キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

【ライブレポート】SUMMER SONIC 2022 大阪2日目@舞浜ソニックパーク

こんばんは、キタガワです。

前日の高揚感を抱えながら、サマソニ2日目。前日に比べて暑さも若干マシになり、かと言って曇りでもない絶好の天候だ。個人的には2日連続の参加だが、もちろんこの日が初という人も少なくない。入場までの道程で「あーいつものサマソニだわ!」「うちホンマ夏フェス久しぶり!」といった声が聞こえてくるたびに、何だか嬉しくなってしまう。みんなこの日を待ち望んでいたんだなあ。運命の最終日、以下ライブレポートです。


→サマソニ2022・1日目レポはこちら

 


The Linda Lindas 11:40〜 (MOUNTAIN STAGE)

https://www.thelindalindas.com/

入場ゲートをくぐるやいなやMrs. GREEN APPLE目当ての大移動を尻目に、まず1組目に選んだのはザ・リンダリンダズ。メンバー全員が10代の学生で、最年少はドラマーのミラ・デラガーザ(Dr.Vo)で何と12歳。今回のサマソニも、学校の夏休みも利用しての来日だというから驚きだ。フロアは朝イチにも関わらずギッシリで、泥臭いロッケンローを浴びたいと願う人々の熱気が充満していて感動的。

 

The Linda Lindas - "Growing Up" - YouTube

定刻になり勢いよく飛び出してきたメンバー。その表情は満面の笑顔で、ネコのように頬に三本線を書いたりシールを貼っていたり、他にも歯を矯正していたりとガールズっぽい一面も多々。元々たくさんのインタビューで「日本に行くのが夢」と語ってくれていた彼女たち、事前のインスタでも猫カフェや野球場やアイスクリームと楽しく過ごしてきたのは知っていたが、純粋に日本を愛してくれていることが伝わってきてグッとくる。


この日のセットリストはファーストアルバム『Growing Up』、2020年リリースのEP『THE LINDA LINDAS』からの固め打ちで、現在のベストを見せる形。また彼女たちはずーっと笑顔。あまりMCも挟まずどんどん曲を演奏していたのも印象的で、“Oh!”でのレスポンスはもちろん、前に3人が集まって楽器を同じ方向に動かしたり、メンバー全員がボーカルを取るのも面白かった。客席からチラッと「女性版リバティーンズじゃん!」という声が聞こえて思わず笑ってしまったけど、もう本当にそんな感じ。VJには「一緒にロックしよう」「踊ってくれてありがとう」といった文字がぐるぐる移り変わる仕様で、こうした一幕もロック好きとしての思いが汲み取れる。

 

The Linda Lindas - "Oh!" - YouTube

最後の曲は「日本のみんなのために」とTHE BLUE HEARTS“リンダ リンダ”のカバー、それも日本語ver!。加えて、彼女たちなりにアレンジも加えていて《出会い話し合うなら》の部分を絶叫して歌ったり、メンバーの中では特にパンキッシュなメンバーがボーカルを担っていたりと、リスペクトも感じられて素晴らしい。これまで何度かライブ映像を観てきたが、この“リンダ リンダ”はどの海外フェスでも毎回最初に、日本語で歌われてきた。もちろん反応はイマイチなことが多かった中で、今回日本でのサマソニ。観客の大興奮はきっと、彼女たちにとっても嬉しい出来事であったはず。それを証明するように、演奏が終わるとみんなで記念撮影→ピョンピョン飛び跳ねながらハケるという楽しげなメンバーの表情が光った。最高のフェスの幕開けだった。

【The Linda Lindas@サマソニ大阪 セットリスト】
Growing Up
Monica
Why
Magic
Claudia Kishi
No Clue
Nino
Talking To Myself
Cuántas Veses
Fine
Tonite
Oh!
Racist, Sexist Boy
リンダ リンダ(THE BLUE HEARTSカバー)

