こんばんは、キタガワです。
水曜日のカンパネラからコムアイが脱退することについて、何もイメージが湧かなかったと言えば嘘になる。その理由はいくつかあるけれど、やはり突飛なライブパフォーマンスで会場を沸かせてきた絶長期を超え、現在の彼女は政治的な活動に傾倒したり舞台への出演と、水カンとしての表舞台の活動からもう何年も姿を消していたことが要因で、心のどこかでは「多分コムアイはこのままフェードアウトするだろうな」との漠然とした思いは何となく感じていた。
その次に考えるのは、決まって「水カンはどうなるんだろう」ということ。そもそも水曜日のカンパネラは3人ユニットではあれど他の2人はまずメディアに出てこない。故に注目されるのは常にコムアイひとりだった訳で、だからこそ彼女の予測不能な言動がブーストとなって話題になっていた節もあり、逆に言えば中心人物であるコムアイがいなくなる未来だけは一切予想できなかったのである。
翻って、コムアイの脱退発表当日の動きを改めて見てみよう。発表されたのは去る9月6日。コムアイは「3年くらい前から、このプロジェクトで私が活動を続けていくのが想像できなくなりました(略)」と活動を通じて次第に肥大化した思いをを吐露、水曜日のカンパネラ・コムアイとしての立場から脱し、今後は個人名義で様々な活動をノンジャンルで行うことが明かされた。そしてコムアイに代わってフロントウーマンとしてステージに立つのは2001年生まれ、『ミスiD2021』でアメイジング ミスiD2021と赤澤える賞を受賞した詩羽(うたは)で、イメージ的にも大きく変化したそのパフォーマンスに、にわかに注目が集まっていた。
P.O.N.D. 〜パルコで出会う、まだわからない世界〜2021/10/8 OPENING PARTY ④水曜日のカンパネラ - YouTube
そんな折に先日YouTubeで公開されたのが、P.O.N.Dオープニングパーティーでのライブ映像である。言うまでもなく新たな水曜日のカンパネラにスポットを当てる場としてはおよそ始めてのステージ。セットリストは“シャクシャイン”と“ディアブロ”、“桃太郎”というかねてよりライブアンセムとして確立していた3曲で構成され、更にはバックボーカルもコムアイなので意識的にコムアイ時代と比較してしまう感はあったけれど、それ以上に印象的に映ったのは詩羽の自由奔放なパフォーマンスだった。にこやかな笑顔を称えながら練り歩き、果てはフロアに突撃するその予測不能な行動はまさしく水カンのライブ。まだまだ荒削りな雰囲気もプラスの作用を及ぼす程の圧倒的な求心力で、ある意味では不安もありながらもいつしか画面に釘付けになっていた、というファンは決して少なくないだろう。中でも詩羽とコムアイがリンクする感覚に陥ったのは大浴場への無常の愛を叫ぶ“ディアブロ”で(おそらくは多くのライブ動画で研究を重ねてきたのだろう)、彼女の歌い方はもちろん随所の動きまでコムアイを想起させつつ新たな魅力を見せた一部始終は感動もの。
新たな水カンの活動は、ここから本格化の一途を辿るのは間違いない。現在公開されている新曲は“アリス”と“バッキンガム”の2曲で、それらはラップ主体というよりは明らかに歌メロ路線を意識しボーカル面に自信のある詩羽らしさを前面に押し出した楽しいポップチューンに仕上がっており、11月には水カンの存在を広める契機にもなったフェス『りんご音楽祭2021』への出演も決定。認知度も高まる一方だろう。……水カンの第二章。まだ朧気にしか見えないけれど、その歩みはきっとこれまで以上に輝かしいものになりそうだ。