キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼・執筆実績はこちらからお願い致します。https://www.foriio.com/kitagawanoblog

【ライブレポート】never young beach『Spring Tour 2026』@Zepp Osaka Bayside

never young beachの春ツアー、その名も『Spring Tour 2026』。その大阪公演へと足を運んだ。ロックバンドにとって、ツアーは毎年恒例のアクションではある。けれども今年のネバヤンは未だライブ稼働はゼロ。……つまりツアー初日の今回の大阪公演は、我々ファンにとっても楽しみな気持ちはあれど、それ以上に彼らにとっても新たなスタートを飾る運命的一夜だったはずだ。

ネバヤンの明るい雰囲気とは真逆の、ジメッとしていた雨模様も開場前にはピタリと止み、会場付近では早くも密集する人の多さに圧倒される。ちなみに僕の整理番号は1600番台だったのだが、その後ろにもまだまだ多くのファンが待機していたのが驚き。当日券も制限なく売り出されていたので、最終的な客入りはソールドアウト状態だったことだろう。

定刻の19時ジャストになると、暗転。まずは巽啓伍(B)と鈴木健人(Dr)の2名が一段上がったステージに立ち、各々の音を確かめることで徐々に熱を高めていく。しばらくするとそこに盟友たるサポートメンバーの岡田拓郎(Gt)、下中洋介(Gt)、香田悠真(Key,Pf)が加わったことで、気付けば音数はどんどん増えジャムセッションの様相。なおこの時点では照明はまだ暗く設定されていて、メンバーはほぼシルエットの状態だ。

そんな中、片手をひょいっと挙げてニコニコ顔でステージへと現れたのは、フロントマンの安部勇磨(Vo.G)。瞬間、照明が明転し鳴らされたのはオープナーの”春を待って“だ。もちろんファンである我々は大興奮で当初は「うおおお!」と歓声も上がったものだが、そこは流石のネバヤン。安倍がフニャッと笑いながら「会いに来たよ〜」「いいねぇ〜」と要所要所で客席を指差すものだから、一気にムードは朗らかなものに変化。《bye byeよ チャウチャウよ》という不思議な合いの手も相まって、まるで野外で芝生で寝転がりながら聞いているような、緩い満足度が会場を包んでいく。ちなみにここでようやく、全員がオレンジのスーツを揃って身に着けていたことが分かる。

間髪入れずに投下されたのは、こちらも爽やかなナンバー”気持ちいい風が吹いたんです“。キッチンから香るバターの匂い、ベランダで揺れるシャツ、テレビを眺めながらパンケーキを待つ僕……。ネバヤンの歌詞は活動当初より、抽象的な幸福、もしくは日常を切り取った風景を描写するものが多い。けれどもそんな取り繕わない歌詞こそが、グッとリアリティを伴って迫ってくるのがネバヤンである。また難しい表現を一切使わず、誰にでもスッと入ってくる歌詞に終始しているのも素晴らしく、特にこの楽曲では絵本の一幕のような、ふわりとした幸福を感じた次第だ。

今回のツアーはアルバムのリリースタイミングではないのでセットリストが気になるところだったが、一言で表すならば音楽サブスクで『never young beach』と検索した時に、上位に出てくる楽曲をほぼ網羅したような現時点でのベストセット。ちなみにその中でも最も比率が高かったのは最新アルバム『ありがとう』からの楽曲群であり、後のMCで安倍が語っていたように「曲を作り続けてると、昔の曲はライブでどんどんやらなくなっていく」という事実を(良い意味で)体現した感覚があった。一方で、これは後半で記すけれども、これまでライブでほぼ毎回……というか必ず鳴らされていたとある代表曲が、今回の公演ではセトリ落ちする衝撃的な場面も。これも彼らが次へ向けて躍進している、ある種の証明なのだろうなと。

この日初となるMCは、安倍の「何か凄かったね……」との一言から。実はこの時点で下中のギターにはトラブルが発生しており、スタッフが駆け寄る場面も何度かあったのだが、それを指して「急に音がデカくなったと思ったら出なくなったり……。でもそのたびにみんなが盛り上げてくれて。ありがたいね」とフォロー。ただその発言にすかさず「ウオー!」と叫ぶ前方のファンに、安倍が「何か今日、下中のところのファン変な人多くない?」とツッコミを入れるのは御愛嬌。なおこの日のライブは関西圏だからなのか、とにかくファンからの野次が多かったのも特徴的。そのたびに安倍が「えっ?聴こえない!何?」と聴き返して更なる笑いを生むという循環は、なかなかレアなものがあった。

