キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【コラム寄稿のお知らせ】DMM TV ルパン三世シリーズ『LUPIN ZERO』レビュー

uzurea.net様に、現在配信中のルパン三世のスピンオフアニメ『LUPIN ZERO』のレビューを寄稿しました。

ただルパン三世に関しては、ほとんど知識がなく。主人公がルパンで、次元や五エ門や不二子ちゃんがいて、怪盗みたいなことをやっていて、銭形警部が「まてー!ルパーン!」と叫んでいる……。というレベルのもので、ほぼ知識ゼロからの視聴になりました。

なので本来であれば逡巡したはずなんですが、今回はすぐにお受けしました。話は飛ぶんですが、その理由は昔他の会社からライター仕事を頂いていた時代に、依頼を断ってしまったことがあったからで……。後にも先にもこれまでの人生で自分から断った記事はそれだけなんですけど、それは僕が全く触れてこなかったアーティストの方でしたし、拡散力も含めて「これを書くのは僕じゃなくて、もっと好きな人が書くべきだと思う」となり。結果的にその依頼は他のライターの方に渡されて、確か500リツイートで2500いいねとか行ったのかな。とにかくかなりバズってたりもして、なぜかその後僕のメンタル削れたりとか。

でもこの話は今でも胸のどこかに残っていて。なので今はNGなしで何でも書くようにしてます。今回もその流れではあったのですが、書くからにはもちろんしっかり、という熱量で書きました。一度観たらめちゃくちゃ面白くて、あっという間に観終わった作品。個人的にも新たな挑戦で、なおかつ楽しんで執筆しました。宜しければ。

DMM TV新作シリーズ『LUPIN ZERO』独占配信開始 1話、2話試聴レビュー - uzurea.net

『魔法のiらんど大賞2022』、落選のお知らせ

発表の数日前から、何だか嫌な予感はしていた。ただそれは「どうせ自分の作品なんか」というネガティブなものでは決してない。言うなれば単純な経験値の不足と、受賞を目指すための本気度の低さである。……なもんで、駄目だった時は「へへへ、やっぱダメした」と笑い飛ばすつもりでいた僕だったが、心中が予想以上に悔しい気持ちに包まれたのはひとつの発見だったのではないか。

結論から書くと、僕は『魔法のiらんど大賞2022』というシナリオ賞の最終選考に落ちた。応募したのは『ファンタジー賞』なのだけれど、処女作である以下の作品はファンタジーっぽさのほぼない、割と攻めに振り切った作品だった。希死念慮を抱く人間と、それを暗にサポートする異星人の話。「絶対こんな作品求めてないだろうな」とは何度も思ったけれど、僕にとって一番熱量込めて書くことが出来るのはもう、この題材しかあり得なかった。そしてこの話は同時に、クソッタレな生活から脱出しようと望む、自分自身の希望的未来でもあった。

この話を書いたのは9月まで遡る。言うまでもなく当時の僕の心はすこぶる病んでいて、会社を長いこと休ませてもらっていた。それが運良く『死』を題材としたストーリー展開に合致した形。なもんで、特段悩むこともなく筆は進んだ。そして締切に間に合わせた後、僕の次の視点はもちろん仕事に。本当に「迷惑をかけた分また頑張って働こう」と思っていたのだ。そのときまでは。

予想外だったのは、メンタル不調の状態が長期化してしまったこと。『精神的に辛い人が精神的に辛いこと(生きること)をする』ということ自体に、思ったよりエネルギーを使ってしまったようだ。……そんな中「辛いっすー!」と言って仕事がなくなる訳もなく。無理矢理エンジンをかけ続けているうち鬱々とした気持ちは更に膨らみ続け、12月になった今でも快方に向かっていなかった。

鬱に沈む日々で次第に考えるようになったのは、現状の打開策。それも急転直下な分かりやすい形で、人生を変えてくれる代物をだ。元々受賞する可能性についてはあまり考えないようにしていたのだが、生活がどんどんおかしくなるにつれて、受賞への希望を勝手に高めてしまった。それは確かに良くなかったと思う。

そして運命の日、作品はあえなく落選した。「ちくしょー」とは思ったものの、実際は完膚なきまでの敗北である。そもそも、ストーリーを構成するという経験値自体が圧倒的に足りないのだ。熱量的な部分で既に勝負はついていたにしろ、それでも悔しさは強かった。ただ、負けっぱなしで終わってしまうのも何だか癪だと思ってしまった。

