キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、KAI-YOU.net、uzurea.net様などに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】ヤバイTシャツ屋さん『“Tank-top Flower for Friends” ONE-MAN HALL TOUR 2023』@広島JMSアステールプラザ 大ホール

こんばんは、キタガワです。

『ヤバTが全国ツアーを行う』。この情報が解禁されたとき、全国のロックファンは歓喜に沸いたはずだ。何故ならヤバTはこれまでも精力的なライブを通して活動を行ってきた存在。よって「ライブがあれば出来る限り行こう!」というのが、ヤバTファンの習性でもあるためである。……ただ、今回のライブはふたつの意味でこれまでとは違った代物でもあった。

まず1つ目は、今回はニューアルバム『Tank-top Flower for Friends』のリリースを控えたライブであること。そもそもリリースツアーはアルバムリリース後に行われるのが定石だが、発売は3月。そのためこの日はいち早く新曲を聴くことの出来る貴重な機会。結果的にはほぼ未視聴の新曲を5曲ドロップする、ファン垂涎の流れとなったのだ。

そしてもうひとつ、ここが最も重要な部分で『声出しがOKになったこと』。思えばこの3年間ライブシーンは声出しNGの措置を取り続けていて、それはヤバTも例外ではなかった。ただ観客との掛け合いが大半を占める楽曲群を演奏する上で『声出し禁止』はとてつもないマイナスだった。それが試行錯誤するヤバTと、どんなことがあっても着いていくファンの双方向的な関係を続けて3年。ようやく声出しが解禁されるようになった。さあ、それらの条件が加味されたヤバTのライブは一体どのようなものになったのだろう……?

その答えが、ここから始まるライブレポート。会場に到着すると、まず目を引いたのは背後にある巨大なスクリーン。そこにはヤバTのメインキャラクター・タンクトップくんが大量の花に囲まれた画像が投影されていて、その中心には『ヤバイラジオ屋さん聞き逃し配信』と書かれたラジオのQRコードが。BGMにはヤバTのなかなか演奏されないレア曲や、ボン・ジョヴィの“Livin' on a Prayer”、“禁じられた愛”といった楽曲が流されていた。また集まったファンの年齢は様々で小学生らしき子供もかなり多く、改めてヤバTファンの年齢層の広さを認識する形であり、対してステージはエフェクターもほとんどないロックバンドとしては非常に簡素な作りになっていたのは印象深い。

定刻になるともうすぐ始まる雰囲気を察したファンが次々と立ち上がり、そのまま暗転。お馴染みのわんぱく☆パラダイスのオープニングである“はじまるよ”が流れる中、真っ黒な服に身を包んだこやまたくや(Vo.G.Key)、表に『12才』と書かれた道重さゆみのピンクTを羽織ったしばたありぼぼ(B.Vo)、ロングヘアーを靡かせつつ涼しい表情のもりもりもと(Dr.Cho)の3名が登場。瞬間ウワっと沸く会場である。そして開口一番、こやまは「広島ー!今日は声出しOKですよー!歌いなさーい!」と絶叫していて、テンションの高さが伺える。

ヤバイTシャツ屋さん - 「あつまれ!パーティーピーポー」Music Video[メジャー版] - YouTube

ヤバTのライブはセットリストは各地バラバラ。そのため「何の曲を最初に持ってくるんだ……?」というのはファン誰しもの疑問だったと思われるが、雪崩れ込んだ1曲目はなんと超キラーチューン“あつまれ!パーティーピーポー”!大ヒット曲を序盤に配置する、よもやよもやの幕開けである。CD音源と比べても明らかに速いアレンジで展開されたこの楽曲を、こやまは幾度も「踊りなさーい!」と叫びながら《シャッ!×16 エビバーディ! 》のレスポンスを要求。そして大声OKのライブらしく、思った以上にファンからのアプローチも強い。大ラスサビ部分では早くも左右に振り動くウェーブが形成され、ご満悦なメンバーたちである。それでも「もっともっと!」と炊きつける様は、彼らがこの声出しライブを楽しみにしていた証左だろうとも思った。

今回のライブは冒頭にも記した通り新作『Tank-top Flower for Friends』の流れを汲んでいたものの、基本的には既存曲主体でバチバチに盛り上げる代物に。更には声出しが可能になったことを鑑みてか、どこかコール&レスポンス多めの楽曲をチョイスしている感もあって連帯感も抜群。ホール公演ながら汗ばむレベルの熱量を生み出していたことは特筆しておきたい。またある種の性急さを武器とするヤバTらしく、ロックバンドのライブでありがちな『チューニング→沈黙』の時間も極力削減。水分補給はペットボトルに刺したストローで一瞬で済ませたり、チューニングはスタッフに任せチェンジするのみ、果ては既存曲のBPM自体を速めるといった力技で乗り切り、結果アンコール含め2時間ジャストで25曲を鳴らしたのは流石と言うべきだろう。

ヤバイTシャツ屋さん - 「くそ現代っ子ごみかす20代」Music Video - YouTube

 

彼らの楽曲が切り取るのは、日常の何気ないひとコマや物のあれこれだ。以降の“無線LANばり便利”では「無線LANは有線LANより便利」とする事実を主張し、“Universal Serial Bus”ではUSBメモリを、更に“くそ現代っ子ごみかす20代”でぬるま湯に浸かる若者感を歌詞に起こしているが、それはこやま自身が物事を俯瞰して見ていることの証左なのだろう。そしてそれらをキャッチーなメロに乗せることで、ヤバTの音楽は成立している。

