キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

『SUPERSONIC 2021』念願のタイムテーブル発表と、来たる運命的な祝祭に向けて今我々が知っておくべきこと

こんばんは、キタガワです。

 

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デルタ株に起因する感染急拡大。NAMIMONOGATARIによるフェス全体への不信感。千葉市後援辞退の報道。スクリレックスやカイゴなどヘッドライナーを務める予定だったDJ陣のキャンセル……。昨年秋から1年延期、状況としても「間違いなく昨年よりは良くなるはずだ」との希望を軸に進められていた今秋のスパソニは、言葉を選ばずに言えば結果『昨年よりも明らかに悪い状況下で開催されるインターナショナルフェス』としてのよもやの立ち位置で開催される運びとなった。そう。一時は中止の可能性も濃厚だったけれど、数々の逆境を乗り越えてスパソニは遂に今月の9月18日~19日に行われるのだ。


なお一番の懸念事項であった海外アーティストたちは既に大多数が来日済みで、現在は東京のホテルにて3日間の自主隔離中。チケットはソールドアウト。コロナ禍であることも鑑みて、ライブ配信については若者の間で大流行中の配信サイト『17(イチナナ)』にて超大物DJたちの生ライブを鑑賞出来ることも伝えられている。主催者であるクリエイティブマンも洋楽ファンの我々も含め、長らくライブどころかそもそもアーティストの来日すらままならなかった苦難の時期を過ごしてきたが、その悩みともやっとこの日でおさらばだ。待ちに待った祝祭は正真正銘、すぐそばまで迫っている。


誰しもが気になるのはそのタイムテーブルだろう。感染拡大防止の観点からワン・ステージとなってはしまったが、この情報だけを見て残念がるのは本当に時期尚早。何故なら各日、チケット代だけを考えても明らかにペイ出来る素晴らしいアーティストが盛り沢山なのだから。まずは初日・18日のヘッドライナーを務めるのは我らがDJ王子・ゼッド!2019年のサマソニで総額ウン千万円をかけて作られた特製DJセットを持ち込み灼熱のダンスフロアに変えてくれたことも記憶に新しいが、自粛期間中に“Funny“や”Inside out”といった新曲もドロップしている関係上、セットリストも更にアップデートしたものになりそうだ。そしてトリ前の絶好のポジションには現状31億回再生(!)のキラーチューンを生み出しEDMのトップをひた走る若者ことアラン・ウォーカーがお目見えで、ゼッドとは対照的に近未来寄りのスペースサウンドを得意とするこちらも間違いなく今年のハイライトになることだろう。他にも2018年にバンドセットでサマソニのトリを担った億単位のバズのスペシャリストのクリーン・バンディットが本邦初公開のDJセットで出演し、氷の国ノルウェーからは『アナと雪の女王2』の挿入歌でもお馴染みとなったオーロラが待望の初来日。ここまでの布陣だけを見ても、海外フェスがひとつ成立しそうなブッキングには感服するばかりである。

 

Zedd - The Middle (Live at SUMMER SONIC 2019) - YouTube


日本勢も負けてはいない。DJセットで出陣するのは電気グルーヴの立役者こと石野卓球で、卓越したDJプレイで魅了すること必至。個人的には卓球楽曲もさることながら、先日のフジロックで電グルの“虹”を披露しなかったことが心残りなので、是非ともこの楽曲で締めてほしいなあと思ったりもするところ。急遽のピンチヒッターとして……というかおそらく本人たちが「俺らこんなデカいとこでやんの!?」と一番戸惑っているであろうどんぐりずも番狂わせを狙うに相応しいポジショニングだし、ファンにとってはSKY-HIが主催するボーイズグループのオーディション番組『THE FIRST』から誕生したBE:FIRSTがオープニングアクトを務めた後のSKY-HI、という展開も感涙ものだ。正直SKY-HI→どんぐりず→オーロラ→クリーン・バンディットの流れはラップとポップスとDJが入り乱れるかなりのカオスタイムであると言えるが、こうしたミスマッチぶりを見事に成功へと導くのも、思えばスパソニの手腕だったりもするので、期待しかない。


続いて翌日19日。もうこれについては誰も異論はないだろうが、トリに冠されたスティーヴ・アオキ、ゼッド、アラン・ウォーカーが一同に介するまさかのB2Bを観ずには絶対に帰れない。そもそも前日出演のゼッドとアラン・ウォーカーがツーデイズで出演すること自体まず有り得ないことではあるが、彼らがこうして誰かとDJコラボをすることは実は今までほぼ例がなく、しかもそのお相手が『海外DJ収入ランキング』でもトップ10に入るというこの3組ときた。これは間違いなく海外的にも驚きの試みでファンもびっくり。この日はツイッターのトレンドが世界的に『スパソニ』『アラン・ウォーカー』『ゼッド』『スティーヴ・アオキ』一色になるのは100%避けられないだろう。


加えて、カイゴが出演をキャンセルしたことで実質的なヘッドライナーとなったスティーヴ・アオキのパフォーマンスにも要注目。元々彼が出演する時点でTLが異様な盛り上がりを見せていたので彼がトリを担うことに文句がある人間などいないはずだが、今回はきゃりーぱみゅぱみゅとのコラボ曲あり、あのBTSのリミックスありとかなり内容的にも濃いものになるのは必然だ。中でもきゃりーは同日出演者に名を連ねているので、少なくとも何らかのゲスト出演は実現すると見て良いはずだ。

 

Steve Aoki - Ultra Music Festival Miami 2017 [Live] - YouTube


対して親日家として知られるリハブは、かなり日本に寄ったステージになりそうでこちらも期待大。特に見所は“Sakura“や”Samurai”といった日本に着想を得た楽曲の数々で、これらは当然海外でも披露されてはいるがここ日本で聴くことには、とても意味のあることだとも思ってしまう。なおそうした系統の中でデジタリズムが爆音ゴリゴリEDMを鳴らすのも楽しみで、メンバーのひとりであるイスメイルが妻の出産のため来日断念となったのは残念だが、実はジェンスオンリーのライブはほぼ初だったりもするので結果プレミア。なお鬱屈した思いを発散するという意味でも、爆音の“Pogo”がこの日本で鳴らされることはマストだ。


更にその最強の海外勢に加勢するのがPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、NiziUなのも素晴らしい。特にPerfumeは映像効果を多用した衝撃的なVJで、かつて並みいる海外アーティストを押し退けて『コーチェラで最も秀でていたライブ10選』にも選ばれたほどなので、今回は果たしてどうなることやら。なお同じ中田ヤスタカプロデュースのきゃりーも大規模な全国ツアーを控えての出陣になるので、ニューアルバムからの新曲もいくつかプレイしそうだ。そして昨年は紅白歌合戦にも出演し、この日は大多数のティーンが押し寄せること必至のNiziUは何と初の有観客フェス出演であり、まずもって後世に語れるレアなライブになる。

 

ただここまで感情の赴くまま書き綴ってきたが、数日後に控えるスパソニが出演者のハッピーな話題だけで終わるほど簡単な話ではないことは、誰もが理解しているはずだ。しっかりソーシャルディスタンスが図られるのか。観客側は本当にルールを遵守するのか。運営は細部にまで目を凝らしていたのか……。それこそフジロックやJAPAN JAMのときのように「今コロナ禍で海外のアーティストを呼んでフェスが行われています!」とメディアで連日すっぱ抜かれ、袋叩きに合う可能性だってあるかもしれない。故にフェスはむしろここからが本番。感染者をゼロに抑えた上で最高の遊び場を提供、次の来日公演に繋げていくことが本当の意味での『スパソニ成功』と言える。


だからこそ、参加者する方々もイチナナで観る我々も、この日は強い音楽好きとしてのモラルを持って当日を迎える必要があると思っている。声が出せないEDMはライブじゃないとの意見はもっともだ。ただ主催者であるクリエイティブマンはそうしたことも分かっていてそれでも開催へ漕ぎ着けたし、出演する海外アーティストも先述の通り、全員3日間の自主隔離を余儀無くされた状態でフェスでパフォーマンスを行う。これについては一度アーティスト側の立場になって考えてみてほしい。大好きな、若しくは初めて行く土地に飛行機で10時間かけて向かっても、日本特有のオタク文化や食べ物にも触れられず外出禁止の3日間。そうしてようやく辿り着いた会場はガラガラ。ライブをしても日本は現状発声禁止なので、声出しOKでキャパ100%の自国との差に思うところは絶対的にあるだろう。ライブの後はそのままどこにも寄らずに飛行機でまた10時間フライトし、帰国する……。本年を言ってしまえば僕が逆の立場なら絶対に嫌だし、「それなら今年は出演キャンセルして来年出るよ」とする方が普通だろう。


ただ、彼らは数々の制限を飲み込んだ上で今回フェスに出演してくれる。これが日本に対しての信頼と言わずして何と言おうか。……だからこそ我々はアーティストたちの思いに賛同する意味でも、しっかりとルールを守らねばならない。限られた中でも楽しまなければならない。そして何より主催者やアーティストに、強い感謝の心を持ち続けなければならないのだ。全ての辛かった出来事が帳消しになる祝祭の時はもうじき。と同時に、この1年半培ってきた自制心を一番発揮する場というのも、もうじき訪れるスパソニの2日間だ。

【ライブレポート】浦島坂田船『SUMMER TOUR 2021 ~甘い∞(はち)密のような♡(恋)をしない?キミの放課後はボクのモノ♡無限大の♡(LOVE)STARTぉ☆~』@島根県民会館大ホール

こんばんは、キタガワです。

 

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開演前、ライブ会場周辺はおよそ田舎と呼ばれる島根県には似合わない派手な光景に思わず目を奪われた。セーラー服を着た女子。何本ものペンライトを持った女子。髪の毛を綺麗に結わえた女子。中には推しの缶バッジをカバンに大量に着けている女子も一定数いて、思わずすれ違った地元民が振り返るほど。それも無理はない。島根県は高齢化率が35%……つまりは単純に100人のうち35人は高齢者である計算なのだから。ちなみに今回のライブについては大多数が県外から訪れたファンであることが後の挙手制によって明らかとなったが、ここまでの女子率というのは後にも先にも、今回のライブが最後なのではないか。


フォロワー数43万人、公開したMVは軒並み100万再生突破と破竹の勢いで音楽シーンを駆け抜ける浦島坂田船にとっては初の島根公演となったこの日はカオスティックなタイトルを見ても分かる通り、今回はオリコンウィークリーチャート初登場1位の快挙を達成したニューアルバム『L∞VE』を携えたツアーとなる。接触アプリ『COCOA』と提示と身分証明書の確認、消毒、検温、スマホのチケットもぎりを行うと、行き交うガールズをすり抜けて場内へと意を決して突入する。


会場はキャパ100、完全座席指定のスタンディング形式で展開されていたが、おそらく誰もが驚いたのは独自性の高いそのステージだろう。ステージは大きく上部と下部に分かれており、その道程を階段が繋げている。上部の背後には全3面の大型モニターが完備され、その周囲には各自のカラーを模したアイテムが掲げられており下部には向かって左手側にドラム、ベース、ギター。右手側にはキーボード、ギターが鎮座。この時点で今回のライブが名バンドを率いて行われ、また何かしらの映像を基本的に投影しながら進むものであると何とはなしに理解する。これまでも地元民としてここ島根県民会館には何度か訪れてはいるがここまで大掛かりなセットは初めてで、否が応にも期待が高まる感覚に陥る。