何だかんだ言いつつ、僕はまた来年リベンジするつもりだ。出来ればこちらも、人の生き死にに関する何かで。この性格の悪さと希死念慮が武器になる日を探して文章を書き始めてから、もう15年以上経つ。しかしながらまだその日は訪れていない。先は多分、もっともっと長いのだ。やっていることが昔から何も変わっていないのが、面白いところだが(以下は15年前に書いたテーマ短編)。

【ライブレポート】Hump Back・BBHF『Hump Back pre. "HAVE LOVE TOUR 2022"』@広島クラブクアトロ

こんばんは、キタガワです。

日本国内にロックバンド多しと言えど、ここまで毎月ライブを重ねているバンドは彼女たちしかいないのではないか……。そう考えてしまうほど、Hump Backは常に活動の中心にライブツアーを置いてきた。そして今年行うツアーについても同様に新作EP『AGE OF LOVE』のリリースを記念し全国各地を周り、今回の広島はセミファイナルとなる。

今回のツアーはもちろん全てソールドアウト。ただ広島公演のみ追加のチケット販売がされていたため、急遽参戦を決めたという個人的な経緯があった。そんなチケットの整理番号は749番とかなり遅めで、この時点で「こりゃめちゃくちゃ人いるだろうな」と思っていたのだが、それの驚きはやはり現実のものに。会場に着いたのは開演時間の10分前だったのだけれど、まだ整理番号200番台を呼んでいる状態で、とても時間内に全員を入れるのは不可能と思えた。……結局僕が入った時にはもうBBHFのライブは始まっていて、更には僕をフロアに入れた瞬間に何と扉が閉められ、残された人たちは音漏れを聴く異常事態。僕はといえば扉の前から一歩も前に進めないし、Hump Backの人気の高さを改めて感じる幕開けとなった。

 

https://birdbearhareandfish.com/

そんなこんなでBBHF。『Bird Bear Hare and Fish』から改名してから初めて観る、という人も決して少なくなかったと推察するが、つい先日Galileo Galileiが再結成を発表(ボーカルとドラムの尾崎兄弟が在籍している)した背景からも、その期待値は非常に高かったことだろう。ステージ上には左から尾崎和樹(Dr)、Newspeakとしても活動するサポートベースのYohey(B)、DAIKI(G.Key)、そしてフロントマンの尾崎雄貴(Vo.G)が横並びで演奏。これまでいろいろなバンドのライブを観てきたが、フォーピースでボーカルが一番右側で歌うのは割とレアなのではなかろうか。

BBHF『ホームラン』Music Video - YouTube

オープナーはニューEPから“ホームラン”。ややアッパーなサウンドに乗せて、他者の栄光とその後に訪れるであろう苦悩について暗喩した、尾崎兄らしい作りの楽曲だ。腕を挙げて聴く人はひとりふたりだけ、それ以外の全員がその楽曲にゆるやかに体を揺らしているのみという、稀有な環境こそ彼らのライブ。突飛なことは何もなく、ただ純粋に歌の力のみで魅せるのはやはりBBHFだからこそ成し得る技だなと実感した次第だ。

対バンイベントの出演自体が珍しいBBHF、当然そのセットリストに関しても注目が集まっていた中で、楽曲はほぼ全てのアルバムから満遍なく選出。その中でも注目すべきは最新EP『13』からの4曲で、彼らの今を明らかにする意味で大切なステージングだったように思う。…Galileo Galileiと、warbear(尾崎兄のソロプロジェクト)と、BBHF。その3つのバンドの違いとして、尾崎兄はGGの再結成の際に「未知のものが未知じゃなくなって、愛とかを自分なりに定義しちゃって。いくつもある答えの中から個体として得たものについて書いてます。BBHFは『こうだ!』と思ったら胸を張って言える自分」と語っていた。つまり、BBHFは最もストレートに尾崎兄の思いを具現化させたバンドということになる。

BBHF『どうなるのかな』Official Audio - YouTube

そんなBBHFらしさが如実に現れたのは、『13』からの“どうなるのかな”。自殺や暴行、憂鬱といったネガティブな行動をifの世界線で思考し、どうにもならない現実にやきもきする……。それは我々が実生活で感じているストレスの具現化でもあって、それらの歌詞が緩いロックテイストで鳴らされる環境は多幸感に溢れていた。まるで自分がふわりと浮いて、立っているのかどうかも分からなくなるような。『音楽でトリップする』というのはこうした感覚なのかもしれない。

