キタガワのブログ

島根県在住。極力誰とも関わりませんので悪しからず。目標は音楽ライターであり、ブロガーではありません。

【ライブレポート】ザ・クロマニヨンズ『BONE TO RUN! YUMEBANCHI 2019~だんだんROCKS!~』@松江市総合体育館

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190813032114j:plain


8月10日、島根県・松江市総合体育館にて、ザ・クロマニヨンズ、斉藤和義、SUPER BEAVER、My Hair is Badによるライブ『BONE TO RUN!』が開催された。今回は2番手として出演したザ・クロマニヨンズのライブレポートを記す。


日本のロック界を牽引する偉大な存在でありながら、『アルバムをリリースしてツアーを回る』というスタイルを毎年全く崩さない不動のロックバンド、ザ・クロマニヨンズ。


思えば甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(Gt)によるザ・ハイロウズの活動休止が発表されたのが2005年11月。その後新たにザ・クロマニヨンズを始動してからというもの、早いもので今年で13年の月日が経過した。


THE BLUE HEARTS、ザ・ハイロウズ共に8枚目のアルバムをリリースした後に活動休止や解散に至ったことから、8枚目のアルバム発売以降、ファンの間で一種の懸念事項でもあったザ・クロマニヨンズの活動。しなしながらそうした懸念は全くの杞憂に終わり、来る10月9日にはなんと13枚目となるニューアルバム『PUNCH』の発売も決定。


個人的には年功序列的な考えから、てっきりザ・クロマニヨンズの出順は斉藤和義の前か後……。つまり後半あたりだろうと勝手に推測していたのだが、なんと年若いMy Hair is BadとSUPER BEAVERの間に挟まれた2番手というまさかの順番で出演。


実際僕と同様の考えに至っていたファンは多かったらしく、後方で休んだりゆっくりトイレ休憩から帰ってきた観客(主に30代)が、メンバーがステージに現れた瞬間に「え!?クロマニヨンズ!?」と猛ダッシュで前方に進む姿が多数見受けられ、気付けば押しくらまんじゅう状態に。


メンバーの名前が口々に叫ばれる中スタートした記念すべき1曲目は、『クロマニヨン・ストンプ』。

 


クロマニヨン・ストンプ/ザ・クロマニヨンズ


〈人間人間人間人間 人間人間人間人間〉

〈宵越の 金もたねえ てやんでえ しゃらくせえ〉

〈クロマニヨン クロマニヨン クロマニヨン・ストンプ〉


どしゃめしゃの演奏が展開される中、観客は一様に拳を突き上げながらの大熱唱。その熱は一瞬たりとも途切れることはない。加えて常に野太い声が飛び、ヒロトの歌唱に対してしきりにレスポンスを返す観客たちを見ていると、まるでファンのみが集まった大規模な単独ライブのようにも錯覚する。


寸分狂わずビートを刻み、泥臭いロックンロールを形作っていく楽器隊。ボーカルのヒロトはと言えば時折口をひょっとこのような形に変えて歌いつつ、間奏では両手両足を木偶人形のように動かすおなじみの姿を見せるなど、早くもトップギア。


その後もヒロトが「突撃、ロックだあー!」と叫んで雪崩れ込んだ『突撃ロック』、ギターサウンドが鼓膜を震わせる『エルビス(仮)』といった性急なナンバーが続く。


ザ・クロマニヨンズの楽曲は、悪い言い方をすれば非常に単調だ。一度聴いただけで瞬時に口ずさめるど真ん中ストレートの歌詞の数々と真っ向勝負の演奏はあまりにもシンプルであり、無骨であり、直感的だ。


特にギターとベース、ドラムから成る3つのサウンド面に関しては、打ち込みの多用やサポートギターの追加でもって音の厚みを重視する今の音楽シーンとは、完全に逆行する代物である。


おそらく彼らの歌詞に深い意味はないのだろうし、CD音源に至っては決して綺麗とは言えない一発録り。長く音楽活動を行ってきた博識なザ・クロマニヨンズのことだ。歌詞を深く練り上げたり、各自で録音してサウンドに広がりを与えたりといった方法もやろうと思えば出来るはずである。


だが彼らは絶対の確信を持ってそれをやらない。彼らの中にあるのは『自分たちが格好良いと思ったロックンロールを鳴らすこと』のみであり、それ以外に何の意味もないのだから。


計算立てて攻略していくのではなく完全な直感で突き進むスタイルは、昔から微塵も変わっていない。今回のライブも同様だ。ひたすら思ったことを口にし、ロックバンドの楽器で音を鳴らす。そんなザ・クロマニヨンズの猪突猛進型のロックンロールは、かくも最高で、美しい。


全編通してバラードチックな楽曲は一切演奏しなかった今回のライブだが、中でも4曲目に演奏された『ギリギリガガンガン』はひとつのハイライトだった。


〈ギリギリガガンガン ギリギリガガンガン〉

〈今日は最高 今日は最高〉


今回演奏された『ギリギリガガンガン』は、CD音源と比べてBPMが明らかに早い印象を受けた。時折ヒロトが歌詞を発しきれず詰まってしまう場面もあり、その性急な流れは、まるで感情が理性を引っ張っていくかのよう。


ヒロトは歌うというよりはがなり立てるように進行し、終盤のサビにおいてはリズムを無視しつつ「今日は最高!今日は最高ー!」と絶叫。中でもTシャツを脱ぎ捨てて上半身裸になったヒロトがステージに仰向けで倒れ込み、足をバタつかせながら歌う姿には心底痺れた。

 


生きる ザ・クロマニヨンズ


『生きる』、『どん底』といったこれまたスピーディーなロックナンバーが続いたところで、この日初となるMCへ。


はじめに「今日は4つのバンドが出ます。でもそれは4分の1とかじゃなくて、みんなひとつを全力でやります。だからみんなは4倍楽しんで帰ってくれ!」と語ったヒロト。個人的にはこの発言に、彼の思いが詰まっているような気がした。


というのも今回、自分たちよりも遥かにキャリアの短いSUPER BEAVERを3番手に送り出し、いわゆるベテランであるザ・クロマニヨンズが2番手として出演したことは、ライブ開始当初から疑問に思っていたからだ。


ザ・クロマニヨンズと斉藤和義が主となって開催される『BONE TO RUN』というイベントは、何も今回が初ではない。開催する都道府県は幾度か変化したものの、昨年もその前も、ほぼ毎年に渡って開催されている夏の恒例行事のひとつである。


僕はその中の何回かに参加した経験はあるが、例外なく順番は若手バンド→ザ・クロマニヨンズ→斉藤和義というものだった。ではなぜ今回に限りザ・クロマニヨンズは後輩にバトンを譲ったのか……。その理由が秘められているのが、上記のMCなのではなかろうか。


そう。彼にとってロックバンドは平等なのだ。キャリアの長さや年齢の経過は大して重要ではない。大切なのはそのバンドに確固とした志があるか。そして楽曲を聴いたリスナーに「格好良い」と言わしめる力があるか。ただそれだけなのだ。それらの前では全てが平等であり、全てがイコールなのである。


もちろんこれは僕の単なる推測だ。真偽の程は彼自身にしか分からない。もしかするとニュー・ジェネレーションの力に未来を委ねたのかもしれないし、集まった観客の年齢層に合わせた計算なのかもしれない。


しかしながらこの推測は、あながち間違ってはいないとも思うのだ。なぜなら甲本ヒロトはそういう人間だから。良いものは良い、悪いものは悪いとはっきり口にする、不器用な人間だから。彼はロックンロールを愛し、同時に救われてきた人間だ。そんな彼が音楽の持つ魅力を無視してSUPER BEAVERをトリ前に譲り、自身は2番手に自ら進んだとは到底思えない。


結果的には今回の出演順についてMCで明言することはなかったものの、彼らのロックンロールに対する絶大な愛情は、勝手ながら十二分に感じた次第だ。


「ここから後半戦、どんどん曲をやりたい。レインボーサンダーからあと2曲くらいはやりたいなあ。行こう!」と語り、ここからは宣言通り『恋のハイパーメタモルフォーゼ』、『GIGS(世界で一番スゲエ夜)』をドロップ。


