない『COLD BEAT』がエンターテインメント性抜群かつ長尺な楽曲に変貌していた。

 


ZAZEN BOYS - COLD BEAT


その一連の流れは完全なる向井のアドリブであり、他のメンバーはどの段階で曲に戻るのか一切知らない様子。そのため向井以外の3人は呼吸を止めながら、常に向井の動向に目を光らせていたのが印象的だった。全7公演のツアーではあるが、彼らのライブパフォーマンスは絶対に『その日のライブ』でしか観ることの出来ない、唯一無二の作品なのだと実感した次第だ。


『RIFF MAN』終了後、向井の「我々ザゼンボーイズは新曲を作っております』」の一言から始まったのは、『公園には誰もいない』と名付けられた新曲。


今回のライブでは後述する楽曲を含めると計3曲が新曲として披露されたのだが、この『公園には誰もいない』は彼ららしい変拍子とギターの主張に圧倒されるミドルテンポなナンバー。大半の観客が初見でありながらゆらゆらと体を動かす人が多数見受けられ、今後ライブのセットリストにも積極的に入りそうな印象を受けた。


『This is NORANEKO』、『TANUKI』という動物ナンバーが連続する場面においては「塀と塀の間からこっちを見ている野良猫の歌」、「狩人に散弾銃で土手っ腹を撃ち抜かれてぶっ殺された、タヌキ!」とユーモア溢れる入りで大いに笑わせてくれた。


「ぴろしまシティーにお集まりの皆様。ピロシキでも食べながらスウィートな週末をお過ごしください」と始まった『Weekend』では演奏中に向井のハイボールが空になり、スタッフを呼んで作らせる場面も。圧倒的なグルーヴと意味不明な歌詞、そしてライブならではのアドリブ感に、だんだん意識がトリップしそうになる。

 


Zazen Boys - Weekend


ちなみに今回のライブでは、向井はキーボードを一切弾かなかった。というよりそもそもの配置自体されておらず、本来キーボードサウンドを主体に展開するはずの『Weekend』や後述する『Asobi』といった楽曲においてはエレキギターで代用。必然的にとてつもなくロック然としたナンバーに変貌していたのが印象的だった。


その後はファーストアルバム収録の『Ikasama Love』や「秘密、こっそり教えちゃもらえんかね?」と語ってスタートした『HIMITSU GIRL'S TOP SECLET』、「暗黒屋台の親父が売ってるのは、毒入りのもみじまんじゅう」と笑いを誘った「暗黒屋」と次々進行していく。


更には再び「ザゼンボーイズは新曲を作っております」と語って鳴らされた『杉並の少年』と『黄泉の国』の2曲は新鮮で、『杉並の少年』はかつてないほど口ずさみやすいキャッチーな楽曲。対する『黄泉の国』は転調を多用したサイケデリックなダークナンバー。『公園には誰もいない』と同様の完成度の高い楽曲の数々に、来たるニューアルバムの完成形を期待してしまう自分がいた。


向井の独特の語りは続く。『天狗』前には連想ゲームのように「そんなこんなで黒猫やらぶっ殺されたタヌキやらがおったわけですけれども、ふと空を見上げてみればあれは……夕焼け空に飛んでいった、天狗……。まあ本当は鷺(さぎ)だったんだけれども……」と語っていたのだが、あまりにも謎過ぎるシナリオとシリアスな空気感が相まって、客席からは笑いが起こる。


それに対して「うーん……分からんだろうなあ……いや、分からんだろうなあ……」と向井が首を捻りながら奏でられた童謡『赤とんぼ』のカバーは「夕焼け小焼の赤とんぼ~♪」といった本来の歌い方を大きく逸脱し、ギャリギャリと鳴るギターをバックに一種の朗読劇のように進行。もうここまで来ると観客の理解の範疇を完全に超えてしまっているのだが、このサイケ感がザゼンの魅力でもある。僕は今まで数多くのライブに参加してきた自負はあるが、これほどまでに特異なライブは経験したことがない。というよりはっきり言って狂っている。何だこれは。


そしてライブは終盤へと差し掛かる。『Whisky & Unubore』、『SUGAR MAN』、『はあとぶれいく』といった新旧のナンバーを織り交ぜながら、最後に演奏されたのは『Asobi』だ。

 


Zazen Boys - Asobi 7.19 2018


CD音源ではキーボードサウンドを軸として進行する楽曲ではあるが、今回は前述したようにキーボードが存在しないため、終始カシオマンがキーボードパートをギターで代用。更に向井はギターをスタンドに立て掛け手ぶらの状態で挑み、昨今のライブで散見されたようなカシオマンによる大五郎の容器を用いたシェイカー演奏も皆無で、全く新しい『Asobi』として確立していた。


