キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【記事寄稿のお知らせ】アニメのテーマ曲を語ろう! 2023年春アニメ編 

uzurea.net様に、春アニメのテーマ曲記事を寄稿しました。

あまり知られていないことですが、アニメタイアップは、基本的にはアニメ会社がアーティストにオファーして、そこからアーティスト側が何曲か送ってきたものを選別、そこから一番雰囲気に合ったものを採用する……という形で選考されることが多いです。最近では『映画SLAM DUNK』の映画に起用された10-FEETが10曲以上送って、最終的に“第ゼロ感”だけが通った話が知られていますが、要はアーティスト側はタイアップを受けたからには、絶対に『アニメに寄り添った渾身の1曲』を生み出す必要があるわけで。

ちなみにこれはアニメだけではなく、ドラマや映画でも同じで。例えば数年前に発表された曲が、新作ドラマの曲として使われることってないですよね。それと同じで、アーティスト側は「絶対に◯◯さんの◯◯って曲でお願いします!」という制作者サイド(主に原作者)からの要望がない限りは、完全新曲を作る流れです。

『【推しの子】』YOASOBI/“アイドル”
『僕の心のヤバイやつ』ヨルシカ/“斜陽”
『地獄楽』millennium parade × 椎名林檎/“W●RK”
『マイホームヒーロー』藤川千愛/“愛の歌“
『江戸前エルフ』Cody・Lee (李)/”おどる ひかり』

今回は上記の5曲について書きましたが、その物語との親和性を一番重視して選んだつもりです。【推しの子】を例に挙げると、この物語って一見アイドルがキラキラしてるように思えるんですが、実際は超ドロドロした話なんですよね。推してたアイドルが実は子供を宿してて、それでもファンの前で「みんな大好きだよー!」って猫被ってるっていう。で、今この曲がめちゃくちゃバズってるのはご存知の通りなんですが、全部聴いたら鬱モードの場面も多くて。でもこれって「原作を知ってなければ分からないかもなあ」とも思うんです。マジで《究極のアイドルー♪》って何も知らずに歌ってる人たちに、このアニメ観せたら卒倒するんじゃなかろうか……。

他にも“斜陽”は、本当は好きな人を『太陽』だと思いたいけどネガティブだから『斜陽』で表現してたりとか。娘を守るために彼氏を殺した親の行為を『愛』と表現した“愛の歌”とか……。逆にすっごく笑える話なんだけど、たまに感じる「この楽しさってこの場所があるからだよなあ」とハッとする“おどる ひかり”とか。いろいろなことを考えながら書きました。

編集の過程でカットされてる部分もありますけど、特に歌詞と物語との関係性を汲み取って、じっくり読んでもらえればと思います。書いててとても楽しかったです。またやりたいです、夏アニメバージョンとか。

アニメのテーマ曲を語ろう 2023年春アニメ編 『アイドル』、『斜陽』、『W●RK』、『愛の歌』、『おどる ひかり』 - uzurea.net

【記事追記のお知らせ】『サマソニ2023』情報まとめ! 〜第5弾・第6弾アーティスト発表〜

uzurea.net様に、サマソニ記事を追記しました。今回のサマソニ記事は、単発で出していたのだけれど、今回の記事は実験的な試みとして、発表された情報をその都度更新。記事としての厚みを出していく形にしています。

おそらく今回の第6弾発表で主だった解禁は終わりのような気がしていて、後は僅かな邦楽アーティストとタイムテーブルかな、という気はするんですが、めちゃくちゃ最高のラインナップで。誰を観てもお釣りがくるような、国内最強のフェスになってるなと。

あと今回はPodcastの発言もいろいろ追加したり。中でも驚きだったのは、ケンドリック・ラマーが数億円でブッキングされたことですね。どうやらケンドリックのマネージャーが、提示された金額に「あと1億円上乗せしてくれ」と言ったのだとか……。19日に比べて20日はケンドリックがずば抜けて注目されている、その理由が分かったような気がします。

他には、いろいろとコアな洋楽ファン向けな部分も書きつつ……。uzureaさん関係では1年前に『今来日中のアーティスト特殊』的なものをさせてもらったんですけど、あれが割と伸びたりもしたので。最終的には当日の開催が近付くにつれてグッと伸びてくれればいいなーと思っています。

チケットはどうやら、東京は開催2ヶ月前にしてソールドアウトで前代未聞の売れ行きとのこと。……今回の清水社長のPodcastでも言われていましたが、つまらない毎日を生きる上で『サマソニが年に一度の楽しみ』的な面で捉えている人も少なくなくて。特になかなか遠征が難しい人たちには、本当に希望の光なんですよね。そんなフェスが完全ソールドアウトするというのは、凄く嬉しいなと感じているところです。毎日サマソニのことを考えてる人に、ひとりでも多く読んでいただきたいです。

『SUMMER SONIC 2023』情報まとめ 最強夏フェス サマソニを全力で楽しむ!【5月13日更新】 - uzurea.net

【記事寄稿のお知らせ】ワイヤレスイヤホン『QCY HT05』レビュー

uzurea.net様とMIRISE株式会社様からご依頼いただき、最新ワイヤレスイヤホン『QCY HT05』のレビュー記事を寄稿しました。

これまで個人的にもいろいろ買っていたし、依頼をいただいたりもしていたワイヤレスイヤホン。ただ使う側としては『低音がよく出る』とか『良音質!』というのが本当にたくさんあるわけで、いざ買うときには迷ってしまいます。文字だけを見ると、全部同じに見えますし……。そんな中で、本品は『普段使う用』としては最良のものだったように思います。

