キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】THE STARBEMS『Destroyer Canova』@松江Canova

こんばんは、キタガワです。

「中学生のときにヒダカさんのバンドと出会って、人生が変わった」。「ビークルのライブが人生で初めてのライブ体験でした」……。この日出演したジャパニーズモンタナ、WARACONAら地元バンドは、MC時にそう我々に語ってくれた。2010年に解散し、今なお再結成が待ち望まれるレジェンド的覆面バンド・BEAT CRUSADERS。彼らの存在は遠く離れたここ島根でも多大な影響を与え、メロコアパンクの火を灯すに至っている。

そんなバンドの絶対的フロントマンとして位置していたのが日高央(ヒダカトオル。Vo.G)で、彼は解散後に全く新しいバンドを結成。名前はTHE STARBEMSと名付けられ、マイナーコードと絶叫で一気に畳み掛けるラウドロックになって帰還。更には最新シングル“Destroyer”のリリースを終えた脂の乗り切ったタイミングでもって、この日スターベムズは島根に戻ってきてくれたのである。

聞けば母方の実家は松江市、父方の実家は邑南市と、島根とは切っても切れない関係性であるという日高。言わば彼にとって凱旋ライブの体を成した今回の公演は、地元の若手バンドを多数招く形で行われた。彼は2010年のインタビューで「僕らをきっかけに別のバンドや音楽に行っちゃいますよ、っていうのはむしろ大歓迎」と語っていたのが個人的に印象に残っているのだけれど、この日のブッキングはまさにその思いを体現した形だ。

THE STARBEMS 『DESTINY』 - YouTube

今回の出演バンドを含め、この時間帯にライブハウスにいる人間全員が集った運命の時間。暗転すると日高央を筆頭に、ギター・山下潤一郎の腰痛悪化に伴ってのピンチヒッターである、THE CRANE FLYでも活動するコウイチ(B)と、THE CHORIZO VIBESやCOLDFISHで活動するのぐニキ(G)、様々なバンドのサポメンとして知られる伊達慧介(Dr)がサポートメンバーとして加わったフォーピースで登場。オープナーとして選ばれたのは“DESTINY”で、いきなりのラウドサウンドが鼓膜を震わせる幕開けだ。凶悪なサウンドに呑まれる中、日高はデスボイスを繰り出しながらあの特徴的な歌声を響かせていて、楽器隊は基本的に全員が何かしらのコーラス(というより絶叫)を併用しつつ低音を鳴らしまくる。これこそがスターベムズであり、日高が今鳴らしたい音楽なのだと、瞬時に理解した瞬間でもあった。

精力的な活動を続ける彼ららしく、この日のセットリストは今回のライブタイトルにもなっている“Destroyer”はもちろん、未発表の新曲も多く入れ込むことでスターベムズの今を見せ付ける形。そのほぼ全曲を3分以内で駆け抜ける性急さは驚かされるばかりだが、その中にも約10年の歩みである各アルバム曲を配置し、全体としてキャリア総括の意味合いすら感じさせてくれたのも素晴らしかった。

Destroyer - YouTube

以降は新曲の“Destroyer”を早くもドロップしつつ、往年のキラーチューンで畳み掛け。水分補給すら曲中に行うワーカホリックさ満載の灼熱空間で、ひたすら音楽を鳴らし続ける様は若手パンクバンドを彷彿とさせるもので、後のMCでも自虐していたけれど、これが御年55歳を迎えるバンドマンのアクションと考えると凄い。本当に叫びまくり飛び跳ねまくり、翌日には2本のライブが控えているという異常な状況だった中で、出し惜しみなしのパフォーマンスには盛り上がるしかない。

後のMCでは、このコロナ禍での島根来訪について主に語られることに。実のところ2022年にスターベムズはこの松江Canovaでライブを行う予定であったが、当時のドラムサポート・アベカワ“ミンゾク”ユウスケが脳梗塞と診断。ライブをアコースティックに変更せざるを得なくなったこと、また隣県である鳥取県米子市のライブでは、直前の県内クラスターの発生によりライブが中止に追い込まれた話などを語り、自身の『持ってなさ』を自虐する日高である。そのリベンジマッチとしてこの日のライブを迎えられたのは、きっと偶然ではないのだろう。