めちゃくちゃに格好良いヤバTだが、MCになると一気にだらけるのも彼ららしさ。まずは「広島と言えばPerfume?」としばたが発言したことに端を発し、そこからPerfumeと言えば香水→香水と言えば瑛人→瑛人といえば横でギター弾いてるジュンちゃん……とマジカルバナナ的に話がどんどん脱線。いろいろあって石田純一→いしだ壱成となったあたりでこやまが「石田純一『さん』な?」と突っ込むも、しばたが逆に「いや、いしだ壱成にも『さん』付けな」とトドメの一撃。「石田純一さん、いしだ壱成さんすみません」とこやまが二人に謝罪する形で大爆笑を生み出していく。

ヤバイTシャツ屋さん -「とりあえず噛む」リリックビデオ (ロッテ「キシリトールガム」20周年プロジェクトソング) ※1番のみ - YouTube

そこからはしばたが言うところの「聴いたことない曲たくさん聴かされる」ゾーンとして、ニューアルバム『Tank-top Flower for Friends』から“hurray”と“Blooming the Tank-top”を。既存曲としては昨今ライブで披露される機会の少なかったアッパーソングを連発する流れに。ともすればダレてしまいそうな感もある一幕だが流石はヤバT。どの楽曲においても「オイ!オイ!」のレスポンスを繰り出し、1秒たりともテンションを落とさない工夫が成されていて最高だ。またこの辺りから背後のスクリーンに時たま映像が投影されるようにもなり、“DANCE ON TANSU”では棒人間らしきキャラクターが踊ったり、新曲では歌詞が流れたりと、ホール公演ならではの仕掛けがあったのも面白かった。

ヤバイTシャツ屋さん - 「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」Music Video - YouTube

 

「適当に『ワン!』って言ってもらえれば」とのレクチャーから始まった新曲“ダックスフンドにシンパシー”、いろいろ詰め込み過ぎて語彙力がバカになった“鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック”で「ありがとうございました!ヤバイTシャツ屋さんでしたー!」とふたりがドラムセットから飛び降り、ジャーンと鳴らして終わる気配を見せつつ、実はまだまだ終わらないライブである。しかもこやまは「終わったと思って時計確認した人おるんちゃう?」とドSぶりを発揮しつつも、まだ折り返し地点にも達していないことを報告。

凄まじい熱狂を生み出したかと思えば、ここからのMCで再び脱線傾向に。「でもこれくらいの尺で終わるバンドもおるんちゃう?ビートルズとか」とのしばたの発言から、しばたが“Hello Goodbye”と“Yesterday”が好きなこと、次いで“Help!”のくだりからなんでも鑑定団の話に移ったりとやりたい放題。この展開には流石にマズいと思ったのか、これまでほとんど口を開くことのなかったもりもとが助け船を出すのだけれど、これも微妙な空気に。「俺MCで声が通らんってよう言われんねん」と語れば、会場にいる子どもがエヘヘと笑い出し、もりもとが「MCキミがやるか!?」と更なる爆笑に繋がったり……。そこにはお互いに何の緊張もない、とてもリラックスした空間があった。

ヤバイTシャツ屋さん - 【LIVE】「ハッピーウェディング前ソング」 from 2nd LIVE DVD「Tank-top of the DVD Ⅱ」 - YouTube

「ダイブやモッシュが毎回起こる曲」とのウソ情報から繰り出された“週10ですき家”、自分抜きで沖縄に3泊したりといった悲しいこやまの実話を元にした“俺の友達が俺の友達と俺抜きで遊ぶ”などハイライトはいくつかあった中で、ひときわ盛り上がりを見せたのは“ハッピーウェディング前ソング”の一幕。ヤバTはいわゆる『キラーチューン』と呼ばれる代物に関しては毎回セットリストに組み込む形を取っており、“ハウ前ソ”もほぼ例外なくライブで披露されてきた。が、この日は先述の通り声出し解禁ライブ。《キッス!》と《入籍!》の連打が鼓膜にビリビリ伝わる音量で叫ばれる会場は圧巻で、嬉しさのあまりこやまは声が渇れんばかりの絶唱を、しばたはステージを走り回りながら灼熱の演奏を繰り広げてくれた。

MCがダダ滑りし「今日って声出しNGでしたっけ?」と爆笑を生み出す場面を挟みつつ、ライブは後半戦へ。コロナ禍と完全に被ったことで声を聞く機会が長らく失われていたとする“泡 Our Music”、メーター振り切りのヘドバンの海が形成された“ヤバみ”、圧倒的な言葉数で捲し立てる”ちらばれ!サマーピーポー”といった楽曲がギャンギャンに盛り上げる中で、一風変わった雰囲気で爆笑を誘ったのは“肩 have a good day”。

ヤバイTシャツ屋さん - 「肩 have a good day -2018 ver.-」Music Video - YouTube

この楽曲は『肩幅が広い人の方が発言に説得力が増すし、みんなから支持される』といったド偏見を記した曲。ただこの楽曲はこの日披露されたもののうち最もバラード寄りのものであり、そのためファンは腕を左右にゆっくり振って楽しんでいた。そんな中でこやまは突然目頭を抑えて号泣(注:もちろん嘘泣きです)し、しばたがこやまの肩を叩いて励ますシーンで会場は大盛り上がり。終いには『手をグーにして胸を2回叩く→そのまま前に出す』という感動スポーツ漫画チックな展開に移行していき、ラストは涙で歌えなくなったこやまに対して、ファンが歌詞を大合唱して応援する状況に。……繰り返しますが、この楽曲で歌われているのは『肩幅が広い人の方がいろいろ上手くいく』という内容です。

ヤバイTシャツ屋さん - 【LIVE】「かわE」 from 3rd LIVE Blu-ray/DVD 「Tank-top of the DVD Ⅲ」 - YouTube