体がゆらゆらと自然に揺れた”哀しいことばかり“、スティール的なギターが印象的な”毎日幸せさ“を終えると、安倍は「ここからは夏っぽい雰囲気にしたい!」とモード変更を宣言。という訳で以降は人気のアルバム『YASHINOKI HOUSE』と『fam fam』から、夏の雰囲気を感じさせる楽曲を連続して投下。BPMを原曲から大幅に落としたアレンジで聴かせた”夏がそうさせた“、常夏を連想させる”ちょっと待ってよ“など様々な人気曲が鳴らされた中、最も盛り上がったのは”Motel“。飛び道具的な速弾きを繰り出す岡田と下中のギター、そして安倍によるギターというトリプルギターが織り成すアンサンブルはやはり、ネバヤンの大きな魅力。その中心で歌う安倍も、バイクのエンジンを吹かすようなお茶目なアクションを行いつつ、心底楽しそう。

個性強めのファン(主に熊本から来た30歳男性)とのやり取りをひとしきり終えると、安倍は「俺たち去年武道館でやったんだけど、そこで披露した新曲をやりたいと思います」と一言。その瞬間に会場のどこかから放たれた「大好きだよー!」の絶叫に安倍がサムズアップをして披露されたのは、”だよ“と名付けられた新曲である。ネバヤンらしいメロウな雰囲気を携えながらも、サビ部分で《大好きだよ》と繰り返し伝えるこの楽曲は、安倍の優しい人間性をしっかり表している意味でもグッと来た人も多かっただろうと思う。親しい間柄の人……そう連想する先が恋人なのか友人なのか家族なのかは聴く人にとってそれぞれ違うだろうけれど、「感謝の気持ちを極限まで凝縮するとこの言葉になる」という、どこか真理を突いたようなストレートさには思わずグッと来てしまった次第だ。

ここからは後半戦。安倍が「いよっ!」と声掛けをして始まった“らりらりらん”、歌詞の一部を絶叫するお馴染みの一幕で会場が一体となった“どうでもいいけど”、安倍が全身で踊りながらハンドマイクで歌唱したロックナンバー“Oh Yeah”……。比較的アッパーな楽曲が連続で鳴らされる中でも、どこか風が吹き抜けるような穏やかな気持ちになってしまうのはやはり、ネバヤンのライブならでは。ふと周囲を見ても、踊り狂っている人もいればビールを飲んで揺れる人、直立不動で凝視する人など様々。Creepy Nutsや星野源など、昨今は多くのアーティストが「好きなように楽しんでください」とライブの在り方を発言することも増えてきたが、ネバヤンはそうしたMCもなく、音楽だけでそうした空気感を作り出していたのは驚きだった。  

「けっこう曲やったと思うんだけど、今何時?」と安倍がファンに問い掛けたのは、“STORY”の後。手元の時計を見ると時刻は20時。ここまでの曲数をやりながらまだ1時間しか経っていない濃密さを実感しながら、安倍は「実はもうラストスパートではあるんだけど、早くない……?俺もっとやってたと思った」と爆笑。その声に「もっとやってー!」の声が飛ぶ中、なんと安倍は「1曲増やしていい?」とメンバーに確認!次いでメンバーひとりひとりの側まで歩み寄って耳打ち(おそらくどの曲をやりたいかの説明)すると、「じゃあ、今回のツアーでやる予定なかったんですけど、“なんかさ”という曲をやります」と語り、楽曲がサプライズで鳴らされた。というより、昨年『真夏のデンデケデケデケ』という謎名義でサプライズ出演したフジロックでも1曲目に選ばれたこの曲を、そもそもセットリストに入れていなかった……というのは意外だが、とにかく素晴らしい盛り上がりだった。

本編最後に鳴らされたのは、こちらのお馴染みのキラーチューン“SURELY”。特に「最後の曲です」といったMCもなく、あまりにもヌルっと始まったのでこれがラストナンバーとは思っていなかったが、締め括りの楽曲としては満点。別れの先に出会いがあり、また出会いの先には新たな別れがあるというこの楽曲のタイトルを『SURELY(きっと)』と名付けたのも、そしてこれまで披露された楽曲で難しい言葉を使わずに、必ず日常の風景をイメージできるようにしているのも。全ては安倍なりの幸福感なのだろうなと思った。