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流れるポップソングのインストverのBGMを聴きながらしばらく待っていると、開演5分前には各々用意したペンライトを起動させて『推し』の色に変化させたり、ひとりの観客によるパン、パン、パパパンのリズムでの手拍子が会場中に鳴り響いたりと、少しずつ会場内のボルテージは上昇。皆マスクで表情こそ見えないけれど、その下は間違いなく「もうすぐ始まる」との笑顔に満ち溢れているはず。勝手ながら筆者としてはこの時点でライブの大成功と、更には集まった観客たちによる浦島坂田船への信頼度の高さをはっきりと感じることが出来た次第だ。


遂に迎えた開演時間17時ジャストに会場がゆっくりと暗転すると、それまで真っ暗だったモニター上にキーボードで打ったような音と共に一文字ずつ描かれ、やがて「放課後の甘いひととき、私は誰を選べばいいの……?」との一文が映し出される。瞬間画面は遷移し、恋愛シミュレーションRPGのオープニングを彷彿とさせる甘酸っぱい展開でうらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラら4人のイケメンが女子(に扮したカメラ)に対して壁ドンや蕩ける囁きなどを敢行する映像が投影されると、ライブロゴの出現の後再び暗転。当然次はメンバーがステージ上部の袖から登場するのだろうと思い上部をじっと見ていたが実際はハズレ。何とステージ上段と下段を繋いでいた階段が中心からパカッと開き、4人のメンバーが現れるという域な開幕である。

 

世界で一番好きな名前/浦島坂田船 - YouTube


1曲目に披露されたのはアルバム同様“世界で一番好きな名前”から。ポップテイストを全面に押し出したMV映像とサポートメンバーであるたいちょう(Gt)、Sum(Gt)、YSK(Ba)、noza(Key)、横山惠士(Dr)らのサウンドをバックに、メンバーはステージを右へ左へと練り歩きながら注がれる視線に満面の笑顔で答えていく。その主たる武器である歌声についても志麻のクールな低音、となりの坂田。のふくよかな空気を含んだハスキー声、センラのとてつもなくフィットする歌声、うらたぬきのキュートな高音としっかり4人それぞれが『味』を出していることはもちろん、その全てが楽器隊の激しい音の中を突き抜けるように響いていてやはりシンガー(歌い手)として脚光を浴びた彼らだからこそ出来る、地力の成せる技なのだと文字通り実感する。観客についても声が出せない代わりに全力でペンラを振って答え、メンバーもそれを見て手を振ったり、笑顔でcrew(浦島坂田船ファンの俗称)の方向を指し示したりと双方向な関係性が光っていて、思わず初見ながらも心を揺さぶられてしまう魅力に溢れていた。


今回のライブがニューアルバム『L∞VE』のリリースツアーであることは先述の通り。しかしながら全25曲、時間にして2時間45分という様々なアーティストのライブ全体として見てもかなりのロングセットとなったこの日のセトリは、確かに『L∞VE』を軸に据えてはいたものの処女作『CRUISE TICKET』を含めた全てのアルバムから選曲される現時点でのベスト的な代物で、楽曲によっては4名のダンサーも加わるという最終的には浦島坂田船4名、ダンサー4名、楽器隊5名=合計13名での大規模なパフォーマンスとなった。ちなみに背後のモニターにはYouTubeにMVが投下されているものはMVを、MV制作自体がされていない楽曲については基本的にメンバーを撮影するリアルタイムの映像(おそらく1回席後方のPA卓に何台もカメラが設置されている)が歌詞を投影した形で流れるエンタメ性抜群の工夫が施されていたのも特筆しておきたいところ。

 

最強Drive!!/浦島坂田船 - YouTube


全編通して凄まじい一体感を記録した今回のライブ。取り分け前半部に大きな盛り上がりを記録したのはアッパーな鼓舞的ナンバー“最強Drive!!”で、楽曲がスタートした瞬間から袖よりR1kuto、kazuma、Ryohey、KO-TAら4名のダンサーが集結。浦島坂田船のメンバーも含めて8人が乱れ踊るダンスフロアと化した。歌われる内容は端的に言い表すならば、ポジティブに振り切った応援である。ただそれは明日やろうは馬鹿野郎的な考えや「死ぬほど努力した人間だけが成功する」といった努力主義の部分ではない。彼らがこの楽曲で示すのは《いつかはきっと叶うよ何か1コくらい/もしかして 0.1コでも褒めてやりたくなるんだ》《地球は回るから チカラを抜いちゃって明日頑張ろう!》とのある種「生きていれば絶対に何とかなる」ネバーギブアップ精神なのだから。彼らは今回のライブで「また絶対に会おうな」という言葉を何度も発していたし、更にはメンバーを茶化すことはあれ、誰かを傷付ける可能性が少しでもある言葉については一言も言わなかったのが個人的には印象に残っているのだけれど、“最強Drive!”はまさしくそうした浦島坂田船の本質的部分を体現していたようにも思うのだ。日々をどう過ごし、どう未来について考えを巡らせることに関して敢えて明言を避け、ひたすら「あなたはあなたのままでいい」と肯定するかのように笑顔を振り撒き続けるメンバーの姿はとても格好良く、また力強いメッセージを訴えかけるようでもあり、感動的だ。


これまでに紡がれてきた前向きな流れを汲む“Dreamer”が鮮やかに鳴らされると、その後は『L∞VE』におけるメンバーそれぞれのソロ曲を披露するファン垂涎の時間の到来だ。先陣を切ったのは志麻で、彼らしいハードロックなテイストで“Tokyo Deadman's Wonderland”を。続くとなりの坂田。はシャウトとがなり声多めのCD以上にパンクな勢いで“荒波”を。対してセンラは打ち込みを多用したダンスポップソング“Sugary”をエロティックに歌唱し、ラストを飾ったうらたぬきはnozaのピアノ演奏を主体としたバラード“Colors”で聴く者の心にグッと迫っていく。これまでの楽曲でも4人が代わる代わるスイッチする形でボーカル面が構築されていたが、やはりこうしてひとりひとりの歌声に集中しているとそれぞれの声に異なる個性があり、なおかつキャラクター性や歌い方も楽曲ごとに使い分けるボーカル然とした力量があることを再認識する。観客もペンラの色を変え、フロア一面にメンバーカラーを敷き詰めた色が広がっていくのも、一体感抜群である。


間髪入れずに美しい青空のVJが投影される中で志麻&センラによる鉄板ロックソング“青空ピカソ”と、うらたぬき&となりの坂田。が某ゲーム会社のパーティーゲームをモチーフとした“生涯ライバル”でファンをゲーム感覚で楽しませ、ここからは中盤戦。中でも“SWEET TASTE PRESENT”はその軽やかなパフォーマンスでもって早くも興奮のハイライトに位置していて、メンバー同士が密着し合って仲の良さを存分に見せ付けていくが、時に手の平が脇腹に当たり思わず笑ってしまったことで歌詞の一部が歌えなくなる一幕も生ライブならでは。中盤では《いつも頑張って「誰かのため」 優しい心で「みんなのため」》といった歌詞の数々を「島根のため」に変化させて集まった地元民の琴線に触れる場面もあり、思わずペンラを握る手にも力が入る。

 

SWEET TASTE PRESENT/浦島坂田船 - YouTube


“明日へのBye Bye”が終われば、ここからは少しばかりのブレークタイムとして観客全員を着席させてのバラエティー的な事前VTR……その名も『ハンサム対決』が大型モニターに映し出された。企画内容はクラスの教室でロシア人の彼女が作ってくれた料理を4人のメンバーがひとりずつ食べて誰が一番イケメンだったかを選ぶ、というものなのだが、気になる料理は唐辛子が2本突き出た真っ赤な激辛ラーメン。彼女と出会った当初こそ「料理作ってくれたん?めっちゃ嬉しい!」と喜んだり、椅子で格好良く足を組んだりと余裕モードだったが、料理が出てきた瞬間誰もが苦笑い。最初に挑戦したセンラの時点でかなりのカオスっぷりだったが、以降のメンバーは皆「スープも飲んで」「麺も食べてほしい」との彼女の矢継ぎ早な要望に加え、口直しをとお茶を要求しても何故かセンブリ茶(とても苦いで有名なお茶)が出てきたりと大苦戦。最後に挑戦したうらたぬきに至っては元々辛いものが苦手な体質であることもあり、最終的には早く食べるよう要求する彼女と絶対に食べたくないうらたぬきが激突し、お互いの関係性が悪くなって帰還するというよもやの展開に、会場は爆笑の渦に包まれた。


衣装チェンジの後は『L∞VE』収録曲を立て続けに披露しチャイムの音が響くと、浦島坂田船のロングホームルーム、もといMCタイムへ。ここでは長尺のMCが展開され、まずはこの日が浦島坂田船にとって初の島根公演であることに触れると、ひとりがクオリティーがやたらと高い『鷹の爪団』の吉田くんのモノマネを披露すると「島根で有名な食べ物って何?」と聞けば出雲そばのトークを繰り広げ、何故か『塩こん部長』のCMのモノマネに遷移し、更には恋愛成就の神様がいるとされる出雲大社の話など話がどんどん脱線していく様は面白く、4人のフレンドリーな関係性を改めて感じられる幸せな空間だ。なおセンラのみ学生時代に島根県出身の知り合いがいたらしく、その際に『ばんじまして』という言葉を知ったということから話に熱が入るもののその意味についてはど忘れしてしまったらしく、全員から「覚えてないんかい!」とズッコケられる流れもご愛嬌である(後のMCで「こんばんは」であることがようやく述べられた)。そして集まった観客の男女比を挙手制で把握する一幕では圧倒的に女子率が高いことが証明された他、島根ならでは(?)の要素として親子連れで訪れた人も一定数存在し、続く「初めて浦島坂田船観たって人ー!」と呼び掛けられた結果初参加はかなり少なく、全体として2~3回目となる観客が最も多くなっていたことも相まって、改めて浦島坂田船が幅広い世代に支持されていることを理解する。

 

ワナビークインビー/浦島坂田船 - YouTube


ここからはクライマックスへ突き進まんとばかりに、新旧合わせたアッパーナンバーの連続だ。まずは淫靡な雰囲気を携えた“Boohoo”で観客の鼓膜を緩やかに蹂躙すると、哲学者や聖人、物理学者の名前を用いつつ無変化な世界での日常を叫ぶ“Shoutër”、ラップ主体で航海の旅路を描いた“PIRATES A GO GO”など曲調の異なる千変万化の魅力を伝えた彼ら。そのどれもが人それぞれ好みの楽曲はあったろうし、突出して「この1曲だけがとても良かった!」と言うものではなく全曲が素晴らしかったが、彼らの魅力の新機軸を打ち出した1曲として考えるならば、個人的には“ワナビークインビー”を選出したい。『ワナビークインビー(I wanna be queen bee)』は直訳すると「女王蜂になりたい」……。つまりは一見すると、憧れの女性にアプローチをかけたいと願う男の欲望のようにも思える。しかしながらその実、歌詞にも目を向ければいわゆる草食男子的な考えとは程遠く、女王を徹底的に調教して自分のモノにしたいというサディスティックな心情を露にした楽曲であることが分かる。メンバーは先程まで見せていた格好良さと可愛さがほぼ半々で形成された雰囲気とは打って変わって歌声も仕草も『イケナイ男』ぶりを加速させており、具体的には甘い吐息をマイクに伝えたり、うらたぬきが原曲では存在しなかった高笑いを見せたりと非常にエロティック。今回は発声制限のため声は出せない状態ではあったが、十中八九こうした状況下でなければ黄色い声が多数飛んでいたことだろう。


気付けばライブは残り僅かで、“ARK”が鳴り終わると直ぐ様「最高でしたねー!……次最後っす」とうらたぬきによる情緒不安定なラストソング宣言が。ただうらたぬきは「それでも2時間ぐらいやってるよね?次は47都道府県でライブやろうか。ツーデイズずつ」と無謀な発言に出るほど前傾姿勢であり、それを聞いた志麻は「1年かかるやん!」と突っ込むもその表情は笑顔であり、それこそ今回島根県という全国的には田舎と呼ばれる地域までわざわざ来県してくれて結果ソールドアウトとなったことも考えればあながち夢物語ではないかもしれない。そして集まった観客たちも一様に拍手で答えているあたり、もしも47都道府県ツアーが決定した暁には各会場、満員御礼となることは確実だろうと思えた。


