キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】SUMMER SONIC 2019@大阪(1日目)

こんばんは、キタガワです。

 

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8月16日から18日にかけて舞洲SONIC PARKにて開催されたSUMMER SONIC大阪に、今年も参加した。今回はその1日目のライブレポートを書き記していく。当日のタイムテーブルは上を参照。


昨年のライブレポートは以下を参照。


→SUMMER SONIC 2018 前乗り編はこちら
→SUMMER SONIC 2018 初日レポはこちら
→SUMMER SONIC 2018 最終日レポはこちら

 

 

ハプニング①……台風10号の発生

今年のサマソニ……特に今回記述する1日目は良い意味でも悪い意味でも、ふたつのハプニングに直面した歴史的な一日と言えた。おそらくは運営にとっても観客にとっても、人それぞれに様々な感情を抱いたことだろうと思う。


まずは本編に入る前に、2019年度のサマソニを語る上で絶対に避けられないほどに重要な、その『ふたつのハプニング』について語らねばなるまい。少し長いがお付き合い願いたい(ライブレポートだけ読みたい人は飛ばしてください)。


サマソニから遡ること2日前。8月14日に、その一報は日本列島を駆け巡った。


『超大型の台風10号が、15日にも関西へ接近の見込み』。ひとつ目のハプニングは何を隠そう、この台風10号の発生である。

 

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お盆休みを直撃したこの台風10号は『超大型台風』と称されていることからも分かる通り範囲が非常に広く、更には雨量が局地的に1000mmという、もはや災害レベルの台風としてニュース番組で報じられた。そんな歴史的な超大型台風が事もあろうにサマソニの前日である15日に関西に直撃することが確定事項となった。


……結果的には当然のように、15日に僕が島根から乗る予定だったバスは運休となった。それどころか15日はバスのみならず電車や新幹線も、終日全線運休という最悪の流れに。


そんなこんなで15日に前乗りする予定だった僕だが、「もう15日は無理だ」と判断し、予定を大幅に変更してその前日である14日には大阪に向かうことを決意した。


無理を行ってバイトを早上がりさせてもらい、その足で最終便の新幹線に飛び乗った。結局大阪に着いたのは、日付が変わるか変わらないかくらいの時間帯で、その日は死んだようにホステルで夜を明かした。


しかしながら「台風が来るため全線運休」と報じられた15日の大阪は雲ひとつないドッピーカン状態だった。僕は心底「本当に台風なんて来るのかよ」と疑問を抱いたのと同時に、「これはサマソニは間違いなく開催されるだろう」と思いつつ大阪の街を堪能した。

 

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だが夜19時を過ぎようという頃、どしゃ降りの雨が大阪を包み込んだ。その勢いは凄まじく、痛いほどの雨が体を打ち付けて一寸先も見えないほど。体験したことのないほどの大雨に、僕は考えを改め「明日のサマソニは中止だ」と感じつつ、取り敢えず開催される僅かな可能性を信じて床に着いたのだった。


しかしながら予想に反して、サマソニは開催された。台風一過により灼熱の気温となったサマソニ会場に着いた僕は、最高の日になると確信していた。そう。あのアナウンスがあるまでは……。

 

ハプニング②……直前での出演キャンセルの多発

もうひとつのハプニングは、予想外の形で知れ渡った。ヤバイTシャツ屋さんを観ようとマウンテンステージに向かった僕は、目を疑った。腕をクロスして×サインを作った係員が、大声で何かを叫んでいる。


「オーシャンステージとマウンテンステージは、台風の影響による復旧作業のため、開場致しておりません!」


何とメインステージであるオーシャンステージ、更には2番目に大きなステージであるマウンテンステージが、今現在も復旧作業に追われているというのだ。確かに昨日の台風は凄まじかったので、何かが破損したり飛ばされたりしたとしても仕方ないと思う。


しかしながら問題なのは、その情報共有がスタッフ間で密に行われていないことだった。


集まった観客はアーティストを観たい。もし出演がキャンセルになるなら他のステージに行くし、演奏する可能性が少しでもあるならば待機したいと思っている。


片やアルバイトスタッフは『そもそもライブをやるのかどうか』すら把握していないため、何も言えない。言えるのは不明瞭な「演奏を見合わせております」との言葉だけ。結果ふたつのステージ前では『状況を知りたい観客』と『何も分からないスタッフ』が衝突する、文字通りの大混乱となった。


結果的には上のタイムテーブルを観ると分かる通り、1発目のアーティストどころか、かなり後に演奏するアーティストさえも出演をキャンセルする事態となってしまったのだ。


はっきり書いてしまうが、これは前代未聞だ。と同時に、サマソニ大阪の運営を根本から見直す必要があると示した一大事件でもある。


極端な話、復旧がどこまで進んでいるかを明確にしたり、もしくは「夕方○時から通常通りに進行します」といった正確なアナウンスが出来ていれば、ここまでの混乱はなかったはず。この問題がここまで大きくなったのは、間違いなく運営の不手際だ。

 

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実際僕は10-FEETの演奏時間になった頃オーシャンステージに行ってみたのだが、そこは罵詈雑言が飛び交うパニック状態となっていた。そりゃそうだ。本来の演奏時間から数十分が経過しても一切アナウンスはなく、入場さえも出来ていないのだから。


公式のツイッターを観てみても、そこには焚き付けるように「東京は盛り上がってますよー!」といった文言が笑顔の写真と共に上がっているが、大阪のアナウンスはほとんどなし。その様はまるで大阪会場を軽視しているようでもあり、この事件そのものを隠蔽するかのようでもあった。