これらは昨年10月にリリースしたアルバム『レインボーサンダー』に収録された楽曲であり、言い方を変えれば今回のライブで披露された楽曲の中では唯一メジャーでない楽曲ということにもなるのだが、観客は皆踊り狂うどころかサビを熱唱するほどの盛り上がりに。


その後は勢いそのままに『エイトビート』、『タリホー』の磐石の流れから、『ナンバーワン野郎!』でフィニッシュ。

 


ザ・クロマニヨンズ 『ナンバーワン野郎!』


〈やる事は わかってる 立ち上がる 立ち上がる〉

〈いつまでも どこまでも 立ち上がる 立ち上がる〉


シンプルなコード進行と歌詞の応酬は今までと同様。にも関わらず観客による興奮の高まりからか、ここに来て熱量が一段階引き上げられたような感覚に陥る。


バンドTシャツを着ていた前半こそ分かり辛かったが、あばら骨が浮き出た上半身裸のヒロトは見るからに痩せており、一見するとハイカロリーな歌を歌えるようには思えない出で立ちをしている。しかしながら『ナンバーワン野郎!』ではステージ上を所狭しと動き回りながら絶唱するなど疲れ知らずのパフォーマンスに終始し、間奏ではブルースハープも披露する超人っぷり。


終盤では観客と共に声を枯らさんばかりの勢いで「イェー!」のコール&レスポンスを繰り広げ、完全燃焼で幕を閉じた。


持ち時間僅か40分の間に11曲を捩じ込んだライブ。ふと周囲を見渡すと、観客は皆汗だくだ。だがまだまだ物足りない観客も多かったらしい。メンバーが楽器を置き退場しようとした瞬間、口々にメンバーの名前を叫んだりアンコールを求める声が観客から多数挙がる。


あれだけ熱狂的なライブを終えた後だ。多くのバンドの場合は退場前に真摯に観客への感謝の念を述べたり、「次はライブハウスで会いましょう」といったメッセージを発するものである。特にザ・クロマニヨンズに関しては今年新たなアルバムリリースを控えているわけで、その告知なりがあってもおかしくないと個人的には思っていた。


しかし実際は真島(Gt)がぽつりと「ありがとー」と言ったのみで、メンバーはいそいそとその場を離れていく。まるで一瞬で終わる映画のエンドロールの如く、気付けばステージ上には誰もいなくなっていた。最初から最後まで余裕綽々。それが何とも彼ららしくて笑ってしまった。


ライブ終了後、小休憩に向かった僕の目の前を、何人かの観客が全速力で通り過ぎていった。ふと行方を追ってみると、そこにはザ・クロマニヨンズのグッズを求めて、物販ブースに長蛇の列が出来ていた。


この日初めて彼らの音楽に触れた人は一定数いただろうし、元々興味のなかった人さえいたかもしれない。しかしそんな人々が今、グッズを求めて列を成している……。おそらくそうした人たちのある種の決定打となったのが今回のライブなのだろうと思う。


10月からはニューアルバムを携えての約半年間のツアーが始まる。そして彼らはその会場ごとにまた新たなファンを獲得し、人気を拡大させていくのだろう。もしかしたら今のザ・クロマニヨンズは絶頂期……。いや、むしろTHE BLUE HEARTSもザ・ハイロウズの活動期間をも超えた現在は、絶頂期を超えた先の未踏の地へ足を踏み入れているのかもしれない。


……彼らの人気、あと10年くらいは続きそうだ。

 

【ザ・クロマニヨンズ@松江 セットリスト】
クロマニヨン・ストンプ
突撃ロック
エルビス(仮)
ギリギリガガンガン
生きる
どん底
恋のハイパーメタモルフォーゼ
GIGS(宇宙で一番スゲエ夜)
エイトビート
タリホー
ナンバーワン野郎!

映画『二重生活』レビュー(ネタバレなし)

こんばんは、キタガワです。


回りくどい言い方で恐縮だが、僕はこの世における人間関係の構築は全て、運命の集合体であると思っている。


例えば親友。毎日連絡を取るわけではないにしろ、ごく稀に電話をすれば楽しく時間が過ぎて行き、悩みも恋愛事情も腹を割って話せる気心知れた親友が、誰しも一人はいるだろう。


しかしながら何かひとつでも歯車が噛み合っていなければ、その関係は瞬時に破綻していたはずだ。もしあなたが頻繁に連絡を取りたい主義の人間なら。普段から誰にも心を開かない人間なら。そもそもスマホを持っておらず、ラインの登録すらしていない人間なら……。今の関わりは絶対にないはずだ。


いや、互いの性格どうこうという以前に、そもそも出会っていなかった可能性すらある。同じクラスでなければ。あのとき声を掛けていなければ。極論を言うならばこの世に生を受けていなければ、今の関係はなかった。


そう。普段当たり前に過ごしている『その人』と『あなた』との人間関係は、思っている以上に天文学的な確率により成り立っている。出会っては別れ、離れては繋がる人間関係の根底は、総じて劇的かつ奇跡的なバランスで形作られているのである。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190809230637j:plain


今回鑑賞した映画『二重生活』は、そんな人と人との際の際を描くミステリー作品である。


あらすじは以下の通り。

 

大学院に通う25歳の珠(門脇麦)は、19歳のときに遭遇したある出来事をきっかけに長い間絶望のふちをさまよっていたが、最近ようやくその苦悩から解放された。彼女は一緒に住んでいる恋人卓也(菅田将暉)と、なるべくもめ事にならないよう、気を使いながら生活していた。あるとき、珠は恩師の篠原(リリー・フランキー)から修士論文の題材を提示され……。


この映画では上記の最後の一文にある『修士論文の題材を提示される』というのが、一番の肝となる。


その題材とはズバリ『尾行』。見ず知らずの相手を尾行し続けることで、それを修士論文に活かせば新機軸の論文が出来るのではないかという恩師の判断が、主人公におけるある種の希望になっていくのだ。


そして至極当然に、物語は基本的に『尾行→帰宅→尾行→帰宅』の単純なループで進行していく。その間に描かれるのは『いかに人間は仮面を被って生きているのか』ということ。


冒頭で僕は『人間関係の構築は運命の集合体だ』と書いた。しかし人間関係を『嘘で塗り固めた自分』で作り上げたとしたらどうだろう。最初は相思相愛だったとしても、生活を重ねれば次第にボロが出る。本音でぶつかっていない人間は、必ず何かしらの綻びを生む。


この映画では、そんな偽りの仮面を割った先にある人間の醜悪な本性が、次々と出現する。『こんな男は嫌だ』というランキングがあるならば、おそらくはトップ5までの何個かは該当するレベルの醜悪さが顔を出す。だが人間というのは面白いもので、そうした醜悪な本性を持つ人間同士が惹かれ合うことも当然あるわけだ。そう考えるとこの映画の良さが理解できる。同時に「人間って怖いな」とも思ってしまうし、「こんな生き方もあるか」と納得する節もあったりする。


『尾行』という題材で物語が展開していくのは新鮮で良いと感じたし、終わり方もほぼ文句なしだった。しかしながら盛り上がりに差し掛かるまでが非常に冗長なこと、更には『尾行という行為』から想定される結末が個人的な予想を下回ったという点から、星4寄りの星3の評価とする。


ちなみに尾行をする側とされる側、どちらの視点で観るかで大きく評価が変わる映画だとは思うので、初見の場合はどちらかに感情移入しながら観ることをお勧めしたい。


ストーリー★★★★☆
コメディー☆☆☆☆☆
配役★★★☆☆
感動★★☆☆☆
エンターテインメント★★★☆☆

総合評価★★★☆☆
(2016年公開。Yahoo映画平均3.1点)

 


『二重生活』映画オリジナル予告編

【ライブレポート】きゃりーぱみゅぱみゅ『音ノ国ライブツアー2019 「まぼろしのユートピア~出雲大社の夜~」』@出雲大社・東神苑特設ステージ

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190702170532j:plain


某日、僕は島根県・出雲大社の東神苑に設置された特設ステージにいた。理由はきゃりーぱみゅぱみゅのライブ、『音ノ国ライブツアー2019「まぼろしのユートピア~出雲大社の夜~」』に参加するためだ。


今回のライブは、日本の伝統や歴史にゆかりのある土地で開催されるライブツアーの第一弾。午前中から降り続いていた雨は、タイミングを見計らったかのように止んでいる。会場周辺はライブが近付く緊張感と、神々が集うとされる出雲大社の厳かさも相まって、異様な雰囲気に包まれていた。


