キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

SUMMER SONIC特別版『SUPER SONIC』のヘッドライナー発表から見る、今知っておくべき重大ポイント

こんばんは、キタガワです。

 

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夏の恒例行事として親しまれてきたSUMMER SONIC(サマソニ)。昨年時点で既に東京オリンピックの影響により来期のサマソニ中止が正式決定されており、どんよりした空気にもなっていた。けれども突如として発表されたのが、開催日を1ヶ月遅らせることで正当後継者的秋フェス、スーパーソニック(スパソニ)が誕生。そして本日、スパソニの記念すべき第一弾出演アーティストが発表された。


ヘッドライナーはThe 1975、スクリレックス、ポスト・マローンというジャンルも音楽性もバラバラの3組。更には遂にサマソニに降臨した完全無欠のロックンロールスター、リアム・ギャラガーやEDM界の重鎮ファットボーイ・スリム、トロピカルハウスの立役者カイゴに世界的なバズを巻き起こしているTONES & Iなど、多種多様なアーティストが脇を固める最強の布陣となり、同時に東京1日目(大阪2日目)はロックンロールデイ、東京2日目(大阪1日目)はダンスミュージックデイ、そして東京のみ開催となる3日目はポップ&ヒップホップデイとなることがほぼ確定事項となった。正直ここまで素晴らしいラインナップというのは、世界規模で見てもほぼないと見て良いのではなかろうか。


そこで今回は現時点で発表されているアーティストの中で、ヘッドライナー3組を中心に紹介。まだ開催まで5ヶ月以上の月日が残されているが、現時点で公開済みのアーティストを予習するなどして少しずつ気持ちを高めていってほしいと切に願う。

 

 

The 1975

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卓越したライブパフォーマンスははもとより、VJを多用した視覚的演出も高評価を呼んでいるThe 1975。昨年度はB'zの出番前というポジションから遂にここまで駆け上がったこともあり、感動もひとしおである。


The 1975の根幹を担っているのはフロントマンであるマシュー・ヒーリーその人。ライブごとにガラッと変わる出で立ち(最近のライブではスーツ姿、入院患者、上半身裸などで登場)や、何をしでかすか分からない躁鬱入り乱れたパフォーマンスは是非目撃してもらいたいところだ。


そして昨年のサマソニ出演と大きく異なる部分として挙げられるのは、ニューアルバム『Notes On A Conditional Form(仮定形に関する注釈)』リリース直後のタイミングであるということ。セットリストの大半がこのアルバムから繰り出されることはもはや言うまでもないが、現代社会を生きる人々に焦点を当てた問題作“PEOPLE”をはじめ、“Me & You Together Song”や“The Birthday Party”など、クソッタレな世の中に対しての強烈なメッセージ性を秘めたアルバム曲がどのような形で鳴らされるのか、期待が高まる。


昨年はステージ上にて日本酒の一升瓶をがぶ飲みした結果、何度も倒れたり客席に降りてファンの手にキスをしまくるなどある種自己破壊的なライブを繰り広げたマシュー。昨今のツイッターでは「海外のフェスでファンの男性とキスをしたけど何も悪いと思ってない」、「男女の評価が対等なフェスにしか出演しない」といった発言を繰り返している彼であるが、言わずもがな世界規模でウイルスが蔓延し、自国では医療体制や外出禁止令が問題化している今、彼の頭は新たな怒りで一杯のはず。前述の通り、昨年はその怒りが『酒をがぶ飲みしてステージを転げ回る』という極端な形として発現したが、果たして今回はどうなるか。

 


The 1975 - People

 

→The 1975のサマソニ2019ライブレポートはこちら

 

スクリレックス

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同日出演となるカイゴと比較すると一見同様のDJスタイルにも思えるが、こちらはゴリゴリの低音が炸裂する凶悪なEDM。この日夜中のスパソニは、まさに狂喜乱舞との言葉が相応しいダンスフロアに変貌することだろう。


スクリレックスはもちろんカイゴやファットボーイ・スリムもそうだが、彼らのライブスタイルは基本的に自身の楽曲及び他者の楽曲をシームレスに繋いで展開するものである。昨年のザ・チェインスモーカーズが約1時間半で42曲を流し切ったように、彼らも間違いなくほぼ同程度の形で休む暇なく爆音を鳴らすことだろうから、ぜひアルコール片手に踊り狂ってほしい。


そんなスクリレックスの特筆すべき点としては、やはり原曲を歪な独自解釈で変貌させた極悪サウンドだろう。スクリレックスはCD音源の時点でも不協和音一歩手前の常軌を逸した音でお馴染みであるが、ライブになると音響効果も相まって更に暴力的に変化する。所謂『ダブステップ』と呼ばれる音楽性で話題のスクリレックス。なぜ彼が数あるDJの中でもここまで注目を集めているのかと言えば答えは簡単。彼のように徹頭徹尾低音サウンドをぶちかます人間は音楽シーンにほぼいないからである。足はガクガク、耳はガンガン。体はアドレナリン出っぱなしという唯一無二のライブが彼の魅力なのだ。