ポケットに両手を突っ込んで仁王立ちで歌う向井は「遊び足りなーい!」と繰り返し絶唱。後半に至っては完全なるジャム・セッションと化し、ある種のトランス状態が果てしなく続く至福の時間となった。向井は2杯目の残されたハイボールをチビチビ飲みつつ、小声で「ワン・ツー・スリー」と拍を取ったり、指を立てながらあと何小節で次の場面に移るかを逐一指示していた。


3人がミラーボールに照らされながら演奏し、それを向井が指揮する様は神々しくも見え、「この時間がずっと続けばいいのに」と感じたほど。


向井が「マツリスタジオからやって参りましたザゼンボーイズ。ぴろしまシティー、乾杯!」とハイボールを掲げた瞬間に演奏が終了。惜しみ無い拍手が送られて本編は終了した。


鳴り止まないアンコールの声に再びステージに舞い戻ったメンバー。鬼気迫るステージングの後だからなのか、メンバーの顔は一様に朗らかだ。ちなみに向井の手には既にプルトップを開けた350mlのアサヒスーパードライが握られていた。まだ飲むのか……。


「貴様に伝えたい」と語って始まったアンコール1曲目は『Kimochi』。時折「俺のこのキモチを」の歌詞を「キモティ」や「キモピ」にしながら余裕綽々で歌い上げる向井に、その都度客席からは笑いと歓声が上がる。聞けばこの楽曲は他公演のアンコールでは演奏されなかった楽曲らしく、広島で聴けたのは運命的なものを感じた。


正真正銘ラストの楽曲として鳴らされたのは『CRAZY DAYS CRAZY FEELING』である。椎名林檎がコラボしたことでも有名な楽曲だが、この場では向井が椎名林檎パートも兼任する形で進んでいく。

 


ZAZEN BOYS_CRAZY DAYS CRAZY FEELING


今まで以上にどしゃめしゃな演奏を繰り広げるバンドメンバー。そして向井は伝家の宝刀「繰り返される諸行無常、甦る性的衝動」のフレーズをバッチリ決め、大団円で終了した。


……とてつもないライブだった。客電が付いた後も鳴り止まないアンコールと、治まる気配のない耳鳴りが、その日の壮絶さを何よりも雄弁に物語っていたと思う。


正直CD音源や公式動画を聴いただけで彼らのことを理解した気でいたのだが、とんでもない。この日目の前で繰り広げられていた2時間のステージングはあまりにもクレイジーで、日本中のどのバンドより肉体的だった。


ライブハウスの外に出ると「Tシャツ販売しておりまーす!」というスタッフの声が聞こえてくる。ふと物販に目をやるとそこにはTシャツしか販売されておらず、缶バッジやタオルといったグッズは一切置かれていなかった。学校の授業机を彷彿とさせる小さな物販コーナー。その前にはたった1種類のTシャツを求めて、長蛇の列が出来ていた。そんなカオスな光景を見て「何だかザゼンらしいな」と思ってしまった。


僕は列の最後尾に並ぶ。まだ耳鳴りは酷いが、今は何故か心地良い。ウォークマンを取り出し、今しがた演奏されたばかりの『CRAZY DAYS CRAZY FEELING』を聴きながら列が進むのを待つ。


〈くりかえされる諸行無常 よみがえる性的衝動…〉


……改めて聴くと意味が分からない。何だこの歌詞は。何だこの不協和音にも似たサイケ感は。頭がおかしくなりそうだ。


しかし僕は先程まで、こんなクレイジーな楽曲群を2時間以上も聴いていたのである。まだ夢心地で現実味がない。もしかすると、彼らのライブは合法ドラッグにも似た成分が含まれているのかもしれない。


未だふわふわとした気持ちの中僕は、「今日は久しぶりにビールを飲もう」と決めた。この余韻に浸りながら飲む酒は格別だろう。もちろん、肴はザゼンボーイズの音楽だ。

 

【ZAZEN BOYS@広島 セットリスト】
Fender Telecaster
破裂音の朝
Maboroshi In My Blood
Honnoji
COLD BEAT
RIFF MAN
公園には誰もいない(新曲)
Fureai
This is NORANEKO
TANUKI
Weekend
Ikasama Love
暗黒屋
HIMITSU GIRL'S TOP SECRET
杉並の少年(新曲)
黄泉の国(新曲)
天狗
赤とんぼ
Whisky & Unubore
SUGAR MAN
はあとぶれいく
Asobi

[アンコール]
Kimochi
CRAZY DAYS CRAZY FEELING