キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

【ライブレポート】JAPAN ONLINE FESTIVAL 2021 Spring DAY4

こんばんは、キタガワです。


全国各地のライブキッズが爆音に飢える今春に出現した、最大のオンラインライブの祭典『JAPAN ONLINE FESTIVAL 2021 Spring』。全長約19m×7m、800インチの壮観なLEDビジョンが織り成す映像をバックに、シーンを賑わすアーティストが熱いライブを繰り広げる幸福な数時間。今記事ではその最終日にあたる、4日目のライブをレポートする。希望的未来へと舵を切る大規模なオンラインフェスの行く末は、きっと輝いている。

 

 

Creepy Nuts(19:00~19:40)

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トップバッターを飾るのは、今やテレビで観ない日はないと言っても過言ではないヒップホップユニット・Creepy Nuts。まずは去るピン芸コンクール『R-1グランプリ2021』のメインテーマ曲として書き下ろした“バレる!”でもって、その性急なパフォーマンスの口火を切る。『R-1グランプリ(旧R-1ぐらんぷり)』は無名であった芸人が文字通り人生を変える一夜ともなる年に一度の特別番組であるが、R-指定(MC)が芸人と自身を重ね、陽の目を浴び売れていく姿を強く意識したというこの楽曲を、彼らは矢継ぎ早に繰り出されるフロウとDJプレイで圧倒的な熱量で披露。背後のLEDビジョンにはタイトルとリンクするかの如く、多数の視線とカメラが映し出され、より興奮を高める作用を及ぼしていたことも特筆しておきたい。

 


以降は前曲と地続きでライブの演者をモチーフとした『M-1グランプリ2020』テーマ曲“板の上の魔物”、DJ松永(DJ)による世界一の高等テクニックが炸裂した“スポットライト”とシームレスに楽曲を展開。横に広いステージにはR-指定とDJ松永のたったふたりのみで、機材が必要最低限並べられている松永のDJテーブル然り、真っ白なマイクコードが無造作に置かれるR-指定の陣地然りコンパクトなセットだが、これこそが彼らの基本スタイル。……声とDJのみで織り成す、小細工なしの一本勝負。この日の出演者は彼らを除いてその全てがロックバンドであったけれど、バンドサウンドで耳の肥えた視聴者の心を掌握するのに、然程時間はかからなかった。

 


終盤、いつの日かマスクなしでコール&レスポンスを試みたり、バースの韻部分を観客に歌ってもらいたいと思いを馳せたR-指定。その締め括りとして「皆さんも日々溜まったものをライブでバーンと吐き出して、俺もそれに全力で答えるっていうようなライブ、いつか出来たらいいなと思います」と語り、ラストに鳴らされたのはサビ部分での観客のレスポンスが容易に想像できる“かつて天才だった俺たちへ”。アッパーなサウンドに乗せ、R-指定は幾度も腕を半円状に振りながらフロウを届けた。自身の存在証明をマイクとターンテーブルのみで体現した、どこまでも愚直なライブ。ライブの存在価値を問われ続ける現在に彼らが示したもの、それはライブと共に生きる強い存在証明だった。


【Creepy Nuts@JAPAN ONLINE FES セットリスト】
バレる!
板の上の魔物
スポットライト
顔役
Bad Orangez
Who am I(新曲)
かつて天才だった俺たちへ

 

キュウソネコカミ(19:40~20:20)

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続いては、前回の『JAPAN ONLINE FESTIVAL』に続いて2度目の出演となる大阪は西宮初のライブバンド・キュウソネコカミ。さぞかしのっけからフルスロットルのライブを見せてくれるのだろうな……と思いきや、大映しにされたカメラにはメンバーが誰も映っていない。本能的にステージの各所に目を走らせていると、直後どこからともなくヤマサキ セイヤ(Vo.G)による《住みやすい》のフレーズが緩急を付けて放たれ、その『い』部分でカメラが遷移。そこにはドラムセットの移動台にひしめき合うようにメンバー全員が乗っており、そのままドラムの定位置へスタッフ総出で移動されると”Welcome to 西宮”に雪崩れ込み。縦横無尽に繰り広げられるアグレッシブなパフォーマンスで魅了した。

 