ラストソングは『L∞VE』から“シンデレラステップ”。前面からフロアをぐんぐん照らす照明効果と背後のモニター横の随所に取り入れられたメンバーカラーも合わさってこの日一番鮮やかなステージングで、観客もリズムに合わせてペンラを上下に振る振る。メンバーはダンサーと共に所狭しと動き回り、時に階段に腰掛けたりステージ上部に移動したりと自由奔放で、時折親指と人差し指を交差させた『キュン』ポーズを見せたりとサービス精神も旺盛である。ラストに相応しい盛り上がりを見せた最後は開幕と同様に階段が左右に開き、頻りに手を振りながら中に入る形で退場したメンバーに多くの拍手が鳴らされた。


おそらく誰しもが再びメンバーが登場することを熟知しているのだろう、ライブイベントには珍しく手拍子がほとんど起こらない稀有なアンコールで呼び込まれたメンバーたち。その姿は今回のライブツアーのオフィシャルグッズであるセーラー服Tシャツ(胸元には各メンバーのカラー入り)に身を包んでおり、グンと『格好良い』から『可愛い』寄りに変化した印象だ。アンコールで披露された楽曲は“Carry Forward”と“恋色花火”の2曲。特に“Carry Forward”部分についてはツアー全通のファンのツイートを見るに会場ごとに若干の楽曲変化があるようで、それこそ翌日の鳥取公演ではまた違った楽曲が披露されたそうだが、ここ島根で披露されたのが浦島坂田船のアルバムとしてはほぼ最古の『Four the C』からの楽曲だったことには、そのレア度に嬉しくなってしまった次第だ。


その後は島根らしく『鷹の爪』の爪ポーズで写真撮影が行われるととなりの坂田。が「最高の思い出にしようぜ!」と叫んだのを契機とし、正真正銘のラストソング“恋色花火”が鮮やかに打ち上げられた。最終曲であるため観客が一体感のある盛り上がりを見せていたことは言うまでもないのだけれど、メンバーもラストらしく肩肘張らないパフォーマンスに終始。傍らの学習椅子にひとりが座ってもうひとりが膝に座る場面然り、笑ってしまったことで歌詞を飛ばしてしまうよもやのミス然り、トラブルも含めて心から楽しい時間だ。『うら』たぬき、『志麻』、となりの『坂田』。、『セン』ラ……。浦島坂田船が彼らの名前を取って名付けられていることは周知の事実だが、本当にこの4人でなければ有り得ない、またこの4人でなければここまで心震わせることはなかったと断言出来るほど、総じて素晴らしいライブだった。

 

【オリジナル楽曲】恋色花火【浦島坂田船】 - YouTube


……「浦島坂田船は何故支持されているのか」。この疑問を、僕は歌い手や男性アイドルを聴かない身としてかねてより抱き続けてきた。言葉を選ばずに言えばの話だが、例えば男性が女性アイドルのCDを購入したり可愛いVTuberにスパチャを落としたりするのと同じ……それこそ『浦島坂田船に心酔する=異性からすれば理解不能な行動の女性版』であると思ってはいた時期も正直あったのだが「支持されていることにも間違いなく意味があるはず」という思いも最近感じるようになり、今回地元に来てくれることもあってひとりで参加を決めた。


そして今回結論から書くと、僕は浦島坂田船のファンになった。それどころかここ数年で観た様々なロックライブを合わせて考えてもトップクラスの満足度だったことには、自分でも驚いてはいるところだ。その理由を考えたとき第一に思ったことがあるとすれば、それはズバリ『浦島坂田船の姿勢』にある。その彼らの姿勢について重要な出来事が起こったのはアンコール後のことで、というのも今回のライブは暗転してから明かりが点るまでジャスト2時間45分のかなり長尺のライブだったが後半の15分間は全てファンサービスに当てられていた。具体的にはメンバーがまずステージ右側、次に左側、最後に中央とそれぞれ巡り、観客と文字通り対話をしていたのである。しかも今回は声が出せないので、当然観客は「自分を見つけてもらいたい!」と、手を振る以外にも様々なアクションを試みる。投げキッスをしてみたり、腕を大きく何度も広げてみたり、推しのペンライトをブンブン振ったりと様々だったが、そうした行動について4人のメンバーは一切見逃さず、観客の目を見て同じ行動をすることで『対話』をしていた。まるで「来てくれてありがとう」と感謝の気持ちを述べるように。それを本当に誇張ではなく、2階席もステージ後方も合わせて全員に対して行っていて、結果それがプラス15分の時間になったのだが、僕はこの光景を観て思わず泣きそうになってしまったし、浦島坂田船が愛され続ける理由を強く感じることが出来たのだ。


今回のライブ全体を考えても同様に、彼らの楽曲は常にポジティブな精神を放ち続けていてMCについても一言も他人を蔑むような言葉を発することはなく、突発的な「ありがとう」の言葉に関しては何度聴いたか分からないほど。これまで何百ものライブに参加して『アーティストは愛されてナンボ』の世界であることは重々理解していたつもりだが、アーティスト側が全身全霊の愛でファンを包み込む図式は恥ずかしながら初めてだった。……愛し愛される最高の関係性でもって、誰しもの心を掌握した浦島坂田船。今回島根に訪れてくれたことに心からの感謝を伝えると共に、今後の活動を応援することでもって所謂『沼』に嵌まりたいと強く思った、個人的にも本当に運命的な一夜であった。僭越ながら、ここで誓おう。次のツアーは必ず彼らの顔が直接見える前方で鑑賞することを。


【浦島坂田船@島根県民会館 セットリスト】
世界で一番好きな名前
Save Me
最強Drive!!
SHOW MUST GO ON!!
Dreamer
Tokyo Deadman's Wonderland(志麻ソロ)
荒波(となりの坂田。ソロ)
Sugary(センラソロ)
Colors(うらたぬきソロ)
青空ピカソ(志麻&センラ)
生涯ライバル(うらたぬき&となりの坂田。)
SWEET TASTE PRESENT
明日へのBye Bye
年に一夜の恋模様
シザーナイフ
フランマ
月夜
Boohoo
Shoutër
PIRATES A GO GO
ワナビークインビー
ARK
シンデレラステップ

[アンコール]
Carry Forward
恋空花火

 

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【後編】予想外、どんでん返し……。衝撃的な結末を迎えるアーティストのMV10選

こんばんは、キタガワです。


ドラマ然り映画然り、シナリオありきの作品にとって永遠の課題とも言える『どんでん返し』問題。どう助走をつけてクライマックスへと突き進むのか、計算し尽くされた脚本家の考えがラストに弾ける様は痛快極まりない反面、誰もが見たことのないオチというのは有名作品が粗方やり尽くしてもいて、難しい状況にもある。


今回は前回記した記事の後編……『衝撃的な結末を迎えるアーティストのMV』の後半5つの作品を列挙し、その作品群の魅力に迫っていくが、思わず「そう来たか!」と唸る代物の他、全く意味の分からないもの、はたまたアーティスト側の精神状態が色濃く反映されたミステリーMVまで幅広く記述しているため、もし気になった作品が見付かった暁には是非ともそのアーティストの他の楽曲にも目を向けてもらいたいと強く願っている。今記事がめくるめく音楽の世界へ突入する契機となれば嬉しい限りだ。

 

 

It's Not Living(If It's Not With You)/The 1975

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イギリスはマンチェスター出身のThe 1975(読み・ザ ナインティーンセブンティーファイブ)は、かねてよりバンドの首謀者であるマシュー・ヒーリー(Vo.Gt)の言動が幾度も取り沙汰されてきたことでも有名なロックバンドだ。彼の生活については重度のヘロイン中毒とアルコール依存に苦しめられていたことは彼本人が包み隠さず語っているし、ライブについても同性愛禁止法が成立しているドバイで男性にキスをして逮捕されかける事態に発展したり「今後はアーティストの男女比が平等のフェスにしか出演しない」と宣言したり、記憶に新しい2019年の来日公演では日本酒を1時間のライブ中曲がひとつ終わるごとにラッパ飲みし続け、最後はステージに倒れ込んだこともあるほど。


故にThe 1975はマシューの精神状態に大きく左右されるバンドであるとも言えるわけだが、以下『It's Not Living(If It's Not With You)』はそんな彼の当時の精神状態を如実に表した楽曲と称して然るべき代物。先に結論から述べてしまうとMVのラストは所謂『夢オチ』で終わる。ただそこに至るまでの幻覚めいた事象の数々や、自分が自分でなくなるような感覚は実際に彼が実生活で経験した精神障害の暗喩であって、あながちフィクションでもないという点においてこのMVは異質。加えてマシューという人物を深く知るためにも、ほぼほぼマストな作品となっているのである。……なお新型コロナの蔓延の影響で、早い段階から2021年内のライブ活動の全停止を発表したThe 1975。さぞ精神的に悪化した暮らしをしていると思いきや、ボーカルのマシューは自然豊かな環境でとても健全な生活を送っているそうなので、現在危ない状況には全くない、というのは最後に付け加えておきたい。

 

The 1975 - It's Not Living (If It's Not With You) - YouTube

 

 

ピント/スネオヘアー

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某アニメ作品の登場人物の髪型とは似ても似つかないヘアスタイルのロックマエストロ・スネオヘアー。彼の絶頂期とも呼ばれる年にリリースされたアップテンポナンバーこそ、その衝撃的な展開で公開直後に多くの話題をさらった“ピント”だ。舞台となるのはほぼお客さんが来ないコンビニエンスストアで、全くやる気のないスネオヘアーが淡々とレジ業務を行う様が描かれる。が、ワンオペ状態の時に限ってお客さんが多数来店する事態に次第にイライラがつのったスネオヘアーは、買い物カゴから食べ物を食べまくる暴挙に出て、以降はスネオヘアーが飯を食べるのをただただ客が眺めるだけというカオス空間に。


この時点でもおよそMVとしてはあり得ないレベルのトンデモ展開だが、大波乱はまだ先。誰もが予想し得ないラストは一見の価値ありである。おそらくは日本のアーティスト全体で考えてもスネオヘアーは悪い言い方をすればとてつもなく売れる気配が漂っていたにも関わらず、爆発的なブレークを果たすこともなく徐々にフェードアウトしていったアーティストとして知られることも多い。ただ現在の彼が平々凡々の立ち位置にいるかと言えば決してそうではなく、実質的な独立状態でも精力的に楽曲制作を行っていて、彼自自身が望んで得た未来こそが今なのだ。故に“ピント”はそうした彼の若かりし頃の衝動と自由奔放ぶりを体現した楽曲であるとも称することも出来る。

 

Pinto - YouTube

 

 

 

フルドライブ/KANA-BOON

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邦ロックシーンの言わずと知れた四つ打ち番長・KANA-BOON。おそらくは彼らの楽曲で最も認知されていて、なおかつライブのセットリストもほぼ皆勤のキラーチューンが“フルドライブ”であることには、ファンの人々からも異論はないはずだ。MVは愛する女性を追い求める容姿の整った男2人がパルクールを続けながら距離を詰めていくシナリオとなっていて、その疾走感溢れるサウンドをバックに、画面を見詰めるこちらも思わず前傾姿勢で見入ってしまう没入度の高さを誇っている。


