キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼・執筆実績はこちらからお願い致します。https://www.foriio.com/kitagawanoblog

【ライブレポート】B'z・10-FEET『SOUND CREATOR 50th Anniversary Live ULTRA MISSION』@大阪城ホール

特に関西圏のライブシーンに足繁く通う音楽好きであれば、一度は聞いたことのあるであろう会社がある。その名は『サウンドクリエイター』と言い、主に関西を中心としたイベントやコンサートの企画、運営などを行うプロモーターとして知られている。

今回の大阪城ホールでのライブは、そんなサウンドクリエイターの創立50周年を記念して行われる特別公演。出演バンドは、なんとB'zと10-FEETという誰が聞いても唸るほどの超豪華布陣!当然チケットは即完売となり、大阪城ホールの会場には、着席型のライブとしては最大収容人数とされる約1万6000人(!)ものファンが集まり、会場の外では既にほとんど身動きが取れないほどの密集度合い。更には様々な企業から届けられた大量の花束の撮影場所の設置、ライブペイント、記念グッズも完売と異例づくめの状況であったこともあり、この時点で「ヤバいライブになりそう……」という予感は、多くのファンが抱いていたことと推察する。

会場の中に入ると、外で感じていた以上に大勢のファンがおり、まずビックリ。けれども対照的に演奏されるステージは非常にシンプルな作りで、背後には今回のライブのロゴが描かれた幕が降ろされ、左右に大型モニターが鎮座するのみ。僕自身はこれまでRADWIMPSやヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。といったアーティストのライブをこの会場で観たことがあるが、そのどれもが背後の巨大なスクリーンを用いて特殊映像を流すことが多かった。ただ以下の10-FEET・NAOKI氏のツイートでもある通り、背後のスクリーンを完全に撤廃していたのは今回のライブが初めて。ロックバンドらしく正面からぶつかろうという気概さえ感じる無骨さは、今回の最適解だったようにも思える。

定刻を過ぎると、暗転。すぐさまライブが始まるかと思いきや、まずは今回の企画の発起人・サウンドクリエイターの紹介映像がモニターへと映し出される。50年前に音楽好きの有志によって創業されたこと、様々な困難を乗り越えてきたこと、そして今では年間数百のイベントを主催しつつ「ファンの喜ぶ顔が見たい」との思いで活動していることなどが列挙されると、ここからはライブ前の約束コーナーへ。ここでは絶対に守ってほしい約束事として『撮影録音の禁止』や『飲酒禁止』といったマナー的なものが語られた他、ラストに『全員が全力で楽しむこと』と映し出された瞬間には、集まった1万6000人による地鳴りにも似た拍手が鳴り響いていた。

10-FEET・NAOKIの友人であるお笑い芸人・サバンナ高橋によるVTR(SEが長いのでタオル掲げすぎると腕が痛くなる、京都大作戦でファンに担ぎ上げられたこと)などを語ると、いよいよ10-FEETの出番に!もはや恒例となったSE『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が先述の通り長時間流されると、タオルを掲げるファンの目の前でTAKUMA(Vo.G)、NAOKI(B.Vo)、KOUICHI(Dr.Cho)がニコニコ顔で登場。3人が握り拳をガチンと叩き合う光景もいつも通り。開演前にXに「泣きそう」と投稿していたNAOKIも満面の笑みである。

遂に始まった伝説の1日。その幕開けを飾ったのは、10-FEETの代表曲たる“VIBES BY VIBES”!TAKUMAが「GO!」と叫んだ瞬間から一気に盛り上がる、これまでライブハウスで幾度となく観てきた高揚が爆音で襲い掛かってくる様はやはり圧巻。この日のライブは全席指定であった関係上、彼らのライブで定番となっているモッシュ、ダイブなどの行動は当然ながら出来ない。その点のみを考えればある意味では生殺しのような状況下ではあったものの、そこは長年積み重ねてきた10-FEETとファンの信頼関係でカバー。自席でツーステを踏みまくるレアなライブキッズを何人も観たし、Tシャツなどから察するに明らかにB'z目当てに参加したと思われるファンも、集まった全員の身体が一気にライブモードになったのはこの瞬間だった。