そして気付けばライブもクライマックス。最後に演奏されたのは“かわE”で、完全燃焼な幕引きを図るヤバTである。最後の曲と知ってかファンは徹頭徹尾、声を大にして熱唱する半カラオケ状態で、こやまはその歌声をどんどん大きなものとするべく焚き付けまくる環境だ。モッシュやダイブは出来ないけれどそこにあったのは在りし日のライブハウスの風景で、思わずウルッときたり。ラスサビではこの日一番のレスポンスで熱量をもう1段階引き上げて去っていったヤバT、まだまだ行けそうな涼しい表情にまだ見ぬ可能性すら感じた次第だ。

アンコールと言えば手拍子が定番だが、この日はひとりのファンが発した『ヤバイ!Tシャツ屋さん!』のリズムに乗せて全員が叫ぶという珍しい展開に。その声に呼び込まれて再びステージに立った3人は「そうそう。前はこんな感じでアンコールやってたんですよ」としみじみ語りつつ、ここでこの日集まったファンの年齢層を確認。結果20代が最も多く「前は10代に人気って言われてたけど、そのとき10代だった人が俺らと一緒に歳を重ねてるってこと?」とこやま。

気になるアンコール1曲目は新曲の“インターネットだいすきマン”。どうやら全国各地で行われている今回のツアーにおいて、この楽曲のみどこにも演奏していない未発表曲だそう。気付けばステージの傍らにはキーボードが置かれていて、こやまは椅子に座りつつ「真面目な曲なんで。失敗でけへんから」と何やら集中モード。が、そこから始まった“インターネットだいすきマン”は内容としては『ツイッターで有名人にクソリプを送る友人』、『承認欲求に惑わされてSNSを悪用してしまう人』といったコミカルなもので、ファンは一様に大爆笑。ちなみにボーカルはしばたともりもとで、楽器は持たずにスタンドマイクのそばで体を上下させながら《インターネット〜♪インターネット〜♪インターネット〜だいすきマーン♪》とリズミカルに歌うという、物凄く変な例えをすれば『有吉の壁』で言うところの芸人の歌ネタに近い形のエンタメ曲というか。ライブ後の今でも頭の中をグルグルするレベルの中毒曲。

そして「この曲が次のアルバムのリード曲になります。えー、僕らの10年の集大成がこれです……」と再度爆笑を生み出した後、こやまは真剣に語り始めた。

「僕らは今年絶対に紅白に出ます。『なんかヤバT調子いいらしいよ』とか『ヤバT今年10周年らしいよ』とか。雰囲気作りをよろしくお願いします」

「……ほんでこの3年、みんなよう頑張った!俺らも下がっていく動員とか制限とかホンマにキツかったけど、その中でも頑張ってツアーを回ってきました。でも、あとちょっとやから!今回はホールツアーでやったけど、次は必ずグチャグチャ(ダイブ&モッシュありのライブハウス)になれる。また広島にも来ます。そのときはみんなでグチャグチャになりましょう」

ヤバイTシャツ屋さん - 「NO MONEY DANCE」Music Video - YouTube

そうして最後に披露されたのは、限界突破のアッパーチューン“NO MONEY DANCE”。金欠状態にも関わらず金を使ってしまう、悲しきサイクルを歌ったナンバーである。こやまは「最後やぞー!」と焚き付け焚き付け、ファンもその煽りに負けじと大声で応戦!もしここがライブハウスであればもみくちゃになっていたこと間違いなしの盛り上がりが、会場を包み込んでいく。ラストはこやまとしばたと両名がドラムセットからジャーンと飛び降り、ライブは終幕。会場には非日常的な熱気と興奮が残された。

終演後まもなくして流れ始めた、とっとこハム太郎の“ハム太郎とっとこうた”。《大好きなのは〜♪》→「はいっ!せーの!」→《ひまわりのたね〜♪》→「俺もー!」という伝説のレスポンスを絶叫する会場で、改めて今回のライブを噛み締める。

コロナ前はあり得なかった、ライブにおける『声を出さない』とする決まり。それは今や当たり前になり、それこそこの日も「ライブで声出すのってどうだったっけ?」と一瞬分からなくなった人も多かったことと推察する。……そしてそれはイコール、最もシンプルな形で『ライブハウスから奪われたもの』でもあって、特にファンとの掛け合いが重要なヤバTとしては、非常に苦しい3年間だったと思う。

ただ、そんな中でも彼らは歩みを止めなかった。収益的にも厳しい状況にも負けず全国ツアーやフェス参加、新曲リリースを続けてきた結果が、今回の満員御礼・大合唱ありのライブに繋がったのである。……決して当たり前ではない『ライブ』という娯楽。それを取り戻してくれた彼らに感謝の気持ちを込めて、これからもその道程を共に歩んでいきたい。最高のライブでした。

【ヤバイTシャツ屋さん@広島 セットリスト】
あつまれ!パーティーピーポー
無線LANばり便利
Universal Serial Bus
くそ現代っ子ごみかす20代
hurray(新曲)
Blooming the Tank-top(新曲)
とりあえず噛む
DANCE ON TANSU
ダックスフンドにシンパシー(新曲)
鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
週10ですき家
Bluetooth Love
俺の友達が俺の友達と俺抜きで遊ぶ(新曲)
ZORORI ROCK!!!
ハッピーウェディング前ソング
泡 Our Music
肩 have a good day -2018 ver.-
Beats Per Minute 220
ヤバみ
ちらばれ!サマーピーポー
Give me the Tank-top
かわE

[アンコール]
インターネットだいすきマン(新曲)
ざつにどうぶつしょうかい
NO MONEY DANCE

【記事寄稿のお知らせ】SPARKS『スパークス・ブラザーズ』レビュー

uzurea.net様に、海外のロックバンドSPARKS初のドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザーズ』のレビューを寄稿しました。