なお今作がこうした作風となったことには彼らが当時メジャーデビュー決定……つまりは更なる一歩を踏み出そうと決意した時期であることも強く影響していて、かねてよりのKANA-BOONのイメージをそのまま体現しつつ「大衆にアピールするのであればこれまで以上の盛り上がりを」と望む彼らの挑戦的な姿勢が表れたもの。ただあらゆるアピールを含みつつもラストはしっかりと初期のKANA-BOONのMVに散見された『笑えるオチ』に繋げていくあたりは、彼ららしいなあとも思ってしまう。昨今のKANA-BOONはメンバーの脱退や谷口鮪(Vo.Gt)の精神的不安定によるライブ活動休止など、長くバンドを続けてきた彼らとしては最もナイーブな時期に突入してはしまったが、現在は感知。秋からは全国ライブツアーの開催も決定している。その際は“フルドライブ”も間違いなく披露されるけれど、是非ともこのMVの若かりし頃の姿と現在の脂の乗ったライブの姿とを対比して浸ることをおすすめしたいところ。

 

KANA-BOON 『フルドライブ』Music Video - YouTube

 

 

SHINKAICHI/Panorama Panama Town

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神戸大学発、衝動的なロックを掻き鳴らす4人組、Panorama Panama Town。そんな彼らの初の全国流通盤こそデビューミニアルバム『SHINKAICHI』。そしてそのリード曲として収録されているのが“SHINKAICHI”だ。パノパナのMVはどれも独自性が強い作風のものが多くなっていて、特に初期作はその内容も展開も予測不能なものが大半を占めているが、“SHINKAICHI”にしても同様に、大量の札束を抱えた岩渕想太(Vo.Gt)が謎の組織に追われ続ける荒唐無稽な流れの果て、ラストは岩渕がよもやの末路を辿るというある意味では映画サークルの自主制作作品の様相をも呈している。


なおそうした中にもラストにしっかりと意味を告げているのも彼ららしく、今作が『SHINKAICHI(新開地)』と名付けられていることの意味を強く感じさせる代物でもある。現在でも『SHINKAICHI』収録曲はライブのセットリストの軸として組まれており、楽曲の“SHINKAICHI”もそのひとつとして前半部分にボルテージを上げる起爆剤として鳴らされることが多いけれども、年齢を重ねてすっかり新開地に達した彼らだからこそ数年前とは一味違う魅力をもって響き渡る“SHINKAICHI”は何度でも経験したい、ライブのハイライトを担っていることだろう。

 

パノラマパナマタウン / SHINKAICHI(MV) - YouTube

 

 

助演男優賞/Creepy Nuts

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ロックフェスへの出演のみならず、昨今はバラエティー番組にも引っ張りだこのヒップホップユニット・Creepy 。ある意味ではヒップホップらしからぬ姿勢で話題を獲得してきた彼らの痛快な反抗歌……。それこそが以下の“助演男優賞”である。この楽曲で歌われるのは「俺らはアンダーグラウンドな存在なのだ」と自己否定するものでは決してない。主戦場とは異なる土壌であっても、必ず結果を出してやるという強い意思。だからこそ主演ではなく“助演男優賞”、だからこその自虐的フロウなのだ。


MVは前編で記したキュウソネコカミの“ビビった”同様、華のないアーティスト生命をレーベルが何とか好転させようともがく様が描かれているが“ビビった”と大きく異なる点として、それらがレーベルの利益を目的としての売り出し方であるということ。MVにも歌声やサウンドは本物に任せる反面、全く違う人物をCreepy Nutsにも仕立て上げるまさしく助演男優ぶりが表れているが、最後には計画が破綻。そして責任の一端を本人たちが被ることになり解雇される、何とも悲しい幕切れだ。彼らのこうした“助演男優賞”的な精神は現在でも不変で、特に今年に入ってからはDJ松永が東京オリンピック閉会式でプレイしたり、R-指定もほぼテレビで観ない日はないほど多くの番組に出演、音楽以外の活動も広く行っているが、それもやりたいことは全部やるし、歌詞で言うところの《時として主役を喰っちまう》との思いから。さあ、今年は遂に紅白歌合戦出場なるか?

 

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 助演男優賞【MV】 - YouTube

 

 

……そのアーティストについて語る場合における『好き』の要素は現在、多様化を極めている。もちろん第一義となるのは当然メロディーや歌声、音楽センスなど音楽的な部分であるべきだとは思う。しかしながら現在はバラエティー番組で見せる雰囲気や動画配信、中には「顔が好みだから好き」という人も少なくなく、現代の音楽シーンは各自が『売り』と見なす事柄をどう把握し、どう認知的な行動に移すかがとても重要になっている。今回紹介した『衝撃的な結末を迎えるアーティストのMV』もそのひとつ。特にYouTube上で公開されるMVにはコメントも残せるので、閲覧者がストーリーを自ら考察→他者に共有出来る点において利便性も抜群という今風な仕様も味方して「おおっ!」と思わせることが出来れば強い。今回読んでくださった方々に関しても同様に、心にグッと刺さる1曲は必ずや存在するはずなので、ストーリー展開ももちろんだが音楽性やアーティストの魅力についても思いを巡らせながら、ゆるりとその雰囲気に浸りながら楽しんでみてはいかがだろう。

『WILD BUNCH FEST 2021』の中止を知って、改めてNAMIMONOGATARIの所業にムカついてきた

こんばんは、キタガワです。

 

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感染対策の在り方がある程度具現化されつつあるのはもちろん、頼みの綱であったワクチン接種も本格化。今年の11月末には希望する全ての年代への接種が2回終了するとの計画で動いており、それこそ11月からはこれまで強い制限が課されていたイベント実施や居酒屋対応、県外移動といった各々の行動も正常化させる試みとのこと。……そんな遅れつつも明らかに状況好転の兆しを見せている渦中において前向きになるならまだしも、まさか夏フェス中止の無情な波が2年続けて襲い来るとは誰も考えていなかったことだろう。


何故今日はこの記事を書こうと思い至ったのか。それはもはや言わずもがな、ワイバンの開催中止の報を見たからである。開催は約1週間後、チケットもソールドアウトとはいかないまでも各日ソールドギリギリまで販売しており、そうでなくともステージの装飾依頼やらフェス限定グッズやら感染対策の道具発注やらは済ませているわけで、間違いなく大規模な赤字は避けられないだろう。しかも今回は出演者を解禁しないまま中止となった前回と比べてタイムテーブルも発表しており、その分我々の喪失感も大きい。「やっぱり今年も駄目だった……」と誰しもが感じているはずだろうが、思い返せばこの気持ちは今年何度目だろうか。


当然、今回のワイバンが中止となった背景にはコロナウイルスの感染急拡大が最も重大な要素として位置していて、それは「開催地の山口県におきまして『感染状況ステージ4』が続き医療提供体制がひっ迫する中、地元行政からの自粛要請もあり、改めて主催者として熟慮しました結果開催を中止する事に致しました」とする主催者側のコメントを見ても明らか。確かにこうした状況下では100%感染しないフェス空間を維持するのは難しいため、特に山口県内の感染拡大防止のみならず県民の安心感の確保といった観点から考えても、この決断はある意味では正解と言って良い。ここまで尽力してくれたプロモーターの方々には心から感謝の気持ちを伝えたい。


ただ、今夏フジロックや RUSH BALLといった明らかに大規模なフェスが何とか開催に漕ぎ着けた一方、今月に入ってからのフェスが軒並み中止・延期を余儀無くされていることに関しては疑問も残る。というのも、各フェスごとにやっている感染防止対策は然程変わらないからだ。収容人数を1日5000人以下に抑えること。アルコール販売を停止すること。ソーシャルディスタンスを守ること。発声を制限すること……。どれもフェスの成功例と政府分科会の提言をしっかり遵守しながら、これまで頑張ってきたのだ。では9月までのフェスと9月に入ってからのフェスから見る『開催は絶対に中止にすべき』という圧倒的な批判が噴出した理由はどこにあるのか。僕はこの理由について十中八九、愛知県のヒップホップフェス『NAMIMONOGATARI 2021』の大炎上が関係していると睨んでいる。


話は少し逸れるが、そもそも大前提として社会はそこに『最悪な何か』が起こった瞬間、完全にイメージは失墜して元には戻らないということを改めて記しておく必要があるだろう。例えば会社の個人情報が流出すればお客さんが激減するのは当たり前だし、シーソーで事故が起これば「あの公園だけは行っちゃダメ!」と保護者間で話題になるし、野々村竜太郎元議員があの動画のイメージになっているのもそうだし、現在電通が悪徳企業としてすっかり有名になってしまったのも、持続化給付金問題で説明責任を果たせなかったことからだ。そうなればまずもって「すみませんでした!」だけでは済まない。何年経ってもネットで調べればすぐ問題は明るみに出るため、たったひとりが起こした出来事は文字通り、生涯足を引っ張る鎖となり続けるのだ。

 


そうしたリアルを踏まえて『NAMIMONOGATARI 2021』だ。これに関しては以前も個人的な思いを記したのでそちらも合わせてご覧頂きたいところだが、端的に説明するとモッシュ・ダイブあり、観客の絶叫あり、ソーシャルディスタンス確保なし、マスク着用なし、通常5000人以内の入場人数は8000人で敢行され、更にはアルコールも普通に提供されていたという明らかに意図的に産み出された6重苦こそが今年の『NAMIMONOGATARI 2021』であり、遂に最悪の事態として今日、参加者14人の陽性が判明。故にコロナ禍から1年半以上、これまでフェスでゼロベースを貫いていたクラスターを産み出したことが明るみに出てしまったのだ。開催地域の市長は「主催者には今日付けで、市民の努力を愚弄する悪質なイベントを開催したことへの遺憾の意と、今後二度と本市の施設であるりんくうビーチを使用させない旨を記した抗議文を送付いたします」との怒髪天を衝くメッセージを述べるに至った。これについては擁護のしようもないし「マジで主催者一発ぶん殴りたい」というのが本音なのだが、とにかく。


しかしながら先述のイメージの話に当て嵌めれば、これほどフェスにとってマイナスな話はない。実際僕自身もエゴサーチを繰り返して様々な意見を読んだが「全部のフェスがダメな訳じゃない」と擁護する声は僅かであり「やっぱりフェスって良くないよね」との意見が大多数を占めていた。中にはそもそもこうした状況で音楽を鳴らすこと自体がナンセンスだという声や、酷いものでは「ライブに参加した奴ら全員隔離してくれ」との強い否定も散見された。いち早くコメントを出した打首獄門同好会の大澤会長(Vo.Gt)は今回のクラスター発生とワイバン中止を受けて以下のように綴っているが、そこには常に感染防止を第一義として考えてきたアーティストサイドだからこその、心からの怒りが滲み出ていることが分かる。そう。これは誇張でも何でもなく、本当に『NAMIMONOGATARI 2021』は、これまで積み上げてきた多くの人の努力を白紙に戻す程の混乱を生じさせてしまったのだ。

 


そこに来て、今回のワイバン中止だ。何かが起これば第一にそいつのクビを切るし、第二に、再び『最悪な何か』が起こる可能性があるイベントが予定されているのであれば中止にするというのが、企業がイメージを壊さないために出来る最善策と言って良い。だからこそワイバンは中止になった。更には同じように、大きな事件がメディアにすっぱ抜かれ有名になってしまったからこそ、おそらくは今年の他のフェス(近々のもので言えばサマソニなど)にもかなりの悪影響が降ってくること必至だ。そしてそれらの元凶は様々なルールを自ら破って強行開催に踏み切った『NAMIMONOGATARI 2021』であることを、音楽を愛する我々はゆめゆめ忘れてはならない。正直僕個人も他者が頑張って企画したことに苦言を呈することはしたくないが、もうこのフェスについては(出演アーティストや案内に従った観客は別として)主催者に言い過ぎるくらいは罵詈雑言を言っても良いと思う。あと主催者はいい加減マジで説明責任果たしてくれ。