少し話は横道に逸れるけれど、ライブハウスなどでツーマンライブに足を運んだ際、スタッフから「どのバンドをお目当てに来られましたか?」という質問を高確率で求められることがある。この日のライブはそうした質問こそなかったけれども、倍率的にも参加者のTシャツ着用率的にも、全体として約7割ほどはB'zを目当てにしたファンだったと思われる。ただそこは今や京都大作戦を含め、10代や20代の若者にも一目置かれる10-FEET。長年愛され続けるB'zのファンにとってもすぐに好きになってしまうような、熱いライブを繰り広げてくれたのがこの日の彼らだった。

一方で10-FEET自身は、憧れの大先輩との対バンに大いに緊張していた様子。この日初めてとなるMCでTAKUMAは「俺とお前らは、同じ気持ちや。その気持ちを今から一言で言うわ」と前置きしつつ「早くB'zが見たい」と語って早くも大爆笑を起こしていく。特にカラオケやDJで必ずB'zの楽曲を流すことでも知られる大ファンのNAOKIに関しては「吐きそうです……」と心情を吐露。爆笑に包まれる中、次にTAKUMAは「俺たちを初めて見た人の気持ち当てたるわ。『ちょっと苦手……』。 でも最後まで見たら、絶対にこう思うはずや。『やっぱり苦手……』」と自虐ネタで盛り上げながらも、続いては「僕らの曲で一番売れたやつをやります」と“RIVER”へと雪崩れ込んでいく。

ファンとしてはお馴染みの楽曲“RIVER”だが、この楽曲のライブアレンジは何年かの間、様々な形で変遷を続けてきた。今回彼らがこの巨大な会場で試みたのは『楽曲中のウェーブ』で、TAKUMAはラスサビ前に「みんなスマホのライト点けてくれるか?ウェーブ作ろう」と指示。前から後ろ、後ろから前へと波状に光が動いていく様は本当に綺麗で、夏場の野外、ないしは小規模な会場では絶対に出来ない特別感があった。そんか感動があったかと思えば、その後の「セイ!ウォーオオー!」とコール&レスポンスをする恒例の場面ではTAKUMAが「セイ!」と促してファンが熱唱したにも関わらず「うるさい……だまれ……」と静止して爆笑の展開に持っていくのは10-FEETならでは。いつの間にかB'zのファン含めた全員が、彼らの虜になっていた。

以降は“壊れて消えるまで”、“第ゼロ感”という映画主題歌2連発を経て、盤石のライブアンセム“その向こうへ”へ!ギターリフが鳴り響いた瞬間から大盛り上がりの会場の元へ、絶大な熱量で立ち向かっていくエネルギーはライブバンドのそれで、改めて10-FEETが愛される理由を垣間見た気もした。またどこまでも全力で歌うTAKUMAの歌唱ゆえ、この時点でTAKUMAの声は涸れており、特にサビ部分では全力を通り越して魂で歌うような場面も見られたけれど、これも10-FEETのライブではお馴染みの光景。だからこそ、出し惜しみせず思いをぶつける彼らの姿を見ていると、心の底から励まされるのだ。

そうして「ここに集まったみんな、家族や学校や仕事や……いろんな悩みを抱えながらライブに来てると思う。でもたくさん傷付いた人は、きっと同じくらいたくさん人に優しく出来ると思うねん。そういうことを歌った曲をやります」と語って鳴らされたのは、メッセージソングたる“蜃気楼”。人間関係で様々なものを見失っても、信じていたものが遠くに消えても……。絶対に明日は来るのだと強く肩を叩くこの楽曲を聴いて、思わず涙を浮かべてしまった人はきっと多かったはず。そして同時に“蜃気楼”は、この日笑顔で場を温めていたTAKUMAの人間性を如実に表している訳で、彼らがここまで多くのファンやバンドマンに慕われる理由を、強く抱かせるものでもあったと思う。

