キタガワのブログ

島根県在住。極力誰とも関わりませんので悪しからず。目標は音楽ライターであり、ブロガーではありません。

【ライブレポート】amazarashi『amazarashi Live Tour 2019 未来になれなかった全ての夜に』@上野学園ホール

こんばんは、キタガワです。

 

f:id:psychedelicrock0825:20190508214331j:plain


5月31日、広島上野学園ホールにて、amazarashiのワンマンライブツアー『amazarashi Live Tour 2019 未来になれなかった全ての夜に』が開催された。今回はその当日のレポートを記す。


スマートフォンアプリを用いて検閲を解除するという、前代未聞のライブを展開した武道館公演から約半年。


その間リリースされた楽曲は『さよならごっこ』のシングルのみであり『ツアーはアルバムリリース後に行う』というamazarashiの通例を初めて覆す形となった今回のツアー。


彼らのライブと言えば基本的に、PVが公開されているような代表曲に加えてシングルにおけるいわゆる『B面』に位置する楽曲や、過去のアルバムからのレア曲も多く演奏することから、総じてセットリストが予想出来ないバンドでもある。


しかし結論から述べると、今回のライブはamazarashi史上最も代表曲を網羅する、いわばベスト盤的なセットリストであった。ベストアルバム『メッセージボトル』、最新アルバム『地方都市のメメント・モリ』、更には最新シングル『さよならごっこ』の楽曲を軸に展開する流れはライブ経験者のみならず新規のファンをも満足に導く、いわばamazarashiの魅力を最大限に見せ付ける大盤振る舞いのライブとなった。


会場に選ばれたのは、広島の中心部から電車で3駅ほど移動した先にある上野学園ホール。チケットソールドアウトとはいかなかったが、先行物販の時点で主要なツアーグッズがほぼ完売する驚異の売れ行き。集まった観客の熱量の高さを思い知らされる。


会場内に入ると、まず目を引くのは大型の紗幕スクリーン。ステージは数十メートルはあろうかという薄暗いそれですっぽりと覆い隠されており、背後にあるはずの機材すら伺い知れない。amazarashiのライブではお馴染みの光景ではあるものの、やはりこうして対峙すると明らかに他のライブとは一線を画す異質さだ。


定時を10分ほど過ぎた頃、暗転。ギターを爪弾くアンサンブルの直後、爆弾の如き轟音と共に開幕を飾ったのは『後期衝動』だ。


〈「誰だお前は」と 言われ続けて〉

〈赤字のライブで だるい社会で〉

〈ラジオに雑誌に インターネット〉

〈誰だお前は? 誰なんだ僕は?〉


スクリーンには映像が大写しで投影され、中心にはシルエットで描かれた秋田ひろむ(Vo.Gt)がギターを掻き鳴らし、その頭上からは痛々しいまでの力強いフレーズの数々が文字通りバラバラになって落下していく。


散弾銃さながらに発される言葉の数々、目映い光と爆音、オリジナリティー溢れる映像でもって、意識は異様に覚醒していく。まさに非日常。日本中どこを探してもamazarashiのライブでしか成し得ない、衝撃的な体験がそこにあった。


横一列に整列した5人のバンドメンバーは、前後に設置されたふたつの紗幕スクリーンの存在でもって輪郭がぼやけ、おぼろげにしか判別できない。しかしながら秋田の熱の入った絶唱とバンドメンバーの鬼気迫る演奏は、スクリーン越しにも伝わってくる。


アウトロの最中「青森から来ました、amazarashiです!」と秋田が叫ぶと、観客は興奮と感動の入り交じった大歓声で答えた。


間髪入れずに演奏された『リビングデッド』では、半年前の武道館公演で流れた映像と同じ、言葉を死守せしめんとする言葉ゾンビたちのツイッター上の呟きが次々に表示された。

 


amazarashi 『リビングデッド(検閲解除済み)』Music Video


「もう死にてえ」に代表されるネガティブな表現のみならず、「行きたい方へ自分で行くぜ」といった前向きな言葉すら検閲する新言語秩序(自由な発言を取り締まる自警団)と、彼らに抗おうと自身の思いを発信し続ける言葉ゾンビの応酬が描かれるのだが、その戦いはまるで現代におけるインターネット上での言論統制や日常生活での『人間かくあるべし』といった固定観念を象徴しているようにも思え、目を釘付けにさせられる。


演奏終了後には「言葉を取り戻せ」という最後の呟きが「新言語秩序に違反したため削除されました」という無機質な言葉でもって無に帰すバッドエンドに。この日のamazarashiのライブが初見だった観客も多いはずで、それはかなりの衝撃だったことだろう。暗転後しばらくは無音の時間が続いていたが、観客ははっと我に帰ったようにパラパラとまばらな拍手を送っていたのが印象的だった。


