キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

全国ツアーに全部参加するのは、どれだけ好きなアーティストでもやめておけ

こんばんは、キタガワです。


当ブログを愛読してくださる方々には周知の事実だろうが、僕はライブが好きである。


基本的には地元である島根県で拝見することが多いが、どうしても観たいライブがあれば雀の涙ほどの貯金を切り崩し、フットワーク軽く県外に行くこともある。


なぜそこまでしてライブに足を運ぶのか。その理由はひとつ。ミュージシャン……。いや、『音楽』は、ライブでこそ真の魅力を発揮するものだと思っているからだ。


今の時代のCDは何でもありだ。PCの打ち込みを多用しようが、声にオートチューンをガンガンかけようが、管楽器やコーラス隊を大量に入れても文句は言われない。極端な話をするならばAKBグループのように、音楽そのものに価値がなくとも成立してしまう。


そんな多様化つつあるミュージシャンの真髄が問われるのは、間違いなくライブである。ライブにおいては小細工は一切通用しない。CD音源よりも遥かに肉体的で、心に訴えかけてくる『最高のライブ』を求め続ける今の生活はとても幸せで、たとえ借金をしようが異端だと咎められようが、辞めるつもりは毛頭ない。むしろもっとライブを観たい。そう考える毎日である。


そんなライブだが、様々な場所に赴いたりツイッターでエゴサーチするたびに、ある言葉を発する人が一定数いる。それこそが「今回のツアー全部行きます!」という人。


タイトルで粗方予想は付くだろうが、僕はそうした考えには否定寄りの意見を持っている。今回の記事では「ツアーは全通すべきでない」という理由を列挙していく所存だ。


……別にそうした人たちに異を唱える訳ではないのだが、ツアーに全て参加する人に限って、ツイッター上で「だんだん飽きてきた」だの「たまには驚きがほしい」だの、的外れな意見を語っている場合も多い。ならば行かなければ良いだけの話だし、自分の意思で参加しておきながら否定的な意見を述べるのはお門違いだと思ったりもする。


総じて今回の記事は、ライブ好きの単なる戯れ言として、あまり深く考えずに読んでいただければ幸いである。

 

 

①時間が消える

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他県に『遠征する』という響き自体は格好良いのだが、実際問題そう簡単なことではない。


1ヶ所ならまだしも、複数の遠征はバスや飛行機、電車を使わなければ不可能である。もしもあなたが定職に就いておらず、かつ貯金もたんまりある状態であれば何も言うまい。しかし現実はそうではないはずだ。


連日連夜キツい仕事をこなし、週2回の休日は自宅で静養。たまに気が向けば美味しいご飯を食べ、明日への活力とする……。おそらくほとんどの人はそんな生活を送っていると思われる。


この状態においての『遠征』は、大学生やニートが暇潰しで行くようなそんじょそこらの遠征とは意味合いが大きく異なるはずだ。


基本的にライブは18~19時スタート。となれば終演はどう足掻いても20時を回ることになる。そこから最寄り駅に向かって飛行機に飛び乗ろうとしても、居住地へ直行する便などほぼほぼ無く、1泊を余儀無くされる。余程の人でない限り、この時点で最低2日間の休みが必要となる。


精力的にライブ活動を行うアーティストであれば、更に過酷な日々が待っている。特にバンドは機材車をゴロゴロ言わせながら、ライブを3日連続敢行したりするのもザラである。それを追いかけるとなればもう地獄だ。上司からはすれば「毎月リフレッシュ休暇かよ」と苦言を呈されることは避けられず、間違いなく今後職場で肩身の狭い思いをすることだろう。


パチンコやアミューズメントパーク、カラオケやソーシャルゲームなど。「時間がいくらあっても足りないよ!」と嘆く娯楽は数あるが、おそらくは何よりも時間を消費するもの。それが遠征なのだ。

 

②金が飛ぶ

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考えてみれば当たり前の現象で、時間の消費と比例して必然的に金も消えていく。


前述した宿泊の話にも繋がるが、遠征はライブ代のみならず交通費や宿泊費、飲食代やドリンク代といった出費がかさみ、最終的に当初予定していた予算をかなりオーバーしてしまうことが多々ある。


常人からの第一声は「凄いね」でも「羨ましい」でもない。「よくそんな金あるね」だ。僕個人の例を挙げよう。かつて某バンドの日本武道館公演に参加した際、まずチケット代6000円。飛行機代往復30000円。更にはホテルや食費などもろもろ込みで60000円ほどの金が吹き飛んだ。ちなみにこれは1泊あたりの計算だ。


