キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

【ライブレポート】KEYTALK『15th Anniversary Tour 津々浦々夏の陣 〜鳴けぬなら、踊りたまえ、ホトトギス〜』@米子Aztic laughs

こんばんは、キタガワです。

 

https://sp.keytalkweb.com/

KEYTALK史上最大規模となる全国ツアーは彼らにとってどんな意義を持つものなのか……。そんな絶対に自分では答えの出ない疑問を、僕は開演前にずっと考えていた。確かに、このコロナ禍に大規模な全国ツアーを行ってきたインディーズバンドはたくさんいるだろう。ただKEYTALKは別格。デビュー当時からフェスではメインステージに出続け、ライブは必ずソールドアウトというメジャーな彼らが全国津々浦々を回ることに関しては、地元民としては感謝もあれ、何か他の理由がある気がしてならなかった。

元々この日鳥取県・米子laughsで行われたライブは、ツアーの中盤戦として位置づけられていたものだ。ただメンバーのコロナ感染が発覚し、予定が延期。そのまま米子公演を含めたいくつかを延期した状態でツアーは進み、50本目のこの日の米子は事実上のツアーファイナルとなった。会場にはツアーファイナルということも作用してか、遠征組が圧倒的多数多数。その他の参加者は初めて彼らを観る地元民が占めていて、開場前の待機列が作られる広場にはKEYTALKのTシャツを着たファンたちでごった返すという、期待値の高さを表す形となった。

フロアに入ってパンパンの客入りを感慨深く確認していると、19時ジャストに突然会場が暗転。これまで恒例となっていた“物販”(KEYTALKが10年前におふざけで作った曲)のSEではなく、様々な楽曲がぶつ切りで繋ぎ合わされた新たなSEと共に八木優樹(Dr)、小野武正(G)、寺中友将(Vo.G)、首藤義勝(Vo.B)らメンバーが登場。その際に気付いたことだが、それぞれが持つギターとベースには本来あるはずの長いケーブルが繋がれておらず、完全ワイヤレス。また巨匠(※寺中の愛称)のギターはあえて余った弦をそのままにしているために、ペグの上には短い6本の弦がピョンピョン(以下動画参照)。この光景を観ると「KEYTALKだなあ」と思ってしまうのは、ファンならではか。

 

KEYTALK - 「桜花爛漫」MUSIC VIDEO - YouTube

そして巨匠が片腕を挙げてPAさんにSEを停止させると、爆音と共に義勝が高らかに歌い始める。そう。1曲目はアニメ主題歌としても浸透したいきなりのキラーチューン・“桜花爛漫”である。一度聴いたらはっきりと分かるあの歌声で歌われるこの楽曲の爆発は何と言うべきか……。とにかく、ここから何十分も続く幸福の始まりなんだなと胸が高鳴る感覚があった。途中の手拍子もバッチリ決まってファンとの信頼度も抜群だったし、昨日に引き続いてのライブなので喉の調子を懸念していたりもしていたが、結果杞憂。それどころかツアーファイナルだからか、全てを振り絞ろうとする雰囲気さえも感じられる力強いパフォーマンスだ。

ライブは15周年ということもあり、この日はセットリストに関しても活動を総括するものになる!……と思いきや、意外と違っていて。確かに“桜花爛漫”をはじめとしたライブアンセムを入れ込んではいたものの、全体としては「俺たちがやりたい曲をこのタイミングでやる」というスタンスを貫いていたのは驚きだった。そのためベストアルバムに収録されていたような楽曲の大半は演奏されなかったのだけれど、つまるところ彼らが今一番やりたい曲はキラーチューン連発ではなくて、新作EP『KTEP4』や最も新しいアルバムの『ACTION!』、そしてメジャーアルバムの中にあるあまり披露されてこなかった曲、ということになるのだろう。

 