加えて、もうひとつ認識を変えていきたいことがひとつある。それはSNSでも日々多くの人が書き込んでいる「こんな時にフェスなんてやるな」との意見についてだ。確かに感染が拡大している今そうした発言は一理あるし、特に遠征をしてまで参加する人については同会場に住む県民以上のモラルの高さが必要になるため危機的な意味でも重大。……ただ、我々が思っている以上にフェスシーンはもう限界なのだ。どうにかして証明さん、PAさん、ステージの建築業者といった関係者の雇用を守らねばならないし、フェスがなくなれば音楽の灯は明らかに小さくなってしまう。今回のワイバンだってそう。出店は当然会場である山口県の飲食店がコロナ禍の赤字を取り戻そうとしていたはずで、参加者が宿泊する旅館も、山口へ向かうために利用する航空業も全部パアだ。例えば『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021』は中止によって経済損失が77億3300万円にのぼることが明らかになったし、香川県の『MONSTER baSH』は50億円以上だそうだが、果たしてワイバンは何十億だろうか。「やめろやめろ」と書き込むのは容易いが、どうかもっと多面的な視点からこの苦境を捉えてほしいと切に願う。


これまでも何度も記してきたようにフェスの中止はこれからもまだまだ増えると予想するし、状況は1年前と比べてもかなり悪い。だとしても我々音楽好きだけはそんな状況だからこそ希望を持ち続けるべきだと思う。皆で大声を出して盛り上がっていたあの幸福たる時間はもはや遥か昔のようだが、それでもだ。絶対に来年こそはあの最高の景色を見るため、これからも音楽関係者を応援し続けていこうではないか。

【ライブレポート】斉藤和義『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 202020 & 55 STONES』@島根県民会館大ホール

こんばんは、キタガワです。

 

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去る9月2日に開催された斉藤和義の松江公演。本来であれば昨年の3月24日に行われる予定で組まれていた『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 202020』島根県民会館公演が新型コロナウイルスの影響により幾度も延期を繰り返し、新たにリリースされたアルバム『55 STONES』も加わり新たに『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 202020 & 55 STONES』とタイトルを変化させ、期間にしておよそ1年半越しのリベンジとなった今回のライブ。それは2枚のアルバムを生身のサウンドで具体化したことは元より、長らく彼の来訪を待ち望み続けていたファンに強く寄り添う感動的な代物だった。


ライブ当日、問診票もしくはスマートフォンによるGoogleアンケートフォームの提示と、検温、各自で行うチケットのモギリを終え会場内へ足を踏み入れる。個人的にはコロナ禍のライブでは初のホール会場であり若干ソワソワした面持ちで扉の先へ進むと、会場内は当然ながら全席指定。政府が求める新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに則り、様々な感染防止措置を講じた上でキャパシティは100%で展開。コロナ禍であることも影響してか空席もあるにはあるけれど、気になる程ではない。ふとステージに目を向けると、そこはお洒落なバー空間。背後にはウイスキーやジン、ウォッカ、リキュールなど様々なアルコールが並べられた棚&バーカウンターの他、ステージ左側にはこの日のライブの出演者と開催地域と開場・開演時間がローマ字で記される海外のライブハウスでありがちな電光掲示板が。ステージ右部には何かをすっぽり覆い隠すように閉められた真っ赤なカーテンが鎮座し、それらを淡い照明が柔らかに照らしている。その妙に心落ち着くステージを見ていると、まるでラブロマンスな洋画のワンシーンにワープしてきたかのようだ(詳しくは以下の公式Instagram参照)。

 

 

しばらくBGMとして流れるゆったりとしたジャズに脳を蕩けさせていると、突如ひとりの観客が手拍子を敢行し、ハッと意識が戻される。その手拍子は示し合わせるでもなく次第にさざ波のように広がっていき、ものの数秒後には会場全体を掌握するまでに巨大化。そうしたみるみるうちに高まり続けるボルテージに対して「待たせたな!」とばかりに暗転すると、ダンサブルなジャズのSEに乗せてサポートメンバーの山口寛雄(Ba)、真壁陽平(Gt)、平里修一(Dr)、松本ジュン(Key)、そして本日の主役こと斉藤が袖から登場。観客はと言えば皆席から立ち上がっての全力の拍手で迎えていて、そこには来たるライブへの興奮はもちろんだが、心からの「来てくれてありがとう!」との強い感謝の気持ちも表れていたように思う。


オープナーは『55 STONES』でも1曲目に冠されていた“BEHIND THE MASK”。真壁のギターがイントロを掻き鳴らし続いて斉藤、以降順々に担当楽器が楽曲に入れ込まれる形で緩やかに楽曲は進行し、斉藤がエフェクターで歪に加工された歌声を響かせる頃には完全に会場はライブモード。誰しもがゆらゆら体を揺らすアットホームな幕開けだ。ホール公演であることもあってか音響的にも激しさはなしで良い意味で聴きやすく、彼らの奏でる音楽に至極マッチしている感覚もあったし、何よりその立ち居振舞いがいつもの斉藤で何故かホッとする安心感である。『BEHIND THE MASK=マスクの後ろ』というタイトルの直訳通り観客誰しものマスクの後ろが笑顔に満ち溢れていたことは、もはや言うまでもないだろう。


今回のライブがタイトル通り、2020年にリリースされた『202020』と今年リリースされた『55 STONES』を主軸としたセットリストとなることは多くの観客が理解していたことだろうと推察するし、実際その通りではあった。ただ結果としては最新作『55 STONES』楽曲に関しては全曲が披露された反面、『202020』楽曲は半分以上がセットリストから外されるという圧倒的に現在地に振り切った形となっていたのも印象深く、そのため実質的には『55 STONES』リリースツアーの様相さえ呈していたのは「新しい曲こそが最も最高」とのスタンスで活動を続けてきた斉藤らしくもあり、同時に完全に全てを自粛期間で完結させた『55 STONES』楽曲がコロナ第5波に突入してしまった今鳴らされることには、強い意義すら感じさせた。


当然我々に取ってみても今の斉藤のモードがどのようなものであるか、という点はファンとして是非とも知りたい部分ではあった。それこそかつて社会への鬱憤を込めた『35 STONES』と東日本大震災と原発事故を受けて制作された『45 STONES』といった自身の怒りをぶちまけたアルバムをリリースし、今回のアルバムタイトルも『55 STONES』……。つまりは斉藤はとてつもなく怒っていて、その矛先がほぼほぼ間違いなく新型コロナウイルスと政府の愚策にあったことからも、今の斉藤の心持ちについては知る必要があると思ったのだ。なのである種肩に力を入れた状態で聴いてはいたのだけれど、“Strange man”後の初のMCでは手をヒラヒラさせながら「ふぃえーい(イエーイ)……」「体を揺らして、何なら乳も揺らしてもらって大丈夫ですし、声は出せないけど乳輪くらいは出しても大丈夫です」と平熱で語るのだから脱力してしまう。やはりどこまで行っても斉藤節は健在だ。 

 

斉藤和義 - いつもの風景 [Music Video] - YouTube


冗談はさておいて、アルバムからの楽曲は続く。人気アニメ『ちびまる子ちゃん』のエンディングテーマとしてお茶の間に広く浸透した“いつもの風景”、日常のあれこれを幸福的に見詰めるポジティブソング“順風”、真壁のスティールギターが哀愁を漂わせた“一緒なふたり”、気まぐれな願望を列挙する斉藤らしいミドルナンバー“I want to be a cat”……。次から次へと披露される『202020』『55 STONES』楽曲群はどれも異なる雰囲気を帯びていて、熱量は僅かも損なわれることはない。特に興奮を一段階上げる起爆剤として位置していたのはそれまで若干薄暗い照明に徹していたステージにパッと光が灯されて鳴らされた“いつもの風景”で、激しいポップロックなサウンドに呼応するように斉藤は楽曲の随所で「イエーイ松江ー!」と絶叫。対する観客も両手を広げて宙に広げるアクションで興奮と感謝を体現していて、いつものように観客から「せっちゃーん(斉藤の愛称)!」の声が飛ぶことさえないまでも、双方向的な関係性を強く感じることが出来た。


“彼女”と“破れた傘にくちづけを”ら既存曲、『55 STONES』からは“Lucky Cat Blues”と“魔法のオルゴール”という更にディープ寄りとも言える構成からは、数分間の換気タイムも兼ねたMCに以降。観客に着席を促す斉藤による「皆さんどうぞ座ってください。あの……ね。やっぱり皆さん座りたい年頃でしょうし……」と気遣いなのかディスなのか分からない発言でまずひと笑い起こすと、今回斉藤以外のメンバーは松江に一足先に前乗りしていたとのことで、サポートメンバーの紹介も交えた松江での活動報告会に。トップバッターを飾ったのはギターの真壁で、彼は前日に島根有数の観光スポットでもある出雲大社に赴いたという。ただ観光名所と言えども平日、しかもコロナ禍であることもあってかほとんど人通りはなかったとし、更には現在は感染防止の観点から本堂も進入禁止であるため、然程感慨深い思いは抱かなかったそうだ。それを聞いた斉藤はしきりに「へえー」と相槌を打ちつつ、最後は2019年に島根で行われた『BONE TO RUN!(ザ・クロマニヨンズ、斉藤和義、SUPER BEAVER、My Hair is Bad)の対バンイベント』前に自身も出雲大社に訪れたことに触れ「全国から神様が集まるわりには小さいよねあれ」としっかりオチを付ける。ただ痛烈だが思わず頷いてしまうのはやはり、我々地元民ならではだし、こうして斉藤が松江に訪れてくれなければなかったことでもある。


続いては「キーボード・マツジュン!」と某アイドルと同じ愛称で紹介された、今ツアーが斉藤和義ライブの初サポートとなる松本。彼は前日に松江歴史館に訪れたそうだがこちらも真壁の出雲大社同様人はほとんどいなかったそうで、直ぐ様斉藤から「今はコロナですからね。まあいつも通りかもしれないけど」とチクリ。なお彼は現在28歳とサポートメンバーの中では最年少、キーボードについても習った訳ではなく長らく独学で身につけてきたものであるとのことで、しかも日本が誇るロックの重鎮・斉藤和義のライブに同行する点から考えても才能溢れるルーキーであることは間違いないけれど、ここでも斉藤から「ね、凄いでしょ。……気に食わないですね」とボソッと語られる弄られっぷりだ。

 

斉藤和義 - 2020 DIARY [Music Video] - YouTube


しこたま笑わせてもらった後は、観客全員着席体制で聴かせるスロウナンバー“木枯らし1号”と“2020 DIARY”をしっとりと。そのうち“2020 DIARY”は今現在我々が置かれている苦境的立場と、更には先述の彼の怒りに満ちた側面を映し出す真実の鏡としてこの日のハイライトのひとつに。楽曲は緊急事態宣言が発令された時分、斉藤がガレージでひとりギターを作っていたという飾らないリアルからスタートする。楽しいギターの音。窓の外には青空。自身の生活圏には変わらない日々が広がっている反面、世の中は異常事態になっている半ばフィクションのような気持ちを彼はミニマルな音で届け、その楽曲の行き先は次第に政治家の言動やコロナ対策、ワイドショー、コロナ対策へと移り変わっていく。個人的には《もしも総理大臣が半沢直樹だったら/一体何倍返しだろう 誰に土下座させるんだろう》との1番のサビで歌われるこのフレーズにこそ、ライブではおちゃらけた雰囲気さえ見せる斉藤の心からの怒りのように思えてならなかったし、そうした感情をそれこそ流行りのアーティストのが行うようなツイッターでの呟きでも長尺のMCでもなく、1曲のメッセージ性で全て完結させる点は斉藤しか出来ないし、だからこそ我々は斉藤に心酔するのだろうな、とも思えた。緩やかにアコースティックギターをストロークする斉藤の姿も次第に険しくなり、1番、2番と続くにつれ歌声は強く、心を震わせるものに変貌。尺としては8分以上と今回のセットリストの中では最も長い楽曲ではあったが、演奏終了後はまるでひとつのドラマを見終わったような充実した読後感さえ抱かせる代物だった。