結果的に最後までオーシャンステージに集まった観客は、「やるかどうかも分からない状態のまま、演奏を一切聴けずに演奏時間が終わる」という意味不明な環境に立たされていた。僕なんかは「10-FEET観れないなら他のステージ行くか」と思える人間だったからまだ良かったものの、もし10-FEETのためだけにサマソニに参加したり、地方から遠征した人はたまったものではない。「もうサマソニは行かない」と強く心に決めた人も一定数いるだろう。


さて、ここまでは悪い点ばかりを列挙してきた。僕個人としても10-FEETやZEBRAHEAD、Tash Sultanaといったアーティストを観たかったりした。だが正直な気持ちとして「今年のサマソニ(1日目)はクソ!」と思っているかと問われれば、別にそこまで怒りを覚えてはいないのだ。


何故ならスタッフは、最後まで頑張って復旧作業を続けてくれたから。16日のサマソニ自体を中止することも出来ただろう。ふたつのステージを終日立ち入り禁止にすることも出来ただろう。だが彼らは台風一過で灼熱地獄となった野外の大阪で、頑張ってくれたのだ。


そんなスタッフたちには感謝こそすれど、文句を言うのは御門違いなのではなかろうかと思う。実際普通にサマソニ1日目は楽しかったし、午後には全ステージが解放された。悪い一部分だけを切り取って「もうサマソニ行かん!」と激昂するのはあまりに早計で、浅はかだ。


ハプニングの連続でツイッターは炎上し、Yahooトップにも載ってしまったサマソニ大阪1日目。しかし総合的に見れば最高に楽しい1日だった。僕は今回の記事で、これを声を大にして伝えたかった。話が長くなって申し訳ない。以下、ライブレポートに移ります。

 

 

milet SONIC STAGE 11:00~

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本日の記念すべき1番手は、昨今のドラマ主題歌で一躍注目を浴びる新星、milet(ミレイ)だ。


「今からサマソニがスタートする」という観客の高揚感とは裏腹に、静かにステージに現れたミレイ。その姿は闇に包まれてほとんど伺い知れない。会場内のダークな照明も相まって、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。


すうっと息を吸い込んで始まった1曲目は、自身初となるCDとなる1stEPに収録された『Waterfall』だ。


キーボードと打ち込みのサウンドを軸にソウルフルな歌声を響かせるミレイはCD音源で聴こえていた歌声と全く遜色ない。おそらくは静かな滑り出しでスタートする『Waterfall』は、30分間歌い続ける上でのウォーミングアップ的な意味合いがあったのだと推測するが、この時点で大半の観客の心を掴んでいたように思う。


続いての楽曲は、早くもミレイの名を広く知らしめるきっかけとなった『inside you』をドロップ。

 


milet「inside you」MUSIC VIDEO(先行配信中!竹内結子主演・フジテレビ系ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』OPテーマ)


この楽曲に、僕は心底痺れてしまった。まず声量がとてつもない。「良い声だな」というレベルではもはやなく、空気が震えているような錯覚に陥るほどの絶大な声の爆弾となって襲い掛かってくる。『inside you』後は、観客は皆ポカンと棒立ちの状態となり、はっと思い出したように拍手を送っていたのが印象的だった。


中盤のMCでは「サマーソニック大阪、ありがとう。ここはちょっと涼しい。あとちょっと暗いんだね。さっきから新曲ばっかりやってるけど……」と語ったミレイ。言葉の端々には帰国子女のようなカタコト感も垣間見え、一瞬日本人であることを忘れてしまうかのよう。


ここからは8月21日発売のニューEP『us』に収録されている楽曲を4曲連続で披露するという力技から、ラストに演奏されたのは『I Gotta Go』。


今回のライブは総勢4名のバックバンドを引き連れてはいたものの楽器の主張は少な目で、あくまでもミレイの歌を第一義に考えた演奏に終始していた印象を受ける。中でもキーボード担当と呼吸を合わせ、大半をアカペラに近い形で進行する『I Gotta Go』は、最もミレイの歌声を前面に押し出す楽曲でもあり、いつの間にか後方までびっしりと詰め掛けた観客の元に、高らかに響き渡った。


ミレイのライブ終了後、僕はこの時点で申し訳ないが「このままサマソニ終わってもいいや」と思ってしまった。それほどの力がこの30分間には凝縮されていたし、今すぐにCDを集めてみたいとも、近々のライブに応募してみようとも思えた稀有な瞬間だった。

 


milet「us」MUSIC VIDEO(日本テレビ系水曜ドラマ『偽装不倫』主題歌)


特に今回のセットリストの半分以上を占めていた『us』の破壊力はとてつもなく、発売前でほとんどの観客が初見であるにも関わらず、グッと心を掴まれた。このブログを書いているのは8月21日過ぎ、つまり『us』の発売日が最近過ぎた頃なのだけれど、即座にCDショップに買いに行ったほどだ。


間違いなく今後ミレイは日本のJ-POPシーンで重要な役割を担うことだろう。その原石をサマソニの初っぱなというこの時間帯で見ることが出来たのは、それこそ昨年で言うところのビリー・アイリッシュのような、数年後には「あのとき最前列でミレイ観たんだぜ」と自慢できるほどに、意義深いものになると確信した次第だ。


【milet@サマソニ大阪 セットリスト】
Waterfall
inside you
Diving Board(新曲)
Fire Arrow(新曲)
Rewrite(新曲)
us(新曲)
I Gotta Go