 

beabadoobee 12:25〜 (OCEAN STAGE)

https://www.beabadoobee.com/

続いてはオーシャンステージに移動し、2日目の目的のひとつであるビーバドゥービーへ。かつて日本に向けたインタビューで「日本に行くのは全人類の夢じゃない?」とまで語り、最近ではインスタにて上野動物園やラーメンについても投稿してくれていたため、初来日でいろいろ回ったエネルギーを纏った状態での出演となる。最新アルバム『Beatopia』をリリースした直後である関係からか、バックのLEDパネルには今作のジャケットが大写しになっているものの、それ以外の演出は特になし。そんな殺風景なステージに登場したビーと3人のバンドメンバーは、1曲目“Worth It”から無骨なロックを展開。あえて大きなポイントを作らず、楽曲を投下し続ける様はあまりにも格好良い。

 

beabadoobee - Talk (Glastonbury 2022) - YouTube

セットリストは基本的には『Beatopia』と『Take It Flowers』から。序盤で勢いをつけて中盤で一旦ブレイク、後半から再び徐々に上がって爆発するという、これまで培われてきたライブスタイルの集大成だ。その間彼女が語ったMCはほぼなく「みんな腕上げて!」といった促しも皆無。ただ愚直なロックはぐんぐん観客を惹き込んでいき、全員がゆらゆらとその場で楽しんでいる。

 

beabadoobee - Cologne (Reading 2021) - YouTube

後半の“Last Day On Earth”ではビーが上野動物園で購入したレッサーパンダのリュックを背負いつつ、もちろん最後はお馴染みの“Cologne”でシメ。シンプルなロックかと思いきや、後半ではノイズにまみれた爆音ギターが鳴り響く楽曲だ。我々の感覚としてはまるで何かにトリップしたようで、これまで体を動かして観ていた人たちもポカーンと棒立ちになっているのが痛快。演奏が終わるとそのまま楽器を戻し、来たときと同じテンションで去っていったビーとメンバー。あと1時間は余裕でやれそうな雰囲気だったけれど、この尺はある意味、今のビーのベストセトリだろうとも思った次第だ。

【beabadoobee@サマソニ大阪 セットリスト】
Worth It
Together
Care
See You Soon
Coffee
She Plays Bass
Talk
10:36
Back To Mars
Last Day On Earth
Cologne

 

Squid 12:50〜 (SONIC STAGE)

https://squidband.uk/

オーシャンから往路をひた走り、ソニックステージでスクイッド。おそらくはこの日一番の「どうやったらこんな音楽思いつくんだ」的アクトの最有力候補。結果的には、この日彼らの持ち時間である40分の間に演奏した楽曲はよもやの5曲。ビーバドゥービーは同時間で11曲演奏したから、半分以上の楽曲は意図的に削られたことになる。……その理由はあまりに単純。そう。1曲1曲の時間をめちゃくちゃに長くしたのが今回のスクイッドだったのである。

 

Squid - Sludge (Official Audio) - YouTube

ライブは“Sludge”からスタート。メンバーの配置は意図的に前方を避けて後ろに配置されており、あまり顔は見えない。しかもスクイッドのボーカルはドラムボーカルなので、通常のライブのように「ボーカルの立ち振る舞いをじっと観る」なんてことも出来ない。VJも簡素であり、総じて唯一無二さを感じさせるステージだ。この日のセットリストは『Bright Green Field』から全て選出され、先述の通りアドリブの演奏を交えることによりそのほとんどが7分〜13分に延長、CD音源とは全く違うイメージを抱く代物に変貌した。

 

Squid - Narrator (Glastonbury 2022) - YouTube

中でも意味不明な興奮に叩き落としたのは“Narrator”。歌うというよりは圧倒的に『喋る』タイプのオリー・ジャッジ(Vo.Dr)の先導のもと、バラバラに鳴らされたそれぞれの楽器の音が重なり合っていく様はカオス極まりなかったが、後半ではオリーが《I'll play my……》と語り続けるという更なる境地へ到達。そしてぐちゃぐちゃのセッションによって我々の頭が狂いそうになったところで、演奏がビタっと終了。一瞬にして現実に引き戻され、大きな拍手が鳴る会場。気付けばもう40分も経っていて訳が分からなくなったが、これこそがスクイッドのライブなのだろう。筆者が同じようなトリップ体験をしたライブに日本のSuchmosがあるけれど、彼らとはまた違った魅力あり。これは是非とも単独でまた観たい。

