キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

新たにZEDDをヘッドライナーに迎え、全体像が見えた『SUPERSONIC 2021』の動向を解剖する

こんばんは、キタガワです。

 

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「内容的には一気にダンス寄りなものに変貌します」……。洋楽誌『rockin.on』7月号に掲載されたクリエイティブマン代表にしてSUPERSONIC主催者・清水直樹氏のインタビューにおけるこの一文を読んで、ハッと気持ちが切り替わった洋楽ファンは少なくないだろう。昨年は新型コロナウイルスの影響により延期、結果今年にスライドさせる方向で動いていたスパソニは心機一転『スパソニらしさ』全開の洋楽・ダンスフェスとしてリニューアルする。


前回の記事では未だ開催することのみが発表されたタイミングであったために筆者視点の予想を中心に記してきた。ただそれらは単なる情報も何もない渦中の予想であったが、今回のインタビューで清水氏はそんな我々が抱く多くの疑問に答えてくれている。今回のインタビューで述べられた『SUPERSONIC 2021』部分は主に3つで、ヘッドライナーと出演者、そして各日のイメージである。中でもやはり注目すべきはそのラインナップについて触れる一幕で、ほぼ暗中模索的だった我々の思考はこれで一気に晴れた。「良いことでも悪いことでも一度決めたら心がスッキリするよね」とは清水氏の弁だが、ある意味では残念である意味では嬉しい彼の開催に至る言質を取ったことは、とても意味のあるものだったように思う。


まずは気になるヘッドライナーについて。元々スパソニはThe1975とスクリレックス、ポスト・マローンをトリに配置する形で動いていたことは周知の通りだが、このうちThe 1975とポスト・マローンはキャンセルが正式に決定。そもそもThe 1975は早い段階で2020年ツアーの全キャンセルを決定していたり、ポスト・マローンも異様な多忙ぶりが取り沙汰されていたため「本当にスパソニ来れるのか?」と不安になる感覚は正直なところあったのだけれど、こうしてキャンセルが正式に明言されるとやはりショックは隠せない。The 1975の“Guys”で号泣するワンシーンは遂に来年に持ち越されたが、万全の状態でライブを迎えるその時を今は座して待ちたい。


この部分だけを切り取ると至極残念にも思えるが、The 1975とポスト・マローンの代打として新たにヘッドライナーに抜擢されたのが、よもやのゼッドだと明かされたのだから結果最高だ。以下のライブ映像は2019年のSUMMER SONICのもので、単独ライブさながらの豪華なセットで会場を興奮の坩堝に誘っていたのが印象的だった。このセットが今回も組み上げられるのかどうかは不明であれど、あれから2年の歳月を経て進化したゼッドが日本で、しかもヘッドライナーで観ることが出来る幸福はとても言葉では言い表せない。スクリレックスとゼッド。この今や世界が取り合う名物DJ2組が日本でライブをすること自体、世界的に見ても異次元である。

 


出演者に関しても、冒頭に記した通り今年はEDMを基盤とするアーティストが大半を占めることが決定。なお現時点で今回のスパソニ出演を断念したアーティストで分かっているのはリアム・ギャラガー、イアン・ブラウン、イージー・ライフ、スクイッドら。逆にスパソニ参加がほぼ確定しているのは元々発表されていたEDM陣に加えてトーンズ・アンド・アイやオーロラ、ビーバドゥービーら若手女性アーティストで、どうやら両日とも『ダンスミュージック+新進気鋭の若手アーティスト』の構図で進んでいくようだ。一見サマソニと言えばロックバンドのイメージが強く、実際2018年あたりのサマソニなどはそうしたラインナップだったのだけれど、思えば2019年には初めてアラン・ウォーカー、ゼッド、ザ・チェインスモーカーズの順で進行するEDMデイが爆誕して若者の来場を多数獲得していた訳で、むしろサマソニ(スパソニ)の裾野を広げる上ではこれが最適解のような気もする。それでいてしっかりとロックEDMとポップEDMの住み分けもされているので「ロックバンド出ないならちょっと……」というファンも引き込む、どちらにしてもスパソニらしい日になりそうだ。


各日のイメージも、昨年延期時に漠然と抱いていたものとはある意味で大きく変わるものとなる。まず東京公演は1日分が切り取られ、感染拡大防止の観点からステージ数も減少、おそらくは2ステージ。多くとも3ステージが限界なコンパクトなものに。キャパシティについても同様に、かつては1日6万人の来場を見込んだ東京では3万人、大阪では2万人の位置付けでほぼ確定。ただ邦楽と洋楽の比率は敢えて洋楽を高め、具体的には3分の1は邦楽で残りの3分の2を洋楽で占めるという洋楽特化型の形で行われるのが今年のスパソニとなる。例えば今年、同じ土壌でありながら洋楽のラインナップを全面的に断念し邦楽フェスへと移行したのがフジロックであるとするならば、スパソニはこの情勢だからこそ洋楽アーティストを招致して未来へ繋げるように考えていることが分かる。これは決してどちらが良い悪いではなく、rockin.onのインタビューにて清水氏が「じつは邦楽でスーパーソニックやったら?っていう意見もあったんだけど、やっぱり、スーパーソニックやサマーソニックは、それでは成り立たないんだよね。洋楽アーティストあってのフェスだって」と語っていたように、そもそも洋楽フェスを都市部で敢行するという土壌を長年かけて形成してきたSUPERSONIC(SUMMER SONIC)だからこそ至った真理こそがこうした状況下での洋楽アーティスト来日宣言なのだ。

 

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ここまで、というかこれまでもずっと、僕はSUPERSONICの行方についてつらつらと書き連ねてきた。ただこの場で初めて率直な気持ちを綴るとするならば、チケットを長らく所持し続けているいち個人としては開催は大賛成で本当に有り難く思っているが、僕は今年のSUPERSONICへは参加しないつもりだ。その理由はひとつ。僕の暮らす島根県では感染者はほぼおらず、他県への移動……それこそ大型フェスとなればかなりの風評被害を受けると考えられるからだ。少なくともワクチンくらいは接種せねば、なかなか厳しいものがある。


ただもしも僕が大阪や東京に住んでいれば、僕は今年のSUPERSONICに迷わず行くだろう。そこに大好きなThe 1975もリアム・ギャラガーも、スクイッドもいなくても、である。何故ならそれほどこの『SUPERSONIC(SUMMER SONIC)』というフェスには心底楽しませてもらった恩義があるためだ。洋楽好きにとってこれほど幸福な空間は他にないと断言出来るほど、気付けばこのフェスは夏になくてはならない代物となっていた。しかも開催されれば間違いなく約2年ぶりの洋楽フェスの復活となれば、その思いは例年とは段違いだ。だからこそ僕はこのフェスの成功を祈っているし、微力ながらフェス成功の手伝いを担いたい……。そうした気持ちでSUPERSONICの文章を書き続けている次第である。洋楽ライブが行われなくなって早1年半。コロナニマケズ。今年こそはあの素晴らしい景色をもう一度参加者のテキストなりライブレポなりで拝めることを願っている。