キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

島根県出身バンド・DNA GAINZの新曲“Sound Check Baby”の魅力について

日々音楽を聴く音楽愛好家にとって、今の時代は最高な環境と言っていい。その最たる理由はサブスクの検索力にあり、巷で流行中の音楽のみならず、リスナーの居住地やジャンル嗜好も調べて絞り込んでくれるので、未発見のアーティストを多数知ることが出来るからだ。そしてそんなフッと流れてきた音楽に心を掴まれる経験というのも同様にあって、そこから生まれる出会いは何より深く、アーティストを愛する契機ともなり得る。

 

https://dnagainz.wixsite.com/band

現在躍進中のバンド、DNA GAINZ(ディーエヌエー・ゲインズ)は活動歴約1年、ライブシーンを中心に活動の場を広げる4人組オルタナティブロックバンドだ。先述の通り結成の舞台となったのは島根県の松江市であり、かねてよりAZTiC Canovaや松江B-1といった地域に根ざしたライブハウスで、確かな実績を積んできた。また現在では“ラフラブ”がTSKテレビ番組『かまいたちの掟』のエンディングテーマに抜擢。島根県内外で注目度が高まる中でリリースされた代物が、此度の新曲ということになる。

音源を制作する上で、彼らは『DNAから響く歌の鼓動 体の底から踊り出す』のコンセプトを基盤としている。新曲として投下された“Sound Check Baby”に関しても例に漏れず、ダンスロックのスタイルで進行する痛快な楽曲である中で、唯一無二の個性が爆発したロックンロールであるとも思う。

DNA GAINZ / Sound Check Baby (Official Music Video) - YouTube

大前提として、今楽曲は爆発的なライブアンセムになるように意図的に構成されるものだ。バグかと錯覚するレベルの音割れから始まる開幕から、緩やかに高まっていく助走……。そこから一転して畳み掛けられる《Sound Check 1.2 Hey Baby》のキャッチーすぎるサビまで聴けば、この楽曲のもう戻れない中毒性を感じられるはずだ。世間一般的なロックは「ギターが鳴って4つ打ちで」といったセオリーに則ったイメージのところ、なのだが、DNA GAINZの今曲を聴くと何というか、やはり心を動かすのは楽曲そのものの印象度なのだということを再確認。

またサウンド面もあえて音の粒を綺麗にまとめず、ライブハウスで聴いているようなリアルな音像にしているのも好感が持てる。これについてはCメロで《聞こえないフリをしても 音が襲ってくるライブハウス》と歌われているように、彼らがライブハウスの土壌を愛していることの証左であり、また「俺たちが鳴らしたい音はこれ!」という決意をも感じさせてくれる無骨な格好良さだ。

DNA GAINZ / ラフラブ (Official MUSIC Video)"TSK「かまいたちの掟」"ED曲 - YouTube

次にフロントマン・ながたなをや(Vo.G)が綴る歌詞について。ちなみに彼の歌詞的試みは最新曲のみならず、DNA GAINZの楽曲全体にも散りばめられている。例えばパワープッシュ中の“ラフラブ”は《ラブラブじゃない ラフラブ》との一節。これはハッピーな雰囲気の『LOVE LOVE』をあえて『LOUGH LOVE(歪んだ愛)』とすることによって表裏一体の恋愛感情を指し示す役割を果たしていて、おそらくながた自身が世の中を俯瞰して見ながらも、何かしらの希望を見付けようとする思考の持ち主なのだろうと推察する。

翻って、“Sound Check Baby”である。彼らが『踊らせる音楽』を第一義としているのは間違いないとして、歌詞の端々にハッとさせられるフレーズも盛り込まれているのも魅力のひとつ。今曲で言うところの《親が心配してる ちゃんと見せなきゃ オレの生きてきた生きていきたい未来》には、バンドマンという過酷な人生を選んだ葛藤を。対して《壊れた楽器が横たわる声しか出ない》には死ぬまで音楽を鳴らし続ける決意も垣間見え、結果的に“Sound Check Baby”はメッセージソングとしての側面も宿した楽曲になっているのだ。メッセージ性とサウンドの魅力、このふたつの言わば折衷案を取ったような魅力が光る。

筆者も暮らす島根県松江市には、今では全国規模で活動を続ける著名なバンドがいくつか存在する。島根の大学で結成されたOfficial髭男dism、ボーカルが松江農林高校出身のSaucy Dogなどがその代表格だが、個人的にはどこにも染まらず、初期衝動溢れる楽曲を生み出すDNA GAINZにはこれまでにないような、ロックの未来を引っ掻き回す大いなる可能性を感じているところだ。

今記事でも記したように、彼らには様々な魅力が秘められている。一度聴いたら虜になるメロ。ながたが本気で思っているからこそ伝わる思い。……それらは文字通りDNAを受け継ぐように伝播し、今後も我々の耳に受け継がれていく。そしてやはり、真髄を体験する場はライブハウス。今後は“Sound Check Baby”をセットリストの中心に組み込んでの熱いライブが行われること必至なので、是非とも予習しつつ、彼らの主戦場に足を運んでみてほしい。