キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

紅白歌合戦2020、初出場組全9組徹底解説

こんばんは、キタガワです。

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先日、第71回NHK紅白歌合戦の出場歌手が発表された。初出場となるアーティストは白組が3組、対して紅組は6組。更にはアイドルグループがそのうちの5組を占め、年齢的にも需要的にもフレッシュな顔触れとなった。


今年の紅白歌合戦の選考基準は、例年と同様『今年の活躍』『世論の支持』『番組の企画・演出』の3項目。既知の通り、今年は新型コロナウイルスの影響によりライブ公演や音源制作、プロモーションといったアーティストをアーティストたらしめる活動に様々な制限が課せられたよもやの1年となった。無論これらの悪魔の制限は紅白の選出にも及んでいて、具体的には『会いにいけるアイドル』として精力的な握手会とライブに励むことで人気を獲得してきたAKB48が13年目にしてまさかの落選。その他、取り分けライブ活動に主軸を置いていたアーティストからすると『一般大衆に認知されること』自体が圧倒的に厳しいものとなり、昨年以前に出場したアーティストで言えばももいろクローバーZやWANIMAといった、パフォーマンスの高さから注目に繋がった類いのアーティストの起用は、今年はほぼ見られなくなった。


対して『おうち時間』との言葉がある種の流行語に至ったことからも、今年は自宅でゆるりと触れる音楽……所謂ネット発のアーティストが台頭した年でもあった。音楽を伝えるその最たる媒体こそがYouTube、TikTok、Twitterから成る三銃士であり、TikTok上でのバズからブレイクに至った瑛人然り、YouTubeでみるみる急上昇したYOASOBI然り、公式がTwitterにアップ可能な時間ギリギリまで動画を連日流し続けたNovelbright然り、元々一昨年辺りから積極的に使われ始めているこの3つの媒体をどう有効利用するか、という徹底したビジネス的思考を行動に移した者が成功を手にした感さえあり、音楽シーンの転換点とも称すべき運命的な年であったと言えよう。


それでは以下より、念願の初出場の切符を入手した9組について紐解いていこう。

 

 

櫻坂46

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改名を発表した欅坂46が、装いを新たに櫻坂46に。紅白歌合戦出場者発表日は11月16日。対してファーストシングルの発売日は12月19日……つまりは未だ1曲たりともリリースに至っていない、あまりに稀有なケースでの出演となる。言うまでもないが、CDをリリースしない状態での起用は71年間続く紅白歌合戦において初。これ程の猛プッシュが意味するところは、やはり今まで幾度も“ガラスを割れ!”や“不協和音”といった楽曲群で驚異的な瞬間視聴率を叩き出した前身グループ・欅坂46の貢献度が極めて高かったことの裏返しだろう。


……欅坂46は絶対的センターである平手友梨奈の絶大な存在感を皮切りに、ダークな注目を集めてきたアイドルグループだった。ただ上記の『平手友梨奈の絶大な存在感』がプラスにもマイナスにも大きく作用した結果、平手脱退後の欅坂46は混迷の時期に突入。後のコロナ禍におけるオンラインライブ配信にて欅坂46に幕を閉じることが表明されるに至ったが、真っ白なイメージカラーであることからも分かる通り、櫻坂46は何物にも染まっていない桜……とどのつまり『全員が主役である』との方向性で制作に当たっている。此度披露される楽曲は記念すべきファーストシングル“Nobody's Fault”と見てまず間違いないだろうが、これは大半のファンにとっても初見のパフォーマンスとなる。欅坂46の殻を破ったその先にあるものを、如実に体現する数分間になることは完全に保証されている。

 


櫻坂46 『Nobody's fault』

 

JUJU

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満を持しての出場となった歌姫・JUJU。彼女が出場に至る契機となったのはシングルでもアルバムでもなく、何とベストアルバム。そう。此度のJUJUの登用は『ベストアルバムが人気を博したため』という、紅白の長い歴史で見ても非常に異質な形なのだ。


思えば今回の初出演アーティストの中で、JUJUほど認知が激しく乱高下したシンガーは存在しないのではなかろうか。一聴した瞬間に誰もの脳裏に甦るかの名曲“やさしさで溢れるように”、“明日がくるなら”が絶えず街中で流れていたのは、10年以上も前。実際、当時この2曲をきっかけにJUJUを知った人間は一定層いた印象で、当時はカラオケランキングやオリコンチャートでも長らく上位を独占する人気ぶりに加え、バラエティー・音楽問わず様々な番組にも積極的に出演。名実共に女性シンガーを代表する存在であった。


ただ、その後のJUJUは緩やかな下降線を辿る。言わば『ブレイクに恵まれない』時期が長く続いた後の、今回の紅白出演は予想外と言うより「JUJU=紅白初出演」とのイメージ自体が皆無であったために驚いたファンも多かったであろうと推察する。今年は彼女自身、ライブが実質不可能の状況に置かれたことに加え、エンディングテーマである“Voice”を提供したドラマ出演者の三浦春馬が死去。あまりに壮絶な1年間であったと共に、今年の締め括りとして待ち望んだ紅白が内定。彼女自身どのような思いでこの日に臨むのか期待が高まるが、きっとデビュー以降の10年を総括する、目一杯のパフォーマンスを披露してくれるはずだ。