もちろん「低音が良く出るよ!」と謳われてるイヤホンなどは、音楽的な面では素晴らしいです。けれどもライン電話とかYouTube動画を観ると逆に低音が効きすぎて、違和感があったりして……。例えるなら、ヒカキンの動画を観ていたら『ドゥピン!』の効果音だけめっちゃデカく聞こえて集中できない、みたいな。総じて音楽と日常使いを両立させようと思うと、特に高めのイヤホンは難しくなりがちです。

対して今回の商品は、とにかく音が安定している印象を受けました。音楽聴いた後にツイッター開いて、アプリゲームもしたり、といったマルチタスクな使い方をする人に、特にオススメしたいです。これ1本あればもうワイヤレスイヤホン買わなくても良いんじゃないかな……。

ワイヤレスイヤホン『QCY HT05』レビュー 低価格ノイズキャンセル機能付きの高コスパモデル 普段使いに【製品提供記事】 - uzurea.net

 

【ライブレポート】DNA GAINZ『"Baby Noise vs Bug the World tour" FINAL』@松江B-1

こんばんは、キタガワです。

 

音楽を好きになって何十年も経つが、何かを聴いて「こいつらやべえ!」と感じることは年々減っている気がする。もちろん、何をもって「こいつらやべえ!」とするかは人それぞれだ。けれどもライブハウスに生きるリスナー視点からすると、それはおそらく『音楽の熱量』だと思う。それはTikTokやYouTube経由の『バズ曲』が世間的に浸透する今でこそ余計に感じるものでもあって、そうした楽曲も良いなあと思う一方、心を震わせる音楽に出会うことを、心のどこかでは求めていたのではないか。

そうした中で出会ったのが島根県松江市発、ライブの全国行脚で動員を獲得するバンド・DNA GAINZだった。実際、彼らの楽曲をキャッチー、更には口ずさみやすい点で魅力的に映ったのが始まりではあったが、その中にロックバンド然とした熱量が多分に存在することを確信。そこからどんどんハマっていった。彼らの真意については先日松江市の居酒屋にて敢行した独占インタビューに詳しいとして、その本質を知るにはやはり、ライブでなければならないと思ったのもそのときだ。

今回のツアーファイナルは、彼らの本拠地である松江市で、言わば凱旋ライブの体を成した代物。ボーカルのながたもライブで語っていたが、地元民でも正直ここまでパンパンのB-1は見たことがないレベルでチケットは実質的なソールドアウト。会場には彼らの楽曲に心掴まれたファンがギッチギチに詰め、その瞬間を心待ちにしていた。

ammo、bokula.ら盟友2組によるライブを終え、DNA GAINZの出番はオーラス。浮遊感に包まれたSEを背にステージ裏から現れたのは宏武(Dr)、はだいぶき(B)、イタガキ タツヤ(G)、ながたなをや(Vo.G)の4名で、各自思い思いのスタイルで来たる爆発に向けて心を整えている。中でも印象深く映ったのはながたで、ライブでの独特のポーズ(指をキツネの形にするイメージ)を天に掲げながら、音に合わせて体を揺らめかせている。つられて同様のポーズを掲げるファンとの一体感も、ライブを長らくこなしてきた信頼感の証だろう。

DNA GAINZ / ラフラブ (Official MUSIC Video)"TSK「かまいたちの掟」"ED曲 - YouTube

オープナーは、彼らの名前を広く知らしめた契機とも言える“ラフラブ”。音源とは異なりながたはシェイカーを振り、イタガキはクラベスのような打楽器を用いながら、徐々に熱量を高めている。そして冒頭からのメロが終わると楽器隊が一斉に音を鳴らすのを契機として、ライブハウスは一瞬にして轟音空間へと変貌した。……彼らがサウンド、更には歌詞についても深く考えるバンドであることはこちらのインタビューで語ってくれた通りだ。しかしながらライブハウスの空間で聴く“ラフラブ”は『ラブラブ(LOVE LOVE)』という言葉自体を再考。結果『笑える愛=ラフラブ(LAUGH LOVE)』とする独自解釈をその熱量でもって叩きつける、がむしゃらな爆発だった。

今回のセットリストは現在の持ち曲と未発表曲をほぼ網羅した、現時点でのDNA GAINZのベストを見せ付ける形。なお我々が音源として聴ける楽曲の全ては今のところ“ラフラブ”、“Sound Check Baby”、“GOLD HUMAN”の3曲なので、セットリスト的には大多数が初見の楽曲も複数存在。しかしながらそれらの未発表曲をライブ後半に敷き詰めた攻め切る構成でもあったのは彼ららしく、MCがほぼなかったのも含め、何か信念のようなものさえ感じた次第だ。

DNA GAINZ / Sound Check Baby (Official Music Video) - YouTube

次なる楽曲は先日デジタルリリースされ、高評価の声が多く挙がった“Sound Check Baby”。元々情報量の多いこの楽曲、会場に集まったファンのほとんどが「どんなアレンジで演奏されるんだろう?」と期待していたことと推察する。……なお実際はどうだったのかと言うと、ながたがルーパーで《サウンドチェック》の声とボイスパーカッションをループさせ、サウンドに付随させていたのでビックリ。メンバーの体重を乗せた演奏が牽引する中、早くも汗だく状態のながたは時折声を枯らしながら、限界突破のパフォーマンスで魅了していく。ライブハウスに足繁く通っていると、軽やかに演奏して去っていくバンドも多い。けれども彼らの姿はとてつもなく無骨で、そうした熱いライブこそ、雄弁に心を震わせるのだなあと再認識。エネルギーで持って全部持って行く感じというか。

