キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

We can go to the place, Where we're forgiven

5年間勤めてきたバイト先の退職の日が近付き、次第に日々も慌ただしくなってきた。仕事の引き継ぎやら何やらをこなしていくうち、仕事仲間の方々からも力強い言葉をかけていただくことも増えて、中には「えっ?キタガワさん有給消化中も出勤されるんですよね?」と遠回しにイジられたりもしている。もちろんその都度「バカバカ!」とか返すのだけれど、思い返せばたったこれだけの『正しい返答』をするのにも、僕は丸4年もかかったのだ。

これは全人類に共通することだと思うが、今なら考えられない程バカげた行動を昔の自分は取っていたりするものだ。この記事を読んでくださっている方も小中高を振り返れば様々な恥ずかしいエピソードにぶち当たるのは必然と言えるが、こと自分自身に関してはかつての自分自身を回顧すると、ずっと怒っている人間だった。挨拶をしない人にキレ、楽しそうに休憩室で話す人にキレ、当然仕事も不満を顔に出しながら行っていて、とてつもなく会社としても扱いづらい人間だったと思う。

そうした性格が災いし、僕はいつしか誰にも話しかけられなくなり、僕もそんな自分を無理矢理説き伏せるかのように、なるべく更に嫌われないため殻に閉じこもるようになった。だからこそ、そんな僕が生きる道はもう大好きな音楽と文章しかないと思い立ったのが4年前。今のバイトに採用されたのもちょうどその時期で、これまで通り陰で何かを言われているような被害妄想に取り憑かれながらも「俺には文章があるし」とバイト中でも執筆するなど、ある種現実を忘れるように没頭出来る存在が生まれた。それからは本当に文章ばかりで、逆にバイトは金を稼ぐだけの代物としか考えずあまり人と関わらない形を崩すことはなかった。

ただ不思議なもので、そんな社会不適合者な僕にも寄り添ってくれる人が何人かいてくれた。いつも声をかけてくれる学生の子がいたり「キタガワさんの接客を見て面接に来ました」といった人もいたり。中にはアークティック・モンキーズをきっかけに意気投合して一緒にバイトを抜け出してサマソニに行った、3ヶ国語を話せる人だったりも仲良くなって(ちなみにこのMCを和訳してくれたのもその人です)、なかなか楽しい日々を過ごさせてもらった。でもこの時期は若干そうした人ともまだ距離があったというか「俺文章が一番大事だし」のスタンスは崩していなかった。

そんな中2020年、コロナ禍をきっかけに文筆業が予期せぬ方向へと向かったことで、僕がこれまで第一義としていた『文章』に大きく陰りが生じてしまった。執筆依頼も来ず、文章も受賞しない。しかもその頃にはこれまで慕ってくれていたバイトの人も全員辞めてしまっていて、どちらの方向を見ても生きる理由が全く見付からない状況になった。この記事でも何度か綴っている通り、この頃は精神的苦痛からアルコールに逃げるようにもなっていて、あまり記憶がなかったりもする。

ただ最悪な精神面とは裏腹に、僕はちょうどコロナが到来した時期あたりにバイトで昇進が決まり、レジの多くを統括する立場になってもいた。前日深夜から腹に残ったアルコールに吐きそうになりながら新人教育やらシフト管理やら、取り敢えず新しい業務を無理矢理こなす日々。またいっぱいいっぱいだったことも幸いしてか、これまでのように他者に怒りを覚えることもまた、圧倒的に少なくなっていた。

そしてようやく鬱から復帰したとき、気付けば僕はあまりにも多くの人に助けられていたことを知ったのだ。先輩が「キタガワくんのために」と仕事を先に終わらせてくれていたり。以前苦手としていた人でさえ、この仕事になくてはならない人だと本気で思えた。必然笑顔も増え、その笑顔がまた新たな楽しみを生んでくれた。お客様の中にも何人かファン的な人が増えてくれて何だか嬉しくなったし、本当にたくさんの人々に囲まれて、今でも従業員の方々には感謝しかない。……多分、この職場で一生働くことも出来ると思う。だからこそこの状況に甘んじてはいけないような気がして就職活動をスタートさせ今回内定をいただくに至った。これまで仕事をこれまで10か所以上クビ、更にはバイトと正社員合わせて面接を計30回以上落ちている身としてはあまりにあっけなかったが、その結末に何だか真理を見た気がした。


多分、僕にとってこの5年間は必要な5年間だったのだ。もちろん同い年の人は昇進したり子供が産まれたりしたりもしているけど、それでも。文章を全力でやって結果が出なかったプラス、しかもバイトで人間関係の素晴らしさに気づけたプラス。言わばWin-Winである。そして間違いなくそうしたプラス事項は、関わってくれた方々によるものだと言うことにようやく気付けた。だから僕は前向きな就職をしたと、つまりはそういうことなのだ。繰り返すが、文章もバイトもいろいろなことがあった中、今は全てを有り難く感じている。本当に皆さんありがとうございました。あと「キタガワくんいつ次のとこ辞めて戻ってくるの?」の質問何人かから毎日言われるんですけど、スルーしちゃってすみません。頑張ります。

鬼束ちひろ - We can go - YouTube