ステージは薄い紗幕スクリーンに覆われており、その全貌を伺い知ることは出来ない。しかしながら金の縁で囲まれたステージとその背後に浮かぶ桜を見るだけで、いかに今回のライブが特異なものかが良く分かる。


定刻を過ぎた頃、左右の照明がゆっくりと消灯。瞬間、幼い子どもの語り口と共にスクリーンに映し出されたのは、今回のライブのコンセプトとなった『音ノ国』の過去と現在の様子である。


かつての『音ノ国』は音楽の神・音龍に守られた場所であったという。人々は歌い踊り、平和な毎日を過ごしていた。しかし突如現れた亡霊によって暮らしは一変。音龍は姿を消し、音楽はみるみる衰退し、人々は次第に笑顔を無くしていった。


そんな中音龍の涙から生を受けたきゃりーは、音楽を甦らせようとひとり亡霊に立ち向かっていく……。スクリーンが廃された後にそこに立っていたのは、勇ましい表情を湛えたきゃりーぱみゅぱみゅその人だった。

 


きゃりーぱみゅぱみゅ - きらきらキラー / Kyary Pamyu Pamyu - Kira Kira Killer


随分と久々に鳴らされた『完全形態』から『きらきらキラー』へ繋ぐ形でライブはスタート。開口一番「出雲大社へようこそー!」ときゃりー。その姿は純白のベールに包まれており、神聖な土地でのライブに相応しく、神々しい輝きを放っていた。


観客からは「かわいいー!」との声が次々上がり、動けば動くほど絵になる立ち振舞いはまさに日本のポップアイコンを体現するかのよう。更には耳馴染みの良い楽曲と多数のダンサーの存在でもって、唯一無二の世界観を形成していく。


続く『つけまつける』では早くも「オイ!オイ!」のコールが飛ぶ盛り上がりを見せ、中にはきゃりーに合わせてサビ部分を踊る観客も。普段の出雲大社は縁結びを祈願する参拝客が集う場所なのだが、この日は一夜限りのポップ空間。老若男女問わず、きゃりーが醸し出すハッピーな空気に酔いしれていた。


「今日は懐かしい曲を中心にセットリストを組んでみました」とはきゃりーの弁だが、その言葉の通り、今回のライブは昨今ほとんど披露されない楽曲も多く盛り込まれた、ファン垂涎のライブとなった。中でも2012年発売のファーストアルバム『ぱみゅぱみゅレボリューション』からの楽曲は新鮮で、イントロが流れるたびに大きな歓声が沸き上がるのが印象的だった。

 


きゃりーぱみゅぱみゅ - PONPONPON , Kyary Pamyu Pamyu - PONPONPON


常に観客一体型のライブで進行していくのも大きな見所。『みんなのうた』による毎回リズムが変化する手拍子で盛り上がったかと思えば、『ちぇりーボンボン』や『PONPONPON』では間接的に振り付けをレクチャーしたりと、目と耳に加え体でも楽しめるライブ空間を演出していた。


今回のライブは『出雲大社の御遷宮完遂記念』ということもあり、総じてメモリアルかつコンセプトなライブの様相を呈していた。ステージ上には神話に登場する兎や蝶々、オウムの他、色とりどりの植物で彩られており、ライブ中の光によってミステリアスな雰囲気にも、神秘的な雰囲気にも姿を変えていく。


『良すた』の後には再びスクリーンが出現。そこに映し出されたのは、活気を取り戻しつつある音ノ国だった。きゃりーの歌によって音ノ国は笑顔や音楽の楽しさを思い出し、徐々にではあるが復興への道を辿っている。しかし人々は未だ亡霊の再訪に怯えており、心の底から音楽を楽しめない状態が続いていた。

 


きゃりーぱみゅぱみゅ - にんじゃりばんばん,Kyary Pamyu Pamyu - Ninja Re Bang Bang


映像がフェードアウトすると、ステージにはピンクの衣装に着替え筋斗雲に乗ったきゃりーの姿が。真剣な表情で、かつ冒頭をアカペラにアレンジして歌い始めたのは『にんじゃりばんばん』。きゃりー史上最も広く知れ渡ったこの楽曲を、まるで『音ノ国』の人々に訴えかけるように、力強く歌い上げた。


その後は最新アルバム『じゃぱみゅ』収録曲を主軸としつつ、レア曲も散りばめたライブを展開。


『きまま』や『コスメティックコースター』といった歌メロ重視の楽曲も軽々歌いこなしつつ、ダンスを繰り広げるきゃりー。更には「リハーサルのときはまだ蕾だったので心配でした」と語っていた各所の桜も今やしっかり色づき、ステージングに花を添えている。


全曲通して大盛り上がりのライブであったが、曲名を叫んでスタートした『ファッションモンスター』は、間違いなくこの日一番のハイライトのひとつだった。

 


きゃりーぱみゅぱみゅ - ファッションモンスター,Kyary Pamyu Pamyu Fashion Monster


〈だれかの ルールに 縛られたくはないの〉

〈わがまま ドキドキ このままでいたい〉

〈ファッションモンスター〉

〈このせまいこころの檻も こわして自由になりたいの〉


きゃりーの歌声は亡霊に怯え続ける音ノ国の人々を勇気づけるように、高らかに鳴り響く。スクリーンにはコンクリート状で作られた大きな壁が、曲の進行と共に少しずつ崩壊していく様子が描かれた。その様はまるで音龍の復活を隠喩しているようでもあり、感動的な一幕として映った。


ここまでで約1時間半。永遠に続いてほしいと願う至福の時間ではあったが、ライブの終演は刻々と近付いていく。きゃりーの「最後は今日にピッタリのこの曲で終わりたいと思います」との一言から雪崩れ込んだ最後の曲は、今回のライブのタイトルにも冠された『音ノ国』だった。

 


きゃりーぱみゅぱみゅ - 音ノ国 , KYARY PAMYU PAMYU - OTO NO KUNI


〈宴や宴や国中が 和尚さんも狸も歌唄う〉

〈ぼくらのわたしの 生まれた音ノ国〉


激しいEDMサウンドに乗せ、優雅に踊るきゃりー。縦横無尽に飛び交うレーザー光線の中、ダンサーを引き連れて歌う姿はまさに音ノ国の歌姫といった様相。


その後は一体感のあるアンコールに答え、今回のライブ限定Tシャツを着たラフな姿できゃりーが再登場。各曲を彩ったダンサーの紹介を終えた後に「5月にリリース予定の新曲をやりたいと思います」と語り、この日ライブ初披露となる新曲『きみがいいねくれたら』へ移行。


ダンサーとふたりきりで踊る楽曲という点でも新鮮だが、一際目を引くのはその運動量。右へ左へと何度も移動し、圧倒的手数でもって魅了していくこのスタイルは、今までになかったものだ。事前に「今までで一番激しいダンスをします」と語っていた通り、楽曲が終わった頃には全身汗だくになっていた。

 


きゃりーぱみゅぱみゅ - 原宿いやほい , Kyary Pamyu Pamyu - HARAJUKU IYAHOI


正真正銘最後の曲として鳴らされたのは『原宿いやほい』。披露前には「さっきの『音ノ国』で言おうと思ったんですけど、写真撮影してもオッケーです」と語り、多数のスマホが向けられる中でのパフォーマンスとなった。


ステージ上には各楽曲を彩っていたダンサーが集結し、観客は一様に「ほい!ほい!」の大合唱。きゃりーは「ありがとう!」と何度も感謝を伝え、大盛り上がりで幕を閉じた。


ライブの終わりを告げる『fin.』の文字がスクリーンに表示されてもなお、ファンからの拍手は長い時間鳴り止まなかった。この光景こそがきゃりーの今回のライブが大成功に終わったという事実を、何よりも雄弁に物語っていたと思う。


照明で照らされた桜を見ながら帰路に着く。出雲大社から発車した臨時電車を降りると、そこはタイミングを見計らったかのように、バケツをひっくり返した勢いの大雨となっていた。にも関わらず、思い返せばライブ中は1滴たりとも雨が降っていなかった。出雲大社に祀られた神様がそうさせたのか、はたまたきゃりーの晴れ女っぷりが作用したのかは分からない。しかしこのときばかりは、それすらも運命だったのではと心から感じることができた。