【Squid@サマソニ大阪 セットリスト】
Sludge
Paddling
Boy Racers
G.S.K
Narrator

 

ALL TIME LOW 14:00 (MOUNTAIN STAGE)

https://www.alltimelow.com/skod

ソニックから少し歩いてオール・タイム・ロウ。その後のすりぃをなるべく前で観たかったのと、前日の疲労もあって今回のマウンテンステージは2階で座って観ることに。アレックス・ガスカース(Vo.G)は後のMCで「野球のスタジアムじゃん!」と笑っていたが、2階席はまさしくそんな感じ。別目線なのでザ・リンダリンダズのときには分からなかったスタンディングの様子も広く観ることが出来たが、オール・タイム・ロウの演奏が迫るにつれてどんどん人が増えていく様も確認でき、「やっぱりみんなパンクが好きなんだなあ」と思ったり。

 

All Time Low - Lost In Stereo (Official Music Video) - YouTube

ステージに忙しなく移動したメンバーたち。1曲目は“Lost In Stereo”で、早くも全盛期のパンクを投下するのだから計画的。当然フロアはもみくちゃ状態で、こちらの2階席でも大熱唱するファンがちらほら。ぶ厚いサウンドとはっきりしたAメロ→Bメロ→サビの流れはとてもシンプルで、何というか「音楽はこれで良いんだよ!」感もある。様々な工夫を凝らす音楽が多い昨今、ここまで愚直なロックは童心に帰る思いすらある。


オール・タイム・ロウが結成されたのが2002年だから、もう活動歴は20年近いベテラン。更には2020年にニューアルバムがリリースされたこともあり、今回のセットリストはどうなることかと思ってはいた。が、結果としては新曲はほぼプレイなしで、往年の代表曲をとにかく演奏しまくる力技。彼らは現状ベストアルバムは出していないけれど、おそらくリリースするとしたら今回のセットリストそのままかな、というレベルの代物がそこに。

 

All Time Low - Dear Maria, Count Me In (Official Music Video) - YouTube

後半の間奏では、メンバーのひとりの額にピックを何枚も貼る茶目っ気たっぷりな一幕もありつつ、ラストはなんとキャリア屈指の代表曲“Dear Maria. Count Me In”。いつの間にか客席は入り切らない人も多い入場規制状態で、モッシュは起きないまでも全員が大盛りあがり。徹頭徹尾、まるで我々の学生時代の青春にタイムリープしたような最強セトリだった。ステージを去る直前、アレックスは「また来年来るよ!」と語ってくれていたけど、これは再来日も期待して良いのかも。

【ALL TIME LOW@サマソニ大阪 セットリスト】
Lost In Stereo
Dark Side of Your Room
Sleeping In
Some Kind of Disaster
PMA
Weightless
Once In A Lifetime
Damned If It Do Ya(Damned If I Don't)
Blinding Lights
Monsters
Dear Maria, Count Me In

 

すりぃ 15:30〜 (MASSIVE STAGE)

オール・タイム・ロウが終わりもみくちゃで外に出るマッシヴステージでは早くもすりぃがリハーサル中。思えば普段ボカロPとして活動する彼は、ライブの機会自体がかなり少ないアーティスト。しかもフェス出演は初ということもあってか“テレキャスタービーボーイ”と“カメレオン”を入念にリハしていて、どこか気迫すら感じる。

 

【本人が歌った】テレキャスタービーボーイ(long ver.) / すりぃ - YouTube

ライブのオープナーは“空中分解”。早くもギャリギャリギターが先行し、手拍子が広がる空間に変貌したマッシヴステージである。その中心で歌うすりぃは素顔非公開のためもちろんほぼ全員が初見、髪色を金と黒の2色に分け、細身で色白の人物だった。そして脇を3人のバンドメンバーが固める布陣が今回のサマソニだ。


