キタガワのブログ

島根県在住。極力誰とも関わりませんので悪しからず。目標は音楽ライターであり、ブロガーではありません。

ロックバンドにおける『推し』の是非を問う

こんばんは、キタガワです。

 

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僕はロックバンドが好きである。ギャリギャリのギター、心臓に響く低音ベース、地響きの如く打ち降ろされるドラム……。最初に初めてロックに触れたのは10年以上前の出来事だが、まるでハンマーで頭をぶっ叩かれたような衝撃があった。


かつてイギリスのパンクバンド、イアン・デューリーが発した「セックス・ドラッグ・ロックンロール」という言葉の通り、最大限のエクスタシーを感じることができる最高の音楽。それこそがロックンロールなのだ。


そんなロックだが、既存の音楽に飽き飽きした知る人ぞ知る音楽であったのは遥か昔。今ではロックは限りなく大衆向けのものとなった。爽やかな楽曲や耳馴染みの良い四つ打ちロックが台頭した昨今は特にだが、ポップスとさほど変わらない位置付けとなっている。


BUMP OF CHICKEN。RADWIMPS。ヤバイTシャツ屋さん。クリープハイプ。Back Number……。数十年前ならいざ知らず、現在の『ロック』はオリコンチャートにも当然のように名を連ね、街中でも頻繁に流れるようになった。


今回はそんな、ロックバンドについての話。


つい先日のことだ。道を歩いていると、進行方向に大量のラババンを鞄につけた女性を見掛けた。上の画像はイメージだが、おおよそ似たような格好である。


おそらく大半の人は「うおスゲえ」と感じるだけでその場を立ち去るだろうが、その女性と同様に足しげくライブに足を運ぶ身であれば、ラババンがどのようなバンドのものかは一目で分かる。


そのラババンに記載されていたのは、僕が好んで聴いていたバンド名だった。しかもライブも何度か参戦経験もあり、ライブレポートも書いたことがあったほど、自分にとって日常を彩っていたバンドだった。


なので必然的にそのバンドへの溢れんばかりの愛情が、『見知らぬライブキッズに声を掛けてしまう』という歪な形となって表れたのであった。


「あの……○○好きなんですか?」


僕が発した第一声は、およそ『音楽好きに声を掛ける』点においては教科書通りの一言だったように思う。早くも僕の脳内シミュレーションでは、続く「そうです!あなたも好きなんですか?」→「何の曲が好きですか?」といったキャッチボールを、鮮明に描き出していたほどだった。


しかし「○○好きなんですか?」に対する返答は、僕のイメージとは大きくかけ離れたものだった。


「はい!あなたは誰推しですか!?」


一瞬、思考が止まった。こいつは何を言っているんだ……。


話を深掘りしてみると、その人が言わんとしていることは何となく分かった。要は「バンドメンバーの中で誰が好きですか?」ということを言いたかったらしい。ちなみに彼女はベース推しで、ぱあっと弾ける笑顔と天然なキャラクター性が、主に推す理由らしかった。


夏のライブツアーにも参加するそうだ。現段階で5ヶ所行くことが決定しており、ベースの顔を見ることを思うと夜も眠れない、といった話をしてくれた。後にスマホの待ち受けも見せてくれたのだが、ベースがケーキを口一杯に頬張っている写真だった。


……彼女と別れて視界から消えたあと、僕は申し訳ないが「お前マジか」と思ってしまった。もちろん悪い意味で、である。


……さて、ここで一旦冷静になって考えてみよう。


まず大前提として、彼女はベースの人のことが好きなのだろう。おそらく恋愛対象と言うよりは「綾野剛くんや神木隆之介くんカッコいいな」というような憧れと羨望の類いだろうが、それでもあの目は本気だった。彼女がベースを見る目は『恋する乙女』を地で行くような、そんな熱い視線だった。


思い返せば、そのバンドのメンバーの顔面偏差値は全体的に高い部類だ。整った顔立ちをしているし、インタビューや音楽番組での言動もイケメンという他ない。世間一般の『イケメン像』はあんな感じなのだろうな、とも思うほどだ。


しかしながら僕は思うのだ。「本当にそれでいいの?」と。


そう考える理由はひとつで、ミュージシャンは音楽ありきで評価されなければならないからである。


例えばアイドルであれば、必ずしも楽曲が良い必要はない。売りになるのは主に『顔と性格』であるからだ。メディア露出や週刊雑誌の表紙などでアイドルが頻繁に取り沙汰されたり、チェキ会や握手会が開催されることからも、それは明らかだろう。


だが逆にバンドマンは、アイドルのような売り方は完全にタブーであると思うのだ。別に誰が何を好きになろうがそれぞれの自由ではあるが、その先頭には絶対的に『楽曲の良さ』がなければならない。そのため今回のような『顔目当て』というのは良くない。否、あってはならないのだ。


『曲が良ければファンが付く』。バンド音楽が多様化した現代でも、ここだけは譲れない一線だ。それを上回る勢いで『イケメンだから』や『ファッションがカッコいい』、『天然なところがカワイイ』などといった個人のフィルターを介してしまえば、ちゃんちゃら訳が分からない。それは言わばバンド音楽の冒涜である。


本当にそのバンドの曲が好きで聴いている人には、僕は何も言うことはない。しかし悲しいかな、音楽をほとんど見ず(聴かず)に「○○のファンです!」と吹聴して回っている人も一定数いるというのは、純然たる事実なのである(YouTuberの音楽活動などはその最たる例だと思ったりもする)。


おそらくはそういった層もバンドが食べていく上では必要な部分だとは思うが、そうした事も踏まえて僕は声を大にして言いたい。バンドは音楽