今回のライブは『音ノ国ライブツアー』のほんの序章に過ぎない。続く次回公演は歌舞伎のエッセンスを取り入れたライブになることがアナウンスされており、今回とはまた違った趣向を凝らしたライブになることは間違いない。


元号は令和に変わったが、きゃりーは今までと変わることなく、音楽を届けるために奔走するのだろう。何故ならこの日本も、きゃりーが生まれた『音ノ国』なのだから。

 

【きゃりーぱみゅぱみゅ@出雲大社 セットリスト】
完全形態(SE)
きらきらキラー
つけまつける

スキすぎてキレそう
のりことのりお
Unite Unite
チェリーボンボン
PONPONPON
恋ノ花
良すた
にんじゃりばんばん
とどけパンチ
キズナミ
ぎりぎりセーフ
演歌ナトリウム
みんなのうた
きまま
コスメティックコースター
インベーダーインベーダー
ファッションモンスター
音ノ国

[アンコール]
きみがいいねくれたら
原宿いやほい

 

f:id:psychedelicrock0825:20190702172957j:plain

夏フェスのゴミ捨て問題と京都大作戦

こんばんは、キタガワです。


時が過ぎるのは早いもので、気付けば季節は夏。


各地では記録的猛暑となっているどころか、観測史上初となる47都道府県全てに高温注意警報を発令する異常事態にも発展。うだるような暑さの中「何もしたくない」と思いながら日々を過ごしている人も多いのではなかろうか。


しかしながら、音楽ファンにとって夏は記念すべき季節でもある。そう。夏フェスの開催である。


ロックインジャパンにサマーソニック。ライジングサンにワイルドバンチ……。今年も多くのフェスが夏場に開催されることが確定。全身汗だくになりながら朝から晩まで音楽漬けの一日を過ごせる『最高の非日常』が、すぐそばまで迫っている。


さて、そんな夏フェスだが、読者貴君はどのようなイメージを持っているだろうか。一度も夏フェスに行ったことのない周囲の友人らに聞いてみると「一日中音楽を聞けるライブ」や「パリピが集まる場所」、「めちゃくちゃ暑い」など、その答えは千差万別だった。


そんな中、あるひとりの友人が口にした夏フェスイメージに、僕は心底驚いた。それこそが今回タイトルの一部に冠した『ゴミが多い』という点である。


友人がそう思ったきっかけは、ライジングサンやフジロックに実際に赴いた観客がゴミの多さをツイッターに画像付きで上げ、それが回り回って友人の元へ届いたためらしかった。


あまり気にも留めていなかったものの、確かに夏フェスにおけるゴミ問題は年々深刻化している。昨年のサマソニ大阪では、飲食店が立ち並ぶオアシスエリアはオアシス感の欠片もないほどゴミが散乱していたし、詳しい内容は不明ながら、それこそ前述したフジロックもゴミが多かったと聞く(これに関しては大雨の影響も大きいとは思うが)。


そんな悪いイメージを放つ事態がSNSで拡散されれば、友人の認識が「夏フェス=ゴミが多い」となるのも無理はない。夏フェスの全ての良さを帳消しにし、一瞬にして暗雲立ち込めるネガティブなイメージにしてしまうもの……。それがゴミ問題なのだ。


……そんな悲しきゴミ問題だが、日本には数日間通してゴミがほとんどない夏フェスも存在する。 そのフェスの名は京都大作戦。ロックバンド・10-FEETが主催し、1日あたり約6000円という破格の価格設定で行われる大型フェスである。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190804223949j:plain


京都大作戦はその界隈では「日本一クリーンなフェス」とも称されるほど、会場内に落ちているゴミが全体的に少ないフェスとして知られている。


しかしながらその理由は飲食店が少なかったり、目に見える範囲に大量のゴミ箱が置かれているというわけではない。ステージ間の移動中。サウンドチェック中。飲食物を購入する間……。なんとその時々で集まった来場者が皆、自主的にゴミを拾っているのだ。


一見すると「10-FEETはどれだけ大仰なことをしたんだ」とも思うだろうが、10-FEET側が取った行動は「ゴミは拾ってほしい」と呼び掛けたことのみ。このたったひとつの願いが来場者の意識に刷り込まれた結果、日本中どこにも成し得なかった『ゴミを来場者が拾い合う』という理想が現実のものとなったわけだ。


もちろん10-FEETに対する来場者の思いの強さも大きいとは思う。男気溢れる人間性はもとより、初年度が台風で中止になったこと、かつて最小のステージで演奏していたバンドがメインステージに立ったこと、Hi-STANDARDの横山健と難波章浩が『STAY GOLD』を披露し、10-FEETのTAKUMAが涙を流したこと……。


僕はかつて、米津玄師が発することは何でも受け入れる盲目な信者(ファン)たちに対して『米津玄師は宗教だ』という記事を執筆したことがある。しかし10-FEETに対するファンの思いは、そうした類いとは全く違うように感じる。おそらく京都大作戦に集うファンたちは無意識的に、その時々における男臭い興奮と感動でもって、10-FEETへの信頼に繋げているのだろう。


その信頼が「観客同士がゴミを拾う」という最高の形で還元されていく様は純粋に素晴らしいと感じるし、これこそがフェスの在るべき姿だとも感じてしまう。


……長々と語ってきたがとどのつまり、散々問題視されているフェスのゴミ問題は、観客の意識の変化だけで解決するのだ。


もちろん最初は難しいだろう。実際フェス会場に設置されているゴミ箱は少ないし、それを知っている観客側も「ゴミ捨てるのめんどくせーから、適当に落としときゃ誰か片付けるだろ」という意識はそう簡単に変わるものではない。意識が簡単に変わるとするならば「選挙行け」と言われれば選挙に行くし、「モラルを守れ」と言われればハロウィン後の渋谷はピカピカのはず。それが出来ないから問題が起こるのだ。


しかし、意識は徐々に変えることが出来るはずだ。


ひとりひとりの意識が変われば、絶対にゴミ問題は解決する。まずは次のフェスでゴミを捨てないように。その次はゴミを見付けたら拾うように……。その次は友人にも呼び掛ける……。そうしたひとりひとりの意識の変化が大切になってくる。


思いは伝播する。最初は『意識的なゴミ拾い』だったものが『無意識的なゴミ拾い』に変わった瞬間、夏フェスのゴミ問題はなくなる。


まずは今月から開催される各地の夏フェスで、一丁行動を起こしてみようではないか。目指すは誰もが快適に過ごせるクリーンなフェス。それを形作るのは紛れもない、参加するあなたたちなのである。

イベント運営の日雇いバイトに潜入調査してきた話

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190730214137j:plain


アルバイト。それは日本国民の大半が一番初めに経験するであろう労働である。


……もちろん例外がないわけではない。アルバイトを禁止されていて、そのまま高校卒業と同時に定職に就いたとか。奨学金を借り入れもない裕福な大学生活を謳歌し、新卒で入社した会社が最初の『労働』だったとか。経験は千差万別だろうが、とにかく。総じてアルバイトを経験していない人というのは、ほとんどいないのではなかろうか。


そんなアルバイトだが、実際に行動に移すにはかなりの時間が伴う。実際に店に赴いて店内の雰囲気や忙しさを直接目で確かめることはもちろん、「バイト 飲食店 簡単」などと調べては、ああでもないこうでもないと膨大な選択肢から狭めていくのが通例だ。


ではなぜそこまで慎重に選ぶ必要があるのか。理由はひとつ。アルバイトは間違いなく長期化するからである。


簡単に始められるアルバイト。しかしそれは逆に、簡単には辞められないとも言い換えられる。基本的にアルバイトを辞める際は『1ヶ月前に連絡をする』のが最低限の礼儀とされており、これは同時に「めんどくせ」と判断し直ぐトンズラできる性格を持つ人以外の大半の人にとっては、間違いなくダラダラ続ける原因となる。


そこで『何かあったらすぐに辞められて楽、しかも時給も良いバイト』というものを探し求めるわけだが、実際問題そんなものはほとんどない。しかし思い返してみてほしい。あるではないか。最高のバイトが。


そう。それこそが『日雇いバイト』である。


勤務は一日だけ、窮屈な人間関係もなし。時給は1000円超えと好条件の仕事……。長期間のバイトで心身を磨り減らすくらいなら、月に何回か日雇いバイトをした方が幾分マシではないかとも思ったりする。