記事内でも綴った通り、世界全体を観てもスパークスは謎すぎるバンドで。……変な表現ですが、例えば米津玄師やあいみょん、ヒゲダンについて問われたとき、多分僕らはいろいろ答えられるはずなんです。「“LEMON”カラオケで歌うよー!」とか「あいみょんのあの喋り方好き!」とか「紅白出たよね」とか。そんな中でスパークスは自分の情報をほとんど出さないまま、50年も活動してきまして。で、彼らを知っているファンでさえも「そもそもアルバムが何枚出てるかも分からんし曲ほぼ知らん」という意識しかなく、その間のプライベートは(本人が取材をほぼ断っているので)全部謎な訳です。これは音楽業界全体を観てもかなりの異常事態だと思っておりまして。

……といったアレコレに迫ったのが今回の映画です。正直「アルバムはこう作られた!」や「いやー昔の彼らはねえ」みたいな話など、スパークスのファン以外を完全に置いてけぼりにした流れが続くので評価としては低くせざるを得なかったんですが、あくまでファンディスクとして観ると面白い作品でした。現在Amazon Primeで観ることが出来るんですが、チラッと最後の5分くらいでも観てもらえれば「おおっ!」となるかと。やっぱり狂ってるなーと思いました。もちろんいい意味で。記事内にリンクで貼った超代表曲“This Town”も、宜しければ1度お聞きいただければと。曲の最中にいきなり銃撃音が鳴る衝撃作で、要はこういう曲をたくさん作って50年経った感じです。凄いですよね。

ドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザーズ』レビュー 作品から垣間見るスパークスの本質 - uzurea.net

 

【コラム寄稿のお知らせ】『SUMMER SONIC 2023』全貌解説

uzurea.net様に、『サマソニ2023』の解説記事を寄稿しました。

いやー、遂に来ましたね、サマソニの発表!割と当ブログでもサマソニの記事は多い感じがするんですけど、それほどこのフェスが好きで。やっぱりラインナップが毎年素晴らしいんですよ。何というか、洋ロック好きの心をくすぐるブッキングといいますか……。

まずビックリしたのは、ヘッドライナーのブラーとケンドリック・ラマーですよね。ブラーは20年ぶり、ケンドリックは初サマソニという最高の状態です。もうこの時点で他国のフェス全体を観ても最強のヘッドだと思いますし、主催のクリエイティブマンの努力が伺えます。これ、本当凄いことなんです。

で、第1弾アーティストを観て腰抜かしましたね。中でも個人的には大大大好きなリアム・ギャラガーさん!なかなか休みが取れない職場ではありますが、この日は是が非でも行きたいと思います。他、記事内でも記した通りとてつもないラインナップで。インヘイラー、ペール・ウェーヴス、ザ・スナッツ、ホリー・ハンバーストーンあたり、めちゃくちゃ観たいです。上記のアーティストは若手で、単独ライブで7000円くらいするんですが、これが朝から晩までずっと観られるサマソニ、やっぱり神イベだなと。ケンドリックとかナイル・ホーランら有名どころなんて、チケット数万円出しても取れないレベルですし……。あと、リアムさんとブラーの大喧嘩問題が解決したかどうかも見所です。めっちゃくちゃキレてましたからねリアムさん。ブラーの顔はマジで見たくないレベルで嫌ってると思うので、一体どうなるかというところです。

……と、いろいろなことを鼻息荒く書き記したのがこちらの記事でした。また今回は初めての試みで『随時更新』としていて、毎回新規記事を出すのではなく、追加情報をズラーっと加えて記事の厚みを出していく、という方法を試そうかなと思ってます。多分次の更新は第2弾発表あたりかな。試行錯誤しながらやっていければ。

『SUMMER SONIC 2023』関連情報まとめ 最強の夏フェス サマソニを楽しむために! ※随時更新 - uzurea.net

 

『SUMMER SONIC 2023』ヘッドライナーにまさかのブラーとベック!今年のサマソニはどうなる?

こんばんは、キタガワです。

サマソニ is バック!洋楽ファンにとってなくてはならない夏フェス『SUMMER SONIC 2023』のヘッドライナーが、先日早くも発表された。その気になる2組はなんとブラーとケンドリック・ラマー!クリエイティブマンの清水直樹氏は先日発売されたrockin‘onにて「ブッキングに関しては自信がある」「プリマヴェーラ・サウンド2023のブッキング見たらびっくりした」と語っていたけれど、まさしくその答え合わせとも言うべき解禁がこれだったのだ。

SNS上でも大盛り上がりだったように、この2組の起用は洋楽ファンの意識はもちろん、凄まじく難易度が高いブッキングでもあった。まずはブラーについては言わずもがなで、こちらの記事でも記したように今は昨年11月に再結成を発表した絶好のタイミング。そのため世界各国で取り合いになったことは間違いない中で、しっかりと確定させたのは流石サマソニ。これまで彼らと培ってきた絆が、これ以上ない形で帰ってきたような。ちなみにデーモン・アルバーン(Vo.G)の別活動であるゴリラズを除けばサマソニとしては20年ぶりの出演。“Song 2”然り“Coffee And TV”然り、毎曲がシンガロングになること必至なので、各々の思い出と共に楽しみたいところ。

Blur - Song 2 (Official Music Video) - YouTube

そしてお待ちかね、ケンドリック・ラマーはまさかの起用。正直近年のサマソニはロック&EDMのイメージが強く、ヒップホップ系統はまだフジロックの土壌かなとも思っていたのだけれど、よもやのサマソニである。来日公演として記憶に新しいのは2018年のフジロック、滝のように降る大雨で半ば苦行のようになったメインステージに降臨したケンドリックは、バンドメンバーを視界の外に置いて観客から観えるのは彼のみ、という強気なステージングで、見事この日のハイライトとなった。この光景が苗場とは違う野外環境で……という部分も最高だし、何と言っても最新アルバムがリリースされた絶好のタイミングでもある。当日のセトリは絶対に、世界各国でエゴサーチされるべき伝説の一夜になりそう。