以降は音源化されていない楽曲を連発する、彼らの真価を見せ付けるゾーンに。はだがストリング・ビーズで自然的な音を奏でるゆったりした一幕から、後半に一気にノイズで畳み掛ける理外の“バラード”。ながたが「死んだ友達に届きますように」と吐露し、極楽浄土と現実とを対比させる“歪な世界”。声にエフェクトをかけつつ、バンドの希望的未来をシェンロンに頼んで始まった“神龍”と多彩な楽曲が並んだ中で、特筆すべきは“神龍”の爆発力。実際、先日のインタビューでライブアンセムについて訪ねたときに「“神龍”がマジでヤバい」という話を聴いていたのもあるが、キャッチーさに加えてノイズにまみれたどしゃめしゃ感、4人の弾けっぷりを目の当たりにすると、今後のライブでもひとつのキーポイントになること請け合いの楽曲だった。

「僕はライブをするとき、いつも『ライブハウスにいる、ここにいる全員でひとつの生き物にしたい』と思ってます。この場にいる誰が欠けても出来なかった」……。ながたは短いMCでこう語ると、改めてこの日集まってくれたファンに感謝を伝えていた。冒頭でも綴ったように、この松江B-1の会場がここまで埋まるのは異例中の異例で、彼自身もそのことを理解しているからこそだろうと思う。

GOLD HUMAN - YouTube

そして「最後に隕石落として帰ります」と語って雪崩れ込んだのは“GOLD HUMAN”。人類を救っても、愛を知っても決して満たされない乾き。だからこそDNA発で何かを成そうという、バンドの存在意義をも体現したキラーチューンだ。ながたはフレットを動かす指が滑る程の汗で思いを爆発させ、楽器隊のサウンドについてもますます熱量を高めていくサウンドに載せて完全燃焼を図る……。それは理屈ではなく心で伝える、バンドの理想形に最も迫った代物だった。

ここでライブは終わりかと思いきや、正真正銘のラストソングとして鳴らされたのは“オーバーザ・ムーン”と題された楽曲。ながたは終始ハンドマイク、サウンドの軸となる部分は同期を使用しており、BPMも終始ゆったり目。これまでの楽曲とは雰囲気の全く異なる楽曲だったのが印象深い。なお聴こえてくる歌詞を汲み取るに、こちらは地球から遠く離れた月や宇宙を題材にしていることも判明。以前のインタビューで宏武が「(歌詞は)スケールの大きいものがいい」と発言していた、そのひとつの解とも言える展開に思わず唸ってしまった。どこまでレンジの広い制作をするんだと。

DNA GAINZは基本的にアンコールはやらない主義を貫くバンド。ゆえにライブはここで終幕となったが、そこに「もっとやってくれ!」という感情は誰しもが皆無だったことだろう。持ち時間40分に全てを詰め込んで余韻のみを残すライブは、それ程までに圧巻だったのだから。

彼らの楽曲を初めて聴いた人が、必ず抱くのはその『熱量』。そしてそれを爆発させる場は当然ライブハウスだろうと思ってはいたが、いやはや。ここまで命を削るレベルの勢いで畳み掛けるライブというのは全国的にも非常に稀有であるし、もっともっと広がっていく可能性を強く感じた一夜だった。……「音楽の形っていろいろあって迷っちゃいますよね。でも、自分の好きを信じたらいいです」とながたは最後に語っていたけれど、その『好き』が今回DNAに刻まれた我々は、きっと次のライブにも足を運ぶのだろうと思う。リリースの報を待ちながら、来たるその日を楽しみにしたい。

【DNA GAINZ@松江B-1 セットリスト】
ラフラブ
Sound Check Baby
バラード
歪な世界
神龍
GOLD HUMAN
オーバーザ・ムーン

【インタビュー】島根県松江市発、無敵のロックバンド・DNA GAINZ。その全てに迫るメンバー全員インタビュー!

いつの時代も、音楽との出会いは突然だ。バラエティ番組の主題歌としてふと耳に入った、DNA GAINZ(ディーエヌエーゲインズ)の“ラフラブ”……。この楽曲に音楽のページが塗り替えられるような、謎の確信を抱いたのが全ての始まりだった。もっとも、活動拠点が同じ島根県松江市であることを知ったのはその後だったのだけれど、諸々の運命めいたものを感じたのは言うまでもないだろう。

そこで今回敢行したのが、DNA GAINZの独占インタビュー。スタジオ合わせを終え、清々しい疲労感を携えた4人と島根県松江市内の居酒屋にて、それぞれの音楽ルーツや新曲の“Sound Check Baby”に込めた思い、そして希望に満ちた展望まで、じっくり語ってもらった。……音楽シーンの未来を塗り替える可能性を秘めた、DNA GAINZというバンド。彼らについて知る重要な要素として、今記事が役立てば幸いである。

DNA GAINZ

ながたなをや(Vo.G 写真中左)
はだいぶき(Ba 写真左)
宏武(Dr 写真中右)
イタガキ タツヤ(G 写真右)

 

【開幕】

──今日はお忙しい中集まっていただいて、ありがとうございます!

宏武「DNA GAINZです。よろしくお願いします!」

イタガキ「こちらこそ、呼んでいただいてありがとうございます」

──今日はスタジオ終わりと伺っています。ちなみにスタジオは、結構ガッツリ入ってる感じなんですか?