しかしながら日雇いバイトには、悪いイメージも付き物である。


基本的に日雇いバイトは肉体労働系が多い。そうでなくとも塾の講師やコールセンター、更にはモニターアンケート調査など、何かと敷居が高い印象を受ける。実際何度かやろうと思ったにも関わらず、いろいろ考えて「やっぱやめよ」となった人も多いだろう。


さて、今回はそんな暗黒の日雇いバイトの話だ。絶賛フリーター生活中の僕であるが、先日『イベント運営』の日雇いバイトに行ってきた。今回の記事ではその際学んだバイトの雰囲気、仕事内容について、純度100%のリアルさでもって書き殴っていきたい。


この記事が単発バイトに行こうか悩んでいる人、更には「どんな感じなんだろう」と二の足を踏む人に刺されば幸いである。


それではどうぞ。

 

 

14時00分~会場到着

今回集合会場に選ばれたのはとあるホール。要はここで何かしらのイベントが行われ、集まった僕らはその手伝いをするようだ。


「服装はスーツ。持ち物は特に要りません」とのことだったので、強気にも『スーツ姿+ポケットにスマホと財布を入れた状態』で集合場所に到着。ちなみに流石にラフすぎるため何か言われるかと思いきや、最後まで何も言われなかったのが驚きだった。


集合時間は14時30分ではあったが、いざというときのことを考えて30分早く到着した。しかし誰もおらずあまりにも暇だったので、ホールのWi-Fiを使ってツムツムをプレイして時間を潰すことに。


集合時間15分前になってくると、少しずつスーツを来た『それっぽい人』が集まってくる。取り敢えず「バイトの方ですか?」と声をかけてみるとドンピシャだったらしく、しばらく5人ほどで談笑。


聞けばフリーター、内定が決まった学生や主婦など、境遇も年齢もバラバラなメンバーが揃っており、その中のふたりは姉妹らしく「前参加したら楽だったので、妹も今回誘ってみました」とのこと。日雇いというと殺伐とした雰囲気を想像していたが、皆思ったよりも楽しそうな笑顔。集まる前は「社会不適合者ばかりが集まるのかな」とも思っていたのだが、ある種の「暇潰し感覚」のような軽い気持ちで来ている人が多い印象を受けた。


ちなみに僕は自転車で来ていたので関係ない話ではあったが、駐車場で後々支払う金額やバス代に関しては、バイト先が全部負担してくれるそうだ。至れり尽くせりである。

 

14時30分~全員集合

事前に伝えられていた集合時間になると、ここぞとばかりに人が集まってくる。おそらく他の場所で、僕たちと同じように談笑していたグループもいたのだろう。


総勢20人はいただろうか。男女比は男3・女7といった印象で、ここに来ると白髪混じりの人や金髪に染めた人、コミュニケーションが苦手そうな人など、僕が当初思い描いていた『日雇い像』のような人たちもいる。中には「お久しぶりです~」と声を掛け合う様子も多く見受けられ、特に女性同士では顔見知りが多いようだ。


そして今回のアルバイトのリーダーを務める、某株式会社の社員の人が現れた。中年で話しやすそうな印象を受けると共にジョークもバンバンぶつけて場を和ませ、一気に『何でも相談できるキャラクター』を作り上げていく。さすがである。


さて、そこからの僕のイメージとしては会場案内や仕事説明、更にはハプニングがあった際の対応や配置確認といった、キチキチっとした話になるのかと思っていた。しかし、実際は全く違ったのだった。

 

14時30分~チラシ作成

「うーん、暇だなあ。18時までやることないんですよ……」と呟く社員さんから端を発した最初の仕事は、チラシ作成。


作成といっても何も難しくない。無造作に置かれた『A』『B』『C』という3つのチラシがあるのだが、それをCが一番下、Bが真ん中、Aが一番上になるように重ね、それを何個も作るだけという単純作業。


長机に全員が一列に並び、一心不乱に作業に当たる。しかし早ければ1個あたり5秒でできるため、気付けば大量のチラシが出来上がっている。言い方は悪いが、小学生でもできる仕事である。


ここでひとつ思ったのは、「この時点で誰かひとりでも話せる人を作った方がいい」ということ。


というのも完全なる単純作業のため、手は動かしているものの暇でしょうがない。友人同士で参加している人は話ながら仕事に当たることが可能だが、僕のように一匹狼のコミュ障には辛い。


無造作に置かれた3枚のチラシを使うため、例えば必然的に最後の方には『Aが20枚残っているのにCはあと5枚しかない』というような状況になってくる。その際に「ごめん君のところにあるC、15枚ちょーだい」と言えるか言えないかでは、大きく違ってくるのだ。なぜならほぼ全員が初対面。見知らぬ人から声を掛けられるほど嫌なことはない。


ちなみにこのチラシは開場時にお客さんに配るものらしい。僕も様々なライブに参加した経験があるためよく分かるのだが、チラシはほぼ捨てる運命にある。それが分かった上でチラシを作り上げるのだ。途中から「どうせ捨てられるのになあ」という気持ちになりつつ、作業を続ける。

 

15時00分~仕事説明

チラシが全てまとまったところで、やっとこさ仕事説明の時間に。


まずはホール全体の案内図を見ながらの説明。「あなたはここ、あなたはここ」というように、各自の配置を言い渡される。


僕が配置されたのはステージ後方の観客入退場口。いわゆるドアマンだ。他の人もホール内の各所に配置されるのだが、ここでまさかの一言が。


「今言った人たちは、特に何もしなくていいです」


これには驚いた。何せ僕が配置される場所は観客入退場口。すなわち入場時こそドアを開き「いらっしゃいませー」と言わなければならないが、それ以降は完全に暇になるからだ。


ライブ中はせいぜい『トイレ休憩に行く客がいたら扉を開けてあげる』くらいなものだが、ライブ中に席を立つ人などほとんどいないわけで、実質フリー。ということは……?


「はい。ドアマンの人たちは2時間半の間、丸々ライブを観れちゃいます」


ひえー!


何たる僥倖。ライブを観るだけで金が貰える仕事など、他にあるだろうか。夏フェスなどで後ろ向きで立っているライブスタッフとは訳が違う。僕らはその逆向き……すなわち普通の観客と同じ目線でライブを堪能できるのである。


後々知った話だが、その日のライブのチケットはなんと最低でも1万円。更には全席ソールドアウトという驚異のライブだった。もちろん直立不動でなければならなかったり、足に負担がかかるというデメリットはあるが、それを帳消しにするほどのメリットがあった。素晴らしすぎる。


しかしながらもちろん『仕事』なので、細かな指令はいくつかあった。お客さんが目の前を通ったら「いらっしゃいませ」と言うこと、時折「写真撮影は禁止です」と叫ぶこと。席が分からない人がいれば案内すること……。だが「分からないことがあればすぐ社員に声をかけてほしい」とも言われたため、実際にはストレスフリー。


そのため事前に覚えることと言えばせいぜいザックリした席順だけ。しかしそれも案内板があるため、スタッフにわざわざ声をかける人は少ないだろう。「これは最高の一日になるかもしれない」と僕は思った(仕事だけど)。


ちなみに僕はドアマンだったけれども、他の人の中にはチケットのもぎりや物販担当、更には2階席担当もいた。その後はもぎりの説明や物販商品説明といった形で説明が各所で行われたが、僕はこの数分の説明で完全に終わってしまったので、この間が一番暇だった。

 

16時~休憩・夕食

夕食には弁当が出た。夕食とするにはかなり早い時間ではあるが、ライブ終了時には21時を回るので仕方あるまい。


弁当については「せいぜい幕の内弁当とかだろ」と甘く見ていたが、実際はボリューミーなハンバーグ弁当が出てきて笑ってしまった。ちなみにお茶も付いていた。


奇跡的にもここで声を掛けてくれた現役大学生の若者のおかげで、休憩時間は楽しく過ごせた。聞けば彼は内定が既に決まっているらしく、その間は講義もほとんどなく暇なので、このバイトに応募したという。


何度か「正社員ってやっぱりキツいっすかね……」という悩みを孕んだ真面目な相談も受けたのだが、僕自身が『新卒で入った会社を半年で辞めた現フリーター』という立場なので、取り敢えず「何とかなるよ」という薄っぺらいメッセージを届けておいた。本当に申し訳ない。君は相談する相手を完全に間違っていたと思う。