Kendrick Lamar - DNA. - YouTube

そして気になるのは、この豪華ヘッドライナーを迎えて構成される当日のラインナップだろう。詳細はもうじき発表とのことでその際には新記事として記したいところだが、そもそもサマソニはその日ごとに大まかな『イロ』が明確になっているフェス。そのためブラーが出る日にはロック多め、対してケンドリックの日はヒップホップとポップス(K-POPやソロアーティスト、EDM)などが中心を攻めるのはほぼ確定だと思われる。ザ・スマイル、インヘイラー、Rosalia、邦楽ではYOASOBIあたりに個人的には注目しているけど、この予想する時間もとても楽しく「サマソニがもうする来るんだなあ」としみじみ。

コロナ禍で中止となったスパソニはあらゆる規制を掛けた運命の代物になり、サマソニは遂に昨年復活を遂げた。……となれば今年は元通りのサマソニが生まれること請け合い!開催は8月とまだまだ先だが、これからの発表を期待せずにはいられない。woohooしてアガアガして。我々が望む夏は、今年新たな姿で現れるはずだ。

世界はここで回るよ

……中学時代の友人から、結構な頻度で連絡がある。

友人は現在『奥さんが懐妊してもうじき産まれそう』とのことで、1ヶ月の出産育児休暇を取得している。その忙しさたるや想像さえつかないけれど、どうやら準備を整えるためのお店が完全に閉まった深夜近くの時間は気が休まるようで、皆でゲームをすることが増えた。もうひとりの友人も明確には語らないまでも、まあ同じような理由でゲームを3人で一緒にやっている。最近は一緒にゲームをクリアした。次は何をやろうか。

……高校時代の友人とは、一切連絡がない。

友達の定義は曖昧だ。どこまで行けばそう呼ぶのかは未だ分からないが、高校時代の話だけで言えば、それは『たまたま同じ環境にいただけ』という理由だったのかもしれない。どうやら風の噂で第二子が産まれたこと、仕事が順調な話は聞いたが、別段どうということもない。多分いつか会ったら話は弾むだろうけれど。もし次に会ったときは、僕はこれまでのことを謝りたい。

……小学校時代のかつての友人から、マルチの勧誘があった。

いつも突然ラインが来て、仕事はどうだだの最近楽しいかだのと探ってくる。適当に話を合わせて逃げようとするが、決して意思を曲げない貪欲さはあの頃と同じだ。僕の下の名前なんて、あの頃は一度も呼んでなかったじゃないか。彼と僕は一番仲が良くて「一生の友達」を誓い合った仲だった。今はただの悪友だ。

……友人に近い関係性の上司から、飲みの誘いがあった。

互いの予定がたまたま合い、飲みに行った。日付が変わる閉店時刻まで店におり、僕は自己を喪失しない程度に泥酔した。会話の内容はいろいろだが、酔っていたので楽しかったのかは不明だ。何でも話せる間柄なれど、節度は保たねば。結局午前3時まで飲み明かし、その日は泥のように寝た。ただ、これは友人であってそうではない。

……大学時代の友人から、時たま連絡がある。

彼は新卒採用された会社で労災レベルの事故に遭い、現在は足がまともに動かない体になってしまった。一緒に歩いていても、ふいに足の力がなくなってドスンと倒れてしまう。最近ではバイトにも居づらくなったようだった。その度に僕は「大丈夫?」と問うも、彼は今にも死にそうな顔で「大丈夫」と笑うのだ。そんな彼は、昨日の電話ではじめて「死のうかと思う」と言った。僕は止められなかった。今度酒でも飲もう。

……最近の僕は、ひとりになりたい。

君島大空「世界はここで回るよ」Official Music Video - YouTube

【ライブレポート】Wienners・ネクライトーキー・ニガミ17才・Panorama Panama Town『LIVE DI:GA JUDGMENT 2022』@渋谷クラブクアトロ/渋谷Take Off 7

こんばんは、キタガワです。

年を取ると、12月31日になってもいわゆる『年末感』は希薄になるものだ。せいぜい年末年始の休暇の1日として見なされるそれも良いけれど、やはり音楽好きとしては最後まで音にまみれて終わりたいところでもある。そんな年の瀬にピッタリな音楽イベントこそ、今回参戦した『LIVE DI:GA JUDGMENT 2022』。年末恒例、渋谷のライブハウス2箇所で行われるサーキットライブだ。今回はその日の夜に行われた桑田佳祐のライブに行く予定もあり前半しか観られなかったが、そのうちWienners、ネクライトーキー、ニガミ17才、Panorama Panama Town、餅つきの外部イベント他、ライブ中心のレポに焦点を当てて書き進めていきたい。

 


Wienners

まずは昼の14時、いきなりのロケットスタートを目論むWienners。個人的にはコロナ禍以降、何度もチケットを取ったものの感染拡大で行けず……という状況が続いていたので、念願かなった形だ。ライブハウスのスタートとしてはかなり早い幕開けだけれど「年の最後を激しいロックで締めたい!」と考える人は一定数いたようで、前方はパンパンの客入りだ。

首謀者である玉屋2060%(Vo.G)の叫びから、オープナーは『GOD SAVE THE MUSIC』。いきなりキラキラロックが耳をつんざく、美しい時間の到来である。髪を金に染めた玉屋は何度も観客を煽り、楽曲の熱量を高めようと焚き付けていて、ファンもそれに答える最良の環境だ。またコロナ禍でライブシーンが打撃を受ける中、急遽リリースされたこの楽曲がライブハウスで鳴らされることには、改めて感動を覚えたりも。

