主人公が洗濯終了を待つ間も、ランドリーの外では様々な日常が描かれている。工事現場作業員とおぼしき人が闊歩していたり、自身の目の部分にボカシよろしく『Who am I ?(私は誰なんだ)』と記された人がまるで自身の思いをぶち撒けるように口を開けていたり、缶ジュースを道端に放り投げる人がいたり……。よく見るとその人々はほぼシルエットしか明かされていないまでも皆主人公と類似した髪色・髪型であり、どこか主人公そのもののようにも見える。《手帳開くと もう過去/先輩に追い越せない 論破と》から成る歌詞にはH曰く、歴代のPSO2と今回アップデートにより追加された『PSO2 ニュージェネシス』では服やアクセサリー、微々たる装備は別にして全員がレベル1……ほぼ同じスタート地点となることから、今までの実績がある意味では意味を成さないというゲーム独自の仕様と、それでも先輩(コアユーザー)には知識や技術的な面で追い付けない個々人のスキルを意味しているのではないかとのこと。加えて《もうダンスダンスダンス 誰も気づいてない/ジェメオスよりも ゆうもわな落書きに》はロビー画面でリアルのプレイヤーがゲーム以外の別作業(スマホをいじる等)をする際にダンスのアクションを押したまま放置することがあること、更に《ゆうもわな落書き》(ユーモアな落書き)は時たま『シンボルアート』という、手書きでイラストを書くことの出来る暇潰しをその時間に行っている人も多く、それについても指しているのでは、とのPSO2のコアユーザーでしか知り得ない裏情報も語ってくれた。
いやはや、未だかつてこれほどまでに豪華なフェスが日本にあっただろうか。ロックバンドからはUNISON SQUARE GARDENや10-FEET、サンボマスターらが。アイドルからは櫻坂46、BiSH、ももいろクローバーZ。他にも今をときめくLiSA、マカロニえんぴつetc……。本日発表された『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021』の最終出演アーティストだけを見ても、思わず声を漏らしてしまったライブキッズはあまりに多いはず。無論フェスの成否が明らかとなるのはまだ先のことだが、こと出演アーティストに関してはこの場で断言しよう。紛れもなく最強の布陣であると。
そして最終日8/15。出演アーティストはクリープハイプ、サカナクション、Fear,and Loathing in Las Vegas、04 Limited Sazabys、MAN WITH A MISSION、ヤバイTシャツ屋さん、LiSA、Little Glee Monsterというロックポップ混合。十中八九トリはサカナクションだろうが、思えば彼らのフェス出演はコロナ以後一切なかったので、RIJが皮切りということになるのだろう。そこに大暴れ必死のファストバンドがどんどん投入されて、満を持して参戦のLiSAとリトグリ!明らかにロック人口が過半数を占めるこの日にどう絡んでくるのか楽しみ。ライブのイメージが強いマンウィズやフォーリミといった所謂ロキノンバンドも、昨年から野外フェスの形ではあまりライブを行っていなかったこともあって爆発的なライブを見せてくれそうだ。
ワクチン接種が加速しているとはいえ、未だコロナの猛威収まらない今年の夏。ただ今夏の開催を中止とするフェスもある一方で開催する動きも多く、RIJに至る前の今春に開催された同社主催の『JAPAN JAM 2021』はひとつの結果として、メディアによる数々の印象操作で逆風に晒されながらも、最後までクラスター発生なしの功績を残しつつ終幕した。……約1年越しに開催される今年のRIJにも、是非ともフェスの輝かしい好例を作り出してもらいたいところだ。
Beauty And A Beat ft.Nicki Minaj/Justin Bieber[舞台:ナイトプール]
フォロワー数世界一の1億人超え、僅か13歳の頃に才能を見出だされ、以後様々な金字塔を打ち立ててきたアーティスト界の大富豪たるジャスティン・ビーバー。当時弱冠20歳でありながらありとあらゆるものを手にしたと言っても過言ではない『ジャスティンらしさ』が爆発したMVがポップ路線を突き進む代表曲“Beauty And A Beat ft.Nicki Minaj”。MVの舞台は遊びたい盛りの10代~20代が全力ではっちゃけるナイトプールで、バックで流れる楽曲と共にジャスティンの姿をリアルタイムでカメラが追い続ける、ノーカット(のように見せた)MVとなっている。ただ派手なパフォーマンスに定評のあるジャスティンらしく、彼の背後では水着姿の男女やパイロ、ダンスイベントなどあらゆる面でどんちゃん騒ぎで、幾度も『ヤンチャ』な報道に晒された彼ならではのMVに仕上がっている。
