キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

フェスの出演者・タイムテーブルが発表されるたびに「微妙」と呟く貴方へ

こんばんは、キタガワです。

 

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もうすぐ8月。音楽ファンにとっては最高の季節が到来する。そう。夏フェスの開催である。


たった数千円で朝から晩まで音楽漬けの一日を過ごせる夏フェスは、毎夏の一大イベントと言っても過言ではないだろう。一度開催決定の報が流れれば出演アーティストの発表を目を血走らせて刮目し、ツイッターにおいてあれやこれやと議論をするのが通例となっている。


もちろん『ありがとうございます』や『○○呼んでくれた!』という歓喜に沸く声もある。しかしながらその一方で、好意的な意見ではない否定的な意見も散見される。……というより正直なところ、そちらの方が圧倒的に多いように思う。


ひとたびリプライ欄に目を移すと、そこは阿鼻叫喚が密集する無法地帯だ。「微妙」「え?これだけ?」「○○を呼んでください!」「○○が出るとか無いわ……」「本当にやる気あるんですか?」「今年は行くのやめるわ」……。フェスの主催者が見たら絶望間違いなしの容赦ない言葉が飛び交っている。


さて、そこで今回はそうした発言を撲滅すべく、否定的な意見が淘汰されるべき様々な理由を書き記していきたい。これはある種の問題提起の部分ももちろんのこと、自分への戒めの気持ちも込めての記事である。


読者貴君にもぜひ「絶対ああはなるまい」という強い思いを抱いていただき、良いファンでいるためにも今一度自身の発言を顧みてもらえれば幸いである。


それではどうぞ。

 

 

全員の意見が反映されるはずがない

フェスの出演者発表に際して、最も多い否定的意見。それこそが前述した「○○を呼んで!」というものだ。


BUMP OF CHICKENやRADWIWPS、MAN WITH A MISSIONやWANIMAといった音楽に詳しくない人でも絶対に1曲は聴いたことのあるビッグネームや、KEYTALKや[ALEXANDROS]、キュウソネコカミのような若手ロックバンドの名前が列挙され、皆口々に『自分が観たいバンド』をさも当然の意見の如く喚き散らす。


少し話は脱線してしまうのだがひとつの例として、そいつらがやっていることは会社の忘年会で「自分叙々苑じゃないと行きません!」と難癖を付ける痛い社員と大差ない。


考えてもみてほしい。その社員にとっては最高の店なのだろうし、声を荒げて意見を発するに値するものかもしれない。しかし他の人から見ると「お前マジで言ってんの?」となるわけである。


一見するとただの飲み会。しかしながらその裏では、幹事がぐるナビで評価を入念に調べて店に電話し、日取りを合わせて会費を計算し、必死な思いで発案した店なのだ。表沙汰にはしないものの、そこには個人個人が知り得ない様々な事柄が隠されているものである。


フェスの話に戻るが、例えばBUMP OF CHICKENを呼ぶとして、他方のスケジュールを押さえるのは必要不可欠だ。フェスに出るならその前日には前乗りする必要があるし、もしも前日に地方に居た場合は飛行機の手配も必要となる。更には人数分のホテルの予約、機材の準備、ケータリング……。彼らクラスになるとギャラの面でも途方もない金額が必要になるだろう。


ここで実際にあったリプライを紹介しよう。かつてサマソニとフジロックにおいて「U2とマルーン5を呼ばないなんてゴミフェスだ!」という声があった。しかしそもそもあの2組は最低でも数千万単位のギャラが必要となるわけで、もしそうなれば他のアーティストはどうなるのだろう。お前はステータスを割り振れるゲームでも攻撃力だけに全振りするのか?


全員の意見を反映させれば、100%フェスは崩壊する。「ロックインジャパンなんだからバンドを出せよ!」という意見があったとして、逆説的に考えると「じゃあバンドだけが出るフェスがロックインジャパンなのか?」と言われればそうではないはずだ。

 

そもそも絶対に観られるわけではない

実際フェスに何度も足を運んでいる個人的な意見ではあるが、一日中休みなしで走り回ったとしても、観れるアーティストはせいぜい6組程度である。


前述した「○○呼んで!」に繋がる話だが、そのアーティストを観られる保証なぞどこにもない。入場規制の可能性や出演キャンセルの可能性。最悪、観たい“他の最愛のアーティスト”と丸被りする可能性さえある。


もしもそうなったとき、おそらく「○○呼んで!」と声高らかに発していた人々は一転して「だったら呼んでほしくなかった!」とほリプライを送るだろう。


呼んだら呼んだで文句を言われ、呼ばなければ普通に叩かれる。運営にとってはどちらに転んでも地獄。Dead or Dieである。これを回避する方法はひとつ。「○○呼んで!」と宣う人たち自身でフェスを主催するしかない。どうぞ消費者金融で借金をこさえるなり、所属レコード会社にアポイントを取るなどして頑張っていただきたい。