強い説得力を携えた“ヒトリセカイ”を終え、最後に選ばれた楽曲は“goes on”。KOUICHIのスリーカウントを経て、TAKUMAによる「飛べー!」の合図と共に巨大な人の海が出来上がったフロア。TAKUMAは歌詞の一部を《大阪のみんな楽しんでますか〜》に変化させつつ、サビでは突然「みんなしゃがめ!」と伝達。全員がしゃがんだ(実際は椅子に座ってたけど)ことを確認すると、サビで一気に立ち上がらせ、この日一番の盛り上がりへと繋げていく10-FEETである。ただ、彼らは最後まで笑いのエッセンスを絶やさなかった。ラスサビを終えると、TAKUMAは「みんなもう一回しゃがめ!ジャンプして終わるぞ!」と前置きしたものの、ここで音がブゥーン……という音を残しながら消滅。飛び上がる準備をしていたファンをよそに、満面の笑みで「逃げろっ!」とステージ裏へ全力ダッシュするメンバーたち。一拍置いて、掌の上で転がされていたと察したファンは一様に大爆笑。こうして彼らのライブは、笑いの渦に包まれながら幕を下ろしたのだった。……始まる前は、アウェーかと思われたライブ。ただ終わってみれば、B'zとの対バン相手は彼ら以外に考えられないと確信するほど、大盛り上がりの代物となった。

【10-FEET@大阪城ホール セットリスト】
VIBES BY VIBES
スパートシンドローマー
RIVER
ハローフィクサー
壊れて消えるまで (新曲)
第ゼロ感
その向こうへ
蜃気楼
ヒトリセカイ
goes on

 

10-FEETの余韻が長く続く中、会場には熱量の他に、いつしか緊張感さえ漂っていた。それもそのはず、次の出順は伝説的ロックバンド・B'z。正直なところ、この日集まったファンは『B'zを観たい』という熱狂的なファン、もしくは『B'zを観たことはないけど機会があれば観たかった』というロック好き、どちらかに必ず分類されるように個人的には思っている。……つまりは全員のお目当ての中に『B'z』の名前が入っていたことは、疑いようのない事実だろう。

10-FEETと同様、開始前はバンドにゆかりのある芸能人からのVTRがモニターに映し出される。10-FEETがサバンナ高橋であったことから大半が予想できていたように、モニターに現れたのはこれまで何度もファンを公言しているブラックマヨネーズ・小杉。小杉は松本のギターと稲葉の歌声を改めて高く評価しつつ、最後は代表曲“ultra soul”の掛け声をファンと練習。存分に温まったところで、遂にB'zのライブが幕を開けたのだった。

神妙なSEと共にまずステージに現れたのは、白髪&サングラスが印象的な松本孝弘(G)。松本は巨大な歓声が挙がる中でギターを手にして重いギターサウンドを響かせていくのだが、とにかく音がデカい。それは後にバンドメンバーが合流し、ジャムセッションの様相を呈した頃も変わっていなかった。ふと疑問に思い松本の背後を見ると、そこにはうず高く積み上がった大量のアンプが!B'zにとってはお馴染みの光景ではあるものの、様々なバンドのライブに足を運んだ経験のある人でも、このような特別仕様のセットを見た人は初だろう。

それらの驚きを噛み締めていると、いつしかステージには稲葉浩志(Vo)が!そのままの流れで始まったのは昨年にリリースされたアルバム『FYOP』からの“濁流BOY”で、早くもB'zがB'zとして君臨する、その真髄を目の当たりにすることとなった。バックバンドの演能能力の高さもさることながら、やはり稲葉と松本によるバンマス感(オーラに近いところもある)は異質で、ふたりを中心に全てが回っている感覚さえ抱いてしまう。中でも稲葉のフロントマン然とした立ち振る舞いは芸術的でもあり、60歳を超えているにも関わらずブレない歌唱、ステージの端から端まで動いているのに上がらない息、筋肉質な身体から漂う色気……などなど、同じ人間かどうかも疑わしくなるような魅力に溢れていた。

以降は“IT'S SHOWTIME!!”や“ねがい”など、長らく愛されてきた代表曲を惜しみなく投下。当初ハンドマイクだった稲葉の武器に“IT'S SHOWTIME!!”では金のマイクスタンドが付けられ、それをブンブン振り回しながら歌う様は圧巻で、ドカンと鳴る舞台装置など、大仰なものは不必要。とにかく演奏と歌だけで掌握する力強さが、彼らをここまでの地位へと昇りつめたのだろうと再認識。また本来演者が見辛いステージの端……いわゆる『見切れ席』にも移動して手を振るサービスを行う姿も、ファンを大切に思う気持ちが伝わってきて素晴らしかった。