KEYTALK - 「MATSURI BAYASHI」 MUSIC VIDEO - YouTube

以降はアッパーなセクシーソング“宴はヨイヨイ恋しぐれ”を《いやー、分かりません》のフレーズにて、巨匠が目玉おやじのマスコットをマイクの側で動かして答える一幕もありつつ、意外な選曲の“真夏の衝動”で、一気にライブモードへ。そうして続いた“MATSURI BAYASHI”は、前半部のハイライトのひとつだったように思う。MVとしては“MONSTER DANCE”に次ぐ数少ない公式振り付け楽曲であることもあり、ファンの中には完コピして踊る人も多数。そうでなくともそのお祭り的な雰囲気の破壊力は凄まじく、周囲を見渡すと全員が体を動かしている。また演奏陣に関しても武正は原曲のギターソロを完全無視、超絶テクで即興ソロを鳴らしているし、八木も薬指と小指でスティックを支えて叩くという、一見どうやっているか本当に分からないプレイで魅了していて最高だ。

MCゾーンでは、この日がツアーファイナルであること、またもう少しでライブが終わってしまうことについて吐露。武正は「いろんなことがあったなあ」とし、すかさず会場のファンに「昨日の松江きた人?」「地元から来た人?」とクエスチョン。結果県外勢が圧倒的多数だったことからか、最前のファンを何となく指差し「あー……。あなた昨日来てましたもんね?うん、覚えてる」と適当に逆質問。ちなみにその間にも酒を愛する巨匠は、ライブハウスによくあるプラスチックのコップに注がれたアルコール(おそらく中身はジントニック)を毎回半分程度飲みまくっており、しかもこれをMCのたびに行っていたことは特筆しておきたい。

 

KEYTALK "fiction escape" 【PV】 - YouTube

ここからは最新EP『KTEP4』のリード曲“夜の蝶”を含めた、ややBPMの速い曲を固め打ち。“夜の蝶”と“大脱走”、“流線ノスタルジック”は今のKEYTALKを。残る2曲はメジャーデビュー曲とインディーズ曲という、この周年ライブだからこその流れにグッとくる。中でも感動的に映ったのは、この日のセットリストでは最も古い曲に位置していた“fiction escape”。今思えばタイアップやメジャーでの制約といった縛りもない、若かりし頃にリリースされた裸一貫の楽曲である。楽曲中でも《23年間》《26年間》と当時の年齢が刻まれているが、今の彼らは30歳を超え、すっかり日本のロックバンドを牽引する存在になった。そのことを考えると、また新たな感動となって聴こえてくるのがこの日の“fiction escape”。ディレイのエフェクターの踏み間違えで武正のギターが鳴らなくなるミスも含めて、とても見ごたえのある瞬間だった。

メジャーデビューシングルの“コースター”、そしてインディーでポツポツと売れ始めた“fiction escape”もそうだが、やはり我々がこの瞬間に抱いたのは、彼らの活動の歩みについてだった。そんな思いを見透かすように、話は彼らが大学生の頃、1000枚限定でタワーレコードでリリースした処女作『KTEP』へ移行。当時所属していたKOGA RECORDSの社長から「一瞬でハケる」と言われていたにも関わらずなかなか売れなかったこと、その後のライブの動員も増えなかったことなどを回顧。今回の『KTEP4』は当時使っていたスタジオで録音、プロデューサーも同じ人を起用し、原点回帰としてリリースしたことも語ってくれた。

 

KEYTALK - 2016年3月2日発売「DVD&Blu-ray&CD 『KEYTALKの武道館で舞踏会 ~shall we dance?~』 」トレイラー - YouTube

また今年が結成15周年であることに加え、来年はメジャーデビュー10周年であることについても触れた巨匠。「メジャーデビューは、僕らが絶対に音楽で食っていくぞって決めた運命の日でもあって。いろんな経験をさせてもらったけど、なかなかうまくいかなかったり、悩んだ日も正直ありました。そんな僕らがメジャーデビューした運命の日、2023年3月1日。日本武道館でライブをします。ぜひ皆さん遊びに来てください」。一言一句を記憶している訳ではないけれど、彼はしっかりと自分自身の思いを口にしてくれた。……コロナも増税もあらゆる事件もそう。当たり前だと思っていたことは決して当たり前ではなくて、KEYTALKが15年間続けられているのも、当たり前なんかではないのだと改めて気付く。

