キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

【前編】音楽活動と並行して本業(副業)を行うアーティスト10選

こんばんは、キタガワです。


音楽で生計を立てることを夢見る者のみがアーティストと呼ばれるサクセスストーリーは遥か昔。現在では俳優や声優はもちろんのこと、YouTuberやVTuber、果てはTwitterやTikTok発のインフルエンサーに至るまで、音楽アーティストの裾野は大きく広がりを見せていて、極端な話で言えば不変的な日常に生きる我々でさえ、ひとたびカメラ片手に口ずさんだメロディーが話題を呼んだその瞬間アーティストと名乗ることが可能な素晴らしき時代に突入した。実際、日本一の音楽の祭典と謳われる紅白歌合戦で菅田将暉やFoorin、桐谷健太、ビートたけしらが歌手顔負けの歌声を披露したことからもそれは明白で、間違いなく今後は更に様々な界隈から音楽が産み出される、言わば『ジャンルレス』のアーティストが次々台頭することは必然であろう。


今まで『映像がループするMV』や『ライブ演奏が印象的なバンド』といった風変わりな紹介を行ってきた当ブログだが今回も例に漏れず、本業(副業)の傍らアーティスト活動に精を出し話題を振り撒く、ネクストブレイク必至な総勢10組のアーティストを前後編に分けて紹介。その各組における活動の振り幅に大いに驚くと共に、音楽との新たな出会いの契機としてもらいたい。

 

 

GReeeeN(職業・歯科医師)

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もはや言わずと知れた国民的流行歌となった“キセキ”や“愛唄”をはじめ、昨今では連続テレビ小説の主題歌“星影のエール”でお茶の間にアピール。結果紅白歌合戦初出場を勝ち取るに至った4人組ボーカルグループ。


様々なメディアで語られているため広く知られている事実ではあるが、彼らの本業は歯科医師。GReeeeNがデビュー当初から本名を公開せず、更には一貫して素顔を明かしていないその理由は歯科医師としての活動に大きな支障をきたすためだ。なおGReeeeNのアーティスト写真に決まって笑顔にも似た独特な『e』の字が湾曲して並べられている理由についても笑顔になるときに見える歯並びをイメージしてのデザインで、加えてその角度がぴったり18度となっていることについても『18=いーは=良い歯』であるため。ただそんな過酷な生活を余儀無くされている渦中においても彼らの楽曲の素晴らしさはもはや説明いらずで、日本で誰も成し得ていない壮絶なダブルワークを完璧に両立している。


GReeeeNの魅力は計4名という声の厚みを生かしたボーカリゼーションで、清らかかつ耳馴染みの良いHIDE、navi、92のハーモナイズと低音域で印象度を増幅させるSOHの歌声がマッチし、GReeeeNをGReeeeNたらしめる極上のボーカル面を形成。謎の覆面グループとしてデビューから始まり、素顔を隠してライブ活動やテレビ出演を行う現在も彼らの知名度が廃れる兆しさえ見せないのは間違いなく、類い稀なる歌声にある。ハードワークの中でも決して音楽を捨てないGReeeeNは今年ニューアルバム『ボクたちの電光石火』を発売。所謂『転勤族』である関係上、現在は各自が全国各地に拠点を置きながらの活動を行っているGReeeeNだが、その勢いは留まる気配さえ見せない。

 


GReeeeN - 「星影のエール」MUSIC VIDEO

 


感傷ベクトル(職業・漫画家、脚本家)

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卓越したピアノサウンドと共に清らかな歌声を響かせる田口囁一(Vo.Gt.Piano)は過去に『僕は友達が少ない+』や『フジキュー!!!』、そして現在はコミック百合姫にて作品連載中の現役漫画家であり、対して唯一無二の相棒である春川三咲(Ba)は田口作品をはじめ、様々な作品の脚本を手掛けるシナリオライター。


故に感傷ベクトルは二人三脚で活動を行う漫画家と脚本家が、共に音楽シーンにも足を踏み入れた極めて異質なバンドという認識でほぼ間違いない。けれどもその音楽は極めて綿密に練り上げられていて、決して音楽活動を打算的に捉えていないことが分かる。事実感傷ベクトルは2012年にメジャーデビューを果たし、複数枚のアルバムを発表。彼らを知るリスナーの中には『あの田口と春川によるロックバンド』との認識と同等程度、『感傷ベクトルを好んで聴いていたが、調べた結果メンバーが偶然漫画家と脚本家だった』とする逆転現象も少なくない。


中でも彼らの知名度を飛躍的に高めた“エンリルと13月の少年”では、自身が音楽と脚本を手掛けたアプリゲーム『エンリルと13の暗号』と連動したストーリー展開で魅せるオリジナリティー溢れるサウンドメイクがてんこ盛り。全ての活動に手を抜くことなく、完成度の高い作品を制作し続けるある種焦燥的なワーカホリックぶりには驚かされるばかりだが、これこそが彼らなりの、一本筋の通った創作活動なのだろう。以降の感傷ベクトルは2016年に春川のライブ活動休止を発表し長らく沈黙を続けていたが、昨年遂に再始動。約4年ぶりとなるアルバム『In other colors』を配信リリースし、現在は漫画連載の傍ら既成概念に縛られないマイペースな活動を行っている。

 


感傷ベクトル / エンリルと13月の少年 (Music video)

 

 

WORLD ORDER(職業・格闘家、政治家)

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K-1 WORLD MAXへの出場経験も持つ須藤元気が発起人となり結成されたダンスパフォーマンスグループ・WORLD ORDER。2013年には日本パフォーマーとしては異例の日本武道館公演を完遂、テレビ番組を含む様々なメディアに出演を果たしたが、現在は須藤が政治家に転身。政治活動の多忙により実質的な活動休止中。