 

ELECTRIC PYRAMID SONIC STAGE 12:10~

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本来であればミレイのライブ終了後、すぐさまマウンテンステージへThe Interruptersを観に行く予定ではあったものの、前述した『台風の影響でステージの復旧作業中』とのことでThe Interruptersの出演がキャンセルに。


そのため予定を大幅に変更し、大量の温存を図るためソニックステージに留まることを決めた。なので次なるELECTRIC PYRAMIDはYouTubeで楽曲を予習したわけでもない、いわば完全なる初見状態で臨むことに。


ステージのモニターには、夕日をバックにヤシの木が鎮座するという南国チックな画像が大写しになっており、どことなくゆったり出来そうな雰囲気。


僕はこの時点でまず事前情報が皆無のため「メロウな音楽を鳴らすバンドなのかな?」、「名前からして電子音を使うバンドかな?」などと思いを巡らせていたのだが、実際の彼らの音楽性はそうしたイメージとは完全に真逆を行くものだった。

 


Womans Touch


結論から書くと、ド直球かつゴリゴリのロックバンドだった。『エレクトリック』という名前にも関わらずシンセサイザーや打ち込みは一切なし。更にはディストーションで極限まで歪んだギターが爆音で鳴り響き、背後のモニターに映っていたヤシの木はいつの間にか消失。様々な色をごちゃ混ぜにしたサイケデリックな色合いに変貌していた。


今回が初来日と語るELECTRIC PYRAMID。ボーカルはしきりに「コニチワ!」と日本語で叫んでいたが、MCでは英語で「日本語下手でごめんね。今度は勉強しておくよ」と語るピュアな一面も。冒頭からトップギア。終盤ではボーカルが客席に突入するまさかの展開もあり、大きな爪痕を残していた。


彼らはお世辞にも有名なバンドではない。各国のフェスでは決まって前座の立ち位置で、某動画サイトのMVの再生数にしても決して高くない。しかしながら『全4ステージ中2ステージが入場不可能』という前代未聞のハプニングが起こった1日目・サマソニ大阪のこの時間帯においては避暑地として、またひとつの音楽を楽しむ場としてこのソニックステージに赴く観客はかなりの数おり、結果としては彼ら史上最も多くの目に触れた一日だったのではないだろうか。


実際彼らのテンションは後方に人がどんどん入って来るのと比例して高まっていき、ヘドバンを何度も繰り出して完全燃焼。ラストには「おいおい見てくれ!物凄い人がいるよ!ありがとう!」と感動していた。


個人的には最初からソニックステージにいる予定だったようにも錯覚してしまうほどに、ハッピーな空間だった。あっぱれ。


【ELECTRIC PYRAMID@サマソニ大阪 セットリスト】
(セットリスト未確定により記載なし)

 

番外編・もぐもぐタイム 13:00~

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ソニックステージから外に出ると、クーラーが効いたアリーナから灼熱の気温に触れたことにより、一瞬倒れそうになる。


「暑い……死ぬ……」と数分おきに一人ごちながら歩いていると、次第に気分も辛くなってくる。夜まで続く長丁場のサマソニである。ここらですぐさまオアシスエリア(飲食店が立ち並ぶ場所)に逃げ込み、一旦小休憩を挟むこととする。


しかし同じように考えている観客も多いのだろう、オアシスエリアは人でごった返す地獄絵図となっていた。そういえばふたつのステージが入場不可能、更にはめちゃくちゃ暑く、加えてお昼時というダブルパンチならぬトリプルパンチの状況である。どの店にも大行列が出来ており、とても何かを買って食べようとは思えない有り様だ。


結局オアシスエリアは完全に諦め、近くにあるローソンへ移動することに。


そう。実はサマソニ大阪には、ローソンがあるのだ。写真がないので申し訳ないが、中には塩分タブレットや各種おにぎり、更には熱冷まシートや飲み物がこれでもかと陳列されており(ちなみにおにぎりやタブレットはは3つのレーンを全て使用した超展開)、中で購入すればさぞかし安く食料が手に入るだろう。


しかし僕には中に入る気力も余裕もない。こちとら喉が渇いて腹が減って死にそうなのだ。店の外までズラっと続いた列に並ぶ気もないので、その近くにあるローソンの臨時屋台でフランクフルト(200円)とハイボール(300円)を購入し、ぐいぐい流し込む。焦って食べたので写真が一口食べた後なのが申し訳ないところ。ちなみにこの日の飯はこれだけである。


まあまあ腹も膨れたところで、急いでコロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)を観にマッシブステージへ。本来であれば10-FEETとTash Sultanaを観にオーシャンステージに行く予定であったが、未だに公式からアナウンスがないので泣く泣く断念。ちなみに今年もマッシブステージはいろいろと問題ありな部分があるのだが、それは昨年のライブレポートを参照していただきたい。何故かって?文字を書きすぎて疲れたからです。

 

コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店) MASSIVE STAGE 14:20~

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……というわけで足取り軽くマッシブステージへ向かったわけだが、どうも様子がおかしい。人があまりにも多すぎるのだ。


コロナナモレモモとは『本家』であるマキシマム ザ ホルモンが公式にオーディションを行い、その末にメンバーを固めたいわば『公式が認めたマキシマム ザ ホルモンのコピーバンド』である。そのため原則としてマキシマム ザ ホルモンとコロナナモレモモは同じ日に出演することはなく、演奏する楽曲もホルモンが認めた楽曲のみという制約が課せられている。