BBHFはMCがほとんどないバンドとしても知られているが、今回唯一のMCとなったのはHump Backとのラジオ体操について。Hump Backはいつもライブ前にラジオ体操をするのが恒例なのだが、この日はBBHFも一緒に、我々観客がいるフロアで円になりながら行ったそう。ただ普段は北海道の個人スタジオで毎日を過ごす彼ららラジオ体操自体が久々だったようで、常にワンテンポ遅れて踊ってしまったことを笑顔で語ってくれた。その尾崎兄の語り口もゆったりしていて、楽曲全体に抱いた抱擁感は、彼の性格の柔らかさによるものなのだなと実感。「僕らはいつも対バンではアウェーのことが多いんですけど、いい雰囲気で。これもHump Backだからだと思います」と尾崎兄。

BBHF『なにもしらない』Music Video - YouTube

以降も愛する洋楽テイストをふんだんにまぶした“僕らの生活”、終わりなき日々を競走馬と照らした“サラブレッド”、無知を『無知の知』的な幸福に昇華する“なにもしらない”と淡々と楽曲を進行し、ラストは今回披露された中でもかなり古い“ウクライナ”でシメ。今のご時世だからこその選曲なのかもしれないが、結果ラストとしては素晴らしい熱量を観せてくれたように思う。尾崎兄が「ありがとうございました、BBHFでした」と発してすぐに去っていったBBHF。我々観客はしばらくポカンとしたままだったが、すぐさま「何かヤバいもの観ちゃった」との感覚が襲ってきた。ライブ終了後に多くの観客が退室するのを観たけれど、要はそれほど彼ら目当てに訪れたファンが多かった証左だろう。『静かな爆発』と称するに相応しい、青い炎がそこにはあった。

【BBHF@広島クラブクアトロ セットリスト】
ホームラン
どうなるのかな
バック
僕らの生活
あこがれ
死神
レプリカント
Torch
サラブレッド
なにもしらない
ウクライナ

 

https://www.humpbackofficial.com/

BBHFのライブ終了後、……おそらくはBBHF目当てのファンか、ドリンク交換をしに行ったお客さんがいたからだろう、前のスペースが少し空いた。その空いた場所を目掛けて、グワッと押し寄せる人、人、人。後方こそスペースはあるものの、前方はもはやかつてのライブハウスそのままで隙間なしの広島クラブクアトロである。「俺たちはロックを求めてるんだよ!」とも感じられる、確かな興奮。それを見てウルッと来てしまったのは、やはりこの3年間の抑圧ゆえか。

暗転後、お馴染みとなったハナレグミの“ティップ ティップ”のSEと共に姿を見せたのは林 萌々子(Vo.G)、ぴか(B.Cho)、美咲(Dr.Cho)。こちらも恒例となる、握り拳を突き合わせて「オイ!」と叫ぶ号令から、各々の立ち位置へ。その時からオフマイクでぴかは「めっちゃ雰囲気ヤバいやん」と心境を吐露していたが、ここで林が一言。「BBHFのライブ観た?めっちゃ美しかったよなあ。でもここからは、汗まみれのロックンロールで行きたいんですけど良いですか!」と叫ぶと、1曲目の“LILLY”へ雪崩れ込み。

Hump Back -「LILLY」Music Video - YouTube

一瞬にして爆発したフロア。みんな歌っていて、体がぶつかる距離で楽しんでいる光景にまたもウルッと。後のMCで「ライブハウスにあまり来たことない人はごめん。無理にまざらんでも。後ろでスペース保って楽しんでいい。でもみんないろいろ思いながら生活してると思う。会社とか学校とか辛いこと耐えて、ここにいると思う。この場所は誰のためでもない、自分のためにあるんや!(意訳)」と林は語っていたけれど、明らかにこの日のファンの熱量は凄まじかった。みんなが辛い日々を毎日続けて、ようやく来たこの日……。だからこそ裸の感情で楽しませようと、彼女たちは試みていたのだ。

この日のセットリストはほぼ予想不可能な代物。もちろん最新EPである『AGE OF LOVE』の楽曲は全て披露されたが、それ以外の楽曲は彼女たちが自由に決めた楽曲が配置されており、アンコール含め約1時間で18曲という驚きの構成。純粋に楽曲自体がファストチューン多めなのもあるが、それにしてもこの曲数と爆発力には拍手を送りたくなる。そしてそれら全てでファンは大合唱、前方はほぼおしくらまんじゅう状態、気付けば汗だくなライブハウスだ。繰り返すが、僕らが求めていたのはこれなのである。

