キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

『METROCK2021』開催断念……。音楽の炎は消えてしまうのか?

こんばんは、キタガワです。

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この1週間、僕の心は常に焦っていた。何故か。その理由は5月1日~5日にかけて行われる『VIVA LA ROCK 2021(以下ビバラ)』と5月2日~5日に開催される『JAPAN JAM(以下JJ)』にある。緊急事態宣言発令後、全国の感染者はこの数週間で爆発的に増加。大阪府では連日1000人を超える感染が確認され、つい先日は東京都でも同じく1000超。当然ながら、SNS上ではこのふたつのフェスに対する賛否両論が毎日のように飛び交う事態となった。


「音楽を止めてはいけない」「春フェス開催は音楽シーンの大きな希望になる」といった未来を見据えた意見の他、スポーツなどの大型イベントの規制が緩和されていることを例に挙げ「厳しい感染防止対策の元で行われるならば良いのではないか」という賛成派の意見。そして「他のイベントは無観客なのに音楽フェスは良いのか」「緊急事態宣言中にやることではない」「比較的感染者数の少ない土地に人が密集してしまう」という反対派の意見……。どちらが駄目で、どちらがOKとバッサリ切り捨てることは誰も出来ないが、ただひとつ、この状況下で開催される音楽フェスはとてつもない逆境で行われることだけは、火を見るより明らかだった。


そんな中、ビバラの開催日が明日に迫った4月30日。この時には大半のライブキッズたちが、春フェスの動向を気にする癖が付いていたことだろう。そう。開催はもう近々。ビバラはライブ前日ということもありオンライン配信も含め様々な準備を重ねていたし、JJは会場設営の様子をリアルに伝えていた。故に、おそらく中止はない。ただ世論の風向きの悪さは日に日に強くなっているのも事実で、最後までどちらに転ぶか分からないのも事実としてあった。


そして時刻が18時を回り、どんよりと曇った空の目下、スマートフォンが振動を伝えた。僕は午前中と比べて悪くなった天気も相まって、思わず顔をしかめる。やはりビバラもJJも、コロナには勝てなかった。……恐る恐る手元のそれに目を移す。するとそこに記されていたのは、想像もしていなかった一言。それこそがタイトルにも冠した『METROCK2021開催断念のお知らせ』だ。

 

 
僕は数分間、事態を飲み込めなかった。そういえば、METROCKの開催日はいつだっただろう。急いでアクセス公式サイトにアクセスし、状況把握に務める。すっかりアクセス過多により重くなったページを開くと、そこには5月15日と16日とある。この日は4月30日。まだ開催は2週間も先の話だ。しかも15日には大阪府の緊急事態宣言も解除されている頃合いで、開催断念とするには些か時期尚早にも思えるけれど、主催者側のコメントを見るに緊急事態宣言延長の可能性も視野に入れての協議の結果とあるため、5月に入る前のこの時期に大阪府の感染者が1000人を下回っていない事実を鑑みるに、ここが最後のデッドラインということなのだろう。


奇しくもこれで今春、開催される春フェスはビバラとJJのふたつに絞られ、東北で開催予定だったARABAKI ROCK FESTIVALは中止、METROCKは開催断念(延期もしくは中止)となった。個人的な思いとしては来場者全員に抗原検査、来場者5000人、キャンプ方式を採用し期間中は退出禁止、飲食不可とこれ以上ない感染防止策を徹底していたアラバキが中止となったことには未だ納得していないし、METROCKについては東京開催を大阪開催に切り替えた直後に大阪で感染が拡大したことも考えるといたたまれない気持ちも感じてしまうのだが、とにかく。本当に主催者の方々には頭が上がらない。振り上げた拳を振り下ろす先も不明瞭な今、こうして遠くからエールを送るしか出来ないことも含めて申し訳なく思う。


『#春は必ず来る』とのハッシュタグが広がってから丸々1年が経過した。しかしながら現状、季節的な春は確かに到来したものの、音楽的な春は訪れるどころか遥か彼方に霧散しているかのようだ。……音楽の炎は、本当に消えてしまったのだろうか。答えは断じて否である。ただフェスも行われず、開催予定が発表されていたとしても直前で中止になる可能性もゼロではないこの地獄のような状況が今年の末まで続けば、今後何十年間にも及ぶ音楽シーンの甚大な損失となりかねないだろう。今はひとりひとりが自粛に徹する期間であると重々理解してはいるが、それもいずれ限界が来る。だが事態が収束するまであと何ヵ月かかるかは不明ではあるけれど、音楽を愛し、ライブを愛する我々だけは音楽への気持ちを忘れてはならない。自室で音楽を聴きながら死ぬ思いで堪え忍んで堪え忍んで、そしていつの日かあの丘で。涙にまみれたぐちゃぐちゃな笑顔で会おう。