 


JUJU 『やさしさで溢れるように』

 

東京事変

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椎名林檎名義では通算7回。けれども東京事変としては初の紅白である。今も鮮明に回顧出来る2020年の1月1日。紅白が終わり、年が明けたその瞬間に発表されたのが東京事変の再結成だった。当時の瞬間最大風速は凄まじく、瞬く間にTwitterのトレンドトップに上位に彼らの名前が躍った。今思えば発表の仕方自体も衝撃の極みで、「何も年が明けた瞬間に発表しなくても……」と大いに困惑した記憶があるのだが、それはそれとして。今年の年明けに再結成を発表したバンドが今年の締めくくりを担う……。この事実だけで、心底ときめいてしまう。様々なネガティブな事象が頻発した今年だが、東京事変で始まり東京事変で終わる2020年と考えると、悪くない。

 

注目すべきは彼らのパフォーマンス。先日のオンラインライブでは圧巻のVJと生ならではのギミックを多用した非現実的な試みで楽しませたが、今回はどうなるか。加えてメンバーである浮雲は星野源のバンドサポートの後に事変の曲を披露することからも、その衣装や演奏スタイルの変化にも是非注目したいところだ。演奏曲はかねてよりのキラーチューンである“群青日和”、若しくは再結成と同日にリリースされた“選ばれざる国民”だろうか。コロナ禍で翻弄される中での“選ばれざる国民”のドロップはさぞ痛快だろうと思うのだが、如何に。

 


東京事変 - 群青日和

 

BABYMETAL

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日本で唯一のメタルアイドルの異名で知られるベビメタが、遂に紅白歌合戦に降臨。毎年発表の数ヵ月前にもなると出場者予想合戦が新聞各紙、及びウェブメディアで白熱する傾向にあって、実際それらの予想は基本的には的中するものだが、BABYMETALの出場を予想していたメディアは僕が記憶する限りひとつもなかった印象で、言わば今年最大のダークホース的存在としてのよもやの起用となった。


ベビメタは今年、結成10周年のメモリアルイヤー。活動拠点を海外にベットし、レッチリ、マーティ・フリードマン、KISSら著名なロックアーティストと幾度も共演を果たし、圧倒的な場数を踏んできた彼女たち。デスボありヘドバンあり、マイナーコード多様のメタルサウンド+キュートな歌唱という良い意味での異物感ある楽曲が紅白の場でどう響くのか、見物である。


ベビメタが人気を獲得した最たる理由は、その熱狂的なライブパフォーマンスにある。かつてもSuchmosや椎名林檎+宮本浩次等、一見厳かな紅白のイメージとはミスマッチにも思えるアーティストが紅白のパフォーマンスを起爆剤として認知されるケースもあった。故に此度のベビメタ、凄まじい風を吹かせる気がしてならないのだ。

 


BABYMETAL - PA PA YA!! (feat. F.HERO)  (OFFICIAL)

 

milet

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次世代の歌姫、milet(ミレイ)。MステやCDTVといった様々な音楽番組に出演し、徐々に認知を高めてきたmiletが、早くも紅白出演内定。正直ここまで早く紅白出演が決まるとは思っていなかったが、ドラマ主題歌としてヒットした“inside you”の勢いと昨今の活動を鑑みるに、ある意味納得の起用だ。


彼女はデビュー当初より、こと日本のアーティストとは趣を異にする活動を行ってきた。彼女の活動方針、それは『音源をコンスタントにリリースする』という至ってシンプルな試みである。けれどもその手法が現在のストリーミングを主体とする音楽消費市場に絶妙にマッチし、一定の注目を毎月キープ。2019年に発売したEPはなんと4枚。今年2020年は2枚のEP+フルアルバムを発売し、その全てがオリコンチャート入り、かつタイアップ付きの快挙も達成。今回の起用に直結した大きな要因であることは間違いないだろう。


彼女自身、今年は2つの全国ツアーが全公演中止となる悲痛な年となったが、そんな中でもネガティブな思いをポジティブな方向に次々と変換し、未曾有のコロナ禍の中でもほぼ変わらないペースで楽曲をリリースし続けてきたmilet。歌われるのは“inside you”でほぼ確定と見られるが、誰もが心中に淀みを抱える今『貴方と私』の物語は必ずや、観るものの心を打つことだろう。

 


milet「inside you」MUSIC VIDEO(先行配信中!竹内結子主演・フジテレビ系ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』OPテーマ)

 

