キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021』全出演アーティスト発表から見る、各日の特色

こんばんは、キタガワです。

 

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いやはや、未だかつてこれほどまでに豪華なフェスが日本にあっただろうか。ロックバンドからはUNISON SQUARE GARDENや10-FEET、サンボマスターらが。アイドルからは櫻坂46、BiSH、ももいろクローバーZ。他にも今をときめくLiSA、マカロニえんぴつetc……。本日発表された『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021』の最終出演アーティストだけを見ても、思わず声を漏らしてしまったライブキッズはあまりに多いはず。無論フェスの成否が明らかとなるのはまだ先のことだが、こと出演アーティストに関してはこの場で断言しよう。紛れもなく最強の布陣であると。


前回の記事でも記した通り、今年のRIJは例年の環境とは大きく異なるフェスとなる。今年限りの重要な変更点は主にふたつで『出演者が1日8組 × 5日間で総勢40組』、そして『ステージがGRASS STAGEのみ』であるということ。ちなみに2019年のRIJと比較しても当時は出演アーティストが総勢250組、ステージは大小含めて7つであったことからも、今年が如何に強い新型コロナウイルス感染拡大防止措置を取った上で開会に漕ぎ着けているのかがよく分かる。


ただこれまでの『音楽フェス』と呼ばれるイベントはどちらかと言えば「○○を観るためにフェスに行く」というよりは「フェスで歩き回りながらいろんなアーティストを観る」考えが強くあり、それこそRIJを例に挙げて考えてもGRASS STAGEだけで1日を過ごす人や、観たいアーティストだけをピックアップしてイメトレ通りに完璧に動くような参加者はかなり少なかった。 ……だからこそGRASS STAGEオンリーでどこにも移動が出来ない今年のRIJは、出演アーティストが誰になるのかが最も重要になっていて、多くの目が注がれていたのも事実としてあった。

 

 
そんな中で発表された最後の出演アーティスト。該当画像の添付が実質的に禁止となっている関係上、公式ツイートを上に張り付けているので詳しくはそちら、若しくは公式サイトを確認してもらいたいのだが、文字を観ているだけで心が踊る磐石のラインナップにまず震える。言うまでもなく、その大半が過去メインステージ(GRASS STAGE)でライブを行ってきた知名度も実力も最大級のアーティストばかりで、チケット代こそ一見高額なようにも見えるがその実、場合によってはRIJにおける1日の出演アーティストのうち1組の単独ライブを観るだけでもほぼ同額となるような豪華さであるため、実質ペイ。それどころか圧倒的なお釣りが来る程の素晴らしいアーティストが揃った。

 


ここからはそんな音楽の祝祭こと今年のRIJのラインナップから観る、各日の特色について記していこう。まずは初日・8/7の出演アーティストは五十音順にKing Gnu、Cocco、櫻坂46、SUPER BEAVER、the HIATUS、宮本浩次、UNISON SQUARE GARDEN、WANIMAの8組。そもそも紅白歌合戦出場アーティストが4組いる時点であまりにも豪華だが、やはり注目すべきはおそらくトップの手順で投下される櫻坂46のライブと、以下ロックバンドとの関係性だろう。間違いなく欅坂46時代から長らくRIJを牽引してきた、さのアイドルグループを観るためにチケットを購入する坂道ファンはかなりの数存在するだろうが、そうした人々の心をどう掌握するかはひとつ重要なポイントでもある。更にはアイドルとロックの間に幸か不幸か、完全にアウェーな形で放り込まれたダークポップネス雨女・Coccoの存在も気になるし、もはや語るも野暮なWANIMAやKing Gnuの異種格闘技戦のような対極的なサウンドもどう響くのか。この日の出演者の中ではどちらかと言えば万人受けしそうなUNISON SQUARE GARDENとSUPER BEAVERも、思えば全くMCをしないバンドとそうではないバンドといった感覚なので、正直はっきりとした予想が出来ない。初日ながら波乱万丈の1日になりそうだ。

 


対して翌日8/8はASIAN KUNG-FU GENERATION、[Alexandros]、KANA-BOON、sumika、BiSH、My Hair is Bad、マカロニえんぴつ、YOASOBIとロックに振り切っていて、結果今年のRIJの中では一番のロックデイと言えるだろう。もはやトリの常連となった[Alexandros]やASIAN KUNG-FU GENERATIONは元より、先日活動再開したKANA-BOON、注目度爆上がりのsumika。そしてその中に先日“怪物”が1億再生を突破し波に乗るYOASOBIと、ニューアルバムリリース直後のタイミングでの出演となる楽器を持たないパンクバンド・BiSHが挟まれているのも面白く、どのような化学反応を魅せるか見物。広々とした空間で放たれるマカロニえんぴつの音楽も絶対的に最高だ。個人的には春フェス同社が主催する『JAPAN JAM 2021』出演前に、このコロナ禍で自身がフェスに出演する意義について赤裸々にテキスト化してくれたASIAN KUNG-FU GENERATIONがどんなライブを行うのか、非常に期待しているところ。