さて、終盤のMCで秋田が語っていたが、今回のツアーは『かつてのamazarashiを振り返る』という隠れた意味合いが込められていたそうだ。


amazarashiのライブでは美麗な映像表現も大きな見所のひとつとして挙げられるが、秋田の発言を体現するかのように、今回使われた映像は半年前の『朗読演奏実験空間 新言語秩序』や、そこから遡ること半年前の『地方都市のメメント・モリツアー』、更には2017年に開催されたベストアルバムリリースツアーである『メッセージボトルツアー』までの映像が大半を占めるという、およそツアーごとに映像を一新してきたamazarashiにとっては非常に挑戦的なライブだったとも言える。

 


amazarashi 『ヒーロー』Music Video


歴代のCDジャケットやPVが断片的に流れる『ヒーロー』、高速道路で終わりなき旅路を表した『スターライト』、マンガとのコラボレーションを果たした『月曜日』(著作権の関係なのか、月曜日の友達のキャラクターは黒塗りで登場)や手書きの文字でifの世界を空想する『たられば』……。歴代のライブに参加したファンからすれば新鮮味は薄いだろうが、とてつもなく高い没入感を覚えるこれらの映像は、amazarashiのライブにおけるひとつの完成形であると改めて感じられ、感動的に映った。


最新シングルに収録されていた2曲が終わると、ゆっくりと秋田が語り始める。


かつて希死念慮に苛まれ、死ぬことばかり考えていたこと。あまりにも空虚な『0の時期』があったこと。そこから1に、1から10に、10から100にするためにがむしゃらに生き抜いてきたこと……。


amazarashiの音楽は全てそうした秋田の辛い実体験を元にして作られているのは周知の事実だが、こうして直接話を聞いていると『音楽』は彼自身が生き延びるために必要な手段であったことがよく分かる。


「数年前のあの頃、わいは確かにゼロでした」と呟き始まったのは『光、再考』だ。

 


amazarashi's "Hikari, saikou" eng translation


〈ぶつかって 転がって 汗握って 必死こいて〉

〈消えたのは この愛着だけかもな〉

〈まあいいか そんな光〉


肉体労働系のアルバイト。動員が増えないライブ。コミュニケーション不随……。そんな東京での下積み生活に精神的に限界だった秋田は地元である青森に舞い戻り、この楽曲を制作した。0からの再スタートの意味合いが込められた、いわば始まりの曲とも言うべき楽曲だ。


スクリーンには『光』の文字が大写しにされ、目が眩むような光が網膜を刺激する。豊川真奈美(Key)の奏でる柔らかなキーボードサウンドとバンド演奏、秋田の歌声が見事に合致し、この日一番の感動的な空間を演出していた。


その後は四方八方からの噴出した煙に歌詞が投影された『アイザック』、突風の中歌詞が周囲を駆け巡る『季節は次々死んでいく』、マネキンが痛々しい最期を迎える『命にふさわしい』と続いていく。

 


NieR: Automata meets amazarashi 『命にふさわしい』Music Video


中でも『季節は次々死んでいく』と『命にふさわしい』はamazarashiの楽曲の中でもカロリー消費量の多い楽曲のため、どうしても喉の調子を心配してしまう自分がいたのだが、秋田の声はいつになく安定しており、魂の叫びとも言うべき高らかな歌声を響かせていた。


映像を投影せず歌と演奏のみでスタートした『ひろ』は、間違いなく今回のライブにおいてのひとつのハイライトであった。


かつて高校卒業後にバンドで上京しようと夢見ていた秋田だが、そのバンドはとある友人の急逝により、事実上の解散に追い込まれる事態となった。


……彼こそが秋田ひろむを秋田ひろむたらしめた重要人物のひとりであり、当楽曲で『ひろ』と繰り返し歌われる、交通事故により19歳で亡くなった友人である。


演奏前、秋田は「あの頃から背後霊に取り憑かれている気がします」と語っていた。その言葉から察するに秋田にとってひろの存在は、苦難の道を進む上でのある種の救済だったのだろう。仕事の失敗で頭を下げ、歳を取るにつれ格好悪い大人になっていく現状を「お前が見たら絶対、絶対、許さないだろう」と絶唱する秋田は天国のひろに叫んでいるようにも見え、改めてこの楽曲の重要性に気付かされた瞬間だった。


『ライフイズビューティフル』終了後は、長尺のMCへ移行。「広島、ありがとうございます」と秋田が呟くと、会場は大きな拍手に包まれる。


「広島に来るのは……3回目くらいでしたっけ。あの頃はアルバムリリースしてからのツアーだったんですけど、武道館が終わって。今回はそういうのなしでやりたいなと思って、こんな形になりました」


自身の伝えたい言葉を限界まで詰め込んだ楽曲群とは裏腹に、ぽつりぽつりと言葉を選びながら話す秋田。鬼気迫る歌唱や壮絶な演奏を観ていると遠い存在にも思える彼だが、MC中は温かな人間味が感じられ、一気に距離が近くなったようにも錯覚する。


特に「広島に来ても毎回ライブしてホテル帰って、食べに行ってっていうのばっかりで、あまり観光とかはできてないんですけど」と笑いながら語る秋田は、今までに観たどのライブよりも穏やかな印象を受けた(顔は見えないけれど)。