Wienners『SHINOBI TOP SECRET』Music Video (TVアニメ「ニンジャラ」EDテーマ) - YouTube

この日のセットリストは最新アルバム『TREASURE』の楽曲を基盤に構成された、Wiennersの今が詰まった代物に。前半は完全に『TREASURE』モードで、アサミサエ(Vo.Key.Sampler.)のキュートなボーカルで魅せたピッカピカのポップロック“SOLAR KIDS”や、忍者を題材にした彼ららしい日本パンク“SHINOBI TOP SECRET”と続いていく。ふと横を見るとツーステを踊りながら楽しむファンも見られ、ともすれば盛り上がりづらい新曲中心であっても、しっかりと届いているのだなと感じられた。

「例えば仏教では、欲を持つのは悪だと言われます。でも俺は欲を持つことは大事だと思ってて、『もっと楽しいことしたい!』とか『もう少しこうしたい!』とか、そうした欲が明日の自分を作ってくれると信じてます。来年も皆さんどうか、自分なりの欲を持ってください」……。MCで玉屋は、トーク時間のほとんどを使ってこう我々に伝えてくれた。特に今年の玉屋は楽曲提供やWiennersとしての活動などほぼ連日動き回っていた感覚があるのだが、そんな玉屋自身だからこそ発することのできる「俺は欲を持つことは大事だと思ってる」という言葉は、その何よりの裏付けだろう。

Wienners『蒼天ディライト』SUPER THANKS,ULTRA JOY TOUR 2018 FINAL @渋谷CLUB QUATTRO - YouTube

30秒で終わる超ファストチューン“よろこびのうた”、様々な思いを乗せた“UNITY”と続けば、最後の曲は“蒼天ディライト”!勢いあまってマイクスタンドをぐいっと左に向けてしまい、そのまま歌い続ける玉屋の熱量の高さはもちろんだが、代表曲ゆえの興奮もプラスでドン。ライブハウスの良さを120%見せ付けた、灼熱のフロアで大団円を迎えたWiennersは、また来年に行われるであろうツアーの存在を示唆して颯爽と帰っていった。

【Wienners@渋谷クラブクアトロ セットリスト】
GOD SAVE THE MUSIC
SOLAR KIDS
SHINOBI TOP SECRET
恋のバングラビート
FAR EAST DISCO
よろこびのうた
UNITY
蒼天ディライト


ネクライトーキー

続いては、ライブのサプライズ枠として発表されたネクライトーキー。翌日の朝6時には『COUNTDOWN JAPAN』のトリも任せられている彼らは今回のライブを含めてライブ2本。かなりのハードワークぶりだが、年明けのCDJに向けての最終調整の意味合いもあるこの渋谷クアトロは、とても有意義なものになったように思う。

リハの時点でも客席の手が上がった最高の環境の中、定時になるとメンバーが登場。《今は只の平成30年だ!》の歌詞から、セットリストのどこかで入るだろうと予想していた“めっちゃかわいいうた”はオープナーに配置。朝日(G)の力ずくのピック弾きで幕を開けた瞬間から、一気に会場を掌握した彼らである。気になるあの歌詞はもっさ(Vo.G)が指折り数えつつの《今は只の令和4年だぁ!!》に変えられ、後半ではCD音源をスピードアップさせたアレンジに変貌。総じて迫力満載のネクライトーキーである。「CDJもあるからなあ」とその体力を心配していたのだが、完全なる杞憂だった。

【再掲】ネクライトーキーLIVE 「めっちゃかわいいうた」 from 「ゴーゴートーキーズ! 」 / NECRY TALKIE – Meccha Kawaii Uta【for J-Lod Live】 - YouTube

もっさと朝日がMCで語っていた通り、彼らのライブは『ライブハウスが好き!』という思いに集約される。「チャカポコー!」のコール&レスポンスがぐるぐる回る“誰がためにCHAKAPOCOは鳴る”は強い一体感を生み出していたし、朝日が石風呂名義としてボカロリリースした“夕暮れ先生”と“だれかとぼくら”は、生楽器でパワーアップされた音像で狂える代物に。そしてそれらをルール無用で昇華できる環境こそ、ライブハウスなのだと改めて気付かされる。

ハイライトは彼らの名前を広く知らしめる契機ともなった“オシャレ大作戦”。爆発力という点においても、欠かせないナンバーのひとつだ。MVと同様のカウントが叫ばれてからは、ポップな激しさが会場を覆い尽くす環境だ。またライブのたびに難波や鳥取など、それぞれの地域名に変更される《渋谷でへヘイヘイ》の歌詞はそっくりそのまま歌われたり…といった渋谷ならではの部分もありつつ。後半では朝日が『ジャン!』の打ち込みに合わせてタケノコを模したポーズではっちゃけ、それを観たもっさが笑って歌えなくなる最高の一幕もあった。

ネクライトーキー MV「オシャレ大作戦」 - YouTube

ラストソングはもちろん、ライブの最後に披露される定番曲“遠吠えのサンセット”。CD音源よりBPMを落とした幕開けから、徐々にスピードが早まる展開はライブアレンジならでは。首がもげそうなほどヘッドバンギングを繰り出し続けた朝日は肩で息をしながらギターを鳴らし、もっさは時折絶叫しながら熱量を歌声に託している。その光景に感動していたら楽曲はいつの間にか終わってしまっていて、ちょっと残念、それ以上にとても幸福という一風変わった感情に捕われた。持ち時間と満足度が良い意味で釣り合わない、最強のライブを見た気がする。

【ネクライトーキー@渋谷クラブクアトロ セットリスト】
[リハ]
ゆるふわ樹海ガール(石風呂セルフカバー)
気になっていく

[本編]
めっちゃかわいいうた
北上のススメ
誰が為にCHAKAPOCOは鳴る
だけじゃないBABY
夕暮れ先生(石風呂セルフカバー)
だれかとぼくら(石風呂セルフカバー)
オシャレ大作戦
遠吠えのサンセット


