昼夜問わずゲームに没頭していた学生時代を終え、仕事の日々に忙殺されるようになって久しい。あれほどプレイしていた代物はいつしか週に数時間程電源を入れれば満足するようになり、そんな限られた時間しかないものだからストーリーを進められるはずもなく、積みゲーと化していく。実際問題、1日の大半を娯楽以外にベットせざるを得ない環境下でゲームの優先順位がどんどん下がっていくのは絶対に避けられない。ではどうするのが最良なのかと問われれば答えはひとつで、少ない時間でも満足度の高い作品をプレイする他ないのだから、難しいところだ。
ただ一度考えてみると、こうした社会人環境に寄り添ったゲームというのは然程ない。プレイがゲーム内スタミナに左右されるアプリゲーはまずまずの及第点として、特に家庭用ゲーム機においては「パッと出来てパッと止められて、それでいて満足出来るもの」に関してはFPSなどのオンラインゲーム以外にはあまりないのではないか。「何とかひとりで完結出来る没入ゲーがあれば……」と探すもなかなか見付からない。そんな思いを抱くユーザーは決して少なくないと推察する。
ならばと編み出した方法こそ、今やっているゲームを満足度の高いものとして昇華するという思考変換である。取り敢えず最近個人的にプレイしている『ロストジャッジメント 裁かれざる記憶』を改めて起動し、限られた時間で大いに楽しめる点を探した。このゲームは歴代『龍が如く』シリーズと同様にメインシナリオ面は大いに楽しめる代物として評価が高い一方、所謂メインとは一切関係のない『サブイベント』や、ダーツや双六、賭博といった『プレイスポット』と呼ばれるストーリーとは関係のない寄り道要素に関しては評価が分かれており、こと今作ではプラスアルファで学校講師としての外部活動も存在するために、賛否がこれまで以上に分かれてしまっている点が耳の痛いユーザー意見として存在するゲームとして知られている。実際自分もメインは時間を忘れて楽しめたのだが、それこそサブは「○○さんが非行をしているそうです」→現場に向かう→解決→また新たな非行が立て続けに発生という、もはや学校教育というより道徳の授業に力を入れてくれと思ってしまう展開のオンパレードで、これがなかなかボリュームもあるためある意味では難儀だなあとは感じていた。
そこで試みるものこそ思考変換である。そう考えると仕事から帰って飯を食べ、風呂にも入って「2時間くらいゲームやって寝るか」との状況においてこのサブストーリーの連続は、とても有意義な存在のように感じるのだから驚きだ。しかもひとつひとつの話は長くても30分以内には終わるし、内容も起承転結がはっきりしているので読後感もある。後はこれらの幸福な寄り道を4回ほど繰り返せば、いつでも楽しく終えることが出来る。これまで作業と見なしていた要素にはっきりと光が点った瞬間だった。
こうした試みの利点は、何もゲームのみに当て嵌まる話だけではない。僅かな2時間に読書をし、結果月に何冊か読破すれば知識の吸収になるし、アプリゲームをすれば話のネタになるし、たとえ何もしなくても睡眠時間が増えたり悩まなくて済んだりと何かしらのメリットは与えられているはず。とどのつまり有意義なのかを定めるのは、決まって自分自身なのだ。……何をやって良いのか分からない暗中模索の渦中でも、生きている証だけは心に積み重ね続ける。「きっと未来は明るいだろう」と自分だけは諦めない。そんな存在でいたいと、肌寒い夜風を浴びながら思う。