Hump Back - 「がらくた讃歌」Music Video - YouTube

加えて、笑いに溢れたMCも彼女たちのライブの魅力。前日のハルカミライとの対バンが終わり、ドラムの小松謙太と無茶な飲み会で盛り上がったというぴかは完全なる二日酔い状態。移動時の車中ではグロッキーだったそうだが、ライブが始まればあら不思議。健康体になっていたらしい。また「結婚おめでとう!」と声が飛べば「みんな観たことないやろ?これが人妻バンドです」とメンバーが薬指を見せたり、BBHFとのラジオ体操の思い出を語ったりと自由奔放。そんな予定調和なしの緩さが、DVDやYouTubeの配信などでは絶対にあり得ない『生のライブ』感を形作っていく。

ライブは新旧入り混じった楽曲が続き、一度バンドが林ひとりとなった時に制作した“サーカス”、長らく披露されてこなかった“チープマンデー”といった珍しい楽曲が鳴らされると、Hump Backのライブでは恒例となる、林の弾き語りへ。この場面では自宅で曲を作るような即興感で歌われるのは元より、そのツアー先ならではの要素も盛り込んだ歌詞が特徴的だが、この日は広島にまつわるフレーズはほぼ使われなかった。代わりにメインテーマに置いていたのは『人生』という、考え得る限り最も大きい代物だった。以下、ギター1本で朗々と歌い上げる林のイメージと共に、ざっくりとした歌詞を。

「みんな仕事や学校、ホンマに大変やと思う。生きる意味が分からん人らもおるかもしらん。人は何のために産まれてきたんやろう。それは多分、人に優しくするために産まれてきたんや。そして私たちは、今日ライブをしに来ました。なんでか分かるかい?それは、形に残らないものを届けるためさ」

思えばこの日のHump Backのライブでは、何度も『感情の爆発』が生まれた。声を振り絞って歌詞を届ける林のボーカル。何度も最前に立って注目を浴びていたぴか。重い打音で鼓膜を揺らす美咲。我々はひとり残らず熱狂し、それを観た林が「行こかー!」と更に焚き付ける……。ただ、その光景は絶対に日々の生活ではあり得ないものなのだ。人の顔色を伺って、どうでも良い会話を無理矢理聞かされて、帰宅すればヘトヘトになる生活。そこにある自分の感情は、言わば偽りの仮面のようにも感じられるだろう。そんな中でHump Backは、常に本気の姿勢で我々の眼前に立っていた。「頑張れ」「負けるな」「生きろ」といった言葉を日常で聞いても右から左に抜けるけれど、彼女たちの飾らない姿は確固たる『リアル』を伝えてくれる。だからこそ泣けるし、笑えるし、楽しめるのだ。

Hump Back - 「新しい朝」Music Video - YouTube

最後の楽曲として選ばれたのは『AGE OF LOVE』より“君は僕のともだち”。母親になっても変な恋人を作っても、関係性が変わろうとも、友情は絶対に変わらない。実に彼女たちらしい前向きな楽曲でシメたのはやはり、彼女たちが人を無常の愛を持って見ている、その証左でもあろうと思う。だからこそ、サビで歌われる内容は、まぶしい笑顔で歌われる《君は太陽》なのだ。最後の最後まで満面の笑顔を絶やさずに終えたHump Back、絶叫にも似た歓声を背に去っていった3人の姿は、まさしく太陽のようだった。

アンコールはぴかが先陣を切って登場。先程とは打って変わってほぼ無口な林をよそに、ぴかはBBHFへの愛を熱弁。どうやら今回のライブはぴかのラブコールによって実現したものらしく、その感動を未だ抑えられない様子。先日発表されたGalileo Galileiの再結成にも触れたぴかは「私の夢を実現させたい。Galileo Galileiと対バンするっていう……」と、素晴らしい思いを吐露し、林からは「えっ?ここ(広島)で?」とツッコミ。その一言から大いに沸く会場である。

Hump Back - 「番狂わせ」Music Video - YouTube

アンコールは“番狂わせ”と“夢の途中”。「ちょっと待って。そう言えば今日平日やで。それでみんな、こんな汗だくのライブハウスに来とる。……あんたらロクな大人になりませんよー!」と林が叫び、まずは1曲目の“番狂わせ”。Hump Back流のファストチューンということもあり、一気に熱量を高めていく様はもちろん圧巻。ただそれ以上に、アンコールで一旦興奮が収まった後にも関わらず、曲が始まった瞬間また一気にブチ上がったことには正直驚いた。