ニガミ17才

時刻はこの時点で17時。人によってはクアトロとTake Off 7を移動し続け、何組ものバンドを見終わった時間帯だ。そのためフロアには転換時間を利用して、その場で座って足を休める人も何人かいたのだけれど、リハ中の岩下優介(Vo.G)はそれを見て「何かドラクエ並んでるみたい」とチクリ。かと思えばリハの時間がかなり押していることに触れ、ニ箇所のドラムの音を何度も確かめるメンバーに「音同じだよもう!」と笑顔で突っ込み強制終了させたり、果ては「1曲目にやるやつやろうよ」とリハで“こいつらあいてる”を披露してからの「もうリハで全曲やっちゃうか」と爆笑させる始末。固定観念に縛られない自由さ、これぞニガミ17才である。

「僕らここで座ったら始まるんで」との岩下の発言通り、ライブは中国っぽい謎のお面を被って全員が座ったところでスタート。楽曲は宣言通り“こいつらあいてる”で、伏線回収のように中国語……もとい中国語に聞こえるように計算された、平沢あくび(Vo.Key.Sampler)の日本語が光る。サウンドの基盤となっているのはイザキタツル(B)と、サポートの谷朋彦(Dr)。他の中心人物ふたりは飛び道具的に楽器を弾いていて、あくまでグルーヴを重視する感じ。

ニガミ17才 MV「こいつらあいてる」(Nigami 17th birthday!! "koitsura_ aiteru) - YouTube

そして今回のニガミ17才のライブもやはりというべきか、岩下の突発的な言動が会場を温める結果となった。まずは「このライブのときだけ声出しOKにします!俺が全責任を取る!」と禁止されていた声出しを実質容認すると、持ち時間オーバーが確定した状況で「もしこれがCOUNTDOWN JAPANだったら、30分の時間きっちり守るよ」とライブハウスの良さを語る。楽曲の“化けるレコード”では暗転した会場で懐中電灯を光らせ、メンバーに直接当てて視界を遮るお茶目な一面も。一瞬たりとも飽きさせない、あまりに稀有なライブパフォーマンスは圧巻。

ハイライトは岩下の結成していたかつてのバンド・嘘つきバービーから受け継がれた“ねこ子”。この楽曲では《ねこ にゃん》のフレーズが繰り返される中で、あくびが持参したティッシュを振り撒くことでも知られる。ただこの日のライブでは、何とあくびが客席突入!ゆっくりとフロアを練り歩きつつ、空中にティッシュを1枚1枚放り投げるあくびである。ただ煩悩の数である108回を目指してフロアに撒き散らすあくび、どうやらティッシュは全部で200枚以上あるらしく途中で断念。と同時に鼻に違和感を覚えたあくびは落ちていたティッシュで鼻をかみ始め、岩下に「落ちとるやつでやらん方がええよ。衛生的にアレやけん」とツッコまれていたのも最高だ。

ニガミ17才 MV「おいしい水」(Nigami 17th birthday!! "oisii mizu" ) - YouTube

これまでのライブでは“かわきもの”を10分超えのアドリブアレンジで進行するのが恒例だった彼らだが、予想に反して最後の楽曲として披露されたのは、最初に演奏されることの多かった処女作“おいしい水”。中毒性のある歌詞然り、サビで爆発するサウンドメイク然り……。『オシャレ+変態的=オシャ変』な魅力を存分に見せ付けての幕切れである。時間いっぱい、誰よりも自分たちが楽しんでこの日を終えたニガミ17才は、まだまだやれそうな余力さえ見せつつステージを去っていった。次はワンマンで観たいところ。

【ニガミ17才@渋谷クラブクアトロ セットリスト】
[リハ]
かわきもの
こいつらあいてる

[本編]
こいつらあいてる
ただし、BGM
ねこ子
& Billboard
化けるレコード
おいしい水
 

Panorama Panama Town

ここからは初めて渋谷クアトロから、歩いて数秒のところにある渋谷Take Off 7へ移動。演者との距離が近い絶好のライブハウスには既にファンが大勢詰めかけており、ほぼ満員状態。お目当てはもちろん、神戸からの刺客たるPanorama Panama Townだ。開口一番、岩渕想太(Vo.G)が「あけましておめでとう!」と叫ぶと、1曲目は最新アルバム『Faces』から“King’s Eyes”を投下。エレキギターの主張はパノパナらしさのひとつなれどどこか落ち着いた雰囲気も感じさせるのは、大学時代から時が経ち、精神性が多少変化したことの表れだろうか。

Panorama Panama Town「King's Eyes」Music Video - YouTube

この日のセットリストは全てがニューモード。片仮名表記のパノラマパナマタウン時代の楽曲は徹底的に廃され、一貫して『Faces』楽曲を聴かせる流れになっていたのは、やはり彼らの強気な姿勢からか。かと思えば先程の年明け前の「あけましておめでとう」発言のように、MCでは「2002年」というワードが使われたり、「次の曲はバラードです」と語った後にパンクチューンを投下したりと、ヒラヒラかわしまくる岩渕の対比がニクい。今回披露された新曲もツイッター上では“ぼくたちの明日”であると本人が明言していたが、これもどこまでが真実なのか……。とにかく、彼らが活動の最前線をここで見せ付けようとしていたのは間違いないだろう。

Panorama Panama Town 「Faceless」 /「Strange Days」(Live at "Face to Face"@TOKYO KINEMA CLUB) - YouTube

