キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

【前編】予想外、どんでん返し……。衝撃的な結末を迎えるアーティストのMV10選

こんばんは、キタガワです。


予期せぬ展開。それはアニメ然りドラマ然り、多くの映像作品で誰もが期待するクライマックスのひとつである。お気に入りのキャラの死。味方が敵に寝返るシーン。世界を救うために行った行動が実は世界を滅ぼすトリガーだった、等々。作品の一部分がメディアに取り上げられたことを契機として急速にバズる現代の風潮を考えれば、作品内に是非いくつかは含めたい要素として、近年制作者側からのストーリー注文も多くあるとか何とか。……そしてそうした奇想天外な展開が映像作品全般に見られるということは当然、アーティストのMVに取り入れられる例も同じく大いにある。そこで今回は前半部分の流れからクライマックスへ向けて急激に内容が変化するMV……総じて『衝撃的な結末を迎えるアーティストのMV10選』と題し、前後編5作品ずつに分けて紹介。ショートムービーとしても完成度の高い作品群に、是非とも心奪われてみてはいかがだろう。

 

 

粘着系男子の15年ネチネチ/家の裏でマンボウが死んでるP

f:id:psychedelicrock0825:20210827031031j:plain

ボカロ界屈指の文学プロデューサー・タカハシヨウが作詞作曲及び小説執筆を務め、タカハシの実姉である竜宮ツカサがイラスト全般を担当するユニット、家の裏でマンボウが死んでるP。彼らはそのあまりに印象的な活動名と同様に、楽曲に関しても極めてストーリー要素を高めたものが多く制作されている。その中でも彼らの代表作にして、衝撃的なストーリーで話題をさらった楽曲こそ、以下の“粘着系男子の15年ネチネチ”だ。この楽曲では《君の愛を綴ったポエムを送り続けて15年》と幾度も繰り返されるサビのフレーズからも分かるように、穿った恋愛感情を抱くストーカー気質とおぼしき男が、ただひたすら女性にポエムを綴る内容となっておりその行動はメロが進むごとにエスカレート。2000文字を超える数のポエムを執筆、女性を様々な造語で例えてもなお書きたいことが止まらない愛を見せ、遂には彼の意に反し、ポエム集の出版が決定する程の社会現象となる。


しかしながら肝心の相手の返事は未だ来ず、それでも男は書き続け、交通事故で記憶が無くなり相手の名前すら分からなくなりながら15年、その時遂に記憶が戻り、男は予想だにしなかった真実に直面することとなる。男が知った衝撃の内容については是非ネタバレなしでその耳と目で確認して欲しいが、きっと貴方が真実に迫ったとき、きっとこの楽曲はまた違った側面でもって印象深いものとなることだろう。記憶を消してもう一度出会いたい名曲である。

 

粘着系男子の15年ネチネチ / 家の裏でマンボウが死んでるP (Turn on subtitles, lyrics in other languages are displayed) - YouTube

 

 

マニフェスト/RADWIMPS

f:id:psychedelicrock0825:20210416221853j:plain

《僕が総理大臣になったら》……。人間誰しもが思考した経験のある職業的たらればの中でも、特に多くの人々が一度は考える、総理大臣になった際の政策夢想。RADWIMPSの“マニフェスト”はその名の通り政策に焦点を当てた作りとなっているが、そこは流石恋愛マエストロ・RADWIMPS。《君の誕生日を祝日にしよう》、《君を創ったパパとママに 国民栄誉賞を贈ろう》など時折甘酸っぱい描写も挟みつつ、投票の必要性やラストで《僕は総理大臣じゃないけど》と自虐的に凡人さを紡ぐなどしっかり聴く者をハッとさせるフレーズを織り込む手法は、やはりどこを切ってもRADWIMPSである。


表題のどんでん返しに当たる一幕はMVのみに取り入れられたラストシーンで、粗方自身のマニフェストを訴え続けた野田洋次郎(Vo.Gt)が予想外の結末を迎えるというもの。こちらも是非自身の目で確認して欲しいところだが、心の中では正しいと思っていた理想とそれに共感する人々がいる外では、明らかな敵対意識を持つ者も存在する……つまりは絶対統制など不可能であるという国の在り方さえ考えてしまう作りには脱帽だ。なおこの“マニフェスト”はアルバムにも収録されていない、かなりのマイナーナンバーとしても知られ、ライブでもほぼ演奏されることはない、未だセットリスト入りを待ち望むファンも多い隠れた名曲としても知られる。

 

RADWIMPS - マニフェスト [Official Music Video] - YouTube

 

 

ChaNge the WoRLd/MiChi

f:id:psychedelicrock0825:20210827031356j:plain

突如ポップシーンに出現した謎のシンガー・MiChiの名を広く知らしめた楽曲であり、結果としてブレイクから僅か4年後にひっそりと音楽活動の展開を緩め、現在ではアートやデザインの活動の傍らゆるりと英語圏での音楽活動を行う彼女にとって、未だ根強い人気を誇る楽曲が“ChaNge the WoRLd”。なお初期作では楽曲の多くがタイトル及び歌詞の一部のみ大文字になっていて、それらは意図的なものとされているが、その真偽の程は不明である。