ラストの“夢の途中”は、この日披露された楽曲の中ではかなりミドルテンポ寄りな選曲。この曲を選んだ理由は漠然とだが、やはり「この先10年後20年後、50年後100年後もバンドを続けていきたい」とMCで語っていたように、まだまだ彼女たちが『夢の途中』であると本心で思っているためであろう。アウトロでは何度もファンと目を合わせながら、最後まで意思疎通を図ったHump Back。ライブ終了後にはステージの写真を撮る人々で前方が埋め尽くされていたけれど、それほど素晴らしい代物だったのだ。今回のライブは。

この日の数日後に行われたツアーファイナル後に、彼女たちは来年の新たなツアーを発表した。『tour tour tour 2023』と題された場所には今回の広島クラブクアトロも含まれているが、当日は「またツアーをします」とは全く語られなかったし、今でも公式ツイッターは沈黙状態。ただ公式サイトにアクセスすると「見つけちゃったかい?そう!わたしたちは2月からまたツアーを周るのさ!休む暇なんてナイナイナイ!ライブハウスにおいでよ〜!」というハイテンションな林のコメントがあり、彼女たちにとってはSNSより何より、ライブが活動の原動力であることがはっきり分かった次第だ。

林は弾き語りにて「サブスクはしてないし、他の配信もしてない。時代錯誤なバンドです」というようなことを歌っていたけれど、それはある意味では否定できない事実ではある。でも多分、ツアーを続けてその合間に曲を作って、気付けば1年が終わっている生活……。Hump Backにとってはそれがいいのだ。今回のBBHFとの念願の対バンを経て、来年は更に凄い1年になることは確定している。その結末がどうなるのかは当然ながら、我々の目で直接確認する必要がありそうだ。

【Hump Back@広島クラブクアトロ セットリスト】
LILLY
生きて行く
HIRO
オレンジ
宣誓
犬猫人間
しょうもない
サーカス
チープマンデー
〜即興弾き語り〜
がらくた讃歌
ティーンエイジサンセット
クジラ
僕らの時代
新しい朝
君は僕のともだち

[アンコール]
番狂わせ
夢の途中

【コラム寄稿のお知らせ】M-1グランプリ2022、決勝進出者発表!

uzurea.net様に、『M-1グランプリ2022』決勝進出コンビ9組の紹介記事を寄稿しました。

これまでの記事でも何度か記していますが、僕は元々『ハガキ職人』と呼ばれる活動を小学校〜大学卒業まで続けてきました。当時はアスファルトという名前で活動していて、今でもツイッターで調べれば出てくるんですが、それほどお笑いは昔から好きで。ネタを書いて投稿しまくる日々を10年くらい続けた感じで。

なのでやっぱりお笑い賞レースというか、M-1やキングオブコントやR-1グランプリは大好きでして。中でもM-1は本当に好きすぎるので、もうこれは半分趣味としてこれまでも何度か当ブログで書かせていただいてはいたんですが、「どうせ書くなら」と今回、編集の方に直接連絡して寄稿に至った形です。いつもいつもありがとうございます……。

それこそ毎年優勝候補みたいなコンビはいるものなんですが、割と今回はマジで分からないなと。というのも、準々決勝で今回は面白いコンビが落ちまくったので。ダブルヒガシとかくらげとか最高だったんですけどね。レベル高いなと。……といったあれこれを記事にしました。気になった方はぜひとも。ちなみに、ここまで鼻息荒く書いていて申し訳ないんですが、僕が暮らす島根県ではM-1は映りません(アメトーークやMステも映らないのでもう都市伝説だと思ってる)。終わりです。これが地域格差です。

M-1グランプリ2022、決勝進出者発表! 男性ブランコ、キュウ、ヨネダ2000ら新顔揃いの結末は? - uzurea.net

 

イヤホンのイヤーピースが耳にハマって取れなくなった話

事件が起こったのは、突然だった。思い返せば、仕事から帰宅してビール缶を空けたのは夜の22時頃だったか。スマブラで勝ちが続いたことが伸ばす手に拍車を掛けたのかもしれない。気付けば1本、また1本と空けてしまい、午前2時頃には泥酔状態に陥ってしまった僕だった。

酔っていると、自身の行動の様々な部分がおろそかになる。例えばトイレの電気を消し忘れたり、リピート再生で同じ音楽を繰り返して聴いてしまったり……。もちろんそんな人間が格闘ゲームをして勝てる訳もなく、先程までの勝ちが嘘のようにあれよあれよという間に連戦連敗。すっかりやる気がなくなった僕は、諦めてベッドでYouTubeを観ることにした。その際、枕と右耳をサンドイッチした状態で有線イヤホンをギューッと挟み込んでしまっていたのは、最大の失敗と言って良いだろう。

