好きなバンドを追っていると、どうしても『昔』と『今』を比べて考えてしまうことがある。けれどもPOLYSICSに関しては多くの人にとって、きっと「昔から一切変わらないバンド」という解釈で一致しているように思う。サウンドもワードセンスも、その限界突破の甲高いボーカルも……。その全てが28年間不変であることがどれほど難しいことなのかは、想像に難くない。
そう。POLYSICSは全く変わらない。僕は今回を含めて計8回観ているが、毎回がベストライブだし、常に異様な熱狂がある。最後に観たのは25周年を記念した京都磔磔。活動の総決算としてベスト版のような盤石のセットリストで展開されるのはもちろん、中には新曲もいくつかサプライズで披露。「アルバムを作ってる最中だから待っててくれよ!」とハヤシが大声で伝え、我々は大歓声で盛り上がった。……それが今から数えて、約3年前のことである。
POLYSICS 25th Anniversary Tour 〜アタック25!!! 〜15本目京都 磔磔!
— ハヤシ ヒロユキ (@HiroHayashi78) 2022年10月9日
バイザーが壊れるってトラブルがありながらもとっても楽しく出来たよー!!!
雨の中、制限のある中来てくれたみんなありがTOISU!!!!
関西は今月10/22大阪城音楽堂
来月は11/13 神戸 太陽と虎
と続くよ!
明日は広島!🔥 pic.twitter.com/nqxiYKgVoa
しかしPOLYSICSはツアーが終わってから今に至るまで、結果として新曲のリリースを一切行わなかった。その理由についてハヤシは以下のインタビューで赤裸々に語っているけれども、要約すればハヤシ自身のモチベーションが低下していること、ライブ動員が伸び悩んでいること、若い層に向けてアピールしなければならないのに出来ないこと……。そんな様々な悩みが重なり、未だ動き出せないでいるとのことだった。ハヤシは他の様々なインタビューでも語っている通り、ライブでのハイテンションなステージングと現実の思慮深い性格とでは大きな差がある。つまり全く変わらないと思っていたPOLYSICSは実は極めて深刻な状態であり、それに我々が気付いていなかっただけだったのだ。
そんな長らく続いてしまった向かい風。ただそれは2025年に入って、遂に追い風に変化することとなる。その契機となったのは間違いなく、大ヒットマンガ『ふつうの軽音部』でPOLYSICSの“Let's ダバダバ”が大々的に取り上げられたことだろう。この作品は様々なバンドの楽曲を取り上げるものだけれど、『次にくるマンガ大賞』で1位を獲得するなど今最も読まれるマンガのひとつでもある。これにマンガ好きであるハヤシは一足早く反応して喜びを伝え、これまで更新が不定期であったショート動画はほぼ毎日更新された他、あらゆる動画にハッシュタグを付けるほどになった。これは若い層へのアピールを渇望していたハヤシにとって、また「俺ってすげー曲作ってるじゃん!」と改めてモチベーションを高める意味でも、非常に良い働きをしていたように思う。
「#ふつうの軽音部」
— ふつうの軽音部【公式】 (@FutsunoKeionbu) 2025年10月11日
第83話「恋バナをする」
今夜10/12(日)00:00公開!
