キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

『CDJ2122』全出演者&タイムテーブル発表に、ライブシーンの未来を見た

こんばんは、キタガワです。

 

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http://countdownjapan.jp/

 

12月28日から年末にかけて行われるrockin‘on社主催の大型フェス『COUNTDOWN JAPAN』のタイムテーブルが、本日正午に発表された。気になるヘッドライナーは[Alexandros]、10-FEET、sumika、サンボマスターら豪華布陣で、新型コロナウイルスの影響により中止となった昨年の思いを晴らすべく、万全の感染防止対策を試みた上で開催される。


ふと思い返せば、コロナが蔓延し始めて以降『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』然り『COUNTDOWN JAPAN』然り、rockin‘on社によるフェスは相次ぐ中止を経験してきた。だからこそ今回のCDJ開催は言わばフェスシーンにおける『再生の一手』であり、出演アーティストには宮本浩次、クリープハイプ、KEYTALK、マキシマム ザ ホルモンなどこれらふたつのフェスに長らく貢献してきたアーティストを固める盤石の体制。出演アーティストが発表されると同時に賛否両論が巻き起こるのはフェスの常だけれど、あまりに素晴らしい今回の起用に異論を唱える人は極めて少ないだろう。


それでは各日のタイムテーブルについて見ていこう。まず1日目は、今回のCDJで考えればポップに寄った出演者が並んでいるのが特徴的だ。特に櫻坂46→Little Glee Monster→マカロニえんぴつの流れは様々なフェスを見渡しても例がなく、ポップを好む音楽好きがこの時間帯にドカっと集中しそうだ。そこからヤバT、ユニゾン、スカパラ、宮本浩次という年代もジャンルも飛び越えたアーティストが続き、トリは満を持してのアレキ。これまでも時代時代で楽曲にメッセージ性を込めてきたアレキらしく、一体どんなセットリストで臨むのか期待したいところ。なお余談だが、これまでもCDJ初日のメインステージに出演するアーティストは年末の紅白歌合戦へ出場する場合が多く、今回も櫻坂46、リトグリ、マカえん、宮本あたりは可能性が高いように思う。……つまりは超お手頃価格で今後誰もが知るであろうアーティストの生ライブを観ることが出来るということでもあるので、少しそうした部分にもアンテナを張ると更にライブが楽しみになるかも。

 

[Alexandros] - 閃光 (MV) - YouTube


続いての2日目、こちらはかなりのジャンルレス。きゃりーを打首とマイヘアがサンドイッチし、後にはハイエイタスとホルモンがかの自然派ポップニスト・Coccoを囲む流れは例年を鑑みても異質であり、逆に言えば今やジャンルに縛られず音楽を愛する人が大半なシーンのリアルを、見事に体現している感もあって面白い。それでいてラストはホルモン→マンウィズ→10-FEETの京都大作戦っぽさ溢れる熱いロックバンドで締め括るのはやはりロックフェスの醍醐味か。10-FEETに関しては“その向こうへ”や“アンテナラスト”、“ヒトリセカイ”といったライブアンセムがコロナ禍を経た現在、どんな深みを携えて鳴らされるのか、そしてホルモンとマンウィズとのコラボがあったりするのかなど、注目ポイントは満載。総じてこの日は替えのTシャツ持参はマストで、灼熱地獄に体を預けよう。

 

10-FEET - ヒトリセカイ - YouTube


折り返し地点の3日目は、新進気鋭の若手アーティストが多くを占めるロックの現在的ポジションに。まずはポルカ→フレデリック→サウシーというrockin‘onとゆかりの深いロックバンドで会場を温め、ビーバー、ナンバガ、BiSHの音楽総合格闘技で沸点突破、最後はクリープとsumikaでしっかり占める……。ニューアルバムのリリースが決定しているフレデリックとクリープをはじめ、いろいろと楽しみな3日目だが、中でも驚きなのはsumikaがヘッドライナーに迎えられた大躍進であり、小さなステージから愚直に実績を積み上げてきた彼らの立ち居振る舞いは是非とも刮目したい。他にも最近のsumikaは“Babel”や“リタルダンド”など振り切った楽曲も多くリリースしているので、これらがどうセットリストに組み込まれるのかも楽しみ。

 

sumika / リタルダンド【Music Film】 - YouTube


最終日である4日目については、もはや言わずもがなのロックデイ。前半のキュウソ→ブルエン→KANA-BOON→KEYTALKの布陣だけでも元が取れそうなものだが、そこから続くのがゲス極→ずとまよ→フォーリミ。まるでお腹一杯を通り越して破裂寸前になりそうな、濃厚なメインディッシュのオンパレードだ。ライブハウスを活動の基盤として活動を続けてきた彼らだからこそ、その熱いライブは絶頂ものに違いない。そして今フェスの堂々のフィニッシャーを飾るのは我らがサンボマスター。歌詞を無視して思いの丈を叫び散らす一幕は絶対だろうが、それこそ今年に入って中止になったフェスに向けて歌われる“花束”や、観客について叫ばれる山口の「泣いてんじゃねえぞー!」のメッセージにも期待大。涙と笑いと興奮と、三拍子揃った圧巻のライブを観ることが出来るこの日は(というか全日そうだが)、何が何でも参加せねばと思う。

 

サンボマスター / 花束 MUSIC VIDEO - YouTube

 


これまでつらつらと綴ってきた通り、今回のCDJは圧倒的な布陣で展開される、今年開催されるフェスの中では名実共に最大規模のロックフェスとなる。ただ覚えておかねばならないのは、今回のフェスはどう足掻いても赤字であるということ、そして今年開催する理由の第一義は我々リスナーのためを思ってのものであるということだ。

 

「本来、参加する方はその興行が、自分の支払うチケット代の対価にふさわしいかどうかを考え参加を決めます。主催者がどのような事情を抱えているのかは参加者の関知しないところです。対価にふさわしくないと言われたら、そのとおりです。それでも参加をお願いするのは、はっきり言って参加者の皆さんへの甘えです。申し訳ないですが甘えさせてください。必ず最高のフェスを作ることで参加者の皆さんに返す覚悟が私たちにはあります」……これはフェスの総合プロデューサーである渋谷陽一氏のメッセージだが、そもそもrockin‘on社は昨年度RIJ、CDJが中止になったことでとてつもない損失を抱えてしまっているはずだ。詳しくは名言されてはいないけれど、例えば香川県のフェス『MONSTER baSH』が中止になった際、経済損失が50億円以上にものぼったニュースが大きくメディアで語られたように、それ以上の規模を誇るこれらのフェスがどれほどの損失だったのかは想像に難くない。


実際、今年のCDJは赤字を削減する考えから装飾の撤廃、収容人数1万人以下といった対策を講じており、渋谷氏も「全てが例年と違う形になります。その多くは参加者の皆さんへのサービス低下につながる変更です。本当に申し訳なく思います。こうしたことを納得した上で参加を決めていただければと思います」と悲痛な胸の内を吐露している。だからこそ我々は主催者側の思いも汲み取りながら、最高に楽しみ、そして万全の対策を講じながらCDJに臨む必要がある。……約1年越しに行われる素晴らしき祝祭・CDJの絶対的な成功を願って。今は参加アーティストの予習をしつつ、それでいて当日の行動についてもイメトレを欠かさず。晴れやかにその日を迎えようではないか。