そのため僕自身としてはこの集まった大勢の観客は『本家』であるマキシマム ザ ホルモンは今回大阪には出演せず、更にはコロナナモレモモ自体がほとんど活動をしないというレアな感覚からある種の「有名だから観ておこう」という思いがあってのものだと捉えていたのだが、実際は違った。


思い返せばメインステージで演奏する予定であったFear, Loathing in Las Vegasと10-FEET、加えて04 Limited Sazabysらが続々と出演を取り止めることが発表され、現時刻の選択肢は主に『ポップ系か激しいコロナナモレモモ』に狭まっていた。そう。おそらくこの場に集まった一定数は、そうしたいわゆる『激しい楽曲をプレイするバンド』を目当てに訪れた観客であり、ある種焦らしに焦らされた期待と心のざわめきを求めて足を運んだのではなかろうか。

 

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そうした人たちで、マッシブステージは超満員……どころかチケットエリアに入りきらない多数の観客が柵の外で固まり、普通に移動するだけでも困難という異常事態が発生。僕は昨年サンボマスターがマッシブステージでライブを行った際、当ブログにて今回と同じように『超満員だった』と記述した覚えがあるのだが、正直その比ではない。ほぼ一歩も動けない。それどころか、動かない観客が皆一様にステージの方向を向き、コロナナモレモモのライブを心待ちにしているのである。


そんな集まった観客のドでかい歓声に迎え入れられたコロナナモレモモ。1曲目は早くもトップギア!な『ぶっ生き返す!!』だ。


DJの存在により、電子音が爆音で鳴り響く新機軸のアレンジが加えられた『ぶっ生き返す!!』は暴れたがりな腹ペコたちを焚き付けるには十分で、『一面に広がるベドバンの海』という独特の愛情表現でもって大歓迎。


その後はわかざえもん(Ba)が『コロナナモレモモの紹介』として「3度の飯より飯が好き!」と本家のおなじみのフレーズを丸パクリし、赤飯(Vo)がツッコむ場面も見られ、終始和やかな雰囲気に包まれていた。


僕はといえば『シミ』終了後に木村カエラを観にソニックステージへ向かってしまったため全てを観たわけではなかったが、純粋に良いライブをしていたので驚いた。正直ホルモンがコピーバンドをプロデュースして売り出す策略については個人的に懐疑的な気持ちも大きかったのだが、こうして実際観てみると「これもこれでアリかな」と思った。やはり、何事も百聞は一見にしかずである。


【コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)@サマソニ大阪 セットリスト】
ぶっ生き返す!!
包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ
シミ
「F」
恋のメガラバ

 

木村カエラ SONIC STAGE 14:40~

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さて、冒頭でも述べたが、今年のサマソニ大阪は台風の機材復旧作業のため、ある時間帯になるまでは『全4ステージ中2ステージが使用不可能』という前代未聞の事態に見舞われた。よって必然的に観客の大半は残りの2ステージに殺到するわけで、これらのステージでは『入場規制』の枠を遥かに超える著しい形でもって盛り上がったアーティストが何組か存在した。


残されたふたつのステージ。無論その中のひとつであるマッシブステージでは上述したコロナナモレモモが大混雑となった。……それでは同時刻、もうひとつのライブ場所であるソニックステージは一体どうなっていたのだろうか。


結論から書くと、ソニックステージはマッシブステージ以上の超満員だった。2階も1階も前に進むことが不可能なほどにビッシリで、本来スタンディング席のみ配置されている2階に至っては、座り切れない観客が各所で立ちっぱなし状態でライブを観ているというまさかの光景が。


以下はラストの『Magic Music』終了後個人的に撮影したもの。まるで大物アーティストの単独公演並みの客入りだ。これだけでもこの時間帯のソニックステージのカオスっぷりが良く分かると思う。

 

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もちろんライブは大盛況。木村が『今日のバンドメンバー、ほぼOKAMOTO' S!』と語っていたように、熟練者ばかりを集めた楽器隊でもって、『リルラ リルハ』や『Butterfly』に代表されるヒット曲、更にはCM曲としてお茶の間に広く鳴り響いた『Tree Climbers』や『Ring a Ding Dong』といった楽曲をメドレー形式でプレイするなど大盤振る舞い。


そしてただひたすら「お客さんがたくさん入って嬉しい」というわけでもなく、彼女自身が置かれている状況を誰よりも理解していたのも好印象だった。はっきり言ってしまえば、もしもふたつのステージがなくなるというハプニングが発生していなければ、おそらく木村カエラの客入りは少なかっただろう。それを重々承知の上で「みんな(涼しくて快適な)この場所があって良かったね。演奏出来なかったみんなの分まで頑張ります」と他アーティストや観客を労う姿を見て、今この時間木村カエラを選択して良かったとも思えたし、同時にこのライブを観ることが出来て本当に良かったとも思えた瞬間だった。

 


木村カエラ「Magic Music」


「これは私が音楽を続ける理由になっている曲で、『あなたの笑顔が見たい』っていう思いを込めた大切な曲です」と演奏したラストの『Magic Music』では、隅で座っている観客やスタンディングの2回席に対して「あれ?そこって絶対座らなきゃいけないところなの?違う?違うんだ。じゃあ立とうよ!最後だしみんなで盛り上がろう!」と全員を起立させ、大団円でフィニッシュ。


今回のライブは木村カエラを目当てに来たわけはない人にも、ガツンと刺さったのは間違いない。僕個人としては彼女のライブを観るのは3回目なのだが、今回が歴代のライブの中でも一番良かったように感じた。


