キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

PS4ソフト『ヘッドライナー:ノヴィニュース』がもたらす、情報社会の在り方について

こんばんは、キタガワです。


随分と久方ぶりのゲーム記事執筆である。思えばPS4で発売された『AI:ソムニウムファイル』について記したのは昨年の9月。よって4ヶ月近くPS4はおろか、ゲームと呼ばれる類いのものにはほぼほぼ触れていなかった計算だ。


現在において当ブログのアクセス数上位に位置している『プラチナトロフィーが簡単に取れるゲーム12選』に顕著だが、かつての僕は相当なゲーマーであった。幼少期より「ゲーム博士」と呼ばれ、大学卒業に至るまでゲームをプレイすることが日常と化していた当時の僕からすると、一切ゲームに触れない今の僕の生活は考えられない末路であろうと思う。


そんな僕が何故ゲームをプレイしなくなったのかと言えば、それはもちろん『歳を取ったから』というのも一因ではあろうが、最も大きな理由としては純粋に『興味がなくなったから』である。


一概に『興味がなくなった』というのは些か語弊があるかもしれないが、要は付いていけなくなったのだ。かつて友人らと自宅でワイワイやっていたはずの対戦ゲームはオンラインの波が押し寄せ、課金だのアップデートだの、様々な要素がさも当然のように実装されている。例を挙げれば龍が如くがRPGになったり、ポケモンの挙動がリアルになり特性やタイプが追加されたり……。別段僕は懐古主義の人間ではないけれども、流石にここまでの変化を遂げられると「もう分からん」となってしまい、手を出す気すら失せてしまうのだ。


更に大人になったことで、幼少期には考えられなかった趣味嗜好がゲームの欲求を上回るようになったことも大きい。それこそ僕個人に当てはめると『酒と音楽』であり、ゲームにそれらを凌駕する魅力を感じないというのが正直なところ。酩酊状態でRPGをプレイしたこともあるが、「次は○○タウンに行ってくれ!」と言われた内容が酒の影響で頭に入って来ず、気付けば次なる行き先が分からないまま数時間経過したこともある。……「だったらYouTubeで音楽聴くわ」という感じでもって、ゲームからはいつしか自然に離れてしまった。

 

f:id:psychedelicrock0825:20200129002839j:plain


そんな偏屈な性格の僕であるが、久々に当たりゲームに出会った。それこそがタイトルにも冠したPS4ソフト『ヘッドライナー:ノヴィニュース』である。


『ヘッドライナー:ノヴィニュース』は海外で製作されたインディーゲームで、発売から2ヶ月が経つにも関わらず、Amazonレビューは僅か3件とお通夜状態。プレイステーションストアにて2000円で購入できるお得さに対して、一切の噂を聞かないその無名っぷりには度肝を抜かれるが、それはそれとして。


今作の優れている点として挙げられるのは、その独特なシナリオだ。タイトルの『ヘッドライナー』は立役者、『ノヴィニュース』は地元新聞の名前。そう。もうお分かりだろう。今作は編集長となった主人公が、誌面に載せる記事をひたすら選定するのみという、至ってシンプルなゲームなのだ。


日数は15日。更に1日はおよそ10分~15分程度で終了するため、スピード感が異常に早い。使うボタンもスティックと○と×のみという単純設計で、実質的なプレイヤーの行動は記事の内容を見て「これは載せよう」「これはボツ」とただ選ぶ。これだけ。


正直ゲームとして破綻しているようにも思えるが、特筆すべきはその選択によって引き起こされる世の中の変化である。


例えば『A店は品揃えが良い』という記事を載せたとしよう。すると必然取り上げられたA店は繁盛し、完全なる黒字となる。しかしながら、細々と生計を立てていた個人商店Bはどうだろう。もちろん客の大半がA店に引き抜かれるため、売上は下がる。それどころか「B店はA店と比べてヤバいよね」との噂も広がり、最終的にB店は店を畳まざるを得ない経営状態となってしまうのだ。


では逆に『A店は品揃えが良い』との記事をボツにした場合はどうなるだろう。まずその記事を執筆する予定であったライターは憤慨するだろうし、A店の売上は伸び悩み、行く行くは町全体の購買意欲の低下に繋がっていくのだ。そしてB店にとっては地道な商売を続けることができるが、もしかするとA店は最終的に「何であのとき記事をボツにしたんだ!」と編集部に駆け込むかもしれない。


要はこんな具合で、ひとつの選択が予想だにしない結末を生むこともしばしば。もちろん上記の内容はフィクションではあるものの、実際のゲームでは加えて「頼む!店が潰れたら娘の生活費が賄えないんだ!」とガチモンの悩みを吐露されたり、ボスから「この記事は絶対載せるな!あとこれは載せてね。先方からの指示なので」などと命令されるのでたちが悪い。行くも地獄、戻るも地獄のDead or Die状態。というより、こんな重大な仕事をひとりに任すんじゃないよ。


だがメディアの情報を第一義として信じこむ今のインターネット社会において、メディアが伝える情報の意義は極めて高まっていると思うのだ。例えば不倫騒動の果てにタレントの好感度が地に落ちるその裏では、タレコミした人物に多額の報酬が与えられているはずだし、上級国民・飯塚幸三の轢き逃げ事件にしても、メディアが報道しなければ事件の存在自体が闇に葬られていたかもしれない。メディアのみならずほぼ全ての事柄に当てはまることではあるが、ひとつの選択には大いなるメリットとデメリットが混在しているのである。


町を発展させるか、破壊させるか。国を容認するか、反対するか。友人を救うか、失うか……。もちろん今作は周回が前提の作りであり、1周目にボツにした記事を2周目に許可することで、また違った形で世論が動く。そして最終日の15日になった頃、ひとつひとつの行動が巨大なムーブメントとなって町を多い尽くしていくのだ。


そう。これは単なるゲームではない。言うなれば、痛烈なる社会風刺だ。良い部分だけを切り取って報道するニュース番組や「名簿はないっすけど……」とはぐらかしまくる桜の会問題、アメリカとイランの国際情勢などに心底ぶちギレている人にお勧めしたい名作だ。それでは最後に、公式サイトに書かれている一文を紹介し、今記事を締め括りたいと思う。


「このゲームのエンディングに正解はありません。あなたが理想とする将来が訪れるまで……」

 


ヘッドライナー:ノヴィニュース