永遠に続いてほしいとも思ってしまう程のゆったりとした幸福たる時間が過ぎ去ると、その後のライブは山口と平里へのイジりを挟みつつ、クライマックスに突き進まんとばかりにアルバム楽曲でも取り分けロックテイストの強い代物を多く展開。 なお気付けばこれまでいつしか赤いカーテンで覆い隠されていた赤いカーテンは取り外され、まるで海外の街並みの一部分を切り取ったような固定画面がドドンと鎮座し、雰囲気的にも最終局面を感じさせる。まずは着席形態で若干ブレイクダウンした会場を“レインダンスと”シグナル“で軌道修正すると、島根県ならではの『しじみ』をテーマにしたジャムセッションで笑いを誘った”万事休す“、斉藤が放つ発語に合わせて大勢の手の平が上がった“シャーク”、卓越したギターサウンドが鼓膜を震わせた“Room Number 999”と続いていく。日々公式Instagramでも斉藤が自身が作ったベージュ色のギターを含め、今回のライブごとに計8本のギターを使い分けていることが明らかにされていたけれど、こうしたギターを主旋律としたロックサウンドに触れるとやはり斉藤はバラードより打ち込みより、何よりもロックの人間であるということを再確認してしまうのはきっと自分だけではなかったはずだ。

 

斉藤和義 - 虹 [Music Video Short ver.] - YouTube


そんな彼のロックシンガーぶりが最高潮に達した瞬間こそ、斉藤和義ファンにとって大切な楽曲である一方、随分と久方ぶりのセットリスト入りとなった“虹”であったように思う。楽器隊の演奏で明確には聞こえなかったが、斉藤が「次の曲はいつもなら皆で声出して盛り上がる曲なんですけど、こんな状況なので心で歌ってください。きっと届くと思います」というようなことを語っていたように今回披露された“虹”は本来観客とコール&レスポンスを行う部分に関しては今までのように行われることはなかったが、観客は皆心で熱唱し、特にサビ部分では手を全力で動かして興奮を共有、気付けばVJも虹色に変化している。この日唯一のハンドマイク歌唱となった斉藤もステージ前方の白線ギリギリまで近付いての渾身の熱唱を見せ、心から楽しそうだ。制約だらけのコロナ禍でのライブだが、同様にコロナ禍でしか成し得ない空間もあって然るべしである。

 

斉藤和義 - Boy [Music Video] - YouTube


そして斉藤のライブでは100%披露されるかの大名曲“歩いて帰ろう”で心中での熱唱を呼び起こせば、本編最終曲である『55 STONES』リード曲として位置する“Boy”が満を持して鳴らされる。まずもって“Boy”は『202020』『55 STONES』合わせても最もシンプルなロックンロール楽曲であるがそれもそのはず。この楽曲で歌われるのは学生時代のロックの衝動、加えてある程度年齢を重ねてロックンローラーへの夢を諦める瀬戸際で今なおもがき続ける愚直な人間を体現する楽曲であるためだ。「ロックンローラーはロックに出会った瞬間が最高なんだよ。それが今までずっと続いていくだけ」とは去る2019年のライブで共演したザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトの弁だが、毎年コンスタンスに新作をリリースしツアーを回る、というルーティーンワークをもうずっと続けている斉藤自身も、この楽曲で言うところの少年時代の『Boy』のままであることの証明であるに違いない。幾度も「松江ー!」と叫びながら爆音のギターを掻き鳴らし、終盤では歌詞の一部を叫ぶように歌い上げるアグレッシブなステージングで魅了。


斉藤らがステージから去った直後、会場全体が一体化した強めの手拍子に再度呼び込まれた斉藤とバンドメンバーは今回のツアーTシャツに身を包んで登場。あれほど熱いパフォーマンスを届けた後だ、さぞかし完全燃焼の体なのだろうと思いきや、斉藤は「ふぃえーい。松江ー」と至って自然体で、思わず笑いが溢れてしまう。ツアーでの斉藤のアンコールと言えば、本編のセットリストはほぼ毎会場変わらないのに対し何曲かはその会場ならではの全曲がされることでも知られているが、アンコールの1曲目として選ばれたのは10月1日公開のアニメ映画『リクはよわくない』の主題歌である“朝焼け”をフルサイズで演奏。現状音源自体が公開されていない新曲であるため詳しいことは書かずにおくが、ある意味では斉藤楽曲ではあまり使われない言葉も用いられた楽曲になっていて、きっと映画を観た人ならば意味が分かること請け合いの斉藤流ポップソング。一足先に作品に触れた斉藤はネタバレを回避しつつ『リクはよわくない』の総括として「犬のいい話」であると語っていたが、“朝焼け”がここまで素晴らしい楽曲であると知ってしまえば「映画館に行かざるを得ないな……」と思ってしまうほどの良曲だった。

 

斉藤和義 – 月光 [Music Video Short.] - YouTube


ライブはハーモニカを携えた斉藤による大熱唱が轟く“月光”の果て、最新アルバム『55 STONES』のラストに冠されていた“ぐるぐる”でもって大団円へ向かう。斉藤はアコースティックギターを軽やかにストロークしながら春夏秋冬の気温的なワンシーンや鮭の回遊といったふわりとした描写を歌い、おそらく本来であれば観客と行うはずの《ボクは君を選んだ ワオ!ワオ!わーっ!》との合いの手を声が出せない代わりに腕の動きのみで表現するサビへ突入、以降同サビを繰り返すという『らしい』展開でクライマックスへと続く。けれども楽曲が終わってもまだメンバーは帰らず、メンバーはひとり、またひとりと担当楽器を置きマイクを持ってステージ中央へと移動。ここからは何とCD音源には収録されていなかった完全オリジナル。よもやのアカペラバージョンでの“ぐるぐる”のお目見えだ。「ボボンッボボンッ」「ドゥルンッドゥルンッ」など個人個人がBeach Boys的なサウンドを口から繰り出す中、斉藤だけはサビ部分を朗々と歌い上げるある種のミスマッチぶりが面白いが、当人たちは至って真面目であり、次第に聞き入ってしまう。最後は前述の《ボクは君を選んだ ワオ!ワオ!わーっ!》のアクションが前以上の密度で会場に広がる形で、ライブは明らかな余韻を残す形で締め括られる。なおステージをそそくさと去る斉藤はいつも通り、自分のシャツを下から捲って無表情で乳首を出していた……。


このコロナ禍に憂う1年半近く、アーティストはこれまで以上に強くライブで自身の思いを発信するようになった。「音楽は不要不急じゃない」「絶対に元にも戻るから頑張ろう」「みんな本当に辛いよね」等々。アーティストによっては現政権の在り方にまで言及する者もいて、言うなればコロナ禍がひとつの大きな要素となって個人の心中や思想を可視化させているにも思えてならない。そんな中今回の斉藤のライブはどうだったのかと言えば、ある意味ではどこをどう切ってもいつも通りの彼だった。自分自身これで斉藤のライブを観るのは通算5回目になるが、ライブパフォーマンスも言動も何もかも、それこそ変わったのは我々観客の発声制限と若干の空席くらいで1年半前とほぼ変わっていなかったのだ。加えて、彼は本当にいつも通りに圧倒的な数の全国ツアーを回り、またいつも通りに松江に来てくれた……。まだいろいろと難しいご時世で松江にまた訪れてくれたことには、心から感謝の気持ちを送りたい。


合わせて『202020』『55 STONES』の楽曲も素晴らしかった。打ち込みを大胆に導入してまた次のフェイズに向かった『202020』、未だ収束の見通しの立たないコロナ禍にドロップされた『55 STONES』はそれぞれ楽曲の制作背景も内容も異なるものだったが、それらがCD音源とは絶対的に違うリアリティーでグンと届く様を見ていると、やはり深化を発揮するのはライブなのだなと実感。これからも苦しい時期は続いていくが、斉藤と斉藤が生み出す楽曲が側にあれば何とか生きていけると、そう確信した運命的一夜。それが今回のライブで得ることが出来た、何よりの教訓だった。

 

【斉藤和義@松江 セットリスト】
BEHIND THE MASK
Strange man
いつもの風景
順風
一緒なふたり
I want to be a cat
彼女
破れた傘にくちづけを
Lucky Cat Blues
魔法のオルゴール
木枯らし1号
2020 DIARY
レインダンス
シグナル
万事休す
シャーク
Room Number 999
ずっと好きだった

歩いて帰ろう
Boy

[アンコール]
朝焼け(新曲)
月光
ぐるぐる

千葉市が『SUPERSONIC 2021』開催延期を要望したことについて思うこと

こんばんは、キタガワです。

 

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もうじき暑かった季節も終わり、本格的に秋の気候に突入しようとしているが、思えば音楽ファンにとって今年の夏は昨年の同時期以上に絶望の夏として位置していた。実際に少しずつライブシーンは有観客での公演にシフトしつつはあるものの、やはり直前に国内の感染状況が悪化したり、若しくは出演者が感染・ないしは濃厚接触者に当たったことで開催が急遽取り止めとなった事態もかなりの数あったし、直接的なもの以外にも「ライブ行くの止めたら?」と家族に言われて参戦を見送ったり、キャパ減少でそもそものチケット倍率が高くなり入手出来なかったという人も存在するはずだ。


そんな中所謂『夏フェス』と呼ばれるライブシーンに目を向けてみるとそこには目を疑うような壊滅的状況があり、ROCK IN JAPAN FESTIVALも、RISING SUNも、SWEET LOVE SHOWERも……。国内の様々なフェスはRUSH BALLやフジロックを例外として、ほとんど全てが延期・中止を余儀無くされた。正直既存のウイルスより感染率が高いデルタ株がここまで蔓延してしまえばフェス開催は困難の極みで、「こんな状況だから仕方ないよ」と言ってしまえばそれまでだが、彼らだって生活がある。主催者は万全の体制でお客様を迎えるし、出演者は呼ばれれば喜んで演奏する。何故ならそれが仕事だからだ。ただ世論もメディアも一様に中止方向に傾いたことで、今やフェスへの風向きは昨年よりも遥かに悪くなっている。


そして個人的に気になっている点のひとつが、開催地域・或いは県の医師会から直接的に『NO』を突き付けられる場面が増えてきたこと。言うまでもなく世論より何より、そうした地域的な部分からの発言は主催者側にとってはほぼレッドカードに近いものがあり、当然のように警告を受けたフェスは全てが延期・中止の措置をやむ無く講じているのが実情。まるで音楽フェスだけが晒し首にされるような地獄の状態は、我々が思っている以上に深刻化しつつある。

 

www.sponichi.co.jp


翻って今回の報道だ。スパソニは昨年秋から1年延期、今年の9月18日~19日の2日間に渡って開催される予定で、もしも開催されればコロナ禍では初。年数にして約2年ぶりのインターナショナルフェス開催となる点においても多くの期待が込められていて、出演も全1ステージ、規模縮小、全アリーナ席、アルコール販売なし、加えて海外からの出演アーティストには全員3日間の自主隔離を課すという徹底的な対策で、ようやく長らく停滞していた洋楽の波が動き出すとされていたが、ここにきて状況は一変してしまった。


