キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

アミューズメント施設で撮影したアーティストのMV5選

こんばんは、キタガワです。


もはや1にMV、2に音楽……。かつて音楽第一主義と謳われた音楽シーンの動きは今や昔で、現在は如何にして楽曲へと導き、注目を集めるかといった策略的手法がほぼマストと化していることは誰もが知る通りだ。故にそのMVの内容はどれもオリジナリティー溢れる代物となっていることはもや言うまでもないのだけれど、これがなかなかどうして種類が多い。


これまでも多種多様なMVに焦点を当てて記述してきた当ブログ。今回は『アミューズメント施設で撮影したアーティストのMV5選』と題し、千変万化な魅力に今一度迫っていきたい。総じて当記事が読者の方々にとって、新たな音楽と出会う契機となれば幸いである。

 

 

starlight/asobius[舞台:遊園地]

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青空に煌めくポップマエストロ・asobiusの1stフルアルバム『pray & grow』収録曲にして、珠玉のライブアンセム“starlight”。この楽曲は都度ライブで披露される代表的ナンバーであると共に、現在甲斐一斗(Vo)以外のメンバーが脱退、甲斐の音楽番組の楽曲製作といった業務の多忙の関係上実質的な活動停止状態となっているかつての彼らの、絶頂期を体現する1曲と言える。楽曲はリズミカルなポップロックであり、ハンドクラップからの飛び道具的なサウンドで幕を開け、以降は甲斐の伸びやかなボーカルが牽引するどこか壮大な形式に仕上がっている。なお今曲はライブでは専らオープナーに冠されていることが多く、冒頭の手拍子のリフをSE代わりに流し、そこからメンバーが入場。瞬間爆音をズドンと鳴らすインパクト大の展開は、一瞬で観るものを引き込む重要な起爆剤とも言える代物で、更にミュージカルシンガーのように感情を乗せて突き進む“starlight”は、かつてのasobiusのライブにおいて誰もが期待する1曲と化した。


前述の通りasobiusは現在実質的な甲斐のソロプロジェクト状態と化しているが、アイドルユニットへのコーラス参加や“spinning world”が三菱UFJ銀行のCMに起用されるなど、彼の織り成す楽曲と歌声の魅力は未だ健在だ。幾分スローペースではあるけれど、数年前のasobiusとは異なる新たな道を奔走する甲斐の未来を、これからも彼の紡ぎ出す音楽と共に刮目していきたい。

 

 

 

社会の窓/クリープハイプ[舞台:ライブハウス]

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もはや語るも野暮な邦ロックの支柱・クリープハイプの“社会の窓”は、今回取り上げる楽曲の中でも極めて異質なMVに仕上がっている。その理由は単純で、定点カメラのワンシーンを延々流し続けるチャレンジングな代物であるからだ。MVの場所はライブハウス。クリープハイプのライブを観るとある女性の表情が次第に変化する一部始終を臨場感たっぷりに映し出すチャレンジングな手法は思わず息を飲む。ただそのバックで流れる歌詞に目を向けてみれば《オリコン初登場7位 その瞬間にあのバンドは終わった》《曲も演奏も凄く良いのになんかあの声が受け付けない/もっと普通の声で歌えばいいのに もっと普通の恋を歌えばいいのに》といった当時メジャーデビュー間もない彼らが実際に受けたアンチコメントの数々が赤裸々に投影され、その締め括りとしてサビの直前に《余計なお世話だよ》との言葉が放たれる衝撃的なもの。


彼らは日本が誇るロックバンドの一組であることは間違いないが、実際彼らのカテゴライズとしてはかつては専ら『ポップロック』に寄っていて、実際“憂、燦々”や“オレンジ”といった著名な楽曲は正にそうした路線を地で行くものだ。けれども怒りの勢いをそのまま落とし込んだ楽曲というのはこの“社会の窓”と、更なる興奮とアンチを呼んだこの楽曲を経て届けられた《知らねえ》のフレーズが連続するアンサーソング“社会の窓と同じ構成”しかなく、現状クリープハイプの中で激しい楽曲と言えばどちらかが挙げられるほどで、結果社会に牙を剥く“社会の窓”のリリースによって彼らはポップらしからぬ一風変わったバンドとして確立した。クリープハイプというバンドを語る上で欠かせないのがこの楽曲であることに、異論のある人はいないだろう。

 

 

 

HOT! HOT! HOT!/THE SALOVERS[舞台:バンジージャンプ]

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朝ドラ、映画、CMなど俳優として活動の幅を広げ、アナウンサーの古舘伊知郎の長男としても知られる古舘佑太郎(Vo.G)がフロントマンを務める若きロックスターの原石・THE SALOVERS。そんな彼らがシングルカットで世に放った一撃こそ、初期衝動を爆発させた“HOT! HOT! HOT!”である。この楽曲はその性急なサウンドもさることながら、若さを前面に押し出したある種無謀なMVに仕上がっていることも特徴のひもつ。MVはYouTuberで言うところの「○○やってみた」的な内容となっていて、船からの飛び込みやスイカ割り、カンフー体験など日常生活を送っていればまず経験することのないチャレンジングなアクションが並んでいて、極め付きはメンバーの大半が高所恐怖症であることを逆手にとってのバンジージャンプで、古舘を除くほぼ全員が顔面蒼白でダイブを敢行。サビ部分では完全に表情が死んだメンバーが《無理をしている》のフリップを掲げているのも面白い。総じて当時「若手筆頭」の呼び声高い若かりし時分だからこそ決行できたMVと言える。