「もう少しでamazarashiのライブは終わります」と語った直後に鳴らされたのは、半年前の武道館公演でラストを飾った『独白』だ。

 


amazarashi 『amazarashi LIVE 朗読演奏実験空間 新言語秩序』Trailer


〈奪われた言葉が やむに止まれぬ言葉が〉

〈私自身が手を下し 息絶えた言葉が〉

〈この先の行く末を 決定付けるとするなら〉

〈その言葉を 再び私たちの手の中に〉


秋田が記した小説の第四章において、新言語秩序に加担する実多(ミタ)と、言葉ゾンビのリーダーとして君臨する希明(キア)は直接対峙した。当初描かれていたラストでは、実多は希明の殺害を実行。事実上は新言語秩序側の勝利で収束してしまう。


しかし隠された『第四章・真』なるテキストでは、全く異なる終わりが描かれる。ここでは希明を殺害することはなく、言葉を嫌悪していた実多が自身の思いを吐き出す……つまりは新言語秩序にあるまじき『言葉を殺さない』という選択をする。


彼女が今まで表沙汰にしなかった思いの数々。それが『独白』で描かれている内容の全てだ。武道館公演のコンセプトに沿った作りのこの楽曲が今回鳴らされたのは意外ではあったが、類い稀なる強いメッセージ性には何度聴いても目を見張るものがあった。


秋田が「言葉を取り戻せ!」と絶唱した瞬間には、観客の誰しもが思ったはずだ。「これで今回のライブは終わりだろう」と。しかし次の瞬間、何の前触れもなく始まったイントロに、耳を疑った。


そう。最後に演奏されたのは、なんと未発表の新曲だった。事前告知一切なし。発売時期……というより実際に音源化されるかどうかも未定のこの楽曲こそが、『未来になれなかった全ての夜に』と冠された今ツアータイトルの意味するところであり、同時に『今のamazarashi』が凝縮された重要な1曲でもあったのだ。


Bメロ部分の「一人で泣けば誰にもバレない」、サビ部分における「未来になれなかったあの夜に」に象徴されるように、この楽曲はひたすらに孤独な日常を歌う内容になっており、歌メロ重視で穏やかに進んでいく。既発曲で例えるならば『月が綺麗』や『終わりで始まり』、『ライフイズビューティフル』の雰囲気に近いだろうか。個人的には今後amazarashiのライブにおいて、どんな場面にも対応できる万能型の楽曲という印象を受けた。


ギターのノイズの海に呑まれながら、秋田が語り始める。「未来になれなかった全ての夜に。これでamazarashiのライブは終わりです。また生きて、どこかで会いましょう」。


最後に「言葉にならないことは言葉にするべきです。最後に言いたいことはひとつだけ。……ありがとうございました!」と秋田が叫び、この日のライブは終演した。


……客電が付き『さよならごっこ』の音源が流れる中、会場を後にする。開始から終了まで約2時間。amazarashiでしか成し得ない壮絶な体験がそこにあった。


amazarashiはロックバンドだ。しかしながら彼らのライブは世間一般のロックバンド然とした姿とは一線を画す。彼らのライブが終わった頃には決まって、壮大な映画を観終わったかのような多幸感が体を支配するからだ。


個人的な話になるが、僕は今回のライブが通算で5度目の参加となる。もちろん数年前に体験した数回こそ毎回号泣し映像美にも圧倒されたものだが、正直な気持ちとして、5度目ともなるとある程度感動に慣れてしまっている部分は否めない。


しかしながら、僕は今回のライブはとても良いものに感じられた。セットリストや映像に既視感を覚えたにも関わらず、である。その理由を終演後に考えていたのだが、ようやくひとつの結論が出た。僕は彼らの楽曲の持つ力に支えられてきたのだと。


amazarashiの音楽には『闇』がある。気の知れた仲間や職場の同僚にも絶対に表沙汰に出来ないような、鬱屈した闇が。どこにも吐き出せないそんな闇をamazarashiは許容し、光に変えていく。ライブにおける衝撃はその先にある光の演出や映像美なのであって、根底にあるのは純粋に楽曲の持つ説得力と包容力なのだ。


amazarashiは今後も音源をリリースし、ライブ活動を続けていくだろう。僕はふと「これからもずっとライブに行くんだろうな」と思った。辛いことだらけの人生ではあるが、彼らの音楽を聴き、ごくたまにライブに行くことが出来るのなら、こんな人生も悪くない。


自己嫌悪に苛まれる夜。「ああしておけばよかった」と後悔する夜。死にたい夜……。毎日様々な夜があるが、ひとまず今夜くらいは美味しい酒が飲めそうだ。

 

【amazarashi@広島 セットリスト】
後期衝動
リビングデッド
ヒーロー
スターライト
月曜日
たられば
さよならごっこ
それを言葉という
光、再考
アイザック
季節は次々死んでいく
命にふさわしい
ひろ
空洞空洞
空に歌えば
ライフイズビューティフル
独白
未来になれなかったあの夜に(新曲)

 

f:id:psychedelicrock0825:20190608232912j:plain