▼第82話「ダバダバする」はこちらからhttps://t.co/AaJ3yPpoXG
📒最新8巻大好評発売中!https://t.co/5f7PHlohK9#ジャンププラス pic.twitter.com/B4GE3X48mB
……と前置きはこれくらいにして、今回のライブである。『突然ワンマンシリーズvol.1~だしぬけに堺~』と題されたこの日はハヤシの意向により急遽決まったもので、ハヤシが「今やりたい曲」を時間いっぱいに詰め込んだセットリストになることが事前に通達されていた。ド平日の木曜日であるにも関わらずフロアはパンパンの客入りで、中には海外から来たであろう外国人の姿もかなりの数おり、早くも異様な熱気だ。
POLYSICSのライブでは特別なピコピコ音のSEと共にスタート……の流れが定番なのだが、今回は特別なイベントらしく、袖から突然ハヤシヒロユキ(Vo.G.Sym.Vocoder)、フミ(B.Vo.Sym.Vocoder)、ヤノ(Dr)が登場。ステージ衣装はもちろん、お揃いの黄色のツナギである。そしてこちらも突然の爆音で鳴らされた1曲目は、ライブではほぼ必ず披露される代表曲“Young OH! OH!”。ギターと打ち込みの電子音が同じ音量でぶつかり合う、本来NGとされるサウンドメイクを容赦なく展開する様は圧巻だし《エベレスト3分間はい頂上》、《エスカルゴ大好物はい冗談》の他、マイ箸や凍らせたTシャツで街を飛んだりとあまりにもカオスな歌詞の羅列などPOLYSICSの醍醐味とも言える要素は早くもごった煮状態。そんな爆音に順応するファンもまた、爆音のポリサウンドに長らく調教されている者ばかり。フロアは一気に灼熱地獄と化した。
結成から20年以上のキャリアを持つPOLYSICSらしく、彼らはセットリストをライブごとに大幅に変えることでも知られる(なお翌日のライブではセトリが8割方変わっていたらしい)。更には新曲リリースもされていないため極めて予測が難しいものだったのだが、未発表の新曲が4曲ほど混じった以外はおおよそいつものポリ。ただ“テクノドラキュラ”や“Dry or Wet”といった何年ぶりかのレア曲が合間に挟まれたことも鑑みると、やはり『今やりたい曲』を詰め込んだためだったのだろうと思われる。
そして何より特筆すべきことがある。それはこの日のポリにおける、ハヤシのテンションが異様なまでに高かったこと。よく『バンドの熱量が盛り上がりを左右する』とは言われるが、特にポリは作詞作曲やボーカル、加えて全体の統率もハヤシが担っている関係上、彼の熱量が会場全体に大きく影響してしまいがちだ。ただ今回はとにかくハヤシのテンションが高く、常に高い熱量をキープ。「俺もう47歳だよ……」と自虐的に語っていたように以前のような客席ダイブや水をバケツで被る、首がもげそうなレベルのヘドバンといった行動はなかったにしろ、とにかくやる気に満ち溢れていたのは何よりのスパイスだった。
ポリの楽曲には結成当初より、バラードチックなスローな楽曲はひとつもない。つまりは徹頭徹尾、全力疾走を続ける以外のパフォーマンスは考えられない訳だが、続く“ムチとホース”では早くもタオル回しが起き、“XCT”では耳をつんざくレベルの爆音のシンセが蹂躙。更にずいぶん久々に演奏された“テクノドラキュラ”では、欠陥ディスコやらアサイン不明やら夜起きてクラッシュやらアミノゴハンやら、全く意味の分からない言葉の羅列をファンが歌いまくるという独自の環境にフロアが染まり、ハヤシはひとりひとりの顔を指差し「よくできました!」とご満悦だ。
ただ大盛り上がりのフロアをよそに、MCになると一気に脱力するのはポリあるある。元々ポリはMCの内容を決めないバンドなのは周知の通りだが、「今回の大阪ライブは久々なんだよね」という展開はまだ分かるとして、堺ファンダンゴの店長・加藤さんとステージとPA間の長い距離で泥酔時の会話をし合ったり、ハヤシの「大阪には牡蠣の殻を下のゴミ箱に落としながら食べられるお店があるらしい」との記憶を元に、次の日がライブであるにも関わらず想いを巡らせたりと、今日は特にやりたい放題。そのノンストップなハヤシの言動を「みんな今日のハヤシ観て分かったと思うけど、私たちライブもMCも久々なんですよ」と真顔でツッコむフミと、一言も発さずにメンバーの顔色を伺うヤノの対比もいつも通りだが、活動が長くなるにつれて解散していくバンドも多い中、そんな当たり前に改めて嬉しさを覚えたりも。