【木村カエラ@サマソニ大阪 セットリスト】
リルラ リルハ
いちご
Butterfly
小さな英雄(メドレー)
STARs(〃)
Samantha(〃)
Ring a Ding Dong(〃)
Jasper(〃)
Happyな半被(〃)
HOLIDAYS(〃)
マスタッシュ(〃)
TREE CLIMBERS(〃)
Yellow(〃)
BEAT
Magic Music

 

Tom Walker SONIC STAGE 15:55~

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木村カエラ終了時点で、やっとこさ公式からステージ復旧のアナウンスがあった。具体的にはオーシャンステージは予定時間1時間遅れでRANCIDからスタート。マウンテンステージは以後30分遅れでMachine Gun Kellyからスタートとなり、長い間ふたつのステージのみに密集していた観客の分散が図られた。


そのため木村カエラ終了後は蜘蛛の子を散らすように観客が退場し、それこそ序盤にミレイを観ていた頃のような、ある種過ごしやすいソニックステージが戻ってきた印象。


続いては同じステージでTom Walkerを観ることに。


実は個人的にトムのライブは、この日のライブで特に期待しているアクトのひとつだった。


はっきり書いてしまうと僕が知っている曲は某動画サイトで1億再生を記録した『Leave a Light On』のみで、それ以外の彼の曲はほとんど知らない。にも関わらず、この日のトムのライブは「物凄い時間になるだろう」とほぼ確信していたのだ。


その理由はいくつかあるのだが、やはり最も大きな要因としては『ここまでビビっと来た曲は久しぶりだったから』である。


僕は日常的に音楽記事を執筆している関係上、年間通して多くの曲を聴いている自負がある。しかしながらある1曲を聴いて「おおっ!これは!」と感じるアーティストは数えるほどしかいないというのが正直なところで、実際は「流行に合わせて聴いてみるか」といった好奇心や、アルバムが発売されるたびに「元々好きなアーティストだからなあ」と半ば惰性で聴くこともしばしばある。


そんな中トムの『Leave a Light On』は久々にドハマりした楽曲だった。と同時に「この曲を生み出したトムのライブは是非フルで観てみたい」と直感的に思わせるような、破壊力抜群の1曲でもあったのだ。


話をライブレポートに移そう。背後には『What a Time To Be Alive』のインパクト抜群のジャケが大写しとなっており、ステージにはギターやドラム、そしてトムのライブでは必要不可欠なキーボードが置かれている。その配置はいわゆる「一般的なバンドセット」といった印象で、目新しいものはほとんど見られない。しかしながらひとつだけ気になるのは、トムのマイクの横に配置された小さなドラムセット。実際メンバーが配置についた瞬間にもその場所だけはポッカリと空いており、異様な雰囲気を醸し出していた。ちなみにその答えはライブ終盤で明らかになるのだが、それに関しては後述。


ライブは現状唯一のアルバムである『What a Time To Be Alive』を主軸に展開。前半はゆったりとした滑り出しでありながら、次第にロックテイストが前面に押し出されるという緩急を付けた素晴らしいステージング。最初こそ心配な客入りではあったものの、後半にかけてはトムのテンションの高まりと比例して大勢の観客が踊り狂っていたのが印象的だった。


背後のVJについても触れておこう。冒頭こそ『What a Tiwe To Be Alive』のジャケ写が固定で映っていたものの、時間の経過と共に映像が変化。黄色や赤といった鮮やかな色の光が渾然一体となって襲い掛かる映像や、果ては他国のデモらしき光景を捉えたニュース映像が流れ、火炎瓶を投げる民間人とそれを暴力でもって鎮圧する機動隊の応酬が、圧倒的なまでのリアリティーでもって目に飛び込んでくる。


セッティングの段階から気になっていたドラムは、終盤に差し掛かったところでトムがプレイ。ギターを置いて全体重を込めて打ち下ろす渾身のドラムの音圧は凄まじいものがあり、目がバチっと覚める思いがした。40分間のライブの中で本来ダレ始めてもおかしくないラスト数分間の観客のテンションを再び逆戻りさせるようなこの手法を大胆に取り入れたのは、長丁場なライブにおいてのひとつのスパイスのようにも思えたし、理にかなっているようにも感じられた。

 


Tom Walker - Leave a Light On (Official Video)


ラストはもちろん『Leave a Light On』。ピアノのイントロの時点で待ってましたとばかりに大盛り上がりの観客に対し、トムはビリビリと響き渡る圧巻の歌唱で立ち向かっていく。大サビ前には「サマーソニック!」と絶叫しつつ観客に歌唱を託す場面も見られ、最後まで観客と強固な信頼関係を築いたままフィナーレを迎えた。


総じてこの日のサマソニにおいて、トム・ウォーカーのライブが個人的ベストだった。特に突飛な行動をして見映えを重視したり、アレンジを施したわけでもなく、純粋に楽曲の力のみで捩じ伏せる力技のライブは、一見オリジナリティに欠けた無骨なものにも思える。


しかしながらトムのあの柔らかで迫力のある歌声を聴いていると、直感的に「良いなあ」と感じてしまうのだ。それが40分間途切れることなく続くことは、実はありそうでなかなかないことなのだ。加えて昨今、ほとんど楽曲を知らない観客でさえも『声』で瞬時に引き込むライブは、なかなかない。