すりぃはMCにて、自身も大阪在住であることを語り、後は「今日はいろいろ話したいことあったんですけど、曲を詰め込み過ぎたので」と宣言した通り、持ち時間30分を徹底的に楽曲に使う姿勢。大切な人の死に立ち会えなかった悲しみを歌った新曲“別れ花”を含め、YouTubeで数百〜数千万再生されている有名曲を惜しみなくドロップする、初フェスにして全力のパフォーマンスだ。

 

【本人が歌った】エゴロック(long ver.) / すりぃ - YouTube

後半は“ジャンキーナイトタウンオーケストラ”、“テレキャスタービーボーイ”、“エゴロック”というBPMの速い楽曲の固め打ち。最も客席が沸いたのは“テレキャスタービーボーイ”で、《デデッデ》の部分を叫んだり「行けるかサマソニ!」とサビ前に煽ったり、更にはMVの『ギターソロ すりぃ』の部分をすりぃが弾かなかったり……といったライブならではの発見もありつつ、猛然と進行。ラストは「この曲でここまで来ました!」と“エゴロック”。ラスサビの《1.2.3 ふぁっきゅー》で大団円をキメ、終了後は颯爽と帰っていったすりぃ。持ち時間のうちに全てを見せ付けた彼だったが、何だか単独公演も行けそうな余裕も感じた。

【すりぃ@サマソニ大阪 セットリスト】
[リハ]
テレキャスタービーボーイ
カメレオン

[本編]
空中分解
カメレオン
バニー
別れ花(新曲)
ジャンキーナイトタウンオーケストラ
テレキャスタービーボーイ
エゴロック

 

Måneskin 16:40〜 (OCEAN STAGE)

http://www.maneskin.it/

続いては最大規模のステージでマネスキン。どうやら前日の東京公演では入場規制ギリギリの超満員ライブを行ったということもあるし、更にはその後の出順はKing Gnu→The 1975。そのため入場規制は避けられないと判断し、急いで移動する(なお予想通り大規模な入場規制がかけられたそう)。オーシャンステージに関しては前日にもKREVA→ヤングブラッドと観てきた訳だが、足を踏み入れた時点でかなり後方。背を伸ばしてもほぼステージが見えないほどで、改めてマネスキンの強さを再確認して嬉しい気持ちに。

 

Måneskin|マネスキン - 「ジッティ・エ・ブオーニ」 (日本語字幕ver) - YouTube

青空の下ステージに現れた彼ら。ダミアーノ・ダヴィド(Vo)とイーサン・トルキオ(Dr)は早くも上半身裸、唯一の女性メンバーであるヴィクトリア・デ・アンジェリス(B)もニプレスを付けて上裸で登場(ラストの曲でそれも取っていた)と、これから起こる灼熱のライブを予感させる。オープナーはいきなりの“ZITTI E BUONI”。彼らが注目される最大の起爆剤になった楽曲である。荒々しくもリズムは完璧、対してメンバーの一挙手一投足は目が離せない、最強のカリスマ性を最初に目の当たりにする我々、気付けば誰もが踊っている。

 

Måneskin|マネスキン - 「SUPERMODEL」 (日本語字幕ver) - YouTube

今回のライブ、大きな驚きとして位置していたのは彼らの盛り上げ方。単純に何度もライブの場数を踏んできたからだろう。定番曲はそのままの熱量で観客に委ね、逆にあまり知られていない楽曲ではダミアーノが客席に飛び込んだり、分かりやすくコール&レスポンスをレクチャーする形でどこを切っても興奮が途切れない試みが成されていた。初来日ということで「日本で行ったカラオケで歌った曲」として“SUPERMODEL”を演奏するのもニクい。持ち時間は約50分だったと記憶しているけれど、本当に一瞬でライブが終わった感覚がある。

