キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

映画『すずめの戸締まり』レビュー

こんばんは、キタガワです。

鑑賞後、はあと大きな息が漏れた。どうやら長い間息を止めていたらしい。RADWIMPS“カナタハルカ”の音楽が流れるエンドロールを観ながら、改めて思った。「やっぱり新海誠すごい」と。

今回鑑賞した『すずめの戸締まり』は、『秒速5センチメートル』『君の名は。』『天気の子』と公開するたび莫大な興行収入を記録した新海誠作品の最新作。その期待値はとてつもないものがあったはずだが、流石は名監督。結果としては高いハードルを軽々超えてくる、素晴らしい映画だった。

物語は、九州の田舎町で生活する女子高生・岩戸鈴芽が学校に向かう一幕から始まる。その道すがら、偶然出会った「扉を探している」とする宗像草太に廃墟の存在を教えた鈴芽は、彼に淡い感情を懐き始ながら登校。ただ、宗像のことが忘れられない鈴芽は廃墟に逆戻り。そこにあったのは謎の扉で、彼女は何の気なしにその扉を空けてしまう。

場面は変わり、宗像の捜索を諦めて再度登校した鈴芽。そこで突然、緊急地震速報を告げるアラートが鳴る。そして驚いて学校の外を見る鈴芽の目が捉えたのは、先ほど自分が開けた扉から化物が這い出ている状況だった。「大変なことをしてしまった」と気付いた鈴芽は再び廃墟へ。するとそこには扉を閉めようとする宗像。……宗像は、常世と現在を結ぶ扉に鍵をかけるために全国を旅する鍵師だったのだ。かくしてふたりは各地で開かれてしまった扉(理由は省略)を閉じるため、全国津々浦々の旅へと赴く……。あらすじとしては、ざっくりこのような形だろうか。

タイトルにもある通り、内容としてはざっくりと『すずめという少女が扉を閉じていく』というもので間違いない。ただ、そのストーリー展開がとてつもなく上手いのだ。特に秀逸なのは『様々な人との交流を経て成長する鈴芽の姿』で、例えば九州から愛媛に向かう道中では、同い年の少女と赤裸々な話をしたり(これが鈴芽のバックボーンをシッカリ示しているのもニクい)、愛媛→大阪では、大阪まで運んでもらう変わりにアルバイトで奮闘……。当初こそ振り回されてばかりだった鈴芽は、後半に行くにつれて芋っぽい訛りは消え、自分の考えで全ての行動を取るようになっていく。

更に、今作のキーキャラクターである宗像との掛け合いも最高だ。途中から彼は子供用のイスの姿に変貌してしまうのだけれど、街中を駆け回るイス(宗像)を周りの視線を受けながら「すいません!すいません!」と恥ずかしそうに追い掛ける鈴芽の描写や、次第に近づいていくふたりの距離に関しては、鈴芽がイス(宗像)に『乗る』『抱きしめる』といった行動で表していたりと秀逸。それこそ別作品の『君の名は。』では、『女子と入れ替わった主人公が胸を揉もうとして「あいつに悪いか……」とやめる→次のシーンで無言で揉む主人公』というシーンがあるのだけど、そのタイプのフフッと笑えるシーンが本作ではかなりある。総じて、エンタメ的にも見本のような映画と言えるだろう。

少し話は逸れてしまうが、長いこと生きていると『人はひとりでは生きられず、助けてくれる人がいて初めて成り立つ』とする真理に気付く。それこそ『君の名は。』ではその助けてくれる側の人物が主人公かヒロインのどちらかで、『天気の子』に関してはほぼ共犯者的な共依存っぽい扱いだった訳だが、今作は宗像という存在は『半強制的に田舎から抜け出す手助け』に留まり、鈴芽の人間性に惹かれた周囲の人たちが助けてくれるという、新海誠作品としては稀有な流れ。だからこそふたりの恋模様も、本当にグッと来るのだ。

他にも褒めたい部分はたくさんあるが、長くなるのでここまでにして。今作は『君の名は。』『天気の子』らと比較される中でも、個人的には『君の名は。』と競るレベルの傑作だと思う。マイナス点を挙げようとしたが、ほぼない。今でも毎日数回上映されるヒット作にしろ、もっともっと広がるべき作品かなと。泣いて悩んで、傷ついた先にある光を希求する鈴芽と宗像。ふたりで歩くその道程を、ぜひ劇場で追体験してみてほしい。

ストーリー★★★★★
コメディー★★★★★
配役★★★★☆
感動★★★★☆
エンタメ★★★★★

総合評価★★★★★

『すずめの戸締まり』予告【11月11日(金)公開】 - YouTube

映画『すずめの戸締まり』予告②【11月11日(金)公開】 - YouTube