なおTHE SALOVERSは2015年3月25日をもって無期限活動休止となり、メンバーは別々の道へ。古舘は一度バンドの解散・若しくは活動休止を経験したバンドマンを集めた再始動の意味を込めた新バンド『2(ツー)』を結成(なお2も先日活動休止が発表された)、俳優としての活動も本格化。活動休止に至った理由も「メンバー全員の仲が悪くなりそうだったから」という幕引きも、実に彼ららしい。

 

 

 

 

Beauty And A Beat ft.Nicki Minaj/Justin Bieber[舞台:ナイトプール]

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フォロワー数世界一の1億人超え、僅か13歳の頃に才能を見出だされ、以後様々な金字塔を打ち立ててきたアーティスト界の大富豪たるジャスティン・ビーバー。当時弱冠20歳でありながらありとあらゆるものを手にしたと言っても過言ではない『ジャスティンらしさ』が爆発したMVがポップ路線を突き進む代表曲“Beauty And A Beat ft.Nicki Minaj”。MVの舞台は遊びたい盛りの10代~20代が全力ではっちゃけるナイトプールで、バックで流れる楽曲と共にジャスティンの姿をリアルタイムでカメラが追い続ける、ノーカット(のように見せた)MVとなっている。ただ派手なパフォーマンスに定評のあるジャスティンらしく、彼の背後では水着姿の男女やパイロ、ダンスイベントなどあらゆる面でどんちゃん騒ぎで、幾度も『ヤンチャ』な報道に晒された彼ならではのMVに仕上がっている。


実際、この時期のジャスティンは公私共に非常に充実していたことでも知られていて、所謂『過渡期』と呼ばれる状況にあった。同時に公私が充実するあまりマスコミからは「遊び人」だの「成金」だの散々バッシングを浴びせられる時期でもあったわけだが、ジャスティンVSマスコミにファンが加勢し、その構図が更にメディアにすっぱ抜かれて新たな火種を生むという凄まじい循環が発生していたのもこの頃である。なお総再生数9億6000万回超えのこの楽曲が認知を飛躍的に高めたのは間違いなく、未だ総再生数21億回の“What Do You Mean?”に次ぐ彼の重要な1曲として、今知っておくべき楽曲としても位置している。

 

 

 

キルミー/SUNNY CAR WASH[舞台:複合エンタメ空間]

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知る人ぞ知る若手ロックバンド筆頭・SUNNY CAR WASH。現在も小バコを中心に活動を続ける彼らの、楽曲の持つ破壊力のみで100万回を超える再生数を叩き出した代表曲が以下の“キルミー”だ。MVの舞台となるのはスポッチャかROUND1か、もしくはそれらに値する複合エンタメ空間的商業施設。故にMVもある種ハッピーな雰囲気に満ちていて、太鼓の達人やビリヤード、キックターゲットで思い思いに楽しむ姿が収められている。しかしながらこの楽曲のサビは全て《ねえキルミーベイベー 殺してくれ》から始まる衝撃的なものでもあり、その真意はクソッタレな人生に時たま訪れるこうした遊びを経ての「楽しい時間がずっと続いてくれれば良いのに」という思いだ。彼らの紡ぎ出す楽曲の大半が日常生活の切り取りであることはファンにはよく知られているけれど、やはり赤裸々を極めたポップロックナンバー“キルミー”は当時未だ20歳そこそこの年齢であった彼らの最も純真無垢な部分が発露した楽曲であるとも言える。


活動休止とメンバー脱退で一度は苦難の時代を経験しつつも、再びロックシーンに舞い戻ってきたSUNNY CAR WASH。奇しくも活動を再開した直後からコロナウイルスが全国的に蔓延し、実際新体制1発目のライブも延期となってはしまったが、変わらず公式ホームページはないながらも精力的なライブ活動を続けている。ハイトーンなボーカルと曲調から繰り出される予想もつかないライブパフォーマンスは、一見の価値ありだ。

 

 

 

……『アミューズメント』 と聞けば誰しもが楽しいイメージを抱くが、確かにアミューズメントは楽しみや娯楽、遊び、気晴らしを意味している。その事実を証明するように、今回記述したナイトプールや遊園地といったMV内で描かれる場所も全て、どう足掻いてもネガティブな印象を持つことがまず難しいようなハッピーな施設ばかりだ。しかしながら楽曲内で歌われる内容は、中には幸福とは真逆を行く《可哀想だからもう少し我慢して聴いてあげようかなって 余計なお世話だよ》と心中をぶちまける“社会の窓”や《ねえキルミーベイベー 殺してくれ》とする“キルミー”であったりもする訳で、MVと組み合わせて観賞したとき、改めてその楽曲の持つメッセージ性が浮き彫りになることも多いのである。


音楽番組でもメディアでも、そのアーティストを語る上ではほぼ必ずMVが制作されている楽曲に焦点が当てられる時代。そんな視覚的価値が重要視される音楽シーンにおいて「何故この場所で撮影したのか」を推察しながらMVを観ることの必要性を、今だからこそ強く唱えたいとも思うのだ。耳で聴く音楽、目で観る音楽が存在するならば、それらを心で補完する行為も存在して然るべし。これからも各々思い思いの接し方で、今後も音楽を楽しみ尽くしてほしい。