暗転後にすぐさま鳴り響いた手拍子に誘われるように、再びステージに姿を現したメンバーたち。一気に盛り上がるフロアを観ながら、安倍は「やっぱ大阪の人の熱量って凄いなあ。ここがツアーの最初だから、これから俺らは大阪と他のファンを比較する感じで観ちゃうかも……」と半笑い。そして「もうひとつ新曲を持ってきていまして。”愛の星屑を“という曲です」と説明すると、アンコール1曲目はネバヤンの新機軸を見せたこの楽曲から開始。

ピアノの旋律をサウンドの中心に据え、ゆったりと歌い上げる歌謡曲的な”愛の星屑を“は、リリース当初こそその独特の存在感に圧倒されたものだ。しかし今回ライブで披露されたこの楽曲は、肉体的な思いの乗せ方も相まってか、涙腺が緩んでしまうほど、とてつもない感動を個人的に抱いてしまった。もちろん強い存在感を放っているのは安倍の歌声で、それは加山雄三や玉置浩二のような往年のアーティストを思わず想像してしまうほど。テイスト的にも、フェス会場などで披露される場面は限られそうではあるが、音楽好きは絶対に一度は聴くべき大名曲だ。

「さっきはいきなりライブ終わってビックリしたでしょ。『まだアレ聴けてないんだけど!』って思ってる人もいるんじゃない?」と、おもむろに話し始めた安倍。たしかに現時点でまだ鳴らされていない代表曲は多数あり、本編が終わった瞬間に「◯◯やってなくない?」といった驚きがファンの間で共有されていた程であった。しかし安倍はここで衝撃の発言をした。「今回は新しい試みとして、いつも絶対にやってる曲を『やらない』っていう選択をしてみようかなと」

ここでこの記事の冒頭でも記した内容を補足すると、安倍が語ったMCの通り、今回は常に披露されてきた楽曲……詳しくはYouTubeで1000万再生を超えている代表曲たる“お別れの歌”が、おそらくリリース以降初めてセットリストから外された。それはこれまで何年もお馴染みの光景になっていた『”明るい未来“→”お別れの歌“を連続で披露してフィナーレを迎える』という流れが終わったことを意味しており、またネバヤン的には逆に『どんな終わりを迎えても許される』という、新たなフェーズに突入したことにもなる。

「残り3曲やります!」との嬉しい一言から始まったよもやのロング・アンコール。まず投下されたのはキラーチューンたる”あまり行かない喫茶店で“!「いつも絶対にやってる曲を今回はやらない」と語っていた先程のMCは何だったのかと思うほどの熱狂だが、安倍は「やりますよそりゃあ!」とご満悦。続く”明るい未来“では半カラオケ状態で全員が歌う、あまりにも多幸感に満ち溢れた環境に。国内情勢やら戦争やら、物価高やら何やら……。いつの時代も悩み事は尽きないけれど、少なくともこの楽曲で笑えているうちは大丈夫だと、そう強く確信したひとつの終着点がここだったように思う。

これまでの”お別れの歌“に代わる正真正銘ラストの楽曲は、ネバヤンきってのサマーナンバー”夏のドキドキ“!楽しそうなギターの音色から、コーラス部分も思わず歌ってしまうアッパーなこの楽曲。照りつく太陽の下でサイダーを飲む……という何でもない行動から《うまくはちょっと言えないけれど 何でもできる そんな気がする》とポジティブに思考変換する朗らかさ。そして《悩んでいる暇はないでしょう カブトムシに笑われちゃうわ》という、そもそもネガティブなことを考えること自体を辞めちゃおうよ!と言っているようにも思えるフレーズも含め、この楽曲にはネバヤン魅力の全てが集約しているようにも思えた。……全体の時間は2時間弱。ともすれば短いようにも感じるけれど、集まった誰もが大満足する、あまりにも濃密なライブだった。

【never young beach@大阪 セットリスト】
春を待って
気持ちいい風が吹いたんです
哀しいことばかり
毎日幸せさ
夏がそうさせた
Motel
ちょっと待ってよ
蓮は咲く
夢で逢えたら
こころのままに
だよ (新曲)
らりらりらん
Hey Hey My My
どうでもいいけど
Oh Yeah
STORY
なんかさ
帰ろう
SURELY

[アンコール]
愛の星屑を (新曲)
あまり行かない喫茶店で
明るい未来
夏のドキドキ