 

そんなに観たいのなら単独ライブに行け

この際はっきり明言するが「○○呼んで!!!!!!!!!!」とひたすら豪語する人間は、ほぼ音楽を嗜まないか、そのアーティストに心酔している人種である。


そういった人はフェスでなく、該当するアーティストの単独公演に行った方が絶対に良い。フェスでは約40分であった持ち時間が120分に延長され、なおかつシングルにおけるB面曲やアルバム楽曲も多く楽しめる。あなたが『本当』のファンならば、単独ライブに行って然るべきだ。


個人的にフェスは「所見のアーティストの良さを知ることができる」場であると考えている。YouTubeで数曲聴いただけのバンドでも、一切曲を知らないアーティストでも。実際のライブを目撃すれば絶対に良さは見付けられる。だからこそそうした空間に身を委ねる快感と幸福は、フェスでしか体験し得ない極上のエクスタシーなのだ。


……にも関わらず「いや、でもー……」と言う人に関しては申し訳ないが、もうフェスには来ない方がいい。そのアーティストの40分を観るだけに支払う8000円近くのチケット代は、果たして自分に見合うものだろうか。答えは否だ。ともすれば同程度の金額で大好きなアーティストの単独ライブに行く方が、よほど有意義というものだ。

 

主催の気持ちを汲むべし

ここからは主催者側の立場から語らせてもらうが、出演アーティストもタイムテーブルも、社内で何度も何度もトライ&エラーを繰り返して決めている。


フェスの1年前から準備し、金を工面し交渉する。もちろん主催者側は「最高のブッキングをした」という自負があるはずである。そこに「思ってたのと違う」と叫ぶのはお門違いも甚だしい。


仕事で考えてみよう。例えるならあなたが必死で絞り出したアイデアや企画を、上司から「全然ダメ!」とこれ見よがしに撥ね付けられるのと同義である。アイデンティティ田島の言葉を借りるなら「おめぇぶっころすぞぉ」となるのは当然で、決して公式で語ることはないにしろ、主催者側からすれば相当なフラストレーションを抱えているはずだ。


「人を嫌な気持ちにさせることは言わない」。小学生が最初に教わる指導内容である。良い大人が守らなければならない最低限のルールは遵守すべきだ。

 

リプライを送るのは論外

さて、今回の記事において最も声を大にして書きたかったこと。それこそが下に記す『リプライを送るな』という点である。


その理由は明白で、ズバリ他者の目に入るからである。


YouTubeのコメント欄に顕著だが、感想や評価文は読み手にダイレクトに伝わる。「面白かった」という評価を見れば「じゃあ観てみようかな」と思うし、逆に「つまらなかった」と書かれていれば「じゃあ観るのやめよう」となる。とどのつまり、人間は目に飛び込んできた情報に感情を左右されやすいのだ。


DMやフォローリクエストならいざ知らず、リプライは非表示にできない。よって必然的に他者からは読まれ放題。否が応にも目に飛び込んでくるわけで、迷惑この上ない。


メンタリスト的な観点から語るとすれば、否定的なことを書き込む人は『否定的な意見を読んだから否定的なことを書き込んだ』という思いに他ならない。無意識的に次から次へとヘイトを生み出す諸悪の根元。それがリプライなのである。


否定的なリプライは誰も得をしない。ただただ人を悲しませるだけの害悪である。そんなことを呟くくらいならば、素晴らしいアーティストを呼んでくれた感謝の念を込めて「ありがとう」の一言でも書いた方がよほど有意義だ。

 

……さて、いかがだっただろうか。

今回の記事は、ある見方からすると酷く自分勝手で、同時に自己中心的な内容かもしれない。


しかしながら、僕が伝えたいことはこれが全てである。これは僕が以前当ブログのコメントを承認制にしたことにも繋がる話だが、アンチコメントは一般の人が思っている以上にたちが悪い。


僕自身心ない言葉の数々で傷つけられ、文章が全く書けない状況まで追い込まれた経験がある。実際今でもブログに辛辣な文章を書き込まれることもあるが、それを非公開にすることで何とか自己を保っている。


それと比べると、ツイッターは無力だ。否定的なリプライも強制的に承認され、他者に伝わってしまう。それがどれだけ傷つく発言でもだ。


悪の連鎖は断ち切らねばならない。今回の記事がどれだけの人の心を動かしているかは検討が付かないが、一定数の人が改めて自分の行動を見つめ直してくれるきっかけとなれば、これほど嬉しいことはない。


それでは。