要はツアーに全て参加する人というのは、これの何倍もの多額の金を僅か1ヶ月ほどの間に使ってしまうということだ。正直こんなことは「そのアーティストのおかげで死なずに生きていられる」とか、「命の次に大事な存在」とでも見なさなければ絶対に不可能である。


迸るのは一生添い遂げる確固たる覚悟。そう、彼らは本気である。

 

③セトリがほぼ同じ

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僕がツアー全参加否定派の大きな理由がこれだ。セトリとは要するにセットリスト……曲順のことだ。


ツアーのセットリストというのは、基本的には全公演同じである。何十分、ないしは何時間行われるライブにおいて、これほどのネタバレはないだろう。演奏する曲を全て知っている状態……。それは言わばタネがバレバレの手品。カンニングしたテストだ。どれだけ嬉しい選曲だろうが、実際一度観た後ではあら不思議。予定調和も甚だしい、感動もへったくれもない演奏になってしまう。


今まで様々なライブを観てきたが大規模な演出を必要とする大物アーティストほど、セットリストが全く同じになる確率は高い。なぜなら毎回異なったセットリストにするためには、練習の回数も増やさなければならないし、会場ごとの演出も大幅に見直す必要があるからだ。


……というより、そもそもツアーという行為自体が『お金と時間が足りず、遠征が難しい人のために行うもの』であるため、アーティストにとっては何度も何度もツアーに参加するファンがいるとは露程も思っていないのだ。だからこそセットリストは基本的に変えない。


にも関わらず、遠路はるばる湯水の如く金と時間を溶かして後を追ってくるファンがいたとするならば、もし僕がアーティストなら絶対に恐怖を感じる。もちろん「わざわざ来てくれてありがとう!」という気持ちもなくはないが、それを超越したストーカーじみた怖気が付き纏い、ライブどころではない。

 

④純粋に飽きる

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何でもそうだが、同じものを見続けると必ず起きるのは『飽きる』という至極当然の結果だ。


CD音源にはないライブならではのアレンジ。突然客席に立ち入り、ファンに手を振りキャーキャー言われる中での歌唱……。それは素晴らしい。素晴らしいが、その興奮と感動は絶対に1回目がピークである。2回目は「おっ、ここらで来るぞ?来た!」という思いに変わり、3回目以降になると「はいはい知ってます」になる。


そして人間というのは性格の悪い生き物で、何度も同じ場面を目撃すると次第に冷めたりイラついたりしてしまう。タイムリープもののアニメ『Steins;Gate』にて代わり映えのない日常を何度も繰り返した主人公が精神を病み、いっそ友人らを殺したりレイプしてでも違う結末を見てみたいと頭を過るシーンがあるが、それと似ている(似てないかもしれない)。


塾で先行して完璧に解けるようになった数学の解き方は授業で丁寧に教わったところで「俺出来るから次いってよ」となるし、いくら大好きな作品でも何度も見るのは苦痛のはずだ。ライブにおいては更に辛い。内容も曲順もMCも、そのほとんどが同じだからだ。流石に柔和な人間でも「つまらんわ」と激怒するレベルの予定調和が、眼前で2時間に渡って繰り広げられるのである。これはキツい。

 

 

……さて、いかがだっただろうか。ツアー全通する人への反対意見。


冒頭にも記したが、僕が今回の記事を書いた理由は『ツアーに全部行く人ほど不平不満を垂れ流す傾向にある』と感じたためだ。それらを見るたびに「お前らは本当にファンなのか?」と疑問を抱いてしまう。意見を述べるのは個人の自由なので仕方がないのだが、その意見が他のファンの目に触れるのは良くないと思うのだ。


僕は以前『フェスの出演者発表に文句を言うな』、『アンチコメントは総じて害悪』といった内容の記事を書いたことがある。人の感情は他者に左右されやすいものだ。自分では白だと思っている事柄であっても、誰かが『黒』と言った瞬間に考えが黒寄りになるような、そんな間接的な被害は実に多い。YouTube然り、ブログ然り。そしてライブの感想然り。


ライブツアーに全て参戦する方々は、ぜひ今一度自身の行動を振り返ってもらいたい。知らず知らずのうちにファンを傷付けていないか?アーティストにマイナスイメージを植え付けてはいないか?あなたのツイートを間接的に読んだ『別のファン』がいることを失念していないか?


今回の記事が、何かを思い返すきっかけになれば幸いである。


逆に今回の記事を読んで不快になった方がいらっしゃれば、誠心誠意謝罪致します。