以降は猿のぬいぐるみにマイクを当ててホラー部分の歌唱を行わせ、最後はもじもじくん的に人文字で『囚』を表した“囚”で爆笑の渦へと誘うと、MCへ。まずはセイヤが「久し振りのライブがこの感じ……。こんなにやりたいことやらせてくれるんですね」とrockin.on社の寛大な心に感謝を述べるが、すかさずヨコタ シンノスケ(Key.Vo)が「最初の登場とか絶対断って良いでしょ。主催!」とごもっともな指摘で対応。その後も主にセイヤが繰り出すオチのないトークに翻弄されるメンバーに対し「俺だけの中で完結したらええやろ。ボーカルってそういうもんやから」と謎のワンマンぶりを発揮するなど総じて自由奔放だが、これこそが独特のキュウソらしさでもある。


VJに歌詞が投影されより臨場感に拍車がかかった“シュレディンガー”の後「もうそんなにふざけんよな。真面目にやろう」とのセイヤのMCが完全にフリになった“おいしい怪獣”ではイカをはじめとした食材の数々が調理されるVJが流れ、かと思えば続く“空芯菜”では何とキュウソのマネージャー・はいからさん(中野晶夫)がコックの風貌で袖から登場し、ステージ上で実際に空芯菜を調理するまさかの一幕も。はいからさんから『あーん』で空芯菜を渡されたセイヤはニコニコ動画で有名な某配信者のセリフ「おいしいかもー!」と叫んでご満悦。まだライブは中盤だが、早くもお腹一杯。ハイカロリーな展開が続いていく。

 


しかして、決して笑いのみに特化したパフォーマンスで終わらないのもキュウソの魅力。ここまではエンターテインメント性を前面に押し出していたキュウソだが、中盤以降は様々なテーマを冠したバンド然とした楽曲を広く展開し大団円を図る。ラストに演奏されたのは社会的弱者に焦点を当てたお馴染みのライブアンセム“ハッピーポンコツ”。意図せずして集団生活で上手くいかない様をポジティブに笑い飛ばし、彼らは歌う。《悩んでくよくよしているヒマあれば ポンコツの生き様見て感じてよ/生きてりゃ大体なんとかなるから》……。笑いも興奮も感動も網羅した彼らのライブを今回観測し、よりライブへの渇望が強まったのは決して自分だけではないはずだ。


【キュウソネコカミ@JAPAN ONLINE FES セットリスト】
Welcome to 西宮

シュレディンガー
おいしい怪獣
空芯菜
シャチクズ(2020 ver.)
メンヘラちゃん
推しのいる生活
ハッピーポンコツ

 

SILENT SILEN(20:25~21:05)

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ライブへの助走を担うお馴染みのSEに乗せて登場したのは、音楽の聖地たる日本武道館公演を大成功に収め、毎年コンスタントな活動で注目を集めるガールズバンド・SILENT SILEN。SEが鳴り止むと突如、すぅ(Vo.Gt)による鋭利なギターリフが鼓膜へと侵入。そう。記念すべき1曲目はリリース以降、数々のフェスでオープナーに冠されているサイサイの代表的ナンバー“フジヤマディスコ”だ。

 


“フジヤマディスコ”はたとえ所見であっても、瞬時に虜になってしまうキラーフレーズ『フジヤマディスコ』が各所に点在するロックチューン。すぅは幾度も「Say!」と意図的に導き、トップギアの興奮へ誘っていく。なお背後のVJには該当の部分に差し掛かった瞬間『FUJIYAMA DISCO』の巨大な文字が出現し、ゆかるん(Key)も扇子を回し煽り倒すという否が応にも盛り上がる、考え抜かれたステージングだ。SILENT SILENのメンバーはその全員が元々読者モデルとして活躍していた経験があるけれど、彼女たちがここまでの地位を確立したのは何よりも愚直な『楽曲の素晴らしさ』によるもの。その証左を、この日のライブは完全に体現していた。


後のMCですぅが「久々のライブということで、バッチバチのセトリを組んできた」と語っていた通り、この日のライブはまさに常時沸点。弾けるポップテイストな“milk boy”、あいにゃん(Ba)が「こっからも盛り上がっていくぞ!かかってこいやー!」と叫んで雪崩れ込んだ“ALC.Monster”、待ってましたなキラーチューン“八月の夜”……。およそサイサイのこれまでのライブ全体で考えてもここまで余力を残さない爆発的なセットリストはあっただろうかと思うほど、圧巻のライブが展開されていく。

 