宏武「週4ぐらいかな」

イタガキ「そうっすね。週4〜週5くらいで。いくらやってもやり足りないですね」

──すごい!めちゃくちゃ多くないですか?

宏武「課題もいくらでも見付かるので。結成当初言ってたのは、全国目指す部活みたいな意気込みでやろうっていう」

──本当に楽しくてやってる感じですね……!ちなみに皆さん、お酒は結構飲まれるんですか?

イタガキ「いぶが一番飲むかな」

宏武「僕はあまり飲めないので。遠征とかだと打ち上げでも、次の日のことも考えて一杯だけ飲んで帰る、みたいなこともありますね」

──なるほど!とりあえず生ビール頼みますか(笑)

〜ここではだ、ながたが合流〜

はだ「おはようございます、初めまして」

ながた「DNA GAINZです。宜しくお願いしますー!」

──初めまして……(ふたりが着ているGEZANのTシャツを見ながら)あっ!GEZANだ!

はだGEZANみんなめっちゃ好きです。みんなで広島のライブ観に行って」

──GEZANめちゃくちゃ良いですよね!あ、みなさん何飲まれます?

はだ「あ、じゃあ生で」

ながた「僕も生で」

宏武「そういえば、スタジオ終わりでお酒飲むってしたことないですね」

はだ「4人で飲むのも久しぶりです」

──あ、そうなんですね!

はだ「みんな先に、全然食べてもらって。僕はお酒がないと食べれないので」

──めちゃくちゃ酒飲みじゃないすか(笑)


【Dr.宏武の音楽ルーツ】

──おそらくバイオグラフィー的な部分は、今後様々なインタビューで語られることと思いますので……。まずはそれぞれのメンバーの音楽ルーツをお伺いできればと。まずは宏武さん、どうですか?

宏武「僕はBUMP OF CHICKENきっかけで、ドラムを始めたんです。親が好きで家でも流れてて。で、BUMP OF CHICKENのMVを観たときにギターとベースは何やってるか分からないけど、ドラムって結構動きが大きいので。見様見真似でドラムをやって。きっかけはそれでしたね」

──プレイのお手本というか、影響を受けた的なところは?

宏武「いろいろなんですけど、東京事変の刄田(刄田綴色)さんとか真似したりしましたし。あとはNUMBER GIRLのアヒト・イナザワさんとか、あと星野源のサポートをやってるカースケ(河村“カースケ”智康)さんとか、いろいろで。『この人が師匠!』みたいな人はいないかもしれないです」


【B.はだの音楽ルーツ】

──それでは続いて、はださん。

はだ「一番はじめはもしかしたらGLAYかもしれない。小学校のときに、おばあちゃんの家にドラムセットがあったんですよ。父さんが叩いてて。それでGLAYの“ここではない、どこかへ”っていう曲があるんですけど、それを父さんがいつも叩いてて、おばあちゃん家に行ったときは俺もその部屋で一緒に叩いてたっていう。だからもしかしたらルーツかも」

はだ「で、そのまま学校の合唱団に入って、ドラムとか大太鼓とかマリンバとかをしてました。ゴールデンボンバーの“女々しくて”をドラムで叩きましたね」

イタガキ「ベースはじめたのは?」

はだ「ベース始めたのはまだ先なんですけど、一回そこで音楽からは離れて。でも学校でback numberとかマイヘアの“真赤”とかが流行ってる時期で、軽音部のやつとかがやってて「いいなあ」ってなって。とある大学のPRビデオをヒゲダン(Official髭男dism)が歌ってて、それがめっちゃ格好良くて。ライブも行ってめっちゃ良くて。それで運命かなと思ってベースやろうって」


【Gt.イタガキの音楽ルーツ】

はだ「じゃあ次、ギターのたっちゃん行きます」

イタガキ「結構いろんなタイミングがありますけど。ギター始めたタイミングとかエレキギター始めたタイミングとか……。音楽で言えば、親の車で聴いてたものが一番影響大きいかなって。ウルフルズの『ベストやねん』と、シェリル・クロウっていうアメリカのカントリーの人で。あとは桑田佳祐とかも聴いてたかな。“涙のキッス”とか。っていうのが一番最初かもしれないですね」

イタガキ「ギター始めたきっかけは、家に来たおっちゃんがギター置いて行ってくれて。そのときに同時にゆずのスコアを置いていってくれたっていう」

イタガキ「僕は元々は吹奏楽部で。そのときに入ってきた後輩がバンドやってて、コピバン誘ってくれたんですよ。そのバンドが東京事変で。そこから東京事変のコピバンをずっとして、たまに椎名林檎のソロとかやってて。だからルーツには椎名林檎がいる感じですね。僕は」

──貴重な話!

イタガキ「あと、メンバーの中では一番洋楽聴くかもしれないっす。ダイナソーJrとかピクシーズとか。シャンソンとかも聞きますし、雑多な感じです。でもやっぱりロックが多いですかね」

【Vo.Gt ながたの音楽ルーツ】

ながた「僕はめっちゃ遡ると、シャ乱Qらしいんですよ。昔の動画とかって全裸で歌っとったりとか、団扇があればそれをギターに見立てたりとか。そういうのをずっと見て、多分歌がDNAに刻まれて好きだったんだなっていうのもあるし。ちゃんと音楽好きになったのは小4くらい。お姉ちゃんがギターしとって、その影響でお年玉でドラム買って。ドラムから始めたんですよ」

──あ、元々ドラムだったんですね!