 

KEYTALK/「アオイウタ」MUSIC VIDEO(2018年1月24日発売13th SINGLE「ロトカ・ヴォルテラ」収録) - YouTube

印象深いMCを終えた後半戦では、これまでワンマンライブでもあまり披露されなかった楽曲を多く披露するゾーンに。中でも驚きと共に迎え入れられたのは、シングル曲のカップリングとして収録されていた“アオイウタ”の一幕だった。……先にも巨匠が述べていたこととも繋がるけれど、はっきり言ってしまえばKEYTALKはここ数年、ファン的にはある種の混迷期に入っていたように思う。具体的にはアルバムにおける『Rainbow』と『DON'T STOP THE MUSIC』の2枚あたりがそうで、もちろん楽曲は良質なものばかりだったものの、これまでの楽曲が次々跳ねた反動からか「もっと『HOT!』のような曲を聴きたい」といった贅沢な悩みを抱えるファンは確かに存在。この“アオイウタ”に関してもそうで、MVが制作されている代物でありながらリリースされて以降、ファンの反応を考えてかほとんど演奏する機会のないままこの日を迎えた楽曲だった。

結論から言えば、この楽曲のメインボーカルを務める義勝は、この楽曲で泣いていた。彼は2番に入った瞬間に後ろを向き、そのまま歌声が入らないままAメロ、Bメロと時間が経過。ファンのみならずメンバーも困惑する時間にしてわずか10秒程度の沈黙だったが、これまで人前で涙を見せることのなかった義勝の思わぬ姿は どうしてもこの15年間の重みを感じずにはいられなかった。特に《もう一回僕ら 描いていこう》とするフレーズを巨匠が放ったとき、我々ファンには絶対に分からない何か……アーティストにおける『産みの苦しみ』のようなものがあったのだろうなと察したりもして。それこそシングルカットされている曲の大半は義勝作曲な訳で、「“MONSTER DANCE”みたいな曲を」「もっと祭りイメージの曲を」といった意見もあったに違いないし、本人なりの悩みも携えた15年間だったのだなと。

先程の“アオイウタ”の驚きの一幕を経て、武正は「びっくりしたー!(義勝が歌えないところを)俺が歌おうかと思ったもん」と一言。すると巨匠が「それだと“アオイウタ”じゃなくて“ヤバイウタ”になっちゃう」と突っ込んで笑いを取ると、残されたライブ時間が短いことを暴露。また今年行うライブに関してもほぼ終わったと語り、話は2023年1月1日、年が変わってすぐに演奏する『COUNTDOWN JAPAN』へ移行。先日タイムテーブルが発表されたこのフェスにおいて、自身の出番前のカウントダウン担当が盟友・04 Limited Sazabysであることを語ると、巨匠がボーカルのGENの高い声のトーンを真似しながら「皆さん!フォーリミにちなんで4回叫びましょーう!……ありがとうございまぁす(低音ボイス)」と、本当にやりそうなリアル感でイジり倒す。他にもツアー開始からいつの間にかやらなくなった巨匠のマラソンの話などいろいろありつつ、本編へ……。

 

KEYTALK - 「Summer Venus」MUSIC VIDEO - YouTube

「残り2曲です。最後は僕らなりの応援歌と、ハッピーな曲で終わりにしたいと思います。今日は本当にどうもありがとうございました。KEYTALKでした!」。巨匠はそう語るとストレートに背中を押す“Oh! En! Ka!”、一転して強制的なパリピモードでアゲまくる“Summer Venus”に雪崩れ込みだ。中でもこれまでのフェスではほぼ欠かさず演奏されてきた“Summer Venus”は爆発力が凄まじく、KEYTALKでは珍しい打ち込み主体のサウンドでもって『楽しい』の一言に集約される盛り上がり。また後半では巨匠と義勝がビールを一気飲みし、唇から垂れるビールを拭いながらパフォーマンスする姿もあり、テンション上昇にも一役買っていた。演奏が終わると先程までの熱量はどこへやら、ひとりひとりが「まあ会おうね!バイバーイ!」というセリフを裏声を使って叫び、ラストに残されて困惑した八木が「にゃいっ!(八木の一発ギャグ)」を放ちつつ、失笑の会場を首を傾げながら後にする幕切れで終了。最後まで各々のキャラクターが立っているKEYTALKであった。