……そんな休憩時間だが「あまりにもやることがない」との理由で17時までの予定だったものが17時30分までに延長された。あまりにも緩い展開に笑ってしまったが、開場時間が18時であることを鑑みるとなるほどとも思ってしまう。こちらとしては嬉しいのだが、「これは果たして仕事なのか?」という気持ちも次第に大きくなってくる。

 

18時00分~お客さん入場

休憩が終わる17時30分あたりから、会場の外にはチラホラとお客さんの姿が見え始めた。


そこで17時50分には全員が配置につき、いつでも対応できる心構えを高める。僕は唯一の入場口である扉を仕切っている立場なので絶対にそこから離れてはならない。緊張のあまり、トイレに行っていなかったことを心底後悔する。


そしてついに18時になり、お客さんが雪崩れ込むように足を進める。物販席では係員が「会場限定グッズ販売しております!」と拡声器で呼び掛け。チケットもぎりの人もてんやわんやで、先程まで「暇だなあ」と僕たちがフラフラ歩いていたホールが一瞬にして人で埋め尽くされる。


しかし前述したように物販ともぎりは忙しさのピークにあるが、片やドアマンである僕たちは暇でしょうがない。というのもホール内に入れるのは18時30分からであり、それはお客さんも重々承知のため「早く入らせなさいよ!」と怒号混じりで中に入ろうとする人は皆無。


よって『人でごった返す中、ただただ直立不動をキープ』という一種の苦行を強いられることとなり、これが暇すぎて逆に辛い。大衆の目があるため鼻クソもほじれない中、僕はといえば目だけを動かして『お客さんのカバンの色は何が多いか調査』や、壁に備え付けられた時計を見ながら『時計の針が1周するたびにまばたきをする』といったクソしょうもない遊びを考案し、空虚な時間を潰していた。


途中で社員の人が耳打ちで「たまにでいいから、会場内は写真撮影禁止ですって言っといて」という指令が飛んだのだが、長い間口を開いていないため『会場内』の『か』の時点で盛大に声が裏返り失笑が起きたため、その後は心が折れて完全に無言になる。

 

18時30分~お客さんホール入り

30分になった瞬間、ホールを解放した。


焦らしに焦らされたお客さんが我先にとホールに入ってくる。1階の入場口は4箇所あり僕は一番端の扉担当だったのだが、人間の心理なのか分からないのだが、基本的には中心のふたつの扉から入る人ばかりで端の扉から入るお客さんは極めて少なかった。


「お客さんが入るときには挨拶してね」と事前に言われていたが、僕は現在行っている別のアルバイトではバリバリの接客業をしているため、先程の直立不動の時間と比べて、逆にこの時間は楽しく過ごせた。


更には僕自身が音楽バカのため、お客さんが「今から始まるんだ!」というワクワク感を顔に表しながら入ってくる様はとても微笑ましく、嬉しさすら感じた。心の底から楽しんでほしいと思ったし、僕の「いらっしゃいませ」がその楽しみに続く一種のスパイスになるならと、全力で声をかけた。


僕は「いらっしゃいませ」と言うだけで、途中のハプニングはほとんどなかった。ごく稀に「トイレは1階以外にはないんですか?」や「車椅子なんですけどどう席まで行ったらいいですか?」というイレギュラーな問いもあったが、その際は社員の人にバトンタッチし、僕はドアマンを続けた。

 

19時~ライブスタート

ここからの時間は天国だった。


僕はひとりの『観客』として、2時間半のライブを堪能した。もちろん後方なので音響もあまり良くはないし、チラチラとPA(音響担当の人)の動きも目に入ってはくる。ライブ自体も僕が好んで聴くような音楽性ではなかったにしろ、それでも最高だった。


僕の位置は観客からもほぼ見えないため、曲に合わせてリズムを取ったり、知っている曲は口ずさんだりもできた。前述したように、このライブのチケット代は1万円である。そんなライブをチケット代を払うことなく観ることができ、しかも最終的にはお金がもらえるというチート仕様には申し訳なさすら感じた。


長丁場のライブだったため途中で休憩等もあったのだが、それも僕の仕事としては扉を開くだけなので、全く問題なし。何なら足の痛みを忘れさせてくれる行為でもあったため、逆にありがたかった。


こうして2時間半に及ぶライブは、素晴らしい多幸感を抱きつつ終了したのだった。

 

21時~最後の仕事

観客があらかた退場した後、僕らは観客席をくまなく渡り歩き、ゴミがないかを確認する作業にあたった。


今回のライブは銀テープが発射されたわけでも、紙吹雪が舞ったわけでもなかったため、ゴミといってもチラシくらいなもので、それ以外にゴミと呼ばれるものはあまりなかった。


その後は撤収作業の手伝い等もあるのかと思ったのだが、そうした類いの仕事は一切なかった。つまりこれでお開き。曲の日雇いバイトは完全終了と相成ったのだった。


車で来た人は駐車券の処理であったり、バスの人は交通費の支給といった話で待機を命じられたが、僕は自転車なのですぐにその場を去った。事前に口座番号を電話で伝えておいたため、数週間後には今日のバイト代が振り込まれることだろう。額にして7000円ほどだろうか。


結論としては、とても楽しいバイトだった。僕はハローワークにて今回の求人に応募したのだが、正直最初は不安だった。日雇いというと『肉体労働でハード』というイメージがどうしても強い。そのため会場に着いた時点では「やめとけば良かったかな」と思ったのも事実だ。


だが最終的には楽しかった。もちろん僕は後方担当のドアマンであったため、楽だったというのもある。もしも前方のドアマンであれば体勢を崩すことも難しいかったろうし、物販担当は相当ハードだ。2階のドアマンに至ってはライブを観れたかどうかも怪しい。この日の僕はただのラッキーマンだったのかもしれない。


おそらくこの記事に行き着いた人は日雇いバイトについて不安を抱えていたり、他のバイトと悩んだりと様々な葛藤があると思う。


僕は「日雇いバイトは簡単だよ」とは決して言うつもりはない。実際片側交通の道路警備員のバイトで死ぬ思いをしたこともあるし、塾の講師をして保護者からクレームを受けたこともある。


しかしながら少なくとも『この日』の『この割当』で望んだ初のイベント運営の日雇いバイトに関しては、良い経験が出来たと思っている。ひとつの経験として、絶対にマイナスにはならない仕事だ。興味のある人はぜひ考えてみてほしいと思う。


それでは。

【ライブレポート】DYGL『JAPAN TOUR』@米子Aztic laughs

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190727000901j:plain


7月23日、鳥取県・米子Aztic laughsにてDYGLのライブ『JAPAN TOUR』が行われた。


かねてより日本と海外を主な活動拠点としながら活動を行っているDYGLだが、日本でのツアーは彼らにとっては約2年ぶりとなる。


タイトルには冠されていないが、今回のツアーは7月3日にリリースされたニューアルバム『Song of Innocence & Experience』を携えて全26公演を回る大規模なツアーである。更にこの日の米子公演はまだまだ序盤の2箇所目ということで、否が応にも期待が高まる。


しかしながら「絶対にツアーを成功させるぞ!」というようなピリピリとした雰囲気は皆無のようで、開場時間の数分前まで、会場周辺をメンバーが散歩しているというマイペースっぷり。中でも整理番号順に整列しているファンの真横を「よろしくお願いしまーす」とすり抜けて会場に入っていく姿には、思わず笑いが込み上げてしまった。


会場内に入ってまず驚いたのは、その配置だ。本来機材やマイクがあるべきステージには白いスクリーンが張られており、その奥には真っ暗な空間が広がっている。


では機材はどこに置いているかと言えば、答えはステージの真下。……というより観客とアーティストを隔てる柵も一切置かれておらず、客席とバンドセットは手を伸ばせば触れることができるほどのゼロ距離だ。


つまり今回のライブは事前告知一切なしの、完全なるフロアライブだったのだ。かつてボーカルの秋山はとあるインタビューにて「そのときそのときでフットワーク軽く、一番良い選択をしていきたい」と語っていたが、ツアー2箇所目にして突然のフロアライブの敢行。いくら何でもフットワークが軽すぎである。


