キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

このコロナ禍に、敢えてバンドマンが地方をツアーで回ることについて

こんばんは、キタガワです。

 

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本日、東京都の新型コロナウイルス感染者が3000人を超えた。おそらくは超える、でも出来る限り超えて欲しくないと考えていた2000人の大台を軽々超えてこの数字。どうも現状を見るにそのスピードは我々が思ったよりも圧倒的で、果たしてオリンピックが終わる頃にはどうなることやら。


ただ、問題は我々の日常生活の困窮のみには決して留まらない。このニュース速報を見て脳裏を過ったのは、未だ苦境に立たされるライブシーンについてだった。まずもってこのままのペースで行けば夏フェスシーズンに到来するであろう感染急拡大は避けられず中止、若しくは延期を余儀なくされるフェスも特に東京・千葉・神奈川・大阪辺りの発展地域では一定数存在するだろうし、著名なアーティストの単独ライブにも暗雲が立ち込めること必至だ。……昨年の夏に我々はツアーもフェスもない辛い時期を過ごした。故に「来年こそはいろんなライブに行くぞ!」と意気込んでいたライブキッズも多いことと推察するが、結果またも2年連続で夏的な音楽行事は絶たれることとなる。


無論、我々のみならず公演を行うバンドマンにとっても現状の感染爆発は死活問題だ。かつてメジャーデビューに加えアニメ主題歌をいくつも制作し、かつ何千万回もの再生数を誇るバンドのメンバーが金銭的な理由で脱退したことを記した記事を作成したこともあるし、最近では3月に投下された打首獄門同好会による「実はキャパシティの半分という文言は着席状態でのことで、実際オールスタンディングだと大体全盛期のキャパの20%~30%」「そしてチケットの売れ行きも同じく20%~30%」(意訳なので詳しくは以下のツイートを参照)との事実も加えると、やはり今の状況はとてつもなく悪い。まずもって黒字に至る何かを成し得ているのは特典付きのCDの売れ行きがよくTV出演も多数の某男性・女性アイドルグループと、またオンラインライブも好感触で、かつCD売り上げがオリコンチャート入り間違いなしのアーティストに限っての話だろう。

 

 
前置きが長くなってしまったが、とにかく。つまるところ非常に高いレベルの地位と人気を獲得しているアーティストのみが黒字になり、その他大勢のアーティストが赤字を被っているというのが現実。敢えて身も蓋もない言い方をしてしまうならば、国民100名に「今売れていると思うアーティストは誰ですか?」と問うても名前が挙げられない、けれども素晴らしい音楽を鳴らすアーティストたちは十中八九、どうにかこうにか堪え忍ぼうともがきながらこの苦しいコロナ禍を生き抜いているのだ。


そこで否が応にも考えてしまうのが、今も全国各地で行われているライブツアーについてだ。コロナとの接し方が明確になった今でこそ、1mとは言わないまでもある程度の距離を保ち着席形態で行われるライブについては現在キャパ100%で展開するホールもあるにはあるが、未だスタンディングで行われるロックバンドのライブシーンは辛い局面から逃れられないでいて、実際僕自身も約1年半ぶりに2箇所のライブハウスに赴いたところ、片方は本来のキャパシティ300に対して58席でもう片方は250に対して32席(しかもソールドアウト)。加えて個人的にはチケット代も応援の意味も込めて8000円でも1万円でもどんどん取ってくれという感覚なのだけれど、それらのライブはどれも2500円~5000円で推移していて、バンドで何等分がするにしてもかなり厳しい。


ここで単純計算ではあるが、少しライブの売り上げについて考えてみる。先述の例で例えればキャパ合計32席、チケット代2500円としても合計8万円程度にしかならず、それらを1バンド大体4人としても対バンイベントなので更に4つ割ることになる。故に簡単に考えれば80000÷4(バンド人数)÷4(バンド)で、一人頭収入は約5000円。もちろんそこには物販で販売されるグッズ代や各種サポート代金も入ってくるので必ずしもこの計算式が成り立つわけではないが、それでも安い。しかもツアーであれば東京から何時間も機材車に揺られながら何日も潰してようやく到着するものなので、それらの過程も踏まえれば圧倒的に割に合わない。こんなことを書くのは申し訳ないのだけれど、もしもあなたが「丸々何日もかけて、対して金にもならない、動員もあまり見込めない場所に行くの?」と問われれば、はっきり「YES!」と言えるだろうか。というより、コロナ禍でいろいろな意味で困窮していることも鑑みると、今では更にそうした行動を避ける方がある意味では正しい答えのように思える。


では何故、アーティストはメリットよりも明らかに大きいデメリットを背負いながらも、東京から遠く離れた場所までライブをしに向かうのだろう。その理由はまさしく『遠くから応援する我々に直接音楽を届けるため』、というのが最も大きいはずだ。だからこそ、もしもアーティストが自分の暮らしている県近郊にライブをしに来てくれるなら、少しでも興味があればライブに行くべきだと僕は強く思っている。それがアルバムのリリースツアーで、そのアルバムが自分の気になるアルバムであれば尚更。


ただ実際問題、チケットの売上が見込めなかったりキャパシティが小さかったりと、敢えてツアーで地方を外す方針がこのコロナ禍で格段に増えているのも間違いなく、このままだと都市部に暮らしていない人間が大半のライブを経験出来ない未来も大いにあり得る。……今までは「お金がないから」「予定が合わないから」と行けるライブも行かなかったりする人も多かったろうが、このコロナ禍を経て、これからは我々ひとりひとりの行動が物を言う時代に本格的に突入していく。様々な規制が続く2021年。けれども音楽に危険性はひとつもないのだ。今後とも好きなアーティストはCDを買ったり行動をチェックしたりと常に目を向けつつ、近くにライブをしに来てくれれば赴く。そうした行動が本当に重要になる時期は、既に訪れている。

 

バックドロップシンデレラ『2020年はロックを聴かない』 - YouTube