 

Måneskin|マネスキン - 「I Wanna Be Your Slave」 (日本語字幕ver) - YouTube

ラストに演奏されたのは“I WANNA BE YOUR SLAVE”。前曲で客席にダイブした際、乳首のニプレスが取れたヴィクトリアの衝撃がモニターに映し出される中、最後の最後まで全力で動き回るメンバーたち。そして更なる爆発を生み出すため、ダミアーノは途中で「シャガンデー!」と観客を座らせ、そこからラスサビへ移行!もはやコロナ禍など関係ない灼熱の空間で、ダミアーノは「ガンバレガンバレガンバレー!」と絶叫。いつしかBPMはCD音源を上回る爆速になり、そのままの勢いで終幕。……個人的には今年のサマソニ全体を見てもトップの素晴らしさ。多分他の人にとってもそうだと思う。20歳そこそこの若きロックンロールスターが、ここ日本で存在感を見せ付けた確かな瞬間だった。

【Måneskin@サマソニ大阪 セットリスト】
ZITTI E BUONI
IN NOME DEL PADRE
MANMAMIA
Beggin‘(The Four Sessionsカバー)
FOR YOR LOVE
SUPERMODEL
Touch Me
My Generation(The Whoカバー)
I Wanna Be Your Dog(The Stoogesカバー)
I WANNA BE YOUR SLAVE

 

King Gnu 17:55〜 (OCEAN STAGE)

https://kinggnu.jp/

マネスキンの熱狂を経て、気付けば夕方。サマソニも終わりに差し掛かるこの時間に現れるのは、邦楽アーティストとしては絶妙なスロットで出演が決まった、我らがKing Gnuである。個人的にはマネスキンが終わった後、オフスプとタヒチ80に移動する予定だったが断念。……というのも、あまりに人が多すぎてもう後ろに一歩も下がれないのだ。そう言えば爆売れしてからライブは倍率が高すぎて行くことが出来なかったし、良い機会と思いつつ待機。

 

King Gnu - Slumberland - YouTube

『King Gnu』の文字がひとつに重ねられたオブジェクトが降ろされる中、ミステリアスなSEに誘われてメンバーが登場。常田大希(Vo.G)、井口理(Vo.Key)含め、これまでテレビで何度も観たことのある人物が目の前にいる感動が凄い。これこそがライブの醍醐味と言えばそれまでだが、特に彼らはここ数年音楽媒体で引っ張りだこだったし……。事実この登場を契機としてKing Gnuファンが前に詰め掛ける事態になり、改めて人気を実感。


『“白日”を常田が大衆と自分のやりたい音楽の折衷案を模索して作った』とか、『タイアップ先に寄り添って作った』とか、King Gnuのインタビューは山ほどある。ただ、やはりそれらを紐解いていくと彼らはひとつひとつの音楽に真剣に向き合ってきたことが分かる。確かにライブはとてつもない盛り上がりだったが、何というか、音楽自体が強く浸透しているからこそ成し得た一幕だったのではと。

 

King Gnu - Flash!!! - YouTube

中でも一気にファンの心を掴んだのは“Flash!!!”。レーザービカビカ、スモークバンバンな振り切った演出で、これまでの若干緩やかな流れは一新。……それこそ長尺のライブでは、基本的に最初は緩やかにして最後に激しく、という暗黙の了解がある。それこそそうしたセオリーを完全に無視したのが先行のマネスキンだった訳だけど、彼らはある意味ではとても日本らしく、セオリーに沿ったパフォーマンスをしていた。しかもファンもしっかり付いてきているし、信頼度も厚いなと。

 

King Gnu - 一途 - YouTube

ラストは一途”。井口が「一途になって終わろうぜ!」と絶叫すると、以降は井口、常田ふたりがハンドマイクで闊歩する熱狂空間へ。あまりに激しく動いたためか、井口の顔面からは大量の汗が滴り落ちていて、観ているいち観客の我々でさえも汗が滲む灼熱さ。「井口の歌声が凄い」とか「常田の才能が」とか、もはやそんなものは意識の埒外にある。まさしく限界突破のステージングで魅了した日本最強の4人組は、ラス前の重要な時間を見事に彩ってみせた。