かつて来日した際はSFチックな飛行船に乗ってプレイするという大規模なライブスタイルだったスクリレックス。けれども昨今の彼はメカメカしい形でステージに立つことは然程なく、どちらかと言えば地に足付けた安定した指裁きで爆音を鳴らすことが多くなってきた。2020年の彼もおそらくは前年度と同様シンプルなセットで赴くと予想されるが、やはり気になるのはSNS上で仄めかされている新曲の存在で、これらがどのようにセットリストに組み込まれるのか楽しみなところ。加えてカニエ・ウェストやDJドレイク、ダフト・パンクやアヴィーチーといった音楽家のサウンドがスクリレックス色に染め上げられて放出される様も期待大。

 


SKRILLEX - Bangarang feat. Sirah [Official Music Video]

 

 

ポスト・マローン

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サマソニのヘッドライナーというのは基本的に、ある程度の実績を積んだベテラン勢が抜擢されることが多い。事実昨年はRed Hot Chili PeppersとB'z、その前はノエル・ギャラガーとBECKであった。けれども今年のヘッドライナーはThe 1975やスクリレックスと全体的に若返った感が強く、中でもポスト・マローンは何と1995年生まれの24歳。無論ここまで若くしてヘッドライナーに起用されたのはサマソニではアークティック・モンキーズ以来となる。


何故彼がここまでの地位を確立しているのかと言えば、それは純粋に彼の音楽が人気を博しているためだ。ビルボードTOP100の10位から1位までの間に4曲がランクインし、最終的には「新人として最もストリーミング再生されたアーティスト」に選ばれるに至った。余談だが、実際に海外に拠点を置いている友人に話を聞いたところ「ほぼ毎日ポスト・マローンの曲が街中で流れている」と語っていた。そんなの人間が来日し、フェスでトリを務める……。これだけで事の重大さは理解してもらえるはずだ。


顔や全身に大量のタトゥーを施している彼は一見、ヤンチャな若者に見られがちだ。事実海外の音楽雑誌・ローリングストーン紙では「ポスト・マローンはアルコールと煙草をやりまくっていて家中に拳銃がある」と書かれたほどで、正直今でも彼を支持するファンと同程度、彼にヘイトの目を向ける人間は存在する。


けれども彼はそうした怒りや憂鬱、絶望を全て歌に宿すことで、自己を保ってきた人間でもある。実際ポスト・マローンの楽曲には《君が去ったとき窓から飛び降りたかった》と希死念慮を綴った曲や、政治や世界、差別問題といったものが数多く存在する。そして今やそうした楽曲群が世界各国に強固なメッセージとして広まり、最終的にYouTube上で公開されている大半の楽曲の再生数が1億回を超えるバズをもたらしている。


散弾銃の如きスピードで放たれる彼の言葉を全て認識するのは難しいだろうが、熱いMC含めて少しでも理解してもらえればと思う。そうでなくともツアーのチケットが1秒で瞬殺してしまう今、「俺ポスト・マローン観たことあるよ」の一言は一生誇れる記憶として吹聴出来る。日本の最前線の音楽がOfficial髭男dismだとすれば、海外の最前線は間違いなくポスト・マローン。この2組が同じ日に観ることが出来るというのも、スパソニならではだ。

 


Post Malone - Congratulations ft. Quavo

 

 

……さて、いかがだっただろうか。


サマソニ中止を受け、突如爆誕したスパソニ。……思えば今や若手最有力株のビリー・アイリッシュとレックス・オレンジ・カウンティらの初来日は、ここサマソニ(スパソニ)だった。そして今回はヘッドライナーのみの紹介ということで省いてはいるが、7月にはソロ映画が公開されるリアム・ギャラガー、世界各国で尋常ではないバズを記録しているTONES & I、『アナと雪の女王2』劇中歌として話題を呼んだAuroraなど、そうそうたる面々が並んでいる。


コロナウイルスの蔓延いかんでは中止の可能性もあるだろうが、前述の通りこのラインナップは世界的に見ても二度とないほどの豪華さ。どうか中止にならないことを願うと共に、今記事がスパソニに参加する予定の方々にとって、少しでも期待を高める契機となれば幸いである。最高のスパソニまであと5ヶ月。コロナウイルスによって地獄のような環境と化した今を、それまで辛抱して耐えようではないか。

 

→サマソニ2018のライブレポートはこちら

→サマソニ2019のライブレポートはこちら