数十分後、ようやく寝ようと思いイヤホンを引き抜いたその時だ。右耳から出てきたイヤホンにはイヤーピースがなく、完全に耳の中に入った状態になったのは。ただヤバいと思いつつも僕はまだ酔っていたので、「何とかなるっしょ」の思いと共にそのまま眠りについた。

翌日、二日酔いの頭で起きた僕は夜のことを思い出し、血の気が引いた思いがした。右耳には違和感。もちろん、まだイヤーピースは入ったままである。慌てて親に協力を求めてピンセットでの摘出を図ったが、どうやら相当奥に入っているため、取り出すのが危険だと判断したらしい。ただ「あんた病院行かないけんわね」と言われつつも、仕事があったので出社。流石に「俺耳にイヤホンの先っちょ入ってるんすよー」とは仕事仲間にも言えないので、その日はそのまま仕事をこなして帰る。

が、その翌日あたりから若干耳が痛くなりはじめた。どうやら人間の体は良く出来ているようで、体の一部分が塞がれると異変を発する仕組みになっているらしい。この日も仕事だったのでそのまま出たが、次の日は休みということで「まあそこで取ればいっか」的な感覚だった。なもんで気楽だった僕は「あ、そう言えば面白いことになってるんすよ」と同僚に暴露したのだがこれが大問題に……。個人的には笑い話にしてくれれば良いなと思っていたので、「今日からイヤーピースキタガワです!」とおどけていた中でも割と心配していただき。僕が「明日“すずめの戸締まり”観にいくんすけど、もはや“キタガワのイヤーピース取り”っすね!」と発した言葉は「いいから病院行け」とにべもなく返された。せめて笑っておくれよ。

かくして、貴重な休みは『イヤホンの先っちょを取りに耳鼻科に行く』というアホ極まりない理由で消し飛ぶことが確定した。ただこのままだと残念休日で終わってしまうと感じたので、当日、偶然早めに起きた僕はまず映画館に足を運んだ。僕が家を出たのはギリギリだったが、何せその映画館は僕がかつて働いていた元バイト先で、割と裏事情を知っている身。この日で言えば『13時開演だけどそのうちの7分は予告編だから13時8分に入ればセーフ』という情報を熟知していたので、映画泥棒の映像と共に着席。そのまま映画を観た。『すずめの戸締まり』の詳しいレビューはこちらでどうぞ。

そして、運命の耳鼻科である。この日に行った耳鼻科は、奇しくも僕がかつてお世話になったことのある場所だった。当時の記憶は確か保育園児の頃。『小さい鉄のボールを磁石で迷路のゴールまで運ぶ』という玩具で遊んでいた時、僕が鉄のボールを耳に入れてしまったのが原因だった。その際は迅速に取り出していただき、お医者さんの「もう来ないでね」に対して「わがりまじだー!ぜっだいにぎませんー!」と号泣していた人間が、まさか20年後に『イヤーピースはまりました』というバカな理由で来訪するとは、誰が予想出来ただろうか。

流石に突然伺うのは非常識かと思ったので、病院に一報。おそらくはこうした理由にも慣れているのだろう。アホアホな説明にも毅然とした対応で答えてくれる看護師さんである。「いやーすいません。こんなことで伺うのマジで申し訳ないんすけどヘヘへ……」と笑う僕に、看護師さんは「大丈夫ですよー。お待ちしてます(ガチャ)」とこちらもにべもない。ただすまぬ看護師さん、今はその気遣いが滲みるのよ。

数十分後にビャーっと移動しつつ、耳鼻科へ到着。嬉しいことに待合室は空いていて、僕以外は他の患者さんがひとりだけ、という状況だった。受付に進むと、まず看護師さんが「久し振りの診察ですので、問診票の記入をお願いします」と一言。支持に従って問診票を書くことになった。そこには住所や電話番号に変更がないかをはじめ、『どのような症状がありますか?具体的にお願いします』とも記されていたので、取り敢えず「イヤホンの先の部分(イヤーピース)が右耳に入って取れなくなった。痛みはなし」と書いた。割と「アホだなあ」との考えはこれまでずっとあったが、こうして文字にしてみると、改めて俺はとんでもねえ理由で来ちまったんだ、と再認識。恥ずかしさで看護師さんに渡す手も震えたものである。