実際、この時期のジャスティンは公私共に非常に充実していたことでも知られていて、所謂『過渡期』と呼ばれる状況にあった。同時に公私が充実するあまりマスコミからは「遊び人」だの「成金」だの散々バッシングを浴びせられる時期でもあったわけだが、ジャスティンVSマスコミにファンが加勢し、その構図が更にメディアにすっぱ抜かれて新たな火種を生むという凄まじい循環が発生していたのもこの頃である。なお総再生数9億6000万回超えのこの楽曲が認知を飛躍的に高めたのは間違いなく、未だ総再生数21億回の“What Do You Mean?”に次ぐ彼の重要な1曲として、今知っておくべき楽曲としても位置している。
キルミー/SUNNY CAR WASH[舞台:複合エンタメ空間]
知る人ぞ知る若手ロックバンド筆頭・SUNNY CAR WASH。現在も小バコを中心に活動を続ける彼らの、楽曲の持つ破壊力のみで100万回を超える再生数を叩き出した代表曲が以下の“キルミー”だ。MVの舞台となるのはスポッチャかROUND1か、もしくはそれらに値する複合エンタメ空間的商業施設。故にMVもある種ハッピーな雰囲気に満ちていて、太鼓の達人やビリヤード、キックターゲットで思い思いに楽しむ姿が収められている。しかしながらこの楽曲のサビは全て《ねえキルミーベイベー 殺してくれ》から始まる衝撃的なものでもあり、その真意はクソッタレな人生に時たま訪れるこうした遊びを経ての「楽しい時間がずっと続いてくれれば良いのに」という思いだ。彼らの紡ぎ出す楽曲の大半が日常生活の切り取りであることはファンにはよく知られているけれど、やはり赤裸々を極めたポップロックナンバー“キルミー”は当時未だ20歳そこそこの年齢であった彼らの最も純真無垢な部分が発露した楽曲であるとも言える。
活動休止とメンバー脱退で一度は苦難の時代を経験しつつも、再びロックシーンに舞い戻ってきたSUNNY CAR WASH。奇しくも活動を再開した直後からコロナウイルスが全国的に蔓延し、実際新体制1発目のライブも延期となってはしまったが、変わらず公式ホームページはないながらも精力的なライブ活動を続けている。ハイトーンなボーカルと曲調から繰り出される予想もつかないライブパフォーマンスは、一見の価値ありだ。
その後も勢いそのままに、ラップをベースに宮本の新境地を開拓した“解き放て、我らが新時代”、道路をモチーフにしたVJでもって我が道を行く信念を体現した“going my way”、ベストマッチな小林によるキーボードの演奏と宮本の歌で会場の空気を完全掌握した“きみに会いたい -Dance with you-”を続けざまにプレイ。おそらく今までの環境ならば「ミヤジー!」を筆頭とした喜びの声が会場の至るところで発せられること間違いなしの最高のライブなのだが、宮本は声が出せない代わりに強く拍手を鳴らす観客を見渡しながら「みんなの気迫が届いてますよエブリバディ!」とご満悦。その言葉を聴いて更に勢いを増す拍手の音……。あまりにも最高の環境だ。
“きみに会いたい -Dance with you-”の演奏を終えしばらくすると「みんなにもとっておきの良い曲たくさん用意してきましたんで、最後までリラックスして心熱く燃え上がって、楽しんでくれエブリバディ!」と叫んだ宮本。この日のために用意された『ROMANCE』のCDジャケットを模したセットに触れると、改めて今回のバンドメンバー4人をひとりひとり紹介していく。宮本いわく『ROMANCE』のレコーディングの大半を共に制作したのが宮本を含めたこの5人であったと振り返り、ここからは『ROMANCE』の楽曲を連続で届ける通称『ROMANCEコーナー』に雪崩れ込みだ。ここで披露されたのは“二人でお酒を”、“化粧”、“ジョニィへの伝言”、“あなた”という往年の名曲たちで、ここまでのアッパーな楽曲群とは対極を行くしっとりとしたナンバーで魅了。魂で歌うシンガー・宮本浩次のポテンシャルの高さを遺憾なく発揮する感動的な歌唱に観客は皆一様に手拍子をするでもなく、静かに聴き入っている。それは音楽に『耳を凝らす』というより言うなれば『耳を奪われる』類いの感覚に近く、極上の音楽体験ここにあり!な凄まじい一体感があった。