【King Gnu@サマソニ大阪 セットリスト】
Slumberland
飛行艇
Sorrows
BOY
白日
The hole
カメレオン
Player X
Teenager forever
Flash!!!
雨燦々
逆夢
一途

 

The 1975 19:40〜 (OCEAN STAGE)

https://the1975.com/

そして。そしてだ。遂にこの時間の到来である。おそらく今年の参加者の大多数が目的としていたあのバンド、The 1975である。……まずライブレポを記す前に事前情報として知っておくべき事項は3つある。


まずひとつは『The 1975がこれまでのサマソニにおいて、少しずつスターダムへの階段を登ってきた』こと。彼らは2013、2014、2016、2019と何度もサマソニに出演し、最初は最も小さなステージ。そこから着実にクラスを上げて、2019年にはようやくメインステージまで登りつめた(当時のライブレポはこちら)。そしてもうひとつは『彼らのコロナ禍の動き』にある。というのも、彼らはコロナが蔓延し始めた早い段階で全てのライブをキャンセル。2年以上にも及ぶ長らくの活動休止に入ったのだ。その間行われたライブはただのひとつもなく、今回のライブがコロナ禍以後、初のライブとなる。


最後は『彼らのニューモード』についてで、これは先程の話とも繋がるけれど、確かに彼らはライブを2年間休んでいた。ただそんな中でもアルバムはリリースしていて、それがとてつもない伝説的アルバムだった。そして来たる10月には最新作のリリースが確定!……つまるところ、この時点で彼らは伝説のアルバムと最新作、2枚のアルバムのライブ演奏の機会を逸しているのだ。もちろんセットリストなど予想不可能。なお彼らは1週間以上前に来日してリハをしていて、日本のみならず世界的にも注目されるライブ……。それが今回のサマソニだったということを、どうか念頭に置いて読み進めてもらいたい。

 

The 1975 - If You’re Too Shy (Let Me Know) - YouTube

全く予想の出来ないライブは、ステージを覆い隠すスモークの噴出から始まった。結成当初からライブのSEとして定番化していた“The 1975”は鳴らされることなく、モニターには早くもメンバーの姿が映し出されている。けれどもその姿はモノクロで見えず、緩やかな緊張が我々を包み込んでいく。そして鳴らされたのは何と“If You're Too Shy(Let Me Know)”!これまでライブ後半で披露されてきたナンバーを、彼らは初っ端に持ってきたのだ。モニターにはモノクロ加工が施されたメンバーの顔がアップになり、我らがマシュー・ヒーリー(Vo.G)はサングラス姿で、タバコを吸いながらクネクネ踊っている。楽曲の最後、マシューは「We are back.We are dangerous man(俺らは戻ってきた。ヤバい奴らがね)」と呟いていた。

 

The 1975 - Happiness (Reading 2022) - YouTube

繰り返すが、この日のThe 1975のライブは予想の出来ないものだった。まずセットリストに関しては2年前とは大幅に異なっていて、かつてのサマソニで1曲目に投下された曲が最後になったり、随分久しぶりに演奏されるものも複数含まれていて結果ベストアルバム的。そして彼らのライブでお馴染みの美しいVJについては、全てがメンバーひとりひとりを映し出すモノクロ映像に変貌(上の新曲ライブ映像参照)。それこそ2019年のサマソニに参加した際、一番VJを使っていたのがThe 1975だった中で、今年は逆に『一番VJを使わないバンド』になっていたのは印象深い。なお黒人ダンサー2名も不参加だった。

 

The 1975 - It's Not Living If It's Not WIth You (Radio 1's Big Weekend 2019) - YouTube