スタッフが足元にセットリストを置いているのも間近で見ていたが、少し目線を下げた瞬間に全楽曲が把握できてしまうので目のやり場に困る。更にサウンドチェックの段階ではどのエフェクターを踏んでいるかも一目瞭然で、「本当にこんな状態でライブをやるのか……?」と興奮してしょうがない。後方では観客がひとりひとり足を踏み入れるたびに「何これ!?」と驚きに満ちた声を上げているのもまた面白い。


定時を5分ほど過ぎた頃、暗転。通常のライブでも入退場時に使われる扉から秋山(Vo.Gt)、下中(Gt)、加治(Ba)、嘉本(Dr)がステージに足を踏み入れる。


しかし今回はフロアライブだ。ステージをずんずん進み、そこから各自スクリーンを避けるように、両端からひょいっとジャンプしてフロアへ移動。大体の予想はついていたものの、やはり我々観客と全く同じ目線の高さで、かつ目と鼻の先にアーティストがいるという状況はあまりに異質で、何やら気恥ずかしさすら覚えてしまう。


秋山が「デイグローです。よろしく」と短く発して始まった1曲目は『Hard to Love』。

メンバーの表情はまるで準備運動をしているかのように爽やかではあるが、本来ステージ上に置かれているアンプはフロアにあるため、当然の如く会場は爆音の海に。しかし『音が大きいだけ』というような一辺倒なものでは決してなく、爆音の中に心地良い浮遊感を覚えるサウンド。自然に体が動いてしまう。


続く『Let It Sway』は先程とは打って変わって、速いBPMで駆け抜けるパンキッシュなナンバー。ギターリフの時点で大歓声が上がったフロアで、髪を振り乱しながら鋭い演奏を繰り広げるメンバーたち。サビ部分では「ラララ」から成るシンガロングも発生。周囲を見渡すと観客もメンバーも、一様に幸せそうな笑顔を浮かべていたのが印象的だった。

 


DYGL - Let It Sway (Official Video)


ここで初のMCへ突入。チューニングをしつつ、秋山が「調子はどうですか?」と話し始める。「今日のこの雰囲気いい感じですね。ここまでラフなのは久しぶりです。5年後10年後に、振り替えられるんじゃないでしょうか」と感慨深げ。


更には「あとライブ中は別に好きに喋ってもらってもいいし、写真や動画の撮影とかも禁止してないし。酒が無くなったらいつでも取りに行ってもらって大丈夫です。……これ言うと毎回、次の曲からみんなスマホ向けるんだよね……」と笑いを誘っていた。


僕は正直、この発言を聞いて驚いた。何故なら海外のライブならいざ知らず、日本におけるライブは暗黙のルールとして『撮影禁止』が共通認識としてあるからだ。それこそ昨年のSUMMER SONICの例が分かりやすいが、海外のアーティストは撮影に対して抵抗がない印象だったのに対し、フレデリックやback numberといった日本のアーティストは演奏中にも「撮影はやめてほしい」というような発言をする場面もあり、同じ『アーティスト』でも極めて対照的に写ったのを覚えている。


そのため今回、ライブ開始数分後に秋山が言い放った「撮影は禁止していない」との発言はおよそ日本のバンドとしては全国的に見ても貴重な試みで、かつ日本における『ライブかくあるべし』といった固定観念を払拭する狙いもあったのではと思った次第だ。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190727001013j:plain


さて、今回のライブはニューアルバム『Song of Innocence & Experience』リリースツアーということもあり、基本的にはニューアルバムの収録曲を中心に進行していく。更には所々にDYGLの名を広めるきっかけともなった前作『Say Goodbye to Memory Den』の楽曲を散りばめるという、DYGLの今までの歴史を網羅するようなセットリストだった。

 


DYGL - Boys On TV (Live)


事実『Let It Sway』から『I've Got to Say It's True』までの流れはほぼニューアルバムのモードで、合間に『Boys On TV』が挟まれた以外はぶっ続けでニューアルバムの楽曲をプレイ。まだリリースされてからあまり日が経っていないものの、観客は1曲ごとに大歓声で答えており、例えその楽曲がスローテンポであったとしても熱量が低くなることはない。


その後は前作『Say Goodbye to Memory Den』からの楽曲で盛り上げ、「ありがとうございます。次が最後の曲になります」と本編最後のMCへ。


「最後にやる曲はよりもっと……何だろうな。今の日本の忖度ムードだったり、自己責任論で責め合ってっていう今の状況を考えて作った曲です。歌詞に出てくる『wall』っていうのはトランプが作ろうとしてる壁(メキシコとアメリカを隔てる壁)のことなんですけど、……いろいろ問題はあるんですよ。韓国と日本の関係とか。でもそんな中で直接声を上げて、正しいことを正しいと言える世の中の方が良いと思って。自分がしたいと思ったことを、禁止とかキャラじゃないからとか、そういうので辞めたりせずに。そんな風になれば良いと思って作りました」


かねてより自分たちを「政治的なバンド」と語るDYGL。彼らの楽曲は英語で構成されているため一見伝わり辛いのだが、ほぼ全ての楽曲において現代社会の悪しき風潮や国々の固定観念、更には「そんな世の中でどう生きるべきか」といった意見が述べられている。

 


DYGL - Don't You Wanna Dance in This Heaven? (Official Video)


最後に演奏された『Don't You Wanna Dance In This Heaven?』は、直訳すると「あなたはこの天国で踊りたいのか?」という意味となる。つまりこの楽曲における『天国』とは『国』……。我々で言うところの日本国なのだ。日本では総じて本音と建前を使い分け、奥手であることが美徳とされている。それは世界の国々で活動してきたDYGLから見れば「多様性がない」とも取れるだろうし、逆に「それが幸せ」とも取れるだろう。詳しく明言はしなかったものの、彼らの心の中ではどっち付かずでモヤモヤとした気持ちは間違いなくあると思う。


今の世の中は決して良い状況とは言えない。アメリカは『アメリカ第一主義』を掲げ、韓国と日本の関係は悪化の一途を辿っている。日本も不景気や所得減、消費税増税など、枚挙に暇がない。思えば民法のテレビ局で明るいニュースが報じられることは、ここ数ヵ月でほとんどなかったのではなかろうか。


『Don't You Wanna Dance In This Heaven?』は、そんなDYGLの抱えるフラストレーションが爆発した一幕だった。轟音のノイズが渦巻く中、加治は跳び跳ねながら力の入った指弾きを連発し、下中は観客エリアに突入の後秋山と立ち位置を入れ替えて演奏。秋山はマイクに激突しそうなほどの熱量で髪を振り乱しながら歌唱。演奏が終わると、会場は大きな歓声に包まれた。


しばらくして、アンコールで再びフロアに舞い戻ったDYGL。「全然足りなーい!」「もっとやって!」と叫ぶ観客に対し「やらせてください!」と返す秋山に笑いが広がる。


アンコールの楽曲は、ニューアルバム『Song of Innocence & Experience』の中で唯一本編で演奏されなかった『I'm Waiting for You』、そして前作でも絶大な存在感を放っていたアップテンポなナンバーである『Don't Know Where It Is』だ。

 


DYGL - Don't Know Where It Is (Live)


『I'm Waiting for You』では全編通して穏やかに進行。かと思えば『Don't Know Where It Is』では出し惜しみなしの全力のパフォーマンスを繰り広げ、多くの拳が突き上げられる圧巻の盛り上がりで幕を閉じた。


今回のライブを観て、彼らは世界規模で有名になる資質を備えた類い稀なるバンドだと感じた。そう思った理由は直感ではない。秋山のボーカルはもちろんのこと、サウンドは研ぎ澄まされどこまでも肉体的。更には世界情勢や諸問題を俯瞰して見る観察眼も備えており、総じて『これからの音楽シーンで長く生き残る』ために重要な要素を兼ね備えている印象を受けたからだ。


SNSでの拡散やメンバーの顔面偏差値に重きを置く、いわゆる『ファッション音楽』が幅を利かせる現在の音楽シーン。しかしかつての音楽シーンを思い返してみてほしい。曲と歌詞を重点的に評価し、世間一般的に『売れた』と見なされるアーティストのそれ以外の部分については、ひとつの個性という認識でしかなかったはずだ。


もちろん彼らはそんな音楽シーンについても熟知しているはずで、今後もそうした現状に対して自身の考えを発信していくだろう。……これは来年や再来年というような規模の話ではない。これから何年もの時を経た後、更に劇的に変化した音楽シーンで最後に立っているのはDYGLなのかもしれないと、そう強く思った次第だ。


【DYGL@米子 セットリスト】
Hard to Love
Let It Swey
Let's Get Into Your Car
Spit It Out
Boys On TV
Bad Kicks
Only You(An Empty Room)
An Ordinary Love
Behind the Sun
A Paper Dream
I've Got to Say It's True
Thousand Miles
Waste of Time
Nashville
As She Knows
Come Together
Don't You Wanna Dance In This Heaven?