それから少しして「キタガワさーん」とのお呼びがかかったので、室内へ歩みを進める。なおその際、もうひとりの患者さんが精算の意味で「◯◯さーん。はーい今日は耳奥に出来ていた××の塊の摘出ということで合計△△円ですー」という会話を聞いてしまい、ガチな診察理由だと感じて申し訳なくなった。……塊の摘出が何だ。こちとら安物イヤホンのイヤーピースやぞおいこら。

診察室に入ると、おそらくは暇だったのだろう。先生の他にも3人程の看護師がスタンバイして僕をロックオン。「こんなもんただの辱めじゃねえか」と思いながらも椅子に座り、内容を再度伝えると、先生はニコリと笑いながら「じゃあ◯◯さん首抑えて、そのまま斜めに倒して」と指示。僕は当初こそその間も申し訳ない気持ちと、恥ずかしいから淡々と仕事してほしくない気持ちがあったので「いやーすいませんいろいろ……」と口を動かしていたのだが、雰囲気が冗談を言えるものではないと察して黙る。

が、結果としてこの摘出は難航した。かなり奥に入っていることもあるが、どうやら使っていたのが黒イヤホンだったのでその黒っぽさが耳内の暗さと同化して、更に見え辛くしていたようだ。先生も頻りに「うーん、ちょっと◯◯(摘出道具)に変えて」「やっぱり◯◯で」と発しながら耳をグリグリしていて、やはり人の耳の中を見るのは難しいのだなと思った。

対して僕はと言えば、もう感覚としては人に耳掻きをされているようなものなので、こそばゆくてたまらず、常に笑顔になってしまっていた。人に耳掻きをしてもらった人には分かってもらえるだろうが、あれはとてつもなくこちょばしいのである。……更にこうしたシリアスな場では変な事ばかり思い出してしまうもの。1時間前に鑑賞した『すずめの戸締まり』では、扉から化物が出てくる大事な場面で「お返しします!」と叫びながら扉を閉めるシーンがあるのだけど、「これから返されるのは俺のイヤーピースなんだよなあ」とか、鈴芽が真剣な顔で「イヤーピースお返しします!」と叫んでいる場面を想像してしまったからもうダメ。あの数分間は文字通り、本当の苦行だった(以下の予告編のラスト10秒参照。これから映画観る人マジでごめんなさい)。

映画『すずめの戸締まり』予告②【11月11日(金)公開】 - YouTube

何だかんだで少しずつ出てきたイヤーピースちゃん。最終的には5分程度で出てきて、事なきを得た僕である。思えば20年前に鉄のボールを摘出した際は、ここでは取れないということで別の病院に移されたりもしていたので一安心。いやー良かったと思いながら待合室に戻ると、すぐさま「キタガワさーん」と招集が。僕には病院にあまり行きたくない理由があって、それは純粋に『金が高いから』なのだが、今回はほんの数分で終わったし。金銭的にも安く済むしオールオッケーと高を括っていた。しかしながら次なる看護師さんの一言は、予想だにしていないものだった。

「合計で3510円になりますー」

……みんな、寝るときイヤホンするのはやめようね。

映画『すずめの戸締まり』レビュー

こんばんは、キタガワです。

鑑賞後、はあと大きな息が漏れた。どうやら長い間息を止めていたらしい。RADWIMPS“カナタハルカ”の音楽が流れるエンドロールを観ながら、改めて思った。「やっぱり新海誠すごい」と。

今回鑑賞した『すずめの戸締まり』は、『秒速5センチメートル』『君の名は。』『天気の子』と公開するたび莫大な興行収入を記録した新海誠作品の最新作。その期待値はとてつもないものがあったはずだが、流石は名監督。結果としては高いハードルを軽々超えてくる、素晴らしい映画だった。

物語は、九州の田舎町で生活する女子高生・岩戸鈴芽が学校に向かう一幕から始まる。その道すがら、偶然出会った「扉を探している」とする宗像草太に廃墟の存在を教えた鈴芽は、彼に淡い感情を懐き始ながら登校。ただ、宗像のことが忘れられない鈴芽は廃墟に逆戻り。そこにあったのは謎の扉で、彼女は何の気なしにその扉を空けてしまう。

場面は変わり、宗像の捜索を諦めて再度登校した鈴芽。そこで突然、緊急地震速報を告げるアラートが鳴る。そして驚いて学校の外を見る鈴芽の目が捉えたのは、先ほど自分が開けた扉から化物が這い出ている状況だった。「大変なことをしてしまった」と気付いた鈴芽は再び廃墟へ。するとそこには扉を閉めようとする宗像。……宗像は、常世と現在を結ぶ扉に鍵をかけるために全国を旅する鍵師だったのだ。かくしてふたりは各地で開かれてしまった扉(理由は省略)を閉じるため、全国津々浦々の旅へと赴く……。あらすじとしては、ざっくりこのような形だろうか。