『Faces』楽曲が続く中で、取り分け印象深く映ったのは“Faceless”。日常生活において絶対に避けられない『人の表情を見る』行為は、ここ数年のコロナ禍で大きく意味が異なるものになった。ただでさえ胸の内は分からないのに、目しか見えない怖さ。また日本人にありがちな『顔色を伺う』という考えにも表れているが、我々の基本行動は右ならえだったり……。翻って、このライブハウスはどうかと言えばノールール。当日の熱量含め、ライブハウスに行くことの幸福を、間接的に感じることの出来た瞬間でもあった。

【Panorama Panama Town@渋谷Take Off 7 セットリスト】
King’s Eyes
100yen coffee
Faceless
新曲
Strange Days


本来であればここから日付が変わるまでライブがあったのだが、今回はこちらのライブの関係で泣く泣く早退。パノパナのライブ終わり、大満足で渋谷クアトロにクロークを取りに戻ると、そこではニガミ17才の岩下とあくびが餅つきをしていた。一足はやく振る舞われた年越し餅を食べながら、ふと「こんな年末を毎年過ごせたら最高だな」と思った。いつもは島根県の片田舎で駅伝と紅白をボケーっと見ていたけれど「やっぱりライブハウスが好きなのだなあ」と再認識出来たのは、この日のライブのお陰だと思う。

音楽好きにとってもその実、ライブに行くことは簡単ではない。仕事が、休日が、お金が。大人になればいろいろな事情で、その日にライブを観ること自体が奇跡的なものになる。……ただ、たとえその年に観るライブが少なかったとしても、最高のライブで年を越せれば全てがハッピーだ。いろいろと思うところの多かった2022年にしろ、取り敢えず最高の音楽たちに触れることの出来たこの日をもって、大団円と見なして良いだろう。来年もまたこの場所に来れますように。

2022→2023

2022年が終わった。「今年は早かったですね!」と言ったり、はたまた言われたりする年の瀬ではあったものの、心の中では少し違って。毎日のひとつひとつをこなして、なんとかここまで来た感覚がある。

個人的に最も大きな変革があったとすれば、それは約5年間続けたバイトを辞め、正社員として就職したことだろう。この選択肢に至った経緯についてはこちらの記事に詳しいが、端的に言えば『物書きとして夢を追い続ける生活』に限界を感じて、夢を諦めることを決めたのだった。5年務めたアルバイト先には本当にお世話になったし、「一生続けられますか?」と問われれば思考の間さえなく頷くくらいの素晴らしい環境。本当に恵まれていたなと、今でも考えるほどだ。けれども毎日同じ仕事をして人間的な成長がないままずーっと歳を重ねていくのは違うなとも思ったのだ。……それが何年も夢追いを続け、ようやく諦めた人間なら尚更である。

かくして僕は、全く新しい仕事に就職した。相変わらず精神的にはネガティブなままだったが、『心機一転』という言葉があるように、新しい環境はこれまでの『キタガワってこういう人だよね』とする固定観念をゼロからスタートさせる舞台でもある。だからこそ、僕はとにかくポジティブなキャラクターを演じることにした。よく喋りよく笑い、良い人間関係を築く……。そうしたキャラクターを僕は職場で拘束される十数時間、絶え間なく続けることを決めた。

そしてその行動は、目論見どおり社会生活に合致するものだった。具体的にはテンション高めに全ての言動を拾うのだ。PCを使っている人を見れば「センパイ!今やられてる仕事なんすかー?」と聞く。……すると教えてもらえて、やれる後輩とも見なされる。難しい仕事を振られても「任せてください!俺島根で一番カラダ強いんで!」などと嘘をつく。……そこから『カラダ強い』のテーマから「そういえばセンパイって運動してますー?」とトークを続けられる。ことイメージとしてはアンタッチャブルの山崎に似ている感じだ。その甲斐もあってか今も、コミュニケーション的な部分に関しては上手くやれている方だと思う。

ただ人間の体というのはよく出来ているもので、帰宅してからの僕は電池が切れたように動けなくなる日々が続いた。そりゃいろいろ顔色を伺っているのだから当然である。脱毛やら体重減少やらも多々あった程だったけれど、それを職場で指摘されるたびに「今若者の間で痩せたハゲがトレンドなんすよ!」などとかわし、結局淡々と月日は過ぎていったのだ。前の職場とは比べ物にならない労働時間と、自分の心を引き換えに。……人がそれを幸福と呼ぶのは理解できる。が、それよりも大切なものはあるんじゃないか。

確かに、2022年の僕は世間一般的な『普通』のレールに乗ることが出来たと自負している。しかしそこに幸福を感じたことは、ただの一度もないのだ。気付けば文章を書くことも難しくなったし、前のバイト先にいた方が良かったのかは分からない。言えるのは、その全てが自分の選択によるものだと言うことだ。

例えば結婚とか出世とか収入とか、そうしたことで幸福を得る人間が多数派だとして、自分はそうはならない人間だと思う。なぜならその全てに、ネガティブな意味を勝手に付与してしまうから。そんな中で何を目的に生きているかと言えば答えはひとつで、それは新たな音楽に出会うためなのだ。ライブに行って毎日音楽を聴いて……。それが出来れば、もう他のことは投げ売っても構わない。思えば昨年撮った写真も、音楽関係のものばかりだった気がする。

申し訳ないことに、レジを打ちながら文章を書きまくっていたあの頃のペースと違って、めっきり文章を書く時間は減った。でも熱は冷めるどころかむしろ高まっているというのは、ここで明言しておきたいのだ。なので今年は音楽系の記事を増やすとともに、いろいろな活動で音楽に還元していきたいと思っている。もちろん本業が第一優先にはなる中で、やれる範囲で取り組む精神は忘れずにいたいなと。最底辺から物事をひっくり返す力は、まだあると思うから。……今年もマイペースな更新にはなるけれど、宜しくお願い致します。何か大きな報告ができるように頑張る所存です。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『新世紀のラブソング』 - YouTube