これまでもスパソニについては過去記事でも多く記しているため、詳しい情報と持論はそちらを参照して頂きたいところだが、個人的には今年スパソニが開催されるかどうかで、少なくとも海外アーティストから見る日本の立場は大きく損なわれると考えている。というのも既に海外ではフェスやライブはコロナ前と同じ形で開催される環境下になっていて『フェス=やるべき』との考えが大多数であり、実際このあまりに酷い来日規制もマスク着用も発声制限も海外からすると「何で日本はまだこんな対策しか出来ないの?」……強い言葉を使ってしまえば「じゃあもう日本行かないでアジアの国でフェス回った方が良くない?」と呆れ返るレベルだからだ。そう。スパソニは今や単なる洋楽フェスではない。海外プロモーター(アーティスト)から見る日本の在り方を唯一変化させることが出来る、最後の一手なのだ。


今回の主催者であるクリエイティブマンも、そうした事は重々承知だ。だからこそこれまでのサマソニ(スパソニ)で考えれば異常なほど厳格な感染防止対策を徹底して開催に漕ぎ着けようとしているし、それらは全て千葉市にも直接報告している。来場者を2日間で1万人に抑えます。ステージは減らします。飲食は限られたスペースで……等々。つい先日大阪公演中止が公式からアナウンスされたが、収益の大多数が洋楽系統のライブであるクリエイティブマンとしてはこれも断腸の思いだったろう。今やギリギリもギリギリ。けれども洋楽好きのファンのため、洋楽の火を絶やしてはならないという強い思いで、何とかこれだけはと血の滲む努力を重ねてきたのだ。


対して千葉市が懸念している事項は「県内外から訪れること」、この1点に尽きる。確かに言い分は痛いほど理解できるし、特に千葉市で暮らしている人々のことを考えればやむなしな判断だとも思う。ただつい先日同会場では1日で8000人近い観客を動員して野球の試合が行われていた(スパソニは2日で1万人)ことも考えると、音楽フェスのみがロックオンされたことについては疑問しかないし、そうでなくとも千葉市は県内外にアピールする飲食イベントも多数開催している訳で、仮に「スパソニは延期を。県内外から人が来ることが原因です」とすればこれまでの試みとの整合性が取れないというか、やはりどうしても「じゃあ野球はいいの?」「他のイベントならいいの?」となってしまうのは必然だ。


しかしながら、ここまで来てしまったら十中八九スパソニは開催を断念せざるを得ない。2度に渡っての延期は実質不可能なので、すっぱり中止にして来年のサマソニに切り替える可能性が濃厚だろう。ただ既に海外アーティストのビザも飛行機予約も取っているはずで、会場の転換で流す映像、物販、装飾機材も発注済みのはずなのでその損害は計り知れない。最悪の場合、来年以降のクリエイティブマン主催のフェス開催さえ危ういのではないかと、考えたくはないがそう考えてしまう自分がいる。現状クリエイティブマン側は開催の意向を示しているとのことだが、そこには「もう本当に中止にしたらいろいろと終わってしまう」との絶望の思いも大きいのだろうと推察してしまう。


今回の記事を読んでくださっている方々に強く伝えたいのは、それぞれの立場からの多面的な視点理解だ。SNSが発達した現在、マイナス面はプラス面を凌駕する加速度で飛び回っている。今回トレンドに上がったのが『SUPERSONIC』との正式名称ではなく『スーパーソニック』という主催者側がこれまでほぼほぼ使ってこなかったカタカナ表記だったのも、TLに流れたのが主催者側からのアナウンスではなくニュースサイトのまとめ記事だったのもそう。確かに現在フェスを開催することに否定意見はあって然るべしだが、どうか批判される側の意見についても目を向けてみてほしいと強く願っている。多数派が少数派を捩じ伏せるのではなく、多数派は少数派の意見を少しでも汲み取るべきだ。そして音楽を愛する我々だけは、おそらく近日中にクリエイティブマンが下すであろう判断を、様々な思いも含めて飲み込む必要がある。……今日からは「どうか温情的な判断が下されますように」と願い続ける日々が続きそうだ。

【ライブレポート】ツユ『貴方を不幸に誘いますね』@Zepp Tokyo

こんばんは、キタガワです。

 

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去る8月29日に行われた『貴方を不幸に誘いますね』オンライン配信。この配信ライブは、オンライン配信日から数えて約1か月前の7月30日に行われた『貴方を不幸に誘いますね』Zepp Tokyo公演の模様を編集を施して記録したもので、ツユ公式ツイッターにて「この試みは今回が最初で最後かも知れません」と綴られていたことからも分かる通り、これまでMVが軒並み爆発的な閲覧数を記録している反面、ライブ映像についてはほぼ公開してこなかったツユにとっては初の配信となる。故に今回の配信ライブはファンがこれまで膨らませていた「ツユのライブはどのようなものなのだろう」との想像を具現化させる、一大イベントとして位置していた。


ライブの本編が流れたのは、公開開始から数十分が経過した頃。それまで流されていたのは、ツユの発起人であり大半の作詞作曲を務めるぷす(Gt)と、“やっぱり雨は降るんだね”や“あの世行きのバスに乗ってさらば。”といったツユのMVイラストの大半を担当しているおむたつのラジオ形式でのトークだった。各々のツイキャスで個人の配信としての経験はあれど、こうして1対1のトークが公開されるのは初。ここでは主にぷすとおむたつの出会いと関係性について時折脱線しつつ肩肘張らない内容で展開された。


ふたりの出会いはおむたつがファンアートとして自身のツイッターアカウントで投下した初音ミク10周年のイラスト動画。偶然目にしたぷす(当時はじっぷす名義でボカロPとして活動)がその中に自身が作詞作曲した“アサガオの散る頃に”が取り入れられていたことと、動画の完成度の高さに心奪われ相互フォロー。その後は大きな合流もないまま時は流れ、2019年にぷすはツユを結成。“やっぱり雨は降るんだね”の楽曲の世界観に合致するMVを制作することが出来るイラストレーターを探していたところ、かの動画を制作していたおむたつに思い当たり、直接的なコンタクトをしたという。おむたつ側もよもやの交渉に驚きつつ、試しに考え得る最高額(おむたつ曰く約10万円)を提示したところぷすがよもやの了承。その本気度の高さを感じ取ったおむたつが快諾する形で、ツユの代表作“やっぱり雨は降るんだね”MV制作に至ったとの裏話が明かされた。


その後もぷすがMVにおいてイメージカラーを重要視する話や納期の話、メンバー各自の役割分担の話など続いていくが、中でも印象的だったのはぷすのあまりにストイックなその制作姿勢だった。おむたつの提出されたイラストに対して「眉毛の位置を2度変えてほしい」など1ミリ2ミリ単位、場合によっては1ピクセル単位でリテイクの指示が来ることもザラにあったそうで、それだけに留まらずSNSの運用の仕方といった、自分自身をより強く目立たせるための活動についても様々なアドバイスをくれたという。おむたつ本人も当初は一切の妥協を許さないぷすについて一種のやりづらさも感じていたそうだが、ぷすのアドバイスを反映させた結果多くのポジティブな事象が頻発するようになり、今となっては信頼と尊敬に繋がっていると嬉しそうに語っていた。今回のトークではおむたつとぷすのみだったけれどこの短時間のおむたつとの会話だけで、おそらく同じくツユのクリエイターであるAzyuN、メインボーカルを務める礼衣(Vo)、そして今回のライブのサポートメンバーである中村圭(Ba)、樋口幸佑(Dr)、あすきー(manipulator)他様々な関係者にとってみてもぷすは同様に強い向上心を持った人物として位置していることは、はっきりと知ることが出来た。


一連のトークの後には画面が遷移し、“やっぱり雨が降るんだね”の緩やかなオフボーカルバージョンに雨音が溶ける会場BGMをバックに開演を待つZepp Tokyoに。BGMが鳴り終わると暗転し、真っ暗な会場の向かって左側に位置するmiroにひとつピンスポが落とされる。開幕はニューアルバム“貴方を不幸に誘いますね”の1曲目に位置していたインスト楽曲“強欲”で、今楽曲の作曲も務めたmiroはまるでミュージカルでの絶望的シーンで流れるような物悲しさを覚えるピアノ演奏でもって、緩やかに会場を暖めていく。

 

ツユ - デモーニッシュ MV - YouTube


となれば次曲は当然あの楽曲だろうという大方の予想通り、miroのピアノがぷつりと途切れた隙間を縫って《ちょうだいな ちょうだいな》との不穏な礼衣の歌声が響き、爆音が鼓膜を支配する。実質的なオープナーとして鳴らされたのは『貴方を不幸に誘いますね』2曲目に冠されているリード曲“デモーニッシュ”だ。ステージよりも一段上部で歌声を響かせる礼衣の姿にまず驚いたのだけれど、それもそのはず。よく見るとステージは三段のピラミッド状で形成されており、少し分かりにくい表現で申し訳ないが一番下の段の左に樋口、右に中村。そこから一段上に上がって左にmiro、右におむたつ。そしてピラミッドの頂点部分に礼衣。我々からは視認不可能なステージバックにあすきー。楽器隊の背後にはLEDパネルがこれでもかと敷き詰められ、礼衣のみ背後と前面にLEDパネルがセッティングと、その形態は今までに観たどのアーティストよりも特殊で、心底驚く幕開けだ。


“デモーニッシュ”はニューアルバムのタイトルにもある《貴方を不幸に誘いますね》との歌詞からも分かる通り、多くの裏切りを経験したとある人物が悪魔と契約し、自身を貶めた人間に復讐を果たすストーリー。開幕としてはあまりにダークな楽曲ではあるものの、思えば鬱屈としたテーマを痛快なギターロックに落とし込むことこそがツユの真骨頂だ。メンバーの姿はその色とりどりのMVにより姿が半強制的に隠されている礼衣のみならず、楽器隊全員に黒い証明が当てられている関係上シルエットしか分からないし、上手から吹き出すスモークも作用してミステリアスな雰囲気が会場を多い尽くしている(以下の公式ツイッター動画参照)。もはや言うまでもないが、集まった観客も一様にサイリウムを掲げたり体を揺らしたりと楽しそう。「一体ツユはどんなライブをするんだろう……」とワクワクしながら会場に集まった観客たちにとって、これほど嬉しい開幕はないだろう。

 


今回のライブはタイトルにもあるように、自身2枚目となるフルアルバム『貴方を不幸に誘いますね』収録曲を全曲披露することに加え、記念すべきデビューアルバムにしてツユの名刺代わりとも言えるファースト『やっぱり雨は降るんだね』から人気曲も数曲ドロップした、アンコール含め全22曲の大盤振る舞いのセットリストで展開。加えて、全曲でステージの各所にセッティングされたLEDパネル、及び紗幕スクリーンにMVが制作されている楽曲はMVを投影する形を取っており、MVと共に認知度を広げるていったツユらしい試みで視覚的にも楽しい印象を与えていたことについても特筆しておきたい。


ライブはその後しばらくは『貴方を不幸に誘いますね』収録曲を順に披露。人当たりの良い少女がふいに訪れる過去という名の闇に呑まれてしまう“過去に囚われている”、辛い労働を強いられる日々に死んだ心で挑む“奴隷じゃないなら何ですか?”、存在価値を自問自答し続ける“ルーザーガール”……。その全てに痛烈なメッセージが込められているのみならず、その性急さも相まって興奮は一瞬たりとも途切れることはない。アーティストのリリースライブはともすれば既存曲は盛り上がる反面、新曲は少しばかりテンションが落ちてしまう場面というのもある程度は仕方のないことだが、この日は大半の楽曲がライブ初披露となるにも関わらず何年もの間定番曲として位置しているような素晴らしい盛り上がりで、皆思い思いに楽しんでいることが画面越しにも伝わる、素敵なシーンが続いていく。

 

