キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、KAI-YOU.net、uzurea.net様などに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

個人的ベストCDアルバムランキング2022 [15位〜11位]

こんばんは、キタガワです。

当ブログの年末恒例企画『個人的ベストCDアルバムランキング2022』。ニューカマーやポップアーティストが台頭した前回に引き続き、今回は15位〜11位の紹介だ。新進気鋭のアーティストから、無自覚にバズってしまった二人組、世界第一位のチャート入りを果たしたあのアーティストまで、よりどりみどりの5組です。簡単な論評を含めたテキストは以下より。

→20位〜16位はこちら

 

15位
酸欠少女/さユり
(2022年8月10日発売)

【『酸欠少女さユり』からの脱却】

弾き語りアルバム『め』を除けば、前作から約5年のスパンを置いた自身2枚目のフル。無論その間にも多くのシングル曲をリリースしてきたさユり。長い熟成期間を取った今作は、必然この5年間の総括の意味合いが込められた代物に。

その全貌を紐解いていくと、息苦しい中でも生き抜くオープナーの“酸欠少女”から、彼女自身の葛藤と「それでも前を向かなければ」とする鼓舞を感じられる。若き頃の後悔を『航海』と変換し、海原を進まんとする“航海の唄”、ネジを回すように無理矢理足を動かす“世界の秘密”、弦が切れそうな強いピッキングで聴かせる“ねじこ”……。思いを増幅させるさユりの歌唱も相まって、まるで近くで叫んでいるかのような実感にも陥る。なおちょっと反則技ではあるが、アルバム通して音量が大きく設定されているのも◯。

活動当初の名義であった『酸欠少女さユり』から『さユり』に改名し、かつての自分が名乗っていた名前をタイトルに冠した今作。彼女が自身を『酸欠少女さユり』としていたのは社会での生きづらさ(酸欠状態)を表していたためだが、そこから抜け出した今の彼女は、そのままのネガティブさで前向きに生きようとする力に満ちている。歌声とサウンドで心に訴え掛ける名盤。

酸欠少女さユり『世界の秘密』MV(short ver.)日本テレビ系TVアニメ「EDENS ZERO」エンディングテーマ - YouTube

酸欠少女さユり『酸欠少女』MV (フルver) - YouTube


14位
狂言/Ado
(2022年1月26日発売)

【他者のため歌う、令和最大の超新星】

“うっせぇわ”の大バズによって、瞬時に音楽シーンのトップを走ることとなったAdo。特に昨年あたりは完全にセールス的にも彼女の年だったように思うのだが、驚くべきはその勢いは今年も止まらず、むしろ爆発力を増していたこと。今作のみならず、ONE PIECE映画主題歌集『ウタの歌』はなんとオリコンランキングでの再生数世界一(!)の異常事態すら引き起こし、もはや破竹の勢いと化している現状である。

今タイトルにもなっている『狂言』とは、演目を演ずる場合に主人公をシテ、それ以外をアドとして進行する喜劇のこと。デビュー当時のインタビューで、彼女は「周りの人が幸せになってくれれば私はそれでいい」というようなことを話していたのが印象的だったのだが、合点がいった。何故なら今作の楽曲の大半は、弱者の代弁なのだから。けれどもその代弁方法というのは、曲ごとに異なっている。確かに“うっせぇわ”は大人に対しての猛烈なディス曲だったけれども、そんな『大人』に変わりたくない青春時代を歌った“花火”、深夜の憂鬱を綴る“夜のピエロ”と、その目線は今年20歳を迎えたAdoらしく、一貫して俯瞰した若者視点。あの特徴的な歌声も相まって、強いパワーで生きづらさをぶつける代物になったのだ。

言うまでもなくこのアルバムは今年世界一・日本一売れた。ただそれ以上に重要なのは、まだこの作品が長く続くAdoの活動の、ほんの序章に過ぎないということ。ニューシングルを多数リリースしていることから察するに、来年はまた新たなアルバムが出るだろうけれど、そこで改めて我々は、今回の『狂言』の完成度の高さを知ることになりそうだ。

【Ado】踊 - YouTube

【Ado】阿修羅ちゃん - YouTube


13位
Bering Funny In A Foreign Language(外国語での言葉遊び)/The 1975
(2022年10月14日発売)

【ポップかつ、原点回帰の新章】

今夏の『SUMMER SONIC 2022』で、約2年半ぶりの活動再開を示したThe 1975。当日のライブの様子についてはこちらの記事に詳しいが、最も驚いたのはこれまでキラキラとしたVJで魅せていたのとは逆に、彼らのみを映すモノクロ映像に統一されていた点だった(これは初期のコンセプトと同じ)。そしてそのVJの通り、今回リリースされた『外国語での言葉遊び』はまさしく原点回帰とも言うべき、ふわりとしたサウンドに包まれるポップ・アルバムとなった。

おそらくはコロナ禍も作用して、その歌詞も深みを帯びていた前作。それと比較しても今作は全12曲において、マシュー・ヒーリー(Vo)の主張が前向きになっているのも特徴だろう。その理由は主にふたつあって、ひとつは彼が『物事に湾曲した考えを付加しないようにした』こと。例えば子供をテーマにした前作の”PEOPLE“では『子供→大人→国の政治→こんな世の中はクソだ』に繋げていき、結果アルバムとしても全22曲の膨大なボリュームになったのだけど、それを辞めようとした。

もうひとつは『前向きなものを意図的に作ろうとしている』ということ。これは純粋に「未来の話を歌うならネガティブな要素は排除しよう」とする考えによるものだ。原点回帰を目指しつつ、新たな芸術作品に挑んだThe 1975。来年には待望の来日公演も控えているので、こちらも要注目だ。

The 1975 - Happiness (Official Video) - YouTube

The 1975 - I'm In Love With You (Official Video) - YouTube


12位
As you know?/櫻坂46

(2022年8月3日発売)

【けやきからさくらへ。その新たな一歩】

不動のセンター・平手友梨奈の脱退が事実上の引き金となり、グループ解散を余儀なくされた欅坂46。そしてラストライブで彼女たちは櫻坂46への活動変更を発表、今作はその記念すべきファーストフルアルバムとなる。

このアルバムを語る上で、まず大多数が考えるのは『欅坂46と櫻坂46の違い』についてだろう。これに関して欅坂46は個々人の社会不適合を自認させるグループ、対して櫻坂46は社会に対して疑問をぶつけるグループと言える。要するに「僕は暗いです。……けどそれの何が悪いんすか!?」と発散する力が、このアルバムには強く秘められているのだ。また楽曲自体が明るい雰囲気に転じているのも特徴で、坂道グループとしては歌詞は暗い中でも、同じくらいサウンドはポップ!な魅力もある。

取り分け印象深い楽曲はアイドルグループとしては稀有な『炎上』を題材にした“流れ弾”と、我々一般人の生活に寄り添った“BAN”。これらはロックテイスト強めにしろ、欅坂46とはまた違った視点が面白かったりもする。……課題点があるとすれば、棘のあった歌詞がマイルドになったことで他の坂道、ないし48グループとの差別化が図りづらくなったこと。もちろんこの部分は2023年以降の作品で変化していくだろうと推察するが、よく考えれば彼女たちはまだ1年目。今後の動きが待ち望まれるし、今作は言わば櫻坂46の運命を占う試金石的な存在なのではとも思う。

櫻坂46『流れ弾』 - YouTube

櫻坂46 『BAN』 - YouTube


11位
Wet Leg/Wet Leg
(2022年4月8日発売)

【無自覚に刺すガールズ】

バンド名は『濡れた足』だし、バズった曲は“Chaise Longue(長椅子)“やら”Wet Dream(濡れた夢)“と、どこかフワフワとしたワードセンスが特徴的な二人組、ウェット・レッグ。今年最も飛躍した新人バンドでありながら、その実『最も無自覚に曲を作った結果認知された』のも、きっと彼女たちだったろう。なにせバンド結成の経緯自体は、希望するライブの無料チケットを貰うためだったのだから。

リアン・ティーズデール(Vo.G)とヘスター・チャンバース(Vo.G)はワイト島という田舎で生まれた。彼女たちの曲作りのスタンスは「私たちが踊りたくなる曲を作る」。そこで作られたのが先述の”Chaise Longue“だったのだが、この難しい言葉も使わずに淡々と紡がれる楽曲は、予想外の形の反響があり今に至る。

そして結果として『Wet Leg』は、彼女たちの今の持ち曲をほぼ全て入れ込んだ運命作に。80年代的なサウンドが印象深い”Angelica“やノイジーな”Oh No“、他にもカントリー調の楽曲など、代表曲以外にもバラエティーに富んだ作りなのは流石だし、歌詞も我々日本人が分かる簡単な単語ばかりが使われており、親しみやすさも抜群。まだまだ成長途中の若手バンドではあるけれど、ここから更に躍進する未来を考えると魅力は底しれない。

Wet Leg - Chaise Longue (Official Video) - YouTube

Wet Leg - Wet Dream (Official Video) - YouTube

 

 


……さて、いかがだっただろうか。次回は10位〜6位のアルバムの発表!ボカロクリエイターの新星、コロナ禍に寄り添った感動作品を生んだあのSSW、紅白歌合戦連続出場を更新するグループなどなどを紹介していく。なお次回の更新は年明け以降となります!