あまり披露されることの少なかった代表曲“Love Me”や“Chocolate”を鳴らしつつ、かと思えば新作モードになる良い意味でバラバラなセトリ。当然その全てで大絶叫が発生していて、改めて彼らの楽曲が浸透していることを実感する。……前回のサマソニでは日本酒をガバガバ飲みまくり、かなり危ない状態になっていたマシュー(かつてマシューはアルコール依存症だった)、今回は3曲目あたりで足元にある日本酒を手にとって、お猪口に注いで飲むというお上品な感じ。ただアルコール度数的にはビールの3倍以上なので、次第にフラフラしてしまう姿も目が離せない。他にも「タバコどこ?」と自分のスーツをまさぐり吹かす様子もあって、特に左手にタバコ、右手に日本酒を持って踊る姿は本当に格好良かった。刹那的な魅力というか。でも、マシューさん体は大事にしてね……。

 

The 1975 - Love It If We Made It (Official Video) - YouTube

The 1975 - People (Reading + Leeds 2019) - YouTube

マシューは一度のショウのうち、何度か自己破壊的な一幕を見せることでも知られる。今回のThe 1975におけるそのシーンは、後半の“Love It If We Made It”→“PEOPLE”で訪れた。マシューは日本酒を並々注いであおり、曲に突入した頃には前傾姿勢で絶叫し続け、スタンドの背が低くなりマイクが真上を向くほど、激しいアクションで魅せる。続く“PEOPLE”では本来自分が歌うべき箇所では、時折虚ろな目で客席を見詰めながら、ラスラビではカメラマンのカメラを奪って《ガキをなめるなよ》と大絶叫。会場のボルテージが最高潮に達した瞬間だった。

 

The 1975 - The Sound - YouTube

クライマックスは“The Sound”→“Sex”→“Give Yourself A Try”という最強の3曲!3年間待ちわびた『ファッキンジャンプ』は「言わなくても分かるよね?」との感動的な一言で行われ、ファースト回帰とも取れるモノクロ映像が逆に映える、記念すべき1作目のキラーチューン。そして最後は2019年には最初に披露された“Give Yourself A Try”を全身全霊で届けた1時間半。The 1975はこの日、最も完璧な形で完全復活の狼煙を上げたのだ。

【The 1975@サマソニ大阪 セットリスト】
If You're Too Shy(Let Me Know)
Love Me
Chocolate
Me & You Together Song
TOOTIMETOOTIMETOOTIME
It's Not Living(If It's Not With You)
Paris
Tonight(I Wish I Was Your Boy)
Happiness(新曲)
Robbers
A Change Of Heart
I'm In Love With You(新曲)
Somebody Else
Love It If We Made It
PEOPLE
I Always Wanna Die(Sometimes)
The Sound
Sex
Give Yourself A Try

 

3年ぶりのサマソニはこれにて終了。最高の2日間だったのはもちろん、鬱屈する日々の中、本当に久しぶりに「生きてて良かった」と思える時間だった。フェスというものに参加するのも同じく3年ぶりだったけれど、おそらく現時点におけるライブシーン全体を見ても、良い意味であらゆる制限を忘れられる代物だったのが嬉しかった。


ネガティブなことだしもう知っている人は多いかもしれないけれど、今年のサマソニは「ワンオクのTakaが観客を煽った」とか「みんな声出してた」とか、開催後にネットで騒がれる結果になった。これに関しては実際の参加者として見ても確かな事実だったし、そのアーティストについてもどうこう言うべきではないのかなと思う。ただ、この数年間いろいろなライブに参加してきた視点として、最もコロナ前と同じ形で盛り上がっていたのは今年のサマソニだったと確信している。……で、それこそが今年のサマソニが開催された意義だとも思う。「好きに楽しんでね」とする、これまでのライブシーンではなかなか出来なかった幸福。改めて「ライブの良さって本来こういうものだったよな」と。


今回来日してくれた全てのアーティストに感謝を。開催に漕ぎ着けてくれたクリエイティブマンに感謝を。そして、全力で楽しんでくれた参加者の方々に感謝を。また来年、素晴らしいライブを観ることが出来ますようにと願いを込めて。