ツユ - 太陽になれるかな MV - YouTube


『やっぱり雨は降るんだね』からの楽曲も負けてはいない。開幕から7曲目の手順で満を持して投下されたのは背景をほとんど黒く塗り潰された“太陽になれるかな”で、それまで背景を青や黄色といった寒色系、暖色系を主としていたMVにまた違う雰囲気が差し込まれる。ツユの歌詞はある意味では抽象的であり、これまで披露されてきた楽曲で例えるならば“過去に囚われている”では絶望の闇が襲い来る場面が描かれてはいるもののその実、闇の正体について言及はされていないし、《あのね わたし ルーザーガール》と劣等さを俯瞰した口火を切る“ルーザーガール”も、何がきっかけで自身を卑下するのかも不明瞭だ。無論そうした表現に徹する理由については、楽曲を聴いたひとりひとりが独自の解釈で補完してほしいというぷすの思いに他ならないが、そんな中“太陽になれるかな”は題材が間違いなく恋愛模様であること、またネガティブな自分を指して『太陽=前向きな人間』になりたいという切望が描かれている。時折マイクを意図的に震わせることでまるで今にも泣きそうな主人公の思いを体現するように歌声を震わせ、MVに命をも宿す役割を担う礼衣には心底圧倒された次第だ。


その後は『貴方を不幸に誘いますね』楽曲はもちろん“梅雨明けの”、“ナツノカゼ御来光”、“アサガオの散る頃に”といったかつてぷすがボカロP・じっぷすとして作詞作曲した楽曲も展開し、前半部よりバリエーションに富んだラインナップで進行。唯一完全なるノンフィクションをテーマにした意欲作“忠犬ハチ”の終了で感動的な拍手が包み込むと、この日何度目かのmiroによるピアノのインタールードが鳴り響く。ステージを覆い隠す紗幕がゆっくりと降りる中、そのピアノはどこか聞き覚えのあるメロディーを奏でており、その瞬間思わずハッとする。……あれは、そう。“あの世行きのバスに乗ってさらば。”のサビ部分だ。

 

ツユ - あの世行きのバスに乗ってさらば。 MV - YouTube


ツユの数ある楽曲の中でも極めてハイスピードな“あの世行きのバスに乗ってさらば。”で描かれているのは、端的に言えば少女の自殺願望である。ただ一言に自殺と言っても、思い悩んだ末に行うようなものではおそらくなく、言うなれば淡々とした自己消滅願望の意味合いが強い。そしてそれはある一定の心的弱者にも深くリンクするものでもあって、別段死にたいほどに辛い出来事があったわけではないけれども日々希死念慮、もしくは消滅願望にも似たやるせなさを抱いてしまう人間は少なからずいて、“あの世行きのバスに乗ってさらば。”の主人公はそうした人間の代弁としての役割も果たしているように思うのだ。事実MVでは死の恐怖を微塵も感じさせず、満面の笑顔で終点たる『あの世』を目指してバスに乗り込もうとする様が描写されていて、その少女にしても計画的にというよりはかねてよりのふいに偶然肥大化した時、偶然『あの世行きのバス』が運行していただけのような気もするほど穏やかだ。そうした高い難易度とストーリー性を孕んだこの楽曲を、礼衣は息継ぎもそこそこに言葉を捲し立て、MVの少女……もとい精神的弱者のある種急いた感情をぷすが速弾きで体現。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、ピアノというバラバラの要素のピースがカチリと嵌まる展開の連続に、思わず飛び上がりそうになる興奮が体を支配しているのが分かる。


この場に集まった大半がツユと出合った契機となったであろう運命の一曲たる“くらべられっ子”、涙が枯れるほど思い悩んでしまう少女に焦点を当てた“ナミカレ”、圧倒的な情報量で聴く者の耳を蹂躙した“泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて”と続けば、いつしかライブはクライマックスに。本編の締め括りとして選ばれたのは『貴方を不幸に誘いますね』最終曲として位置しながらも、発売直前までタイトルが唯一明かされていなかったシークレットナンバー“終点の先が在るとするならば。”である。

 

終点の先が在るとするならば。 - YouTube


“終点の先が在るとするならば。”は先述の“あの世行きのバスに乗ってさらば。”でバスに乗り込んだ少女が天国に逝った後、その自身の行動の是非について思案する内容となっている。そして結論、少女は緩やかな自殺と称すべき『あの世行きのバス』に乗車したことを天国で、心から後悔している。何故なら《後悔をしているから 早まったあの私みたいに 貴方にはなってほしくなくて》とのラストの一文からも汲み取れるように、辛い人生をドロップアウトしようと考えた少女が辿り着いた終点の先である天国は、自分ひとりしかいない空間でただ時を過ごすだけの虚無だったからだ。もちろんこの楽曲で綴られるのは想像し得る限り最悪のバッドエンドであって、救いはない。そしてそれは今回のライブのタイトルであり、セットリストの大半を担っていたアルバム『貴方を不幸に誘いますね』の物語の悲しき帰結さえ意味する。自ら悪魔と契約し不幸に陥れる“デモーニッシュ”に始まり、自身が死ぬことで他者と、更には自分自身をも不幸に叩き落とす“終点の先が在るとするならば。”……。あまりに計算し尽くされた、強いメッセージ性も込められた本編であったと言えよう。


暗転後、自然発生的に巻き起こったアンコール。「ありがとう」の一言さえないミステリアスな雰囲気を保ちつつ、1曲目はツユの記念すべきファーストソング“やっぱり雨は降るんだね”をドロップ。青を貴重としたカラー。梅雨を意識したイラスト。日常的な憂鬱を対外的に吐き出す姿勢……。この日の楽曲とMVが一体となった“やっぱり雨は降るんだね”で描かれたのは、現在までのツユのイメージそのものでもあった。未だ紗幕はかけられておりMVがそっくりそのまま投影されているのはこれまで通りだが、ラスサビの始まりと共に紗幕が取り外されたことでこの日初めてツユの全体像が明らかとなったのも驚きのひとつで、実際に会場に足を運んだ人ならばこれまで薄ぼんやりとしか見えていなかったメンバーのその服のデザイン、表情まで見ることが出来たに違いない。

 

ツユ - やっぱり雨は降るんだね MV - YouTube


“やっぱり雨は降るんだね”が終わると、開口一番「どうも、ツユでーす!」と元気に言葉を発したのはツユの首謀者・ぷすだ。彼はその後、お馴染みのマシンガントークで約15分間に渡って自身の思いについて語ってくれた。それはこの場で全て文字化出来ないことを心底もどかしく思うほどに、ぷすという人間の生き様、姿勢を強く感じさせるものだった。


ぷすは元々10年以上前にボカロPとして活動。その後歌い手として転向し、現在はそれらの活動の活動を全て引退した上でツユを結成している……というのは、彼の名前を調べればまず出てくるプロフィールだ。しかしながら我々から見れば順風満帆にも見えるこれらの音楽活動についてぷすはこのMCで「ふわっとした感じ」「迷走してた」と回顧しており、本当はボカロPでも歌い手でもない、生身のグループの作曲者として陽の目を浴びたいという気持ちが長らくあったという。転機となったのは2019年。ヨルシカのn-bunaによる“ただ君に晴れ”やみきとPの“ロキ”、ずっと真夜中でいいのに。で作曲を務めたぬゆりの“秒針を噛む”など、流行歌を制作したボカロPが多く存在した結果ボカロPがまた注目され始めたのもこのときだった。「今だったらもう1回チャンスがあるかもしれない」「もう1回音楽で勝負したい」と考えたぷすは、それまでの歌い手やボカロPとしての活動を突如引退、ツユ結成を決意し、メンバー集めに奔走することとなった、というのが一連の流れとしてあったそうだ。

 

 

そうして持ちうる10年間の力を全て注ぎ込んだツユのファーストソング“やっぱり雨は降るんだね”。当然背水の陣の思いもあり自身はあったものの、そのうち半分程度は「“やぱ雨”が駄目だったらどうしよう」との不安も占めていたという。そんな折、ツユ結成日である2019年6月12日に動画がYouTubeにアップされると、ぷすに思わぬ人物からDMが届く。それはぷすが多大な影響を受けつつも、かつて才能の差に絶望したこともあると語る現在ヨルシカのメインコンポーザーを務めるn-bunaで、「お前はインターネットのそこらで燻ってる人間じゃない」と激励されたという感動的なストーリーを、時折声を震わせながら語ってくれた。彼がMCの締め括りとして高らかに宣言したのは「これからもツユは最高の曲を作って、盛り上げて行きます!」との決意で、その声には様々な経験を積んでZepp Tokyoに立っている自負と、今後も遮二無二に奔走するとの思いが強く宿っていた。

 

ツユ - ロックな君とはお別れだ MV - YouTube


そして「凄い思い入れのある曲なんで、聴いてください」と語って雪崩れ込んだ正真正銘のラストナンバーは“ロックな君とはお別れだ”。《いつだって其処に憧れて/でも芯が折れていたから/全部 中途半端になって》や《いつだってダサい姿晒して/ロックじゃないね ロックに生きたいね》というフレーズから、個人的には楽曲を聴いた時点で悩める少女が観測するストレートなパンクロックのイメージを抱いていたが、ぷすの強い人生回顧のMCを聴けば、この楽曲で歌われている内容はかつてのぷす自身についてではないかとまた違った深意さえ感じられ感動的に映った。なお最後の曲ということもあり、メンバーも皆良い意味で力の抜けたパフォーマンスに終始していて、紗幕が廃されたことで観客との双方向的な関係性もよく見え、とても楽しそうだ。終盤ではヒラヒラと服をはためかせながら前のめりな歌唱を繰り広げる礼衣が《君が居たから僕は此処に立っている》と他方向への感謝を放ち、ライブは終了。ひとりずつステージの袖にはけ、最後までステージに残っていたぷすが最後に「必ずもっとデカいことやります!」と叫び、約2時間のライブは幕を降ろした。


ツユ初の試みとなった今回の配信ライブ。それはツユ全体の結束力を見せ付けるのみならず、ツユは何故結成2年という短い期間で無所属ながらも絶大な人気を獲得しているのか、その根元的な理由も強く感じさせる代物であった。


……本来アーティストというのはリリーススパンや動員減少に伴い、グラフ的にはグネグネと歪に曲がったものになるのは必然。しかしながら彼らは活動してから現在に至るまでその勢いは加速の一途を辿っており、逆にツユにそうした『下火になる瞬間』が一切なかったことについては、少なからず疑問があったのも事実。翻って、ツユのブレークはファン誰しもに刺さる楽曲を制作するのはもちろん「売れるためにはどうすれば良いのか」という市場予測、また「やるからには文字通り死ぬ気でやらなければ」との仕事人ぶりを徹底してきた結果成し得たものであると痛感した。そこには最後のMCでも語られていたように、多くの挫折を経験してきたぷすなりの貪欲な思いが関係していることはもはや言うまでもないし、誇張ではなく本当に命をかけて活動しているが故なのだろう。留まることを知らない快進撃が続く、命を燃やしながらロックを鳴らす新世代ユニット・ツユ。彼らが音楽シーンの終点に辿り着くのは、そう遠くない未来かもしれない。


【ツユ@Zepp Tokyo セットリスト】
強欲
デモーニッシュ
過去に囚われている
奴隷じゃないなら何ですか?
ルーザーガール
雨を浴びる
太陽になれるかな
テリトリーバトル
かくれんぼっち
梅雨明けの(じっぷすセルフカバー)
風薫る空の下
ナツノカゼ御来光(じっぷすセルフカバー)
アサガオの散る頃に(じっぷすセルフカバー)
秋雨前線
忠犬ハチ
あの世行きのバスに乗ってさらば。
くらべられっ子
ナミカレ
泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて
終点の先が在るとするならば。

[アンコール]
やっぱり雨は降るんだね
ロックな君とはお別れだ