鳴り止まないアンコールに答え、ツアーTシャツ着用でまず出てきたのは八木と武正。普段MCをすることが少ない八木は「いやー15年ですよ。15年間何かを続けるってなくないですか?15年やってきたことってオ◯ニーくらいしかないですよ」と突然の下ネタを展開。先程までの熱が一気に氷点下まで下がったことを察した八木、「普段全然MCやらないんで許してください!」と陳謝するも、武正の「(アンコールの時間を)みなさんいけますか!」と叫んだ際に下ネタと勘違いして「イケますか!」と返してしまう八木……。その様子をいつの間にかステージに現れた巨匠と義勝が真顔で見詰めるという、カオスな時間である。

 

KEYTALK/「MONSTER DANCE」MUSIC VIDEO - YouTube

ツアーファイナルであることもあり、本編初公開となるFCツアーの開催を宣言したKEYTALK。ここからはアンコール楽曲として『KTEP』シリーズより八木作曲の“shall we dance?”、セットリスト入りしない日はない超代表曲“MONSTER DANCE”、初期の最終曲候補だった“アワーワールド”と続いていく。メンバー全員が作曲の力を持っていることに気付かされた“shall we dance?”をはじめ、“MONSTER DANCE”では声は出せないもののMVのダンスを完コピして踊るファンに思わずウルウル。久方ぶりの披露となった“アワーワールド”に関しては、合間合間に挟まれるメンバーを呼ぶアレンジにグッときて、総じて15年間の重みを強く感じた時間でもあった。

……最後の最後、自身以外のメンバーが全員ハケた後に語った巨匠の言葉が忘れられない。「コロナとかいろいろ。辛い世の中です。だから皆さんの周りにもライブハウスに行かなくなった友達だったり、なかなか自分も行けなかったりっていう人も、多分たくさんいると思います。この状況で僕らが最大規模のツアーをやった理由はライブハウスを取り戻そうと思ったからです。いろんな地域で頑張っているライブハウスがあるから、僕らは活動出来ている。そのためにこれまであまり行けなかった地域も含めて、僕らじゃないと出来ないから、攻めたライブをやってます。また絶対に、今度はまた皆さんと大声でライブが出来ることを願っています。今日は本当にありがとうございました!」と、彼は高らかに叫んだ。

 

アワーワールド - YouTube

コロナ禍以降……いや、おそらくそのずっと前から、地方都市と都会とのライブバランスの差は激しかった。それこそ僕は島根県民だけれど、基本的にツアーにアーティストが来ることはないし、行くとすれば片道5000円レベルの遠征が必須。しかもこのコロナ禍によって状況は悪化し、そもそも収益が見込めない地方都市は行くべきではない論のようなものが、水面下では確かに根強くある。嫌な話をしてしまうが、今回のライブは結果的に『あのKEYTALKが僕らの町に来てくれた!』という個人的な感動とは裏腹に、チケットソールドアウトとはならなかった。これは少なくとも地方都市において、ライブツアーに行く重要性は失われつつあることの証左だと思う。

そんな中でも彼らは来てくれた。何故か?巨匠の言葉を借りれば、今回のツアーの意義が「ライブハウスを取り戻すため」にあるためだ。今回のツアーが期せずして地方都市である米子がラストになったのも、何かの運命かもしれない。本当に素晴らしいライブだったし、同時にこれからも彼らを追い続けようと強く思った一夜だった。

【KEYTALK@米子laughs セットリスト】
桜花爛漫
宴はヨイヨイ恋しぐれ
真夏の衝動
MATSURI BAYASHI
夜の蝶
大脱走
流線ノスタルジック
コースター
fiction escape
ODORYANSE
パラレル
エンドロール
アオイウタ
Monday Traveller
Oh! En! Ka!
Summer Venus

[アンコール]
shall we dance? 
MONSTER DANCE
アワーワールド