ハイライトはやはりと言うべきか、今までにほぼ例外なくセットリストに組み込まれてきた“チェリボム”で、サビ部分で行われる片手ずつ親指と人差し指で丸を作り、宙に放つというこれまたお馴染みのゆかるんの振付指導のもと、楽曲へ雪崩れ込み。バックのVJには多数のサクランボが爆発する(Cherry・Cherry・Bomb)様子が映し出されていて、目にも楽しい。演奏後、すぅは「みんなもライブに行けないなーとか、つまんないなーっていう日々がけっこう長く続いたと思います。サイサイは結成して10周年なんですけど、こんなにライブが出来なかったことは本当になくって。どうなっちゃうのかっていう不安な日々が続いてました」と率直な思いを吐露していたけれども、この天井知らずのアッパーぶりはこうした思いを体現してのものだったのかもしれない。


コロナの収束、未だ見えず。けれどもサイサイの今後の道程は完全に絶望に染まっている訳ではなく、来たる6月17日には東京ニューシティ管弦楽団東京ニューシティ管弦楽団をバックバンドに従えた全編オーケストラアレンジのライブも決定。制限は当然存在するが、そんな中でも今可能なハッピーな出来事を模索し続けている。ラスト“KAKUMEI”のアウトロですぅは「みんなまた、ゼロ距離で会いましょーう!」と張り裂けんばかりの声で叫んでいたが、アルバムをリリースし、全国ツアーを行う……。アーティストをアーティストたらしめる活動サイクルを心情としてきたサイサイだからこそ、この言葉にはグッと来るものがあった。


【SILENT SILEN@JAPAN ONLINE FES セットリスト】
フジヤマディスコ
milk boy
ALC.Monster
八月の夜
チェリボム
HERO
KAKUMEI

 

RAISE A SUILEN(21:10~21:50)

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楽しい時間はあっという間で、この日のライブも気付けば折り返し地点に突入。幸福たる一夜の特異点として、満を持してパフォーマンスを行うのは次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!( バンドリ!)」 から生まれたリアルバンド・RAISE A SUILEN。

 


声優として活動する傍ら、舞台俳優と音楽活動を行っている彼女たち。必然1年の間で限られたライブには応募が殺到する……というのがこれまでの通例であったが、今回はオンラインライブでの開催。更にはバンドリ!関連のイベント以外でのライブ出演も極めて珍しいことから、事前にSNS上でも多くの注目が集まっていた。そんな中でのライブは盛り上がらない筈はなく、オープナーを飾る“A DECLARATION OF ×××”から、早くもフルスロットル。思想的中な歌詞やマイナーコードを多用したサウンドが鼓膜を揺らすダークな音像が随所でスパークするステージングで、なおかつキャッチー。原作のキャラクターを踏襲したメンバーの雰囲気も、ファンには嬉しいところだ。中でも印象的に映ったのはボーカルを担うRaychell(Vo.Ba)その人で、クールなイメージそのままにハスキーボイスで魅せることは元より、髪を振り乱してヘッドバンギングを繰り出すなど、絶大な印象。……単なる派生ユニットと侮るなかれ。そのスキルも実力も、そして魅せ方という点においても、どこを切っても抜かりない極上の空間が形成されていた。


今年に入ってニューシングルを複数リリース、更には恒例のカバーアルバムへも参加した彼女たちだが、今回はその全曲を昨年8月にリリースされたファーストアルバム『ERA』収録曲が固め、RAISE A SUILENの特長を惜し気もなく見せ付ける磐石のセットリストで展開。ただ元々存在を熟知しているファンのみならず、“UNSTOPPABLE”でのヘドバンの嵐や“EXPOSE 'Burn out!!!'”での鬼気迫る演奏など、所見の音楽好きにも刺さる熱量は圧巻の一言。

 


「次で最後の曲になります。JAPAN ONLINE FES、上がる準備はいいか!今日はありがとうございました。……ラスト、上げてくよ。“DRIVE US CRAZY”」とのRaychellの語りから、最終曲へ突き進んだRAISE A SUIREN。重低音が鼓膜を震わせながら小原莉子(Gt)のギタータッピングや打ち込みを多用したレスポンスで魅せ、振り抜くように終了。かくしてRAISE A SUILEN一成一代の舞台は、大団円で幕を閉じたのだった。まるで原作のキャラクターを憑依させたようなパフォーマンス、それでいて当てフリではない卓越した楽器演奏……。今や業界を騒がせつつある2.5次元バンドがロックのオンラインフェスへ出演を果たしたことが大きな快挙であることは間違いないが、それ以上に『いちバンド』としての存在感を存分に見せ付けた、伝説的一夜であった。


【RAISE A SUILEN@JAPAN ONLINE FES セットリスト】
A DECLARATION OF ×××
HELL! or HELL?
Takin' my Heart
UNSTOPPABLE
SOUL SOLDIER
EXPOSE 'Burn out!!!'
DRIVE US CRAZY