ながた「はい。HYとかMONGOL800とかBUMP OF CHICKENとかRADWIMPSとかを好きでやってて。ちゃんとバンド組み始めたら、東京事変とか藍坊主とかそこらへんやって。次の学校行ったらベースやってみようかなと思って、いろいろコピーして……」

ながた「その学校で組んでたのは5人組バンドで、僕以外全員女の子だったんですけど。そこでオリジナルやろうと思って、僕が作ってボーカルの子に歌ってって言ったんですよ。したら『こんなの歌いたくない』って言われて。『じゃあ辞めて』って言ってライブ1週間前にその子をクビにして、そこで急遽自分が歌うようになって。したら自分の曲歌うのめっちゃ面白いやん!ってなって」

──おおー。

ながた「僕、歌詞を書く上で『言霊』ってあると思っていて。最初の方は失恋の曲だったり、ちょっとネガティブなことを歌詞にすることが多かったんですけど、歌うと言霊で私生活もその歌の通りになってしまう感覚があって。それが嫌で今は現実と、こうなってほしい理想っていうのを半々にして書いてますね。現実の方もあまりマイナスに書かずに。気分を上向きにした感じで歌詞を書いてるのはありますね」

宏武「言霊は僕も重要視してますね」

イタガキ「俺も結構言霊は大事にしてきてる」

──それはめちゃくちゃ重要な話ですね。


【新曲“Sound Check Baby”の音のこだわり】

DNA GAINZ / Sound Check Baby (Official Music Video) - YouTube

──DNA GAINZには音源を聴いたらロックの荒々しさみたいな、綺麗にした感じじゃなくて、ライブハウスで聴きたいなって思わせる衝動みたいなものを感じていて。自分たちなりのこだわりって何かあったりしますか?新曲についてもいろいろ聴きたいです。

ながた「今回の“Sound Check Baby”の前に“ラフラブ”や“GOLD HUMAN”っていう曲を出したんですけど、それって良い意味でデジタルシングルとして出しやすくて。アルバムになるとこだわったり、◯◯じゃないといけないとかがあるけど、やっぱりデジタルだと柔軟になるんですよ。いろんな意味で実験出来るので、それこそサウンドチェックは……みんな言ってくれるんですけどライブっぽいというか、荒々しい音にはなりましたね」

ながた「その中でも歌を聴かせたいから、歌のエフェクトを強くしたりとか。“ラフラブ”や“GOLD HUMAN”はドラムの音が前に出てた感じだったんですけど、あえてエフェクトかけて歌と混じる感じにはしましたね」

──うわー。そうした裏側の話うかがうと、全部繋がる感じがありますね……。

ながた「ドラムのミックスも、基本はシンバルより太鼓類の方が大きめにやったりするんですよ。でも今回の曲はシンバルもバリバリでかくて。あえて音が暴れとる感じで。それがええなあっていう感じで」

──僕、最初のブワー!ってノイズが走るところがめっちゃ好きで。『何だこれは!?』ってなる感じがあったんですけど、あれはちなみにどんな感じで作ってるんですか?

ながた「これは元々あるノイズのサンプルを切り刻んだり、加工したりして。その前のキュワァーン!ってやつは、ギターの秘密の機材を使って。あれは全部自分たちで作った音ですね」

宏武「世界にひとつだけのノイズですよね」

ながた「“Sound Check Baby”って曲は、中高生の夕方みたいなイメージで歌詞を書いたんですよ。全部ひとつの物語にはしてなくて、自分の中では一行一行違う日なんですよね。なのでそのキュワァーン!の音の巻き戻し感にしても、効果的だったのかなっていう」

──ライブで絶対にセトリに入る勝負曲ですよね。たしか今年より前とかにも演奏されてますよね?

宏武「結成して1年経ってない、去年の夏ごろとかからずっと演奏してますね」

ながた「元々あの曲は……フェスとかサーキットイベントとかに出ると、大体みんなリハーサルから聴いてるんですよ。そのために作ったものだったんですけど、あまりに良くなりすぎて、もったいないなあって。それでサウンドチェックじゃなくなったっていう」

──えっ?元々は本当のサウンドチェックの曲だったんですか?

ながた「そうなんですよ。これは他のインタビューでも言ったんですけど、この曲は自分の中でも人生を表してる感じで。だからMVでも、心電図が止まるシーンから始まるんです。本当の本番が『生きる』とか『死ぬ』ことだとして、主人公の女性が離婚とか病気とか、いろんなものを食べてサウンドチェックするっていう」

──しっかり物語性もあって。

ながた「でも最初に作ってるときは、あまり意味なんてなくて。夕方から夜の、中高生の思い出にはいたんですけど完全な意味はなかった中で、曲が出来てから意味が付いてきたなあっていう」


【ながたなをやの綴る歌詞について】

DNA GAINZ / ラフラブ (Official MUSIC Video)"TSK「かまいたちの掟」"ED曲 - YouTube

──次は歌詞について伺おうと思うんですけど、これに関しては最初にながたさんが『言霊があると思ってる』『あえてポジティブに昇華させて書いてる』っていう話を聞いて、凄く腑に落ちた感じがあったんですよ。これは新曲についてのブログにも書いたんですけど、それこそ“ラフラブ”では《ラブラブじゃない ラフラブ》っていう、『笑える愛=ラブラブ』だよねっていう真理とか。対して“Sound Check Baby”では《親が心配してる ちゃんと見せなきゃ/オレの生きてきた生きていきたい世界》とか。