これこそがライブのあるべき姿だと感じたし、いちシンガーとしての力が発揮された一幕だったと思うのだ。結局ライブ終了後はオアシスエリアに猛ダッシュを決め込んで『What a Time To Be Alive』を購入した僕であったが、彼のサイン会がそもそも存在しななかったのは、一生悔いが残ると思った。ぜひ近いうちに単独公演を希望したいところ。


【Tom Walker@サマソニ大阪 セットリスト】
(セットリスト未確定により記載なし)

 

Superorganism MASSIVE STAGE 17:50~

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午前中から続いてきたサマソニも、気付けば夕方。茹だるような暑さだった昼頃よりも僅かに気温が下がり、言うなれば過ごしやすい暑さとなった。


そんな中マッシブステージに降り立つ次なるバンドは、スーパーオーガニズムだ。


現状アルバム1枚のみのリリースにも関わらず、アークティック・モンキーズやフランツ・フェルディナンドといった有名バンドと同じレーベルに所属し、日本ツアーは軒並みソールドアウト。インターネット時代における新星バンドとして今話題のスーパーオーガニズム。


しかしながら彼女たちは悲しいかな、メディアにおいては何かと音楽以外の点が強調されがちなバンドだと個人的には思っている。性別も国も年齢も違う7人が集まったバンド。唯一の日本人である19歳の女性、野口オロノがボーカルを務めるバンド。オロノの強い言葉の数々。7人での集団生活……。そうしたゴシップ的な情報ばかりが取り沙汰されることに対し、僕は常々疑問を抱き続けてきたのである。


そんな思いで臨んだ今回のライブだが、とても良かった。楽曲の完成度と演奏技術はもちろんのこと、遊び心溢れたVJやライブならではのアレンジでもって、さながら『ニュー・ジェネレーションの音楽』を体現するかのような圧巻のライブを見せ付けてくれた。


ライブは自身のバンド名を繰り返す『SPRORGNSM』からスタート。色とりどりの『SUPERORGANISM』の文字の数々がモニターに映し出されるサイケデリックな幕開けに、まず圧倒される。しばらくすると文字同士が重なり始めてもはや文字なのかどうかも判別不可能なレベルに達し、モニターは一種のホラー映画のような光景に。更にはメンバーが鳴らす不定期なトライアングルの音色でもって、感覚は次第に麻痺していく。

 


Superorganism - It's All Good (Official Video)


果たしてこれはライブなのか、アートなのか、それともそれ以外の何かなのか……。曲が進むにつれて地に足が付かないような浮遊感は増す一方で、ムキムキの蛙や喋るカバ、分裂するエビ、染色体や口のアップといった映像がおどろおどろしい色彩でもって流れ続けるVJを見ていると、一種の洗脳を受けているようにも思えた。


メンバー7人中唯一の日本人であるオロノはと言えば、序盤で「I Can't Speak Japanese(私は日本語が話せません)」と集まった日本人をおちょくるような言動を見せたかと思えば、それ以降は基本的に英語でマシンガントークを繰り広げる。


中でも後半にかけてオロノがメンバーのひとりに「オーマイガー!オーストラリア!?」と叫んでいた終盤では、それに対して意味も分からず「フゥー!」と盛り上がる日本人の観客に苛立った様子で、オロノが日本語で「オーストラリアには狂った習慣があって、靴の中にビール入れて飲むんだって!」と説明する場面も。最終的はオロノも「今から靴に水入れて飲みます!」と宣言し、有言実行で靴に注いだステージドリンクを一気飲みし、拍手喝采を浴びていた。

 


Superorganism - Something For Your M.I.N.D. (Official Video)


ラストはスーパーオーガニズムの人気を不動のものとした『Everybody Wants To Be Famous』と『Something For Your M.I.N.D.』を続けて披露する贅沢な幕引き。林檎の咀嚼音や身ぶり手振り、果てはボイスチェンジャーを使用して高音から低温までを自在に操る、最後まで翻弄されっぱなしのライブであった。


以前オロノが某誌にて「ちゃんとした理由もなく有名になっている気がして堪らない」といった趣旨の発言をしていたが、正直彼女たちはデビューしてまだ間もない。セットリストについても大半が昨年リリースしたアルバムからで、今年のサマソニでは最も小さなマッシブステージ。そのためライブを観る前はある種「鯱張ったパフォーマンスになるかもしれない」と懸念していたのだが、決してそんなことはない。むしろ今まで様々なバンドを観てきたライブキッズさえも唸らせる、まるで『新しい時代のライブ』の先陣を切るかのようなパフォーマンスだった。


【Superorganism@サマソニ大阪 セットリスト】
SPRORGNSM
It's All Good
Night Time
Relax
Nobody Cares
Reflections On The Screen
The Prawn Song
Nail's March
Congratulations(MGMTカバー)
Hello Me + You
Everybody Wants To Be Famous
Something For Your M.I.N.D.