THE STARBEMS - Blasting Sounds(Live at LUSH, Shibuya) - YouTube

ここからはコロナ禍にリリースされた『the heaven-sent E.P.』や、リリースが未だ成されていない新曲などここ数年に作られた楽曲を鳴らしていく。当然その中には我々が聴くこと自体が初めての楽曲も複数存在したものの、全く興奮が途切れないのは彼らのライブの熱量によるものだろう。中でも「皆さんレッチリは好きですか?僕らのバンドはほら……メンバーが辞めたりするじゃないですか。レッチリもそうなんですけど、ボーカルのアンソニーは人が辞めても知らん顔して歌ってる訳ですよ。だから僕はアンソニーが大嫌いなんです」と、日高おなじみのブラックジョークが繰り出されてからの新曲“Turn the World”は印象深いものがあった。

彼自身「レッチリを丸々パクった曲」と表現していた“Turn the World”。確かにタイトルからして“Around the World”だし、演奏前にはのぐニキが“Can't Stop”のリフを弾いていたし、日高は歌いながらアンソニーの動きをモノマネしているし……といろいろツッコミどころ満載なこの曲はしかして、最もスターベムズ前の日高のサウンドに近いものを感じられるミドルロックだった。ただ「ギター、ジョン・フルシアンテ!」とギターソロをもレッチリ風にする日高にとっては、おそらくそれもオマージュの行き着いた末で特に意味はない、ということになるのだろうか……。

THE STARBEMS / Holdin' On - YouTube

そして「コロナで活動が止まり、松江と米子でのライブも違う形になって。もう神様が『バンド辞めろ』って言ってんじゃねえかっていう。そんな波乱万丈なスターベムズですが、死ぬまでやります」との感動的な一言から、最後に選ばれた楽曲は“Holdin' On”。叫んで鳴らしてメロで泣いて、という彼らのパンク精神を体現したこの曲で完全燃焼を図っていた……。のは事実として、集まったファン誰しもがこの興奮を共有している姿には、改めて感動。特に何度も視界に入る、客席で盛り上がる地元の若手バンドマンたちの笑顔には思わずウルッと。やっぱりみんな、パンクロックが大好きなんだなあ。

時刻がこの時点で21時を大幅に回っていた関係上、アンコールはほぼハケずやる構えのスターベムズ。まずは数分前までの勢いをそのまま残した“New Wave”で畳み掛けると、ラストは活動当初からセットリスト入りを果たしてきたファストチューン“MAXIMUM ROCK'N'ROLL”で〆。

THE STARBEMS - Maximum Rock'N'Roll (LIVE) - YouTube

古くからのファンとしては日高の現在地を、またある意味では人気絶頂のビークルを解散してまでも、彼の鳴らしたかったサウンドを初めて知る契機でもあったこの楽曲。歌詞に大きな意味はなく、タイトル部分を幾度も絶叫する“MAXIMUM ROCK'N'ROLL”で我々が感じたのは、愚直な『衝動』であった。……例えば今のアーティストは特に、メッセージ性を歌詞に込めることで共感を生むスタイルが多数を占める。ではスターベムズはと言うと、それとは真逆。ストレスがあれば強い酒を飲みまくったり、ジムで体を鍛えまくるような、様々なストレスを爆発的な熱量でぶちまけて発散を図る、自傷的な代物だ。そしてそれは少なくとも、この日集まったファンに確実に刺さる時間だったのだ。

ライブが終わり、一瞬にして冷静に戻るライブハウス。時刻は既に21時半を回っていて、今この場所が世界から隔離された環境だと改めて実感した。……ビークルからスターベムズへと移行し、様々なライブ活動に重きを置くようになった日高はおそらく、このライブハウス特有の雰囲気に取り憑かれたひとりのキッズなのだろうなと思った。

聞けば現在、スターベムズは新たなアルバムを制作しているという。今回披露された新曲も収録されること間違いなしだろうけれど、彼は最後のMCで「アルバムを持ってまた絶対に戻って来ます」と、帰還を宣言してくれた。これらの繰り返しで、きっと音楽の火は灯っていくのだろう。……ライブハウスを出る直前、フロアに歩を進める日高の姿を僕は目にしたが、まるで少年のようだった!という情報を最後にお届けしつつ。またスターベムズにこの場所で会えることを、心底楽しみにしている。

【THE STARBEMS@松江Canova セットリスト】
DESTINY
Destroyer(新曲)
Let Lights Shine
Blasting Sounds
u & i
1999(新曲)
MARDI GRAS
Turn the World(新曲)
Holdin' On

[アンコール]
New Wave
MAXIMUM ROCK'N'ROLL