キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ぼくのりりっくのぼうよみの炎上について、今一度考えてみよう

こんばんは、キタガワです。

 

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“あの炎上騒動”のとき、僕はぼくのりりっくのぼうよみ(以下ぼくりり)に対して怒りを覚え、同時に失望したのを覚えている。


騒動を知らない人のため、そしてブログを円滑に進めるため、まずはこの炎上騒動を振り返ってみようと思う。


ぼくりりが引退を表明したのは9月のことだった。事前に公式アカウントにて『NEWS ZEROの番組内で重大発表あり』と告知されており、ファンが固唾を飲んで見守る中彼が語ったのは、『ぼくりりを辞める』という趣旨の発言。それは事実上の引退宣言だった。


その後は『僕はもう……』と題されたツアーが行われ、このライブをもってぼくりりの活動に終止符を打つかに思われた。


そんな矢先、驚愕の発言がTwitterに投稿された。

 

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このツイートは「ファン以外に聞きます。ぼくりりに対しての印象は?」というアンケートを取った後のものである。


僕個人としては、これを見た瞬間に腸が煮えくり返るような気分だった。正直言うと、今までCDを購入したりカラオケで彼の曲を歌って「ぼくりり好きだなあ」などと語っていた自分自身を、ぶん殴ってやりたい気分になった。


ミュージシャンの存在は、ファンありきのものだ。ファンなしではここまでの地位は築けなかったろうし、CD売上もライブ動員も振るわなかったことは明白。感謝して然るべきなのだ。それを何だ、この言い方は。


当時の僕は怒りに身を任せ、彼のTwitterアカウントへのリプライや、攻撃的なツイートをした。普段は決してやらない行為だが、このときばかりは感情を抑えられなかったのだ。

 

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その後は謝罪するかと思いきや、火に油を注ぐ発言の数々が並ぶ。


この3つのツイートにより、彼の名前は悪い意味で広まっていった。いわゆる『炎上』だ。瞬く間にリプライ欄は『クソリプ』で埋め尽くされ、騒ぎたいだけの馬鹿共の格好のおもちゃと化したのだ。それだけでは飽きたらず、

 

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エゴサーチで拾ったツイートを引用リツイートで煽ったり、

 

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悪びれもしない発言。

 

 

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しまいには近しい友人にTwitterを管理させ、ツイートをさせるなどの暴挙に出たのである。


僕はリアルタイムで彼のファンの動向を追っていたのだが、「ファンやめます」、「ライブチケット捨てる」など、悲観こもごものツイートばかりで悲しくなったのを覚えている。


ラストアルバムの発売を控え、ツアーも行っている最中。そんな状態でファンを悲しませる行為をするのは、理解しがたかった。


許せない。心の底からそう思った。


それからというもの、僕は何度もブログに書こうと思った。思うがままに書きなぐり、下書きに保存した『ぼくりりふざけるな!』と題したブログの内容は、誹謗中傷の嵐となった。


しかし結局、そのブログは公開しないまま終わった。理由は、ただの悪口だと思ったから。彼の発言の深意を知らずしてボロクソに書いただけの文章を投稿するのは、ナンセンスだと。


とりあえず、彼自身から“あの発言”についての弁解なり深意なりが聞けるまでは、彼に対するブログは公開するまいとした。


そんな折、音楽雑誌『MUSICA』にて、ぼくりりへのインタビューが行われるとの情報を知った。


このインタビューは炎上真っ只中の9月30日(炎上ツイートをしたのは28日)に、決行されたものである。


このインタビューには新作アルバムや今後のツアーへの心持ちなども書かれているが、初めて公にした『炎上騒動』という部分にのみ着眼した彼の発言部分を、以下に抜粋して紹介したい。


「ファーストを出した頃は、『ぼくりり』と『普通の自分』がいるっていうことだったんだけど、そのバランスがどんどん崩れてきて。最初は50対50だったのが、どんどんぼくりりの占める割合が大きくなっていって」(MUSICA・76ページ)

 


「『リプライの説教ババア軍団ウザすぎワロタ』は③(ずっと思っていたことがすごくダイレクトに出てしまった)が非常に強かったですかね。マジで『ファンを大切にしろ』って何も考えず言ってくるんだなっていう。そういうことは何度も何度も何度も考えた上で発言してるんで、昔からのファンの人にはせめてそれくらい思いを馳せて欲しいと思いました」(MUSICA・78ページ)

 


「僕、朝方に『説教ババア軍団ウザすぎワロタ』ってツイートした時に自分の中で圧倒的に何か欠けていたものがやっと満ちた感があったんですよ。あの感覚は忘れられないですね。だからやらないとダメですね。そうしないと自分の中に呪いを非常に残すことになってしまうし、その憎しみはいずれ時を経て他の何かに転嫁されてしまうだけというか」(MUSICA・79ページ)

 


「これだけ破壊する様子なんかみんな見たことないだろ、みたいなのはありますね。行くなら行くとこまで行かないとダメだっていうのはずっと思ってるんで。っていうか、それがぼくりりとしてできなかったことなんで、最後にやろうかなって感じですね。それに炎上しても人生意外とどうにかなるのかどうか?も楽しみ。その実験でもある」(MUSICA・79ページ)


このテキストから察するに、まず第一として、彼は『ぼくりりという偶像に苦しめられていたこと』がわかる。


思えば、彼のデビューは劇的だった。10代でメジャーデビューし、数々の楽曲を産み出してきた。ここだけ見ると、シンデレラストーリーと呼んでも差し支えないだろう。


しかし彼を取り巻く環境は、次第に心を蝕んでいった。メディアでは常に天才と称され、アルバムのチャート成績やCMへの楽曲起用……。ハードルも上がり、本名としての自分ではない『ぼくりり』という存在だけが一人歩きする感覚があったのではなかろうか。


そして引退を発表し、彼の偽ってきた本心が爆発したのが、あの炎上発言なのだろう。彼の発言は全て『ぼくりり最期の大いなる実験』であったことがわかる。


彼は頭がいい。炎上することは分かりきっていたはずだ。しかし、やらざるを得なかった。いわばぼくりりの投身自殺とも言うべき『殺人行為』を、彼はどうしても犯さなければならなかった。


ファンに嫌われるのも重々承知の上で、あの発言をした。その結果残るのが僅かな人数だとしても、『偶像のぼくりりのファン』でなく『裸の自分』を見てくれる人が残るなら、それでいいと。


それこそがぼくりりが選んだ全てだった。


このインタビューを見たあと、僕の心からは怒りが消え去っていた。僕は何も分かっていなかったのだ。表面上の彼の姿だけを見て一喜一憂し、本当の姿を見ようとしなかった。全ては彼の掌で踊らされていた。全ては計算ずくでの出来事だった。


そうとも知らず、僕は彼を罵倒し、あろうことかCDを聴かなくなるまで軽蔑した。何と愚かなことだろうか。深く反省したいと思う。


彼の発言の深意を知った今、かつてないフラットな気持ちでぼくりりを見ることができそうだ。


僕ができることは、華々しく散るであろうぼくりりの葬式を、しかと見届けることだけである。


もし現段階で、ぼくりりに怒りや悲しみを抱いている人がいるならば、今月のMUSICAを手に取ってみてほしい。そして彼の全てを知ってもらいたい。話はそれからだ。

 

 

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