 

RADWIWPS OCEAN STAGE 19:10~

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ここで本日初となるオーシャンステージに移動。当初の予定通りであればスーパーオーガニズムとRADWIWPSは時間帯が丸被りだったので、どちらか一組を選択する必要があったのだが、RANCIDから1時間押して進行したことで上手い具合にタイムテーブルがズレ、早歩きで移動した甲斐もあって何とかRADWIWPSに間に合った。


オーシャンステージはRADWIWPSを一目観ようと集まった観客たちで見渡す限り人、人、人の大混雑。14日夜に野田洋次郎(Vo.Gt)がツイッターにて「大阪サマソニ行けない気配出てきたな……」「飛行機飛びますように、お願い」と最悪の可能性を示唆しつつも、結果として無事間に合ったこともこの日集まった観客の心に刻み込まれており、それがまたライブへの興奮を高めていたようにも思う。


予定時刻となり、ステージに降り立ったメンバーたち。野田は開口一番「大阪、調子はどうだい!」と問い質し、1曲目の『NEVER EVER ENDER』に雪崩れ込む。一瞬「EDMのライブ!?」と錯覚するほど目映い映像とシンセサイザーの音色が会場を支配する中、野田は曲中にも「大阪、はっちゃける準備は出来てるんかい!」と絶叫し、熱量を底上げしていく。


ニューアルバム『ANTI ANTI GENERATION』、更には映画のサウンドトラック・アルバム『天気の子』が様々なメディアで好評価だったことや、『君の名は。』と『天気の子』効果で海外からの観客も多いことに配慮し、始まる前はてっきりこの3枚を軸としたセットリストになるのかと思っていた。


しかしながら、結果としては『ANTI ANTI GENERATION』からドロップされたのは1曲目に披露された『NEVER EVER ENDER』のみで、『君の名は。』と『天気の子』の収録曲に至っては1曲も演奏しないという、まさかのセットリストだった。


だが今回のライブが良くなかったのかと問われればそうではなく、むしろ今までのキャリアから満遍なく、ヒット曲や実験作を惜しげもなく披露した大興奮のライブであったのだ。


中盤にて「今日は大変な一日だったけど、みんな元気かい?」と語り始めた野田。


持ち時間が予定よりも短くなってしまうことを説明し、「裏でフォーリミや10-FEETと話したけど、やっぱり楽しみにしてたのに一音も出せなかった人たちもいます。なのでその人たちの分まで頑張ります」と語った野田は、ここオーシャンステージに集まった大勢の観客に対して、心からの感謝を伝えていた。


出演キャンセルやライブ時間変更といった様々な問題が発生した今年のサマソニ。しかしそもそもの発端となった台風10号という天災は誰のせいにも出来ないし、怒りをぶつけることもできない。野田はまるで高く挙げた腕を振り下ろす先を見失いながらも、懸命にそれを感じさせまいと気丈に振る舞っているようでもあった。

 


おしゃかしゃま RADWIMPS MV


そんな思いからか、後半にかけての演奏は次第に熱を帯びる。『おしゃかしゃま』では長いブレイクからの大爆発を見せ、「えーおー!」のコール&レスポンスもバッチリ決まった『君と羊と青』ではマシンガンの如く繰り出される言葉の数々でもってテンションを底上げしていく。


ラストは『いいんですか?』で会場全体を掌握する感動的な幕切れ。「知ってる人は一緒に歌ってくれ!」と叫んだ野田。観客は「もはや全員が知っているのでは?」と感じるほどそこかしこでサビが歌われ、メンバーも大満足の様子。「またどこかで会いましょう!そのときまで幸せになー!」と強いメッセージを発し、ステージを去っていった。


思えばRADWIWPSがレッチリの前にブッキングされたと知ったとき、僕は少しばかりの疑問を抱いていた。曲の雰囲気や歌詞を鑑みればRADWIWPSの前に演奏するMAN WITH A MISSIONの方がレッチリとの音楽性は近いし、更に視野を広げるとするならばマウンテンステージのトリを担うBABYMETALはかつてレッチリの海外ツアーにおいてオープニングアクトを務めた経験があるわけで、BABYMETALをレッチリの前に配置すれば多くのキッズの共感を得ることが出来ただろう。


しかし今年のサマソニは、レッチリの前にMAN WITH A MISSIONでもBABYMETALでもなく、RADWIWPSを演奏させると決定した。そしてそれは今この場においては最上級の盛り上がりでもって、事実上肯定されたのだ。


この場に集まった観客の「ラッド良かった!」と口々に語るその笑顔が、それを証明していたと思う。やはりRADWIWPSは日本一のバンドだ。


【RADWIMPS@サマソニ大阪 セットリスト】
NEVER EVER ENDER
ギミギミック
アイアンバイブル
おしゃかしゃま
DARMA GRAND PRIX
君と羊と青
いいんですか?

 

RED HOT CHILI PEPPERS OCEAN STAGE 20:40~

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遂に時刻は20時40分、オーシャンステージにおいてはレッチリを残すのみとなった。ロックスターを一目観ようと多くの観客でごった返す中、RADWIWPSを見終わった後の観客でさえも大半はその場から動かず、じっとトリのレッチリを観ようと待機していた。


実は今回のレッチリの出演は、いち観客が思っている以上に奇跡的なものだった。


サマソニの20年を総括するとも言っていい今年のサマソニだが、何よりも重要なトピックとなるのはやはり出演アーティストだ。そのため清水氏はサマソニの20周年を祝う最も重要な核として、初年度から出演していたレッチリかレディオヘッドかグリーン・デイの、この3組の中の1組にはどうにか出演してほしいという強い思いがあったという。


しかしながら現実は残酷で、レディオヘッドとグリーン・デイは「今年は何も動かないスケジュールである」との理由で出演をキャンセル。残す頼みの綱はレッチリただひとつとなったのだった。


そこで急遽清水氏はアメリカへ飛び、何度かの出演交渉を行った。しかし結果返ってきた答えは「NO」であり、レッチリの出演はここで潰えたかに思えた。


だが清水氏は諦めなかった。幾度も食い下がり、果てはレッチリへの思いを手紙にしたためる見える化した熱量でもって、レッチリという大きな岩を動かしたのである。当時レッチリは3月にエジプトのピラミッドでライブを行うというスケジュールは立っていたものの、それ以外は完全に白紙だった。その白紙のスケジュールの中に、サマソニは食い込んだのだ。