以降は比較的新し目の楽曲が披露されるゾーン。骨が折れるパキポキ音をファンが口ずさんだ“Crazy My Bone”と激しい電子音が蹂躙する“Check Point”を終えると、新曲の“Bikky Bungee Jump”、“Cosmic Yodel”、“Tao”といった楽曲を次々投下。まだどれも音源化されていないものではあるが、“Cosmic Yodel”は誰もが知る『ヨロレイヒー』のフレーズをボコーダーで歪めまくっていたり、“Tao”は同じフレーズを繰り返すキャッチーなもので、今後ライブで多く披露される楽曲になるはずだ。ただそんな新曲の間に挟まれるのが、ニワトリの声を真似した“Cock-A-Doodle-Doo”、『ハヤシは伊達巻きが好き』という一点のみで制作に着手した“DTMK未来”なのだから本当に食えないセトリだなと。
「POLYSICS初めて観た人いる?……うわ!外国の人もたくさんいる!ありがトイス!」とのMCで場を沸かせたPOLYSICS。大阪では随分久々の披露となった“Rock Wave Don't Stop”を経て、ライブ中盤という見事なタイミングで鳴らされたのは“Electric Surfin‘ Go Go”!現在でもPOLYSICSにおける代表曲としても知られるこの楽曲だが、毎回セットリストが大幅に変化する関係上、個人的にはライブ8回目にしてようやく聴くことができたので感動もひとしお。まるで何かが破壊されるような電子音をバックにバンドサウンド全開で盛り上げにかかる“Electric Surfin‘ Go Go”は、その激しさにもまれつつも《にゃにゃにゃにゃ……》のフレーズではファンが一体となったレスポンスも生まれていてキャッチーさも強烈。歌詞もサウンドも涙を誘うものとは対極に位置しているはずだが、聴いているうちに何故だかウルウルしてしまうのは、彼らの熱量にあてられた結果なのだろう。
そして直後に披露されたのが、先述の『ふつうの軽音部』でも話題となったキラーチューン“Let's ダバダバ”!リリース後はライブで披露されなかったことがない代表曲でもあり、一気に場を掌握するこの曲を、ファンはこれまでの数年間で培われた経験から完璧なハンドクラップで歓迎。またラスサビ前の《ダバダバ〜》の一幕ではハヤシのテンションが上がり過ぎた結果、コール&レスポンスをCD音源顔負けの長尺で要求。先程のMCで注目されたアメリカ・アリゾナ州から来たというオーディエンスに対してはマイクを持って向かっていくなど、最後まで楽しそうなハヤシである。
一方で、結局のところ全く予想が出来ないのがPOLYSICSらしさ。基本的には多くのバンドが『前半はゆっくり、中盤に徐々にギアを上げていき、後半で爆発する』……というのがライブのセオリーである中、POLYSICSはここまで『序盤に飛ばしまくって中盤で新曲連発』と半ば逆行した独自路線。もちろん後半も、盛り上げつつも好きにやるマイペースな強みが全開。“シーラカンス イズ アンドロイド”で大暴れさせたかと思えば、まさかの選曲となった“Dry or Wet”の変拍子で僅かなスパイスを。ここでダウナーなテンションに進むのかと思いきや、次なる“URGE ON!!”と“Hot Stuff”でグンとカオスに変貌させる変幻自在なセットリストで、最後まで飽きさせない作りだ。
本編ラストに披露されたのは、こちらも予想外の選曲となった“Black Out Fall Out”。この楽曲はアップテンポな楽曲を多く発表して大きな評価を受けていた時期に、ハヤシが意図的にそれに背く形でリリースしたもの。そのため当時は「もっと激しい曲が欲しい」とする声と「新たなポリだ!」と評価する声が入り乱れる結果となった訳だが、我々ファンがどんなポリも受け止める体制が出来上がった今だからこそ、この楽曲は素晴らしい求心力で響き渡っていた。個人的にも“Black Out Fall Out”をライブで聴くのは初めてで、おそらく本編ラストに持ってくるのもほぼほぼ初だったはずだけれど、これも今の彼らなりの意思表明だったのだろう。
ここまでたっぷりの曲数を演奏してきたはずのポリだが、時間を見るとまだ1時間半程度しか経っていない。それは凄まじい濃密さで駆け抜けていた証明でもあったが、まだライブは終わらない。「POLYSICS(ピーオーエルワイテスアイティーエス)!」の言葉を発する独特のアンコールに呼ばれて戻ってきた3人は、かなりのリラックスムード。特にハヤシは「今日は思ったことをどんどん言っちゃうなあ」と絶好調で、大阪らしく「どないでっか?」と聞いたかと思えば、ジェット浪越の指圧ポーズを披露して失笑を買ったりとやりたい放題。
するとそんなハヤシに感化されたのか、ゆったりしたムードの中、これまで一言も発していなかったヤノが突然「そういえば、みんな犬がいたら『犬だ!』って言うの?」とボリュームを完全に間違えた大声で質問。当然「どういうこと……?」その真意を問いただすフミであったが、ヤノは「大阪の人って、道ばたで犬見掛けたらそう言うのかなって。俺は言うタイプなんだけど」と会話をどんどん進行。全く話が見えない持論が続く中、ヤノは「いや、俺も思ったことをよく言っちゃうなと思って。犬見た時とか」と締め括り、フミは「ああ、そういうこと……?」とツッコミ。