 


連休最終日の8/9もあいみょん、サンボマスター、10-FEET、東京スカパラダイスオーケストラ、NUMBER GIRL、back number、マキシマム ザ ホルモン、ももいろクローバーZと超豪華だ。特にこの日は照準を誰に合わせるかによって、人それぞれの昼休憩なり飯時間なりが大きく異なる日でもあると思っていて、大暴れしたい(といってもソーシャルディスタンスだが)人にはホルモン、アイドル派はももクロ、ポップ好きはback number、30代のロック好きにはナンバガ、更には手広くあいみょんがスタンバイというどんな音楽好きにも最適解ありな1日だ。なおトリの予想が最も難しいのもこの日のような気がしていて、ロックにもポップにもどちらにもアプローチが可能な10-FEETかback numberかなあ、というイメージ。あいみょんが“裸の心”を緩やかに聴かせた次の瞬間にホルモンが“「F」”をぶちかます可能性さえありなんという、とことん雑多な1日と言えよう。日比谷野外大音楽堂で初披露されたナンバガの新曲“排水管”も楽しみ。

 


週をまたいで8/14。この日は終日RIJの立役者勢揃いの布陣で進行する、地に足着けたある意味では分かりやすい1日で、出演アーティストはUVERworldにTHE ORAL CIGARETTES、KEYTALK、きゃりーぱみゅぱみゅ、キュウソネコカミ、ゲスの極み乙女。、フレデリック、RADWIMPSの8組。ここで注目すべきはやはりポップロックの帝王・RADWIMPSであり、流石にほぼトリで確定か。ただ彼ら自身大規模なツアーを2022年の夏以降に延期し、今現在のライブ参戦がフジロックとRIJのみであることから考えても今回のライブは凄まじいものになることは間違いない。大きくイメージを変えたアルバムでも話題のTHE ORAL CIGARETTESも気になるところではあるし、ツアーの開催が決定しているフレデリックも“名悪役”含め最新型のライブを披露してくれるはず。そしてこの日の起爆剤の役割を果たすのは待ってました!なロック兄貴有するUVERworldで、スタートダッシュそのままの勢いで駆け抜けること間違いなしだ。

 


そして最終日8/15。出演アーティストはクリープハイプ、サカナクション、Fear,and Loathing in Las Vegas、04 Limited Sazabys、MAN WITH A MISSION、ヤバイTシャツ屋さん、LiSA、Little Glee Monsterというロックポップ混合。十中八九トリはサカナクションだろうが、思えば彼らのフェス出演はコロナ以後一切なかったので、RIJが皮切りということになるのだろう。そこに大暴れ必死のファストバンドがどんどん投入されて、満を持して参戦のLiSAとリトグリ!明らかにロック人口が過半数を占めるこの日にどう絡んでくるのか楽しみ。ライブのイメージが強いマンウィズやフォーリミといった所謂ロキノンバンドも、昨年から野外フェスの形ではあまりライブを行っていなかったこともあって爆発的なライブを見せてくれそうだ。


……ここまで感情の赴くままに書き記してきたが、何度各日の出演者に視線を落としても今年のRIJはジャンル然り年齢然り、貢献度という意味でもどこか統一性がない。例えばWANIMAで踊り狂った人がCoccoでポツンと立ち尽くす光景は想像出来ないし、リトグリのポップとベガスの爆音ピコパンクの相性がどうなのかなど、考えは尽きない。更には今までのようにステージ間での移動がないので、悪い言い方をしてしまえばどれだけ興味のないアーティストのライブが始まったとしても観るしかないような時間帯もあるだろう。


しかしそうした事柄を踏まえても、今年のRIJは歴史的なものになると個人的には踏んでいる。その理由は何度も繰り返している通りその『豪華さ』だ。何をしていても100%メインステージのみの音が鳴り響く作りの恩恵は、やはりこの豪華さでなければ難しい。名前も知らないアーティストの音が聴こえてくる、というのはフェスあるあるだが、飯を食べている時に遠くでLiSAの“紅蓮華”が聴こえてきたり、キャンプサイトで寝転びながら遠目で宮本浩次の歌を聴くなんて経験はまずない訳で、しかもその豪華ラインナップが1日中続くのである。ツイッターを見ていると今回の方針は当然賛否両論が巻き起こってはいたが、様々な観点で総合的に判断した場合に、コロナ禍でここまで充実したフェスは存在しないのだ。


ワクチン接種が加速しているとはいえ、未だコロナの猛威収まらない今年の夏。ただ今夏の開催を中止とするフェスもある一方で開催する動きも多く、RIJに至る前の今春に開催された同社主催の『JAPAN JAM 2021』はひとつの結果として、メディアによる数々の印象操作で逆風に晒されながらも、最後までクラスター発生なしの功績を残しつつ終幕した。……約1年越しに開催される今年のRIJにも、是非ともフェスの輝かしい好例を作り出してもらいたいところだ。