ドラマ主題歌。アダルティなミドルチューン。『ROMANCE』楽曲。パンクソング。コラボ曲……。奇しくも第1部における後半は、現時点での宮本のソロ活動を網羅するような幅広い楽曲が展開された。そんな曲調も内容も全く異なる楽曲群を聴いて改めて思ったのは、宮本の紡ぎ出す言葉はいつも根底に『肯定』があるということだ。それは何も宮本が度を越してポジティブな人間であるとか、考え無しのイエスマンであるとか、そうした意味ではない。例えばの話だが、今しがた自販機で購入したお茶をスーツ姿の男性が一口飲み、去っていく。このシーンひとつ取っても自然と「頑張ってるなあ」あるいは「ファイトだぜ」と思うことの出来る、そんな人間性を指した肯定だ。“冬の花”で描かれる悲しみを背負った主人公も、“Do you remember?”でガードレールに踞る男も……。決して「前向きに生きようぜ!」ではなく、言わば当人の話を全て受け止めた後に肩を叩いて「何かあれば力になるよ」と言い残して去っていくような優しさがある。それは無論宮本が今までに様々な経験をしてきたからで、同時に様々な経験を積んだ宮本が発する言葉だからこそ我々は彼の言葉にいたく感動し、力をもらい、明日への活力とすることが出来るのだ。
そんな宮本の優しき精神性がこの日いち爆発したのが、第1部の最後に披露された“P.S. I love you”であったように思う。“P.S. I love you”はタイトルのみを見ればストレートなラブソング。ただその実、この楽曲で歌われるのは悩みながらも日々を生き抜いている『あなた』に送る人間讃歌である。宮本は「俺がついてる」と言わんばかりの頼もしさを携えて観客を包み込むように頻りに手を広げ、時には脱ぎ捨てた白シャツをおもむろに肩に乗せたり、2曲前に披露された“冬の花”で演出として舞い散った赤い花びらを拾って撒いたりと無邪気な一面も。なおそうした中にも圧倒的な歌の力は確かに宿っていて、サビ部分では《立ち上がれ がんばろぜ バカらしくも愛しき ああこの世界》と聴く者を強く鼓舞していく。……これまで幾度も友人や家族から聞かされてきた「生きていれば良いことがある」などという軽々しい言葉とは違い、そんなリアルを全て見据えて「悲しいことは起こるよ。辛いよなあ。でももうちょっと歩いてみようぜ」と日々を間接的に肯定し生の価値をつまびらかにする宮本の言葉は、何よりも強く心の奥底に刺さる。
完全燃焼に近いステージングを経てこれで終わりかと思いきや、まだライブは終わらない。「大好きだぜー!エブリバディ!」と宮本が観客に感謝の思いを叫んでの正真正銘最後の楽曲はもうひとつの新曲“sha・la・la・la”。おそらく先日行われた春フェス『JAPAN JAM 2021』に参加していた観客以外はライブで初見の楽曲だったはずだが、サビ部分では観客の何人かが本能的に行った弧を描いて腕を振るアクションが次々に波及。バックには満点の星空の映像が流れ、あまりにも幻想的な空間に目を奪われる。意図してのことなのかは不明だが《大人になった俺たちゃあ夢なんて口にするも照れるけど/今だからこそめざすべき 明日があるんだぜ》と夢について綴られる“ハレルヤ”と対になるように、夢を追い続ける人間の美しさをより直接的に描いた“sha・la・la・la”が続けざまに鳴らされたのもまた素晴らしく、未来を見据えて奮闘する人間へのポジティブなメッセージとして、力強く響き渡っていた。演奏終了後、メンバー全員が横並びになって感謝を表した宮本バンド。ステージから完全に見えなくなるその時まで、宮本が最後まで掌をメンバーに向け、最大限のリスペクトを表していた光景はおそらく一生忘れないだろう。
【宮本浩次@東京ガーデンシアター セットリスト】 [第1部] 夜明けのうた 異邦人(久保田早紀カバー) 解き放て、我らが新時代 going my way きみに会いたい -Dance with you- 二人でお酒を(梓みちよカバー) 化粧(中島みゆきカバー) ジョニィへの伝言(ペドロ&カプリシャスカバー) あなた(小坂明子カバー) shining 獣ゆく細道 ロマンス(岩崎宏美カバー) Do you remember? 冬の花 悲しみの果て P.S. I love you