以降は失笑気味な「どないでっかー?」→「ぼちぼちでんなー!」のコール&レスポンスを行いつつ、ここからは待ちに待ったアンコール。まずはライブではお馴染みとなっている“SUN ELECTRIC”で、駄目押しの盛り上がりへと導いていく。これまでのライブではダイバー続出、モッシュ多発のファストチューンながら、この日は激しいながらもしっかり音を聴く……という理想的な盛り上がり。「POLYSICSのライブで絶対に聴きたい曲は?」と問われた時多くの人がこの楽曲を挙げるだろうけれど、ボコーダーと地声をふたつのマイクでスイッチする歌唱も含め、ライブ映えする楽曲であるとも実感。ちなみに僕が立っていた場所はバーカンのすぐ前だったのだが、その興奮にガソリンを増すためなのか、“SUN ELECTRIC”の演奏前後は特にアルコールの出が早く、後方でも踊り狂うファンが続出していたのも特筆しておきたい。
最後の楽曲は、これを聴かねば帰れない“BUGGIE TECHNICA”。バンド名を言った後にメンバーの名前を言う……という非常にシンプルな歌詞ながら、今は脱退してしまったカヨがいた時代も含め、彼らにとって記念すべきアルバムがリリースされた際、“BUGGIE TECHNICA (new recording)”、“BUGGIE TECHNICA 2012”など様々な変遷を遂げて収録されてきた、ポリの歴史をまるっと内包した楽曲でもある。そんな楽曲を鳴らす彼らの熱量は依然として高いが、驚きだったのは合間の振り付け(腕を前に2回突き出すポーズ)をハヤシが一切やらなかったこと。これまでに観たライブでも必ずやっていたあの動作をハヤシが行わず、ファンに全て委ねるというのはあまりにも予想外だったが、逆に言えば彼にとって“BUGGIE TECHNICA”も含め、完全にファンを信頼するフェーズに突入したことを表していたように思う。全ての演奏が終わるとカヨは「ありがトイスで、おま!」とちょけて、ハヤシはいつも通り「トイス!トイス!トイス!」の掛け声の果てに「おやすみー!」と叫んでステージを後にした。……時間にして約2時間。ただ内容的にはあまりにも濃密なライブだった。
今回のライブを観て、個人的に思ったのは「POLYSICS何度目かの回復期だな」ということだった。そもそも、バンドは続けていればいるだけ問題が発生するのは常である。事実POLYSICSもカヨが脱退しスリーピースになった際は、多くの楽曲のボーカルパートを変更せざるを得なかった。また活動休止を考えた時期があったり、ハヤシがソロ活動をしようとしていたり、様々な出来事は長い活動の中で多々あったという。ただ結果的にはカヨパートをフミが歌うことで今のポリがあり、またフミの「私ポリでやりたいんだけど」の発言で活動休止を踏み止まったりと、その時々で前向きな決断も多かった。……翻って、楽曲の全作詞作曲を務めるハヤシの今回のモチベーション低下と、それによる新曲のここまで長期的なリリース中断というのは、これまでの彼には絶対になかった異常事態だったと思う。
ただ今回のライブを観て、はっきりとハヤシは回復していると感じた。なぜなら数年前のライブとはエネルギーから何から、全く違っていたからだ。そして彼にとって突然のワンマンがほぼソールドアウトし、大勢のファンが盛り上がってくれたという現状は、また新たなモチベーションとなってくれるものと思う。非常に意味のある大切なワンマン……。それがこの日だったということを、我々はもうじき感じるはずである。ニューアルバムのリリースと共に。
【POLYSICS@堺ファンダンゴ セットリスト】
Young OH! OH!
ムチとホース
XCT
テクノドラキュラ
Crazy My Bone
Check Point
Bikky Bungee Jump (新曲)
Cock-A-Doodle-Doo
Cosmic Yodel (新曲)
DTMK未来
Tao (新曲)
Rock Wave Don't Stop
Electric Surfin‘ Go Go
Let's ダバダバ
シーラカンス イズ アンドロイド
D.B Bop (新曲)
Dry or Wet
URGE ON!!
Hot Stuff
Black Out Fall Out
[アンコール]
SUN ELECTRIC
BUGGIE TECHNICA
突然ワンマンシリーズ vol.1
— ハヤシ ヒロユキ (@HiroHayashi78) 2025年11月13日
「だしぬけに堺」
堺 FANDANGO終了!
久しぶりにここでワンマンやれて嬉しかった!
やっぱりファンダンゴの雰囲気大好き👍
突然ワンマンってことで色々な時期の曲をたっぷりやれて俺ニコニコ☺️
大阪また来年2/10なんばmeleで!
明日の突然ワンマン松山も乞うご期待! pic.twitter.com/M3iklP3NhX