そして“イチブトゼンブ”で、ライブはひとつのハイライトを迎える。多数ある楽曲のうち『B'zと言えばこの曲』と挙げる人も多いであろう“イチブトゼンブ”。稲葉の歌声のブレなさについては先に述べた通りだけれど、ここで注目したいのは松本の演奏。荒々しいサウンドを響かせているものの、彼のアクションには過剰なものが一切ないのだ。それは淡々と弾くロボットのような凄さを一度は感じてしまいがちだが、よく見ると実際は細かなタッピングなども行われていることが分かる。要は演奏が上手すぎるあまり、一見すると機械的(というか簡単そう)に見えてしまっているだけなのだ。そんな演奏をじっと見ていた僕だったが、サビの《愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに》の場面ではファンが一本指を立てて呼応する姿を見てハッと我に返ったりも。とにかく目を離しても良いと思える瞬間が全くない。

アルバムツアーを同会場で数日後に控えているB'z。この日のセットリストの中心を担ったのは『FYOP』からの楽曲であり、ここからは“FMP”や“Heaven Knows”といったアルバムからの楽曲が次々投下されていくゾーンに。また長いギターソロで松本がハードロック色の強い演奏を繰り広げる場面もあったのだが、ディープ・パープルの“Smoke On The Water”のワンフレーズを弾き倒したりもしていて、思わず「やっぱり影響を受けてるなあ」などとしみじみ思ったり。ただ日本におけるハードロックバンドでここまでの地位を確立したのは、B'zだけ。『ハードロックをお茶の間に浸透させた』という功績も含め、やはりB'zは偉大だなと。

“さまよえる蒼い弾丸”の凄まじい盛り上がりを終えると、ここで稲葉が「今日という日を一緒に盛り上げてくれた10-FEETを呼んでもいいですか!」とまさかの一言。そうして一際大きな声援が飛ぶ会場に現れた普段着のTAKUMA、NAOKI、KOUICHIら10-FEETメンバー3人……だったのだが、よく見ると3人ともがピクピクと表情筋が動く、謎の笑顔を浮かべている。もちろんこれは憧れの先輩に呼び込まれた極度の緊張によるものであり、TAKUMAは「緊張なんかしてないです。あの……全然緊張してないです」と足をブルブル震わせながらトーク。中でもとてつもなく緊張していたのは、先程のMCでも大ファンを公言していたNAOKI。稲葉とガッチリと握手をしたNAOKIは目にうっすら涙を浮かべており、彼にとって今日という日が如何に大切だったのかを、雄弁に物語っていた。

……という訳で、この日最後の楽曲として鳴らされたのは、これを聴かなければ帰れない“ultra soul”!言うまでもなく日本国民誰しもが歌えるであろう超名曲を、今回は10-FEETを招いたスペシャルバージョンでお届けだ。特別な一夜であることもあってか、稲葉は歌唱の大半を10-FEETに任せ、自身はメンバーと肩を組んだり笑い合ったりとご機嫌。対して半カラオケ状態の10-FEETのメンバー3人は、大先輩の演奏に気を遣いながら歌っているという対比があまりにも面白く、会場はこの日一番の盛り上がりに。当然《そして輝くウルトラソウル》→「ハイ!」の流れもバッチリ決めつつ、最後はB'zのライブではお馴染みとなる「お疲れー!」のコールで締め。……かねてよりのファンはもちろん、今回初めてB'zを観る新規層も全員大満足させる、さすがのパフォーマンス。日本におけるロックの代表的なバンドにB'zが挙げられて長いけれども、その理由を明確な形にして魅せた、完璧なライブだった。

【B'z@大阪城ホール セットリスト】
濁流BOY
IT'S SHOWTIME!!
ねがい
イチブトゼンブ
イルミネーション
FMP
有頂天
Heaven Knows
さまよえる蒼い弾丸
ultra soul (feat. 10-FEET)