今年一年ほぼ活動しないレッチリのライブがこのサマソニで行われることは、感動的で、運命的で、劇的な一幕であることを、僕らは知っておく必要がある。


話は変わって、レッチリだ。ジャム・セッションから雪崩れ込んだ『Can't Stop』を皮切りに、以降はキャリア全体を網羅するような磐石のセットリストで進行していく。新たにセッティングされたモニターを使ってのVJも美麗で素晴らしく、音も悪くない。まさに「これがメインステージだ!」と感じた次第だ。僕は『Snow(hey oh)』が終了した頃合いでCatfish and the Bottlemenを観に移動してしまったのだが、興奮を与えるには十二分な時間だった。

 


Red Hot Chili Peppers - Can't Stop [Official Music Video]


繰り返すが、この日のサマソニは様々な問題が立て続けに起こった。前日の台風による被害の復旧作業に始まり、アーティストの出演キャンセルや公式アナウンスの不明瞭。ライブの遅れ……。ここオーシャンステージで事実上のトップバッターとなったRANCIDのライブ中には、ライブ中にも関わらずスタッフがステージを動き回り、急ピッチで復旧作業に当たりつつのパフォーマンスだったという話さえある。


もちろん中止という可能性も大いに考えられたこの16日のライブが結果として開催に至った点については、正直感謝しているし、どんな形であれ批判をするつもりは毛頭ない。しかしながら逆に考えれば、開催との一報を聞き遠方から足を運んだライブキッズの中には、目当てのアーティストが直前にキャンセルするということで事態に触れて、大きな蟠りを残す結果となった事実も否めない。


しかしながら照明の増設やモニターの追加といった『レッチリ仕様』のステージで、爆音で演奏する彼らを観ていると、僕は漠然と「結果オーライだな」と感じた。


この日起こった全てのハプニングもこの一夜のためのスパイスだと捉えれば、何ということはない。むしろ2003年にレディオヘッドが長年の沈黙を破りサプライズで演奏した『Creep』や、2009年の嵐のナイン・インチ・ネイルズに匹敵する、奇跡的で感動的な一幕と言えるのではなかろうか。


【Red Hot Chill Peppers@サマソニ大阪 セットリスト】
Can't Stop
The Zephyr Song
Dark Necessities
Snow(hey oh)
I Wanna Be Your Dog
Right On Time
Californication
Suck My Kiss
Soul to Squeeze
By the Way

[アンコール]
Give It Away

 

Catfish and the Bottlemen SONIC STAGE 20:10~

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事前に立てていた計画ではレッチリの『Can't Stop』(レッチリはほぼ100%の確率で1曲目がこの曲)を聴いた時点でCatfishに移動する算段だったのだが、思いの外聴き入ってしまい、Catfishのステージに到着した頃には最後の1曲である『Tyrants』を今から演奏するというタイミングだった。


真裏がレッチリとBABYMETALということもあり、客入りはあまりに寂しく、ラスト1曲にも関わらずすぐさま最前列に進めるほどにガラガラだった。取り敢えず前方まで進んで観ることに。


すると瞬間、爆音が轟いた。間違いなくこのバンドだけボリュームがおかしい。ドラムが心臓の奥の奥まで響いてくるだけでなく、ギターもベースも「音量ミスってんのか?」と思うほどに轟音。ふと見上げてみると、ステージには全長5メートルはあろうかというドでかいアンプが真横に置かれており、どうもそこから爆音が流れているらしかった。

 


Catfish and the Bottlemen - Tyrants (Live at Glastonbury 2015)


メンバーは時折アンプの上に置かれたアルコールを飲みながら、尋常ではない爆音を出しまくり歪ませまくりのやりたい放題。ボーカルはギターを弾きながらマイクに近付いて歌っているのだが、そのテンションの高さが全く制御出来ておらず、マイクに齧りつくように歌ったりマイクスタンドを倒したりと、もうめちゃくちゃ。


最初こそ腕を挙げて盛り上がっていた観客たちも、後半にかけては口をあんぐり開けて放心状態になっていたのが印象的だった。音の洪水に飲み込まれながらの無骨なパフォーマンスは間違いなくこの日……いや、サマソニ3日間の中で一番ロックだったように思う。ボーカルは最後にギターをぶん投げ、落下したギターが「ギャリイイン!」と壮絶なノイズを出しながら終幕。


この日心残りがあったとするならば、Catfish and the Bottlemenのライブを全て観られなかったことのみ。事前情報が一切ない状態だったのでこのような結果になってしまったが、僕は「次に来日する際には絶対に行こう」と心に決めたのだった。


【Catfish and the Bottlemen@サマソニ大阪 セットリスト】
Longshot
Kathleen
Soundcheck
Pacifier
Twice
Conversation
2all
Fluctuate
7
Cocoon
Tyrants

 

……さて、1日目のレポートは以上である。長々と書いてしまった(約2万字)が、いかがだっただろうか。


次回はゴリゴリのロックバンドが多数出演した1日目とはうって変わって世界各国の有名DJ陣が集結した、一種のクラブイベントの様相を呈した2日目について書く予定だ。なるべく急いで書き進める所存ではあるがおそらくまた長くなると思うので、気長に更新をお待ちいただきたい。


それでは。


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