[アンコール]
I'm Waiting for You
Don't Know Where It Is

マキシマム ザ ホルモンとレペゼン地球の一件について、腹ペコとして思うこと

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190723182632j:plain


先日レペゼン地球がYouTubeに発表したとあるMVが、ネット上で話題になっている。


そのMVは『パワハラ ザ ホルモン』というタイトルで公開された。内容について触れると、レペゼン地球が炎上商法に踊らされたファンを嘲笑うと共に、パワハラやセクハラを肯定するような作りとなっている。


思えばNGT48の山口真帆が「運営とメンバーからのパワハラがあった」と内部告発したことを皮切りに、セクハラやパワハラに関する世間の目は厳しくなった印象を受ける。そして火は益々巨大化し、現在では日本というひとつの国の問題としてセクハラ・パワハラの根絶が叫ばれている。


そんな中公開されたこのPVは炎上しないわけがなく、発端となったレペゼン地球はもちろんのこと、その計画に荷担したホルモン側にも強いバッシングが浴びせられる事態に至った(ちなみに現在は騒動の大きさを受け、MVは削除されている)。


さて、今回はそんなレペゼン地球の動画騒動について、マキシマム ザ ホルモンのファンである腹ペコ視点の個人的見解を書き記したいと思う。


当ブログは音楽関係の記事を多く執筆している。よって共犯者であるジャスミンと首謀者であるレペゼン地球に対する意見は一旦置いておいて、当ブログにおいてはホルモンのみに焦点を絞って書き進める。その点ご了承願いたい。

 

 

MVの内容について

本題に入る前に、まずはMVの内容について語らねばなるまい。


動画削除前、動画が公開された直後、僕は今回の記事を書こうと思い、1番の歌詞のみ手入力でメモとして書き記していた。結果的に動画は削除されてしまったため再度見返すことは叶わないが、以下の歌詞を見ていただきその雰囲気だけでも感じ取ってほしい。

(A)
新人入ってきたよって
売りたい売りたい売りたい売りたい!
だけど(そう!) 俺らには(そう!)
売り出す(金がねえ!) 広告費なんて(ない!)
プロモーション費も(ない!)
テレビやラジオに出演させられるコネも(ない!ない!)
おっぱい出せばすぐ売れるよー?
馬鹿な男達食いつくよー?
お偉いさんに枕営業 してきて仕事取ってこい

 

(B)
どうすればいい!?混沌の闇 売るためにどうすればいい!?
どうすればいい!?混沌の闇 辿り着くアンサーは
我々にはこの方法しかない

 

(サビ)
炎上!炎上!炎上商法だ!
簡単(かつ!)無料(かつ!)話題性あり!
あれも!これも!全部プロモーション!
メディアは食いつき記事を書き 全国に配信してくれてる
アンチは喜びそれを拡散 馬鹿みたいに広告をお手伝い!
だけどファンには心配かけた
謝罪ヘドバン! スマン!スマン!スマン!

 

……以上が1番の歌詞である。


サビ部分の「スマン!スマン!スマン!」に関しては完全にホルモンの楽曲『F』そのままであり、青や赤、黄色と色付けしながらヘドバンを繰り出す光景などは『予襲復讐』のパロディー。この動画を見てしまうとむしろ、マキシマム ザ ホルモンが全編通して協力しているようにしか思えない作りだ。


更にラストではナヲがツイッター上で語っていた通り、マキシマム ザ ホルモンのメンバーが全員出演しての説教の後、レペゼン地球を全力で殴り飛ばすシーンがある。


……ここで問題なのは、ナヲが「セクハラやパワハラはダメ」と語っていたその口ぶりに笑みが含まれていること。そしてその後は亮が「俺実はレペゼンのファンなんだよね」と語りながらレペゼン地球に近付き、ダイスケはんに写真を撮らせる場面すらあるのだ。


この一部分だけを切り取ってみても「説教するならと出演した」というナヲの言い分は絶対に通らない。よってホルモン側も、動画の内容については事前に知っていたと見るべきだろう。

 

『予襲復讐』という楽曲について

にわかファンにとってはどうでもいい話だろうが、腹ペコ(ホルモンファンの総称)にとって『予襲復讐』という楽曲に対する思いは、そんじょそこらの楽曲とは大きく異なる。


『予襲復讐』は前回のアルバムから約6年ぶりと、長いスパンを経て発売された作品だ。そう。6年ぶりである。腹ペコの間でも「次のホルモンはどう動くのだろう」「もしかすると路線変更するかもしれない」という一抹の不安を抱えて発表されたアルバムなわけで、その全く変わらないサウンドと勢いを浴びることのできた喜びはひとしおだったのだ。

 


マキシマム ザ ホルモン 『予襲復讐』 Music Video


そんな絶大な人気を誇る『予襲復讐』であるが、実はライブで演奏されたことは片手で数えられるほどしかない。それどころか先日プロモーションされたもうひとつのホルモンである『コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)』においても、『予襲復讐』は決して演奏許可をおろさなかったほど。


理由は定かではないが、悲壮感や人生観を赤裸々に吐露し、亮が「特別な曲」と語っていることからも、演奏しないのは彼らなりの強い意思の元で決定されたのは間違いないのだ。


そんな大切な楽曲がレペゼン地球に使われたわけだ。なぜ大切な曲を使うのを許可したのか。なぜレペゼン地球に……。しかもそれが炎上商法となれば、それはファンが怒り心頭となるのも仕方ないと言える。

 

マキシマム ザ ホルモン像の崩壊

今回の騒動においてファンが最も怒り、落胆した部分こそ、この『マキシマム ザ ホルモン像の崩壊』という点だと思われる。


かねてよりホルモンは、現代社会の風潮に「No」を訴え続けてきた。以下の『え・い・り・あ・ん』では違法アップロード禁止を叫び、ライブでも「全員が助け合って楽しもう」「痴漢ダメ絶対!」と長尺で語り、今回の動画がアップされた前日にはライブで大麻所持で逮捕されたKenKenとJESSEに対し、友人と立場でありながらも「ほんまにダサい」と苦言を呈していた。

 


マキシマム ザ ホルモン "え・い・り・あ・ん"


そう。今回の事件はただの『ホルモンのミス』という一言では済まされない。パワハラ・セクハラをネタとして昇華し、また助長するようなMVに強力してしまったというのは、今までの熱いライブMCや他者を思いやる彼らの人間性、ひいては楽曲の持つメッセージ性にも陰りを落とす重大事件なのだ。


事実レペゼン地球の謝罪文には「面白かった」「さすがレペゼン!」という称賛の声が多かったのに対し、ホルモンの謝罪文には多くの批判の声が集まった。それは今までホルモンを信じ励まされてきたファンの期待が崩壊した瞬間であり、同時に「信じていたのに」という信頼の裏切りでもあった。

 

おわりに

今回の一件により、ホルモンから離れるファンは一定数はいるだろうと思う。


レペゼン地球に強力したこと、大切な予襲復讐を汚したこと、そして間接的ではあるにしろ、信じてくれたファンを裏切ったこと……。これらについてはいくら謝罪をしようが覆すことは不可能であるし、「こうした事件を起こしてしまった」という事実は腹ペコの心に深く刻み込まれるだろう。


今後彼らがやらなければならないのは、行動で返していくことしかない。人間誰しもミスはある。重要なのはそのミスから何を学び、二度と繰り返さないためのシミュレーションを描けるかだ。


そしてその行動を見届けるのは、我々腹ペコでなければならない。最も信頼していたファンだからこそ、彼らの誰よりも応援し、励ます義務がある。本当にファンを辞めるのは、彼らの全力の行いを観てからでも遅くない。がんばれ、ホルモン。