WORLD ORDERの何よりの魅力として挙げられるのが『整髪料で髪を固めてスーツと眼鏡を着用する』というジャパニーズ・サラリーマンのイメージを踏襲しての一糸乱れぬロボットダンス。今でこそYouTubeを流行の起点としてブレイクを果たすアーティストは珍しくないが、当時は現在と比べてYouTubeからシーンを席巻する例は少なく、更には元々某かの活動で名を馳せている人物が音楽活動を行う希少性は極めて高かった。そんな中日本の中心部でのゲリラ的なパフォーマンスMVが受け、取り分け海外圏で広いアクセスを獲得。注目が日本に伝播し、メディアが取り上げたことから火が点いたWORLD ORDERは、言わば現代流行の先駆者的立ち位置のようにも思える。


曲調は打ち込みを多用したテクノポップであり、緩やかに進行する冒頭から徐々に熱量が高まり、サビ部分で爆発する楽曲多数……という当時海外で流行していたある種分かりやすい音楽構成もまた、ダンスを基軸とする彼らの存在証明に拍車を掛けている印象が強い。単純に奇をてらった魅せ方をするのみならず、ネットでの広がりやイメージ、流行りの曲調など、多角的な視点で向き合った結果のバズだ。

 


WORLD ORDER "HAVE A NICE DAY"

 

 

Charisma.com(職業・OL)

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社会に対するリアルなヘイトをラップに乗せて放つ痛快な楽曲群が印象深いラッパー、カリスマドットコム。メジャーデビューから年月を経た現在こそ退職しているが、かつていつか(MC)は雑貨メーカーの事務、ゴンチ(DJ)は精密機器メーカーの事務職として会社に属していた所謂『OL』であり、朝夕は会社員として勤務し、夜にはアーティスト活動を行う稀有なダブルワーク状態にあった。


メジャーデビュー以後はアーティスト活動が多忙を極めた関係上、当初よりの代名詞的存在として知られていたOLとしての仕事を辞め、音楽活動に専念。しかしながら彼女らの毒舌リリックの根幹部分には、常に会社員時代にいつかが肌感覚で感じていた他者の独善的な言動や穿った倫理観がつまびらかにされていて、いつか自身がラップという行為を何よりの怒りの捌け口としていることが見て取れる。ただ、それだけのストロングポイントで留まらないのがCharisma.comが移り変わりの激しいラップシーンで生き残ってきた証明で、徹底してキャッチーなメロや矢継ぎ早に詰問するが如くのボーカルもやはり、彼女たちを語る上で避けては通れない。


現在ではオリジナルメンバーであったゴンチの脱退に伴い、実質的ないつかのソロ名義となったCharisma.com。未だ正式な音源のリリースこそないものの、再始動ライブでは新曲を続々披露するなど、次のイメージは明確だ。未だ彼女の2021年現在の活動予定は未定であるが、今後未曾有のコロナ禍を経て投下される楽曲はきっと現代社会へのヘイト以上の切れ味を伴って心中を刺すはず。故に今はその爆発の時を座して待ちたいところ。

 


Charisma.cоm / イイナヅケブルー

 

 

HANAE(職業・モデル、ランジェリープロデュース)

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うら若き少女としてのキュートアイコン的一面もありつつ、現在は音楽活動の比重を幾分減らし、かねてより自身の夢としてSNS上で綴っていたランジェリーセレクトショップのプロデュースに加え、自身もモデルとして新作商品を身に纏っての販売促進活動を行っているHANAE。


そんな現在フリーとして様々なビジネスに着手する謎多き女性・HANAEの正体は、かつて僅か16歳にして大手音楽プロダクションに所属し、“神様はじめました”や“神様の神様”といったアニメ主題歌を歌唱、更にはミュージックステーションへの出演経験も持つシンガーソングライター・ハナエ。独特のウィスパーボイスと打ち込みを多用したきらびやかな音像が鼓膜を揺さぶる彼女の楽曲群は極めてポップテイスト。けれどもその内容はと言えば曖昧模糊なフレーズが頻発する良い意味での異物感が覆い尽くしており、独自性の高いテイストが幅広く評価されるに至った。中でも彼女の名を広く知らしめる契機となった“神様はじめました”は数年前の楽曲でありながら時を越え、今やTikTok上でプチブレイク。更なるファンを生み出し続けているというのだから面白い。


前述の通り現在はランジェリーセレクトショップのプロデュース業に精を出している関係上、レコード会社を退社しフリーの身ではあるが、音楽への底知れぬ探求心は未だ健在で、ソロとは違う新たなユニットの結成や作詞、クラウドファンディングを用いたリリースも行っている。音楽家・ハナエの殻を脱し、多種多様な事柄を好奇心に委ねて取捨選択するHANAEの姿は彼女のSNSから察するに非常に身軽で、心から人生を謳歌しているように思える。

 


ハナエ - 「神様はじめました(Short Ver.)」

 

 

……さて、以上で『音楽活動と並行して本業(副業)を行うアーティスト10選』前編はここまで。次回はM-1グランプリ優勝経験を持つあの芸人や連続テレビ小説に出演する人気女優、YouTube再生通算20億回の化物コメディアンなど、幅広いラインナップでお届けする。過酷な状況に身を置く中でも、決して音楽活動に対する思いを緩めない稀有なアーティストたちの歩みを是非とも認知し、未だ見ぬ音楽との出会いに繋げていただければ幸いである。

 

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