キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ここで逆に、コロナ禍でいろいろと規制されたライブシーンの良さを考えてみよう

こんばんは、キタガワです。

 

ライブハウス界隈でソーシャルディスタンスや発声制限といった暗黙のルールが適用されるようになってから早いもので、2年が経った。未だ感染拡大が収まりを見せない現実を考えると長期化は避けられないため、きっとあと2年程はこのままの状況が続くのだろう。特に演者としてはやり辛い環境がスタンダードとなることに申し訳ない気持ちもありつつ、漠然と「仕方ないなあ」と冷たい感情に囚われたりもしてしまう今日この頃だ。

けれどもこのコロナ禍でビクビクしながらライブに足を運ぶ中で、疑問に思った点がひとつ。それはズバリ『今のライブシーンに前向きな部分はないのか?』ということである。絶対にこの状況をプラスに考えられる要素だったり個人的心境だったりは存在するし、これまでとは全く違う運営を迫られたライブシーンは、決して180度変わってしまった訳ではないと思うから。……そこで今回は世間一般的に知られる現在のライブのリアルを敢えてポジティブに変換し、逆に『今しか出来ないコロナ共存のライブシーン』の前向きな点を列挙。結果コロナ禍でライブ参加を断念し続けてきた人の背中を押し、また否定的な考えを抱く人にも何らかの思考変換が出来るような、今のライブシーンのポジティブなリアルを伝えていきたい。

 

 

①自分のペースで楽しめる

音楽は好きだけどライブには行かない……。そんな悩める音楽好きにとってこれまで巨大な懸念点として浮上していたのは、きっとライブへの何となくの恐怖感であろう。コアなファンに囲まれて浮くんじゃないか、お決まりのコール&レスポンスについて行けないんじゃないかと、これはライブに限らずそうだが初めての経験は相当な覚悟が必要なはず。ことライブに関しては「私有名なこの曲から入ったんだけど……」という我々的には実は大歓迎な入り口にもこわごわしてしまったり、なかなか一歩が踏み出せなかったりもする。

確かにアーティストによっては観客にアクションを要求することもなくはない。けれどもこのコロナ禍によってアーティスト側の盛り上げ方も変化していて、ある程度レスポンスが取れなくても楽しませる試みが随所に取られている。かく言う自分自身もバンドの「お前ら行けんのかー!」、アイドルの「この振り付けマネして踊ってね!」といった行動が本当に苦手なクチだったけれど、ここ最近のライブではこうした観客側に行動を求めることは激減し、アーティストのみで完結させる試みも増えてきた印象がある。逆にシャイな音楽好きにも優しく寄り添ってくれる環境が今なのだと、ライブシーンに足を踏み入れればはっきりと分かるはずだ。……奥手な人ほど、今の環境はベスト。どうか気兼ねなく参戦を決断してみてほしい。


②感染拡大防止の全力ぶり

今は大して言われてはいないまでも、特に一昨年あたりに頻りにネガティブキャンペーン的に吹聴されてきたのが、ライブシーンにおけるコロナの危険性。理由は考えてみれば単純に『密閉・密集・密接』のいわゆる三密がライブハウスそのものではないか、とする一部の意見が拡大したことによるのだが、確かに存在したそれらの感染拡大懸念事項を改善に向かわせた結果、今のライブシーンは明らかにリスクの少ない形で行動を考え尽くしている。

例えば最も恐れるべき飛沫感染については、まずもって現在全ての会場でマスク着用が義務化されている。もちろん何か不測の事態が起こった場合はすぐさまスタッフが対応するので、我々への被害はまずゼロだ。更には肩と肩が触れ合わない距離感で各自の座席を決める試みも完璧で、距離的な不安も特段ない。そして現在多くの飲食店で行われているような検温チェックに加え、場所によっては問診票の記入や新型コロナウイルス接触管理アプリ『COCOA』のインストール、チケットは各自でもぎる、密集を防ぐための規制退場などを半ば義務化しているライブも多く、それこそ我々の日常に溶け込んでいる電車通勤や対面授業、友人らとの語らいよりも明らかにリスクが低かったりも。


③『今だからこそ』の環境謳歌

そして、これまでのライブとは異なってしまった状況だからこそ出来る最大の楽しみ方がある。それは単純に『この環境は今だけ』という特別感だ。このコロナ禍は絶対にどこかで終わる訳で、つまりは必然ライブシーンも何年後かには元通りになる。その時我々はきっとスパっと以前のライブに身を委ねることだろうが、この『コロナ禍のライブシーン』を知っているかどうかで、関わり方も違ってくるのは明白だろう。

例えば最初は嫌々やっていたマスク生活が、そのお陰で表情に気を遣わなくて良くなったり、風邪もひかなくなったように。不便は反面、ポジティブな思いに転換することだって可能なのだ。……となれば、一見この規制の敷かれるライブシーンは来たる本チャンの楽しみに結びつける、最高のスパイスと言っても良い。大好きな音楽をは爆音で聴くに限ると、終わった頃には絶対に思えるはずだ。


正直に綴ってしまうと、『ライブに行く』ということ自体がかなり敷居が高いのが今までの当たり前だった。「ひとりで行くの怖いな」とか「予定が合わないな」とか……。たとえ自分の大好きなアーティストが地元に来たとしても、ライブに参加する方向まで向かった人は数少ない。加えてここ数年ではコロナの蔓延もあり、どんどん足が遠退いてしまった人も少なくないだろう。けれども実際参加してみると、こうした規制のあるライブも意外に楽しいことが分かるのだ。何事も自分のペースで、コロナにも怯えることなく爆音を一身に浴びる体験は、やはり音楽好きの生活になくてはならない代物。いろいろ思うことはあるだろうが、それでも。『この機会だからこそライブに参加してみる』という行動を、是非とも一度リアルに考えてみてはいかがだろうか。

 

ハンブレッダーズ「再生」Music Video - YouTube