 

KEYTALK(21:55~22:35)

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ラストを飾るのは、やはり彼らの役目。そう。前回の『JAPAN ONLINE FESTIVAL』では3日目のトップバッターに抜擢された我らがKEYTALKが遂にトリ……。有終の美を飾る瞬間が訪れた。まずは八木優樹(Dr.Cho)のリズミカルなドラミングを契機に“Love me”がキラキラと鳴り響けば、続けざまに“Summer Venus”でいきなりの沸点突破。アグレッシブなライブに定評のあるKEYTALKであるが、この日は小野武正(Gt.MC.Cho)のハイテンションぶりが特に凄まじく、ワイヤレスシステムを導入したギターを良いことにでんぐり返しをしながらギターソロを展開したり、カメラの前に進み出てカメラマンも困惑する程の動きで翻弄するなど、良い意味で暴走気味だ。

 


この日はおそらく古くからのファンから見ても完全に『フェス』を意識して作成されていて、徹頭徹尾MV制作済みのライブアンセムのみを固め打ちした高カロリーな殺人セトリ。約40分という持ち時間で、画面越しの音楽好きをどう楽しませるか……。その答えが今回のライブには表れていたことは明白だが、そんな中でも“太陽系リフレイン”や“パラレル”、“トラベリング”といった代表的な楽曲群は廃されている訳で、如何にKEYTALKがキラーチューンの宝庫として存在しているのかを、しみじみと感じさせる代物でもあった。以降も時折仲睦まじい彼ららしい終着点が見えないトークを繰り広げつつ、楽曲を次々展開。今回披露された“YURAMEKI SUMMER”や“MONSTER DANCE”といった楽曲に顕著だが、取り分けKEYTALKの楽曲には観客参加型のアクション(レスポンス)が多く、実際オンラインライブの状況下でこれらの楽曲をどのように披露するのかと思ってはいたが、コロナウイルスが収束した後の未来を暗示しているのか、結果としては『メンバーが誰も観客パートを歌わない』形に終始していたのも印象的。

 


クライマックスは“MONSTER DANCE”からの“桜花爛漫”。KEYTALK屈指のアンセムで畳み掛けを図った上で、此度のライブテーマに冠されている『春』をモチーフとした楽曲を配置するニクい仕掛けである。新生活の始まりを意味する、春という季節。まだまだ予断を許さない日々が続くが、ラストに演奏された“桜花爛漫”はそんな中でも、まるで希望的2021年を希求するかのように響き渡っていた。


【KEYTALK@JAPAN ONLINE FES セットリスト】
Love me
Summer Venus
MATSURI BAYASHI
BUBBLE-GUM MAGIC
YURAMEKI SUMMER
fiction escape
MONSTER DANCE
桜花爛漫

 

今回の『JAPAN ONLINE FESTIVAL 2021 Spring』が我々にもたらしたもの……。それは誰もが理解している通り、この1年ですっかり忘れかけてしまったライブへの興奮である。ただ、この1年で様々なアーティストが試みているオンラインライブという媒体では生ライブの100%の代替にはなり得ないことも同様に、我々は強く感じているはず。


では『JAPAN ONLINE FESTIVAL 2021 Spring』の本当の開催意義は何なのか。その答えはひとつしかない。言わばオンラインライブと生ライブの折衷案の提供である。元々『ライブ』というイベントは地方都市在住の人間には縁遠いものであり続けていたし、金銭面や時間面でも何かと敷居が高かった。そこで遠征やフェス参加が人によっては難しくなった現在、すっかり市民権を得たオンラインライブの良さを。そして生ライブに行ける環境にある人には、本来のライブ形式を楽しんでもらう。今回のライブはその音楽媒体で最も強い力を持っていると言っても過言ではないrockin.on社による、大きな足掛かりなのだ。


季節は巡り、この配信が行われた日にはすっかり春の陽気となった。しかしながらコロナウイルスによりもたらされた状況は依然深刻で、イベント制限緩和やワクチンの話題も日々飛び込んではくるが、完全な元通りになるのは果たしていつになることやら素晴らしきライブ終了後、僕の心には「この難局を何とか乗り越えなければ……」との思いが浮かんでいた。此度の『JAPAN ONLINE FESTIVAL 2021 Spring』の開催が音楽への新たな希望の灯となることを願いつつ、これからもオンラインライブを、そして願わくば再びフェス参加出来ることを切望して、今記事の締め括りとしたい。

 

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