──もちろんサウンドだけを聴いてもめちゃくちゃ最高なんだけど、歌詞に目を向けるとまたもう1段階深みにハマるのがDNA GAINZの魅力というか。今はサブスク時代もあるし、耳馴染みが良かったりしたりいろんなアーティストに売れるきっかけがあると思うんですけど、歌詞的な点でもやっぱり、こうした魅力のあるバンドが凄く重要なんじゃないかなと。

はだ「ありがとうございます」

ながた「最近は感情的なバンドが多くて。それは歌詞だけじゃなくて、音にも結構表れとって。聴いても(ボーカル視点の思い出だから)風景が思い浮かばないっていうか、そのメリットとしては、そのバンドのボーカルはめっちゃ好きになるんですよ。自分と重ねて。それも良いなと思うんですけど、僕らは曲を聴いてどこかに行けるような、無敵感を感じてほしい気持ちはあります」

宏武「スケールがデカいのがいいですね」

ながた「それこそサウンドチェックの話で。大学1年生で一人暮らししてるファンの子が、前に僕らに『“Sound Check Baby”聴いて歩いてると無敵になれます』って伝えてくれて。それが『よっしゃ!届いた!』って思った瞬間で、嬉しかったです」

宏武「『これ聴いてたら、大学で胸張って歩ける』って」

──それ、めちゃくちゃ嬉しいですね。

ながた「今考えたのは、曲を1曲通してじゃなくて、多分一行一行を通して僕らの曲を好きになるんじゃないかなって」

──うんうん。

宏武「最近は何というか、歌詞に具体性が高すぎる音楽もたくさんあって」

ながた「そういう音楽が好きっていうのも凄く分かるんだけど、僕らはそれを覆して、ちゃんと新しい時代を作りたいですね」

宏武「うん。(感情的な音楽を)否定はせんけど、納得出来ない部分もあるので。自分たちにとって居心地の良いシーンにしたいですね」

──今僕らが聴けるのは主に“Sound Check Baby”と“ラフラブ”、“GOLD HUMAN”の3曲なんですけど、ライブだったら持ち時間は長いじゃないですか。その中で『どんな曲あるの!?』って知りたくなるし。今後アルバムも出ると思うんですけど、そのときに『どんな感じになるんだろう?』っていうワクワクがあります。

はだ「アルバム楽しみですか?」

──めちゃくちゃ楽しみです!で、バンド的には今後アルバム出し続けて、数年後にはもっともっと大きくなる存在だと思うんです。松江で言うとAztiC CanovaとかB-1とかいろいろライブハウスありますけど、『あの頃あのライブハウスで観たよ私!』みたいな、自慢できる日が。

ながた「あの頃アコースティックライブしとったやん!みたいな(笑)」


【『ロックバンド』に頼らない独自のライブ】

宏武「アコースティック……かまいたちの掟(※先日行われたフリーライブ。DNA  GAINZはアコースティック編成で出演)のやつも面白かったですね」

──映像で観させていただいたんですけど、凄かったです!ちなみに、あのアコースティックライブはパッと決まった感じだったんですか?

ながた「そうですね。急遽決まって。そこからあの形態は1週間毎日スタジオ入って作り上げましたね」

──めちゃめちゃ大変だったと思います。アレンジも変わってたし。

宏武「そうですね。かなり身になってます」

──アコースティックでもライブハウスでも最良の音が出せるの、めっちゃ強いですね。これはますます次のライブが楽しみになってきました!

ながた「ありがとうございます!もしかしたらライブ途中からしか来れん人とかもいるかもしれないんですけど、『どこから観てもめっちゃ良い!』って言わせるような作り方をしているので。最後の1曲だけとかでも絶対に納得させるライブをします」

宏武「もちろん最初から観たらめちゃめちゃ良いですよ!」

ながた「自信満々(笑)」


【DNA GAINZの今後の展望】

GOLD HUMAN - YouTube

──インタビューも大詰めということで。みなさんに最後に伺いたいのは、『バンドにどんな未来を描いてますか?』というもので。まず宏武さん、いかがですか?

宏武「武道館で、4Daysソールドアウト!」

はだ「わかる」

ながた「これはもう、全員の目標っすね」

宏武「それぞれがそれぞれの1日を担当して、面白い感じにしていくっていう」

──なるほど。セトリとか演出とかも変えたりして。

はだ「数字的なみんなの目標はそれですね」

宏武「あと、個人的には海外のフェスとか出たいですね。野外のフェスで、全員動き揃ってなくていいんで、お客さんがグッチャグチャに入り乱れてほしい。モッシュとかも起きんでいいんで、みんな自分の世界に入って踊ってるの見たいです」

──いいですね。イタガキさんは?

イタガキ「僕は変わらず、ギターが弾けたらいいかなって。軸を変えずに。これは後輩にはずっと言ってますけど、『音を楽しむことを忘れない』っていう。これが一番ですね」

──いい話がたくさん聞ける!はださんどうですか?

はだ「親にたくさん旅行行ってほしいですね。爆売れしたい。大切な人にはどんどんお金使ってほしいです」

──おおー!ながたさんは?