“ChaNge the WoRLd”は帰国子女であるMiChiの堪能な英語の発音をフィーチャーしつつ、極めてポジティブなメッセージを日本語詞と交錯させながら放つアッパーナンバー。MVもその雰囲気に合わせて全体的にカラフルな形で制作されているが、驚きのポイントはこちらもMVのラストに到来。クライマックスでペンキが内包された水風船を壁に投げつけ、自分自身もペンキまみれになりながら自由にアクションを起こす映像の果て、彼女の投げたペンキボールはいつしかとある『モノ』を映し出す。この瞬間ひたすらポジティブに降り切り、世界を変えようと歌う“ChaNge the WoRLd”が何に対して歌われているのか、漠然と理解することが出来るはず。……前述の通りMiChiは所属事務所の強い営業戦略と、関係各所へのアプローチにより一気にシーンの中心に躍り出るも、本人の以降により緩やかに下降線を辿っていった、ある意味では難しい立場に置かれたアーティストであると称することも出来る。ただ“ChaNge the WoRLd”がドラマ主題歌として爆発的人気を誇り、ひとりのアーティストが当時がむしゃらに活動していたことは紛れもない事実で、いつかまた日本のポップシーンに帰還して欲しいとこのMVを観るたびに思ってしまうのだ。

 

MiChi 『ChaNge the WoRLd』 - YouTube

 

 

大脱走/KEYTALK

f:id:psychedelicrock0825:20210827031614j:plain

先日発売されたニューアルバム『ACTION!』のリード曲であるロックナンバー“大脱走”。このMVではメンバー4人が刑事、犯人、出前役(?)になりきるドラマ仕立てで進行する、楽曲の性急な展開に合わせた疾走感溢れる代物。“大脱走”とのタイトルに偽りなしで、MVは取調室から必死に逃走を図る小野武正(Gt)を寺中友将(Vo.Gt)と首藤義勝(Vo.Ba)の刑事役の2人が確保に奔走。ただドラムの八木優樹(Dr)に関しては差し入れで出前を差し入れるのみで、中盤ではメタルギアソリッドのジョニーよろしく服を盗まれるという、弄られキャラとして確立した八木の役回りに合っているのも面白い。


以降はドタバタ劇と形容するに相応しい怒濤の展開が続き、一瞬たりとも飽きさせないストーリーが展開されるが、やはり気になるのは武正が果たして逃亡成功なるかという一点に尽きる。ただその点についてもよもやのオチもちゃんと考えられていて、僅か2分少々のショートストーリーとしても非常に完成度の高い作品に仕上げている。余談だが“大脱走”が収録されたニューアルバム『ACTION!』はメンバー全員が30代になり、新境地を様々模索した今だからこそ、初期のような楽曲のテイストに回帰することをコンセプトに制作に着手。今作“大脱走”も過去作を彷彿とさせるサウンドの雰囲気も多く、今後ライブで化けそうな予感。「昔の方が好きだった」とは長く活動しているアーティストに決まって放たれる言葉の代表例だが、そこから更なる高みを目指すKEYTALKの歩みは“大脱走で爆走しまくる武正同様、とても軽やか。今秋からのツアーにも期待大である。

 

KEYTALK - 「大脱走」 MUSIC VIDEO - YouTube

 

 

ビビった/キュウソネコカミ

f:id:psychedelicrock0825:20210827031630j:plain

キュウソネコカミ史上ライブでは必ず披露されるアンセムであり、彼らにとっても重要な局面を示唆した運命的な楽曲“ビビった”は、そのMVのラストに待ち受けるネクストステージ宣言でもって、多くのファンを驚かせるに至った。その宣言とはつまりメジャー進出で、かつて“ウィーワーインディーズバンド!!”とする楽曲をリリースしたことからも『キュウソネコカミ=インディーズ』とのイメージがどことなく存在し、更にはメジャー行きが決定したとしてどこの所属になるのかなど、想像のつかないものでもあった。


MVはメジャーレーベル上層部の運営方針にイエスマンとして答えるキュウソメンバーが描かれていて、ヴィジュアル系、ラップ系、ストリートと若干地味な印象すら抱かせる彼らを何とか売れさせようと、あの手この手でプロデュース。歌詞についてもキワキワを攻めていて、《メジャーに行って1、2年で消えるバンド多過ぎクソワロタ》や《俺らが作った音楽を売って売れなくなったらはい終了!!》などメジャーの過酷さを痛烈なディスでかまし、まさしく窮鼠猫を噛むような前進を目論んでいる、力強い楽曲と言えよう。そうして迎えたラストの展開は、反芻される《ビビった》のフレーズの果てにとあるメジャーレーベル名を映し出す。このMVがどこで撮影されているのか、何故意味深な“ビビった”というタイトルが付けられているのか、その全てが明らかになるのも間違いなくこの時。

 

キュウソネコカミ - ビビった MUSIC VIDEO - YouTube

 

……さて、攻めに攻め切った怒濤の前編は以上で終了である。後編では誰もが知る四つ打ちロックバンドの他、ヘッドライナー必至の海外ポップロック最有力候補、総再生数1000万回超えのキラーチューンなど先の読めない計5曲を紹介。後編でも思わず巻き戻して最初から見てしまう魅力を携えたカオスの渦に、存分に翻弄されてもらいたい。