タイトルにもある通り、内容としてはざっくりと『すずめという少女が扉を閉じていく』というもので間違いない。ただ、そのストーリー展開がとてつもなく上手いのだ。特に秀逸なのは『様々な人との交流を経て成長する鈴芽の姿』で、例えば九州から愛媛に向かう道中では、同い年の少女と赤裸々な話をしたり(これが鈴芽のバックボーンをシッカリ示しているのもニクい)、愛媛→大阪では、大阪まで運んでもらう変わりにアルバイトで奮闘……。当初こそ振り回されてばかりだった鈴芽は、後半に行くにつれて芋っぽい訛りは消え、自分の考えで全ての行動を取るようになっていく。

更に、今作のキーキャラクターである宗像との掛け合いも最高だ。途中から彼は子供用のイスの姿に変貌してしまうのだけれど、街中を駆け回るイス(宗像)を周りの視線を受けながら「すいません!すいません!」と恥ずかしそうに追い掛ける鈴芽の描写や、次第に近づいていくふたりの距離に関しては、鈴芽がイス(宗像)に『乗る』『抱きしめる』といった行動で表していたりと秀逸。それこそ別作品の『君の名は。』では、『女子と入れ替わった主人公が胸を揉もうとして「あいつに悪いか……」とやめる→次のシーンで無言で揉む主人公』というシーンがあるのだけど、そのタイプのフフッと笑えるシーンが本作ではかなりある。総じて、エンタメ的にも見本のような映画と言えるだろう。

少し話は逸れてしまうが、長いこと生きていると『人はひとりでは生きられず、助けてくれる人がいて初めて成り立つ』とする真理に気付く。それこそ『君の名は。』ではその助けてくれる側の人物が主人公かヒロインのどちらかで、『天気の子』に関してはほぼ共犯者的な共依存っぽい扱いだった訳だが、今作は宗像という存在は『半強制的に田舎から抜け出す手助け』に留まり、鈴芽の人間性に惹かれた周囲の人たちが助けてくれるという、新海誠作品としては稀有な流れ。だからこそふたりの恋模様も、本当にグッと来るのだ。

他にも褒めたい部分はたくさんあるが、長くなるのでここまでにして。今作は『君の名は。』『天気の子』らと比較される中でも、個人的には『君の名は。』と競るレベルの傑作だと思う。マイナス点を挙げようとしたが、ほぼない。今でも毎日数回上映されるヒット作にしろ、もっともっと広がるべき作品かなと。泣いて悩んで、傷ついた先にある光を希求する鈴芽と宗像。ふたりで歩くその道程を、ぜひ劇場で追体験してみてほしい。

ストーリー★★★★★
コメディー★★★★★
配役★★★★☆
感動★★★★☆
エンタメ★★★★★

総合評価★★★★★

『すずめの戸締まり』予告【11月11日(金)公開】 - YouTube

映画『すずめの戸締まり』予告②【11月11日(金)公開】 - YouTube 

【コラム寄稿のお知らせ】yama『LIVE COLLECTION 2020 - 2022』

uzurea.net様にて、謎に包まれたシンガー・yamaの初となる映像作品『LIVE COLLECTION 2020 - 2022』のニュース記事を寄稿しました。

大前提としての話ですが、今のご時世、音楽活動をするにあたって素顔を明かす意味合いは少なくなっているように思います。例えばGReeeeNやAdo、ずっと真夜中でいいのに。、ヨルシカ、amazarashiなどは全く公開していませんし、対してライブでのみ素顔を公開するアーティストとしてはコレサワ、美波など。そして中には、非公開としていたにも関わらず途中で素顔を解禁したH△G、三月のパンタシア、CHiCO with HoneyWorks、パスピエといったアーティストもいて……(以前書いたこの記事も合わせて)。ただ大きな収入源になるライブ関係に関しては非公開はなかなか難しいな、とも感じていたりします。

ただyamaは目元だけを隠したマスクをライブでも常に着用していて、その意味合いについてはずっと疑問に思っていました。今回の記事は、そんなyamaの内面も含めて迫ることを目指しました。ニュース記事としての寄稿だったので簡易的ではありますが、どうでしょうか……。

『yama』最新ライブ&制作風景ドキュメンタリー特別映像公開 その素顔を映すドキュメンタリー Amazonプライム・ビデオ11/25独占配信に先駆け - uzurea.net