ながた「僕は、ずっと言ってる武道館もありますけど、アリーナも面白いなって。アリーナクラスになるとスクリーンがあって。映像があってからのメンバー登場とか出来るし」

宏武「演出も凝れるし」

ながた「そう。演出も凝れるから、僕らにピッタリなんじゃないかって。そこでやっと、ひとつのDNA GAINZが完成するんじゃないかと思います」

──映像に心電図が流れて『ワー!』ってなるとか(笑)

ながた「おもろ(笑)」

はだ「めっちゃ良いそれ」

──しかもアリーナじゃないと出来ないとかじゃなくて、DNA GAINZはライブハウスでも戦えるっていう。両刀でやれる強みがありますよね。

ながた「いろんな強みを混ぜたいですね。ライブハウスライブハウスって言ってるけど、何でもできるよっていう、表現の場を作りたい」

イタガキ「僕は総合芸術やりたいです。ダンスと映像と、演劇みたいに。『バンドマン』より『表現者』が良いですね」

──それこそアリーナだと何でも出来そうですし。

はだ「前の日アリーナやって、次の日ライブハウスでも良いですよ」

ながた「いろんな今の決まりを破りたいというか。僕はバンドマンなんですけど、ダサい方のバンドマンってなるのは嫌だから、新しい時代を作りたいです。……というか、みんなの言ってることは僕も全部ありますね。マジで全部叶えたいです」

イタガキ「言霊だからね」

──DNA GAINZは、言ったらまだ若いじゃないですか。で、まだ結成1年でこの注目度っていうのはエグいと思うんですよ。『hoshioto' 23』準グランプリとかタイアップとか。今後いろんな経験をして歌詞のレパートリーも増えるだろうし、「こんな曲いいんじゃない?」って探れるし。アルバムを1枚2枚って出していく頃には、多分……。

ながた「ヤバいっすね。多分アルバムというか、ミニアルバム的なものが出ればだいぶ変わると思いますよ」

──こうやってリスナー側に、DNAが受け継がれていくんですね……!というところで、今回のインタビューの締めとしたいと思います。今日はみなさんありがとうございました!

DNA GAINZ「ありがとうございました!」


【おわりに】

これにて2時間半にも及んだインタビューは幕を下ろした。ビールやジンバック、日本酒などが次々空けられた音楽談義は結果として、彼らのギラギラと光る反骨精神と「絶対に売れてやる!」という、確固たる自信を具現化した濃密な時間だった。

朗らかながらも、現状の音楽シーンの変化を目論むボーカル・ギターのながた。物事を冷静かつ俯瞰で見つつ、重要部に焦点を合わせるBaのはだ。自身の思いに忠実に、サウンドを牽引するGtのイタガキ。縁の下の力持ち的に、バンドの架け橋を担うDrの宏武……。彼らと邂逅して改めて、このバンドが如何に素晴らしい存在なのかを認識できたのは収穫だったと思う。

予定されていたインタビュー内容が全て終わると、誰から言われるでもなく次なるライブの打ち合わせを始めた彼ら。……その姿は本当に音楽シーン全体をぶち抜く可能性に満ち満ちていて、心底感動してしまった。そのDNAを文字通りリスナーに渡し続けながら、どんどん飛躍していくこと間違いなしのDNA GAINZ。彼らに出会うべきは、今である。

会社会

「あ、そういえばキタガワくん。僕ね……」

事務作業に追われていた某日の午前、ふと口を開いたのは直属の上司だった。今思えば『普段寡黙を貫く上司が身の上話をしようとしている』という時点で身構えるべきだったのだろうが、その時の僕は何の気無しに対応してしまった。なもんで、受けるダメージも想定より大きくなる結果になった訳である。

上司が語った内容は至ってシンプル。それは「僕は会社を辞めることにしたよ」とする退職報告だった。聞けば新たな就職先ももう決まっていて、それどころか退職の具体的な日程も、引き継ぎ如何に関しても既に決まっているらしい。……今後の予定を朗々話す上司を見つつ、僕は何となく察した。この報告は職場の何人かにしているのだと。様々な話し合いを重ねた終着点であることを。そして、上司の退職はもはや確定事項であると。

就職当初の僕と上司は、お世辞にも仲が良いとは言えない関係性だった。電卓の向きや書類配置に至るまで、どんなことでもキチッと済ませたい上司と、重要部以外はルーズにこなす僕はまるで磁石が離れるように、近付こうとするたびに反発し合うのは必然だった。もちろん一番怒られたのもその上司であり、「ExcelのコピペはCtrlとCの方が早いじゃん」「何で◯◯補充しとかないの?」などと、僕は細かな部分を目ざとく指摘されて大目玉を喰らう日々。対して怒られた側の僕はと言えば、重要なこと以外は基本的に「はいぃ!すいませんしたぁ!」と一見反省しているように見せつつ、心の中では舌を出していることも少なくなかった。

ただ上司の言うことに、間違っている部分はひとつもなかった。先述の電卓の向きにしても、お客様から見たらどう見えるかを考えての発言だったし、Excelコピペも同じ作業を1日数百回するようになって初めて、右クリックでコピペすることの非効率さを問われた気がした。

反面、仕事が暇になって雑談が始まると、僕と上司がとてつもなくウマが合うことが分かった。音楽の趣味。ゲーム。休日の過ごし方。僕が知っていることは上司も知っていて、逆も然り。それでもって話しているうちに仕事が増えて、その僕の仕事ぶりをまた上司が咎め、少し暇になったらワイワイ喋る……。要は人一倍『仕事は真面目に。それ以外は力を抜く』を徹底している人であり、そんな上司をいつしか僕は、心から尊敬するようになっていた。

頭が回る上司のことだ。この退職の決断は揺るがないだろうし、きっと新たな職場でも役職持ちの地位にすぐ収まるだろう。……方や我々の職場としても『誰かがずっと側にいる世界線はない』との事実を見につまされた、大きなタイミングであるようにも思う。ひとりひとりの集合体が職場なのであれば、各自に悩める部分があれば崩壊するのは自明。いつまでも今が続くのは、自分がひとりきりの時だけなのだ。

BRIAN SHINSEKAI - 泣かない人(Official Music Video) - YouTube

島根県出身バンド・DNA GAINZの新曲“Sound Check Baby”の魅力について

日々音楽を聴く音楽愛好家にとって、今の時代は最高な環境と言っていい。その最たる理由はサブスクの検索力にあり、巷で流行中の音楽のみならず、リスナーの居住地やジャンル嗜好も調べて絞り込んでくれるので、未発見のアーティストを多数知ることが出来るからだ。そしてそんなフッと流れてきた音楽に心を掴まれる経験というのも同様にあって、そこから生まれる出会いは何より深く、アーティストを愛する契機ともなり得る。

 

https://dnagainz.wixsite.com/band

現在躍進中のバンド、DNA GAINZ(ディーエヌエー・ゲインズ)は活動歴約1年、ライブシーンを中心に活動の場を広げる4人組オルタナティブロックバンドだ。先述の通り結成の舞台となったのは島根県の松江市であり、かねてよりAZTiC Canovaや松江B-1といった地域に根ざしたライブハウスで、確かな実績を積んできた。また現在では“ラフラブ”がTSKテレビ番組『かまいたちの掟』のエンディングテーマに抜擢。島根県内外で注目度が高まる中でリリースされた代物が、此度の新曲ということになる。

音源を制作する上で、彼らは『DNAから響く歌の鼓動 体の底から踊り出す』のコンセプトを基盤としている。新曲として投下された“Sound Check Baby”に関しても例に漏れず、ダンスロックのスタイルで進行する痛快な楽曲である中で、唯一無二の個性が爆発したロックンロールであるとも思う。

DNA GAINZ / Sound Check Baby (Official Music Video) - YouTube

大前提として、今楽曲は爆発的なライブアンセムになるように意図的に構成されるものだ。バグかと錯覚するレベルの音割れから始まる開幕から、緩やかに高まっていく助走……。そこから一転して畳み掛けられる《Sound Check 1.2 Hey Baby》のキャッチーすぎるサビまで聴けば、この楽曲のもう戻れない中毒性を感じられるはずだ。世間一般的なロックは「ギターが鳴って4つ打ちで」といったセオリーに則ったイメージのところ、なのだが、DNA GAINZの今曲を聴くと何というか、やはり心を動かすのは楽曲そのものの印象度なのだということを再確認。

またサウンド面もあえて音の粒を綺麗にまとめず、ライブハウスで聴いているようなリアルな音像にしているのも好感が持てる。これについてはCメロで《聞こえないフリをしても 音が襲ってくるライブハウス》と歌われているように、彼らがライブハウスの土壌を愛していることの証左であり、また「俺たちが鳴らしたい音はこれ!」という決意をも感じさせてくれる無骨な格好良さだ。

DNA GAINZ / ラフラブ (Official MUSIC Video)"TSK「かまいたちの掟」"ED曲 - YouTube

次にフロントマン・ながたなをや(Vo.G)が綴る歌詞について。ちなみに彼の歌詞的試みは最新曲のみならず、DNA GAINZの楽曲全体にも散りばめられている。例えばパワープッシュ中の“ラフラブ”は《ラブラブじゃない ラフラブ》との一節。これはハッピーな雰囲気の『LOVE LOVE』をあえて『LOUGH LOVE(歪んだ愛)』とすることによって表裏一体の恋愛感情を指し示す役割を果たしていて、おそらくながた自身が世の中を俯瞰して見ながらも、何かしらの希望を見付けようとする思考の持ち主なのだろうと推察する。

翻って、“Sound Check Baby”である。彼らが『踊らせる音楽』を第一義としているのは間違いないとして、歌詞の端々にハッとさせられるフレーズも盛り込まれているのも魅力のひとつ。今曲で言うところの《親が心配してる ちゃんと見せなきゃ オレの生きてきた生きていきたい未来》には、バンドマンという過酷な人生を選んだ葛藤を。対して《壊れた楽器が横たわる声しか出ない》には死ぬまで音楽を鳴らし続ける決意も垣間見え、結果的に“Sound Check Baby”はメッセージソングとしての側面も宿した楽曲になっているのだ。メッセージ性とサウンドの魅力、このふたつの言わば折衷案を取ったような魅力が光る。

筆者も暮らす島根県松江市には、今では全国規模で活動を続ける著名なバンドがいくつか存在する。島根の大学で結成されたOfficial髭男dism、ボーカルが松江農林高校出身のSaucy Dogなどがその代表格だが、個人的にはどこにも染まらず、初期衝動溢れる楽曲を生み出すDNA GAINZにはこれまでにないような、ロックの未来を引っ掻き回す大いなる可能性を感じているところだ。

今記事でも記したように、彼らには様々な魅力が秘められている。一度聴いたら虜になるメロ。ながたが本気で思っているからこそ伝わる思い。……それらは文字通りDNAを受け継ぐように伝播し、今後も我々の耳に受け継がれていく。そしてやはり、真髄を体験する場はライブハウス。今後は“Sound Check Baby”をセットリストの中心に組み込んでの熱いライブが行われること必至なので、是非とも予習しつつ、彼らの主戦場に足を運んでみてほしい。