NiziU

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日韓合同オーディションプロジェクト『Nizi Project』にて選出された、日本人9名のアイドルグループ。当グループの総合プロデューサー・J.Y.Park氏が「最終メンバーが何人になるか分からない」と語っていた通りオーディションは熾烈を極め、同時にデビューを目指して奔走する彼女たちの個々にスポットを当てることで努力や感動を閲覧者と共有する仕組みが組み上げられていたように思う。


鳴らされるのはキャッチーな音楽性は元より、キラキラサウンドに目を向けるとTWICEらしくもあり、ラップ部分はBLACKPINKさもありなんという、正にK-POPの良的部分をふんだんに取り入れたポップス。そこに紆余曲折を経てグループ入りした9名のメンバーが入り乱れてのパフォーマンス。凄まじい視聴率を記録する予感しかない。


最終的なデビューCDリリースは12月2日……。つまり現在、NiziUは櫻坂48や瑛人と同様、あまりに稀有な状態での紅白出演となる。是非とも代表曲“Make you happy”で、お茶の間を存分に盛り上げてもらいたいところ。

 


NiziU 『Make you happy』 M/V

 

SixTONES・Snow Man

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今年初旬にデビューした新星ジャニーズユニットSixTONES、同じくSnow Man。今年はこの2組が主にテレビ業界を席巻していた感が強かった。ドッキリ番組然りYouTuberとしての活動然り各社CM然り、バラエティも音楽番組も何でもござれなフットワークの軽さで幅広く存在を可視化したことが、知名度の爆発的上昇に一役買ったとして差し支えないだろう。


彼らの今の勢いはまさに『猛然』と称して然るべき代物で、Twitter上ではSnow Man、若しくはSixTONESと文章内に入れ込まれた記事が軒並み高いリツイート・いいね率を叩き出していた事実からも、今やこの2組は楽曲の認知という事象以上に、その存在自体が一種のブランド化する、重要な局面を迎えつつある。


それでいてこの2組には明確な差別化が成されているのも興味深い。どちらかと言えば生楽器主体のSixTONES、打ち込みを多用するSnow Manとの対比や、おそらくは令和アーティストならではの視覚的効果でも楽しませてくれることだろう。バラエティーで見せる個々の姿と一変するパフォーマンス。期待せずにはいられないところ。

 


SixTONES - NAVIGATOR (Music Video) [YouTube Ver.]


Snow Man「D.D.」MV (YouTube ver.)

 

瑛人

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後にチョコレートプラネット他、多種多様な芸人・Youtuber楽曲彼のMVを模倣し、更なるバズとなり、現在では公式MVの総再生数が1.2億回を越えた“香水”。一躍時の人となったシンデレラボーイだ。


今や“香水”は街中で流れ、テレビで流れ、サブスク上の2020年音楽ランキングでは堂々の第1位を飾る等、まさしく流行歌と呼ぶに相応しい、2020年を代表する楽曲となった。しかしながらその背景を紐解いてみると、“香水”の突然のブレイクの裏にはまずTikTokがあり、その後にMVをオマージュしたYoutuberの動きがあった。更にはこの“香水”がCDとしてリリースされていない楽曲であること等、そこかしこに令和的な売れ方が垣間見える仕組みとなっている。それでいてギター+歌オンリーという直接的なサウンドで奏でられているのも、時代と上手い形で逆行するようで○。


紅白では元来、企業名の入った歌詞は規定に触れるとして、演奏NGが暗黙の了解となっている。そのため“香水”のサビ部分で用いられる某香水会社の商品であるところの『ドルチェ&ガッバーナ問題』についてはどのような形で折衷案を取るのか不明だが、令和の音楽シーンを飄々と切り抜けてきた彼のことだ。おそらくは最良の選択で乗り切ってくれることだろう。

 


香水 / 瑛人 (Official Music Video)

 

個人的には、現在の紅白歌合戦は今までの音楽の祭典のベクトルからある程度距離を置き、世間的なニーズを最重要視している印象を強く受けた。


例年インターネット上で議論が交わされてきたアイドル問題について今年は過去最多となり、46グループ3組、ジャニーズ7組という大所帯。対して演歌歌手は7組。更にはヒップホップとロックアーティストは軒並み該当者なしとなり、言葉を選ばずに言えば現在の音楽シーンが如何にアイドル需要に寄り添っているのか、その事実を痛烈に体現するものでもあったように思う。


そして此度のアイドル需要に拍車をかけた存在がテレビ番組、ないしはインターネットであるとするならば、今年は戦略的・偶然問わず結果的に巨大なバズを成し得たアーティストが一気に認知されることも、特段証明された1年となった。今までの紅白記事でも何度か綴っているが、これは僕個人としては非常に良い変化であると感じていて、今までは某かの後ろ楯ありきで有名になるアーティストが多かったイメージだが、事務所に所属せずとも戦える土壌が整ったことは大方プラスに作用するだろう。


例年出場のアーティストに加え、期待のニューカマーが首を揃えた今年の紅白。年末は是非とも腰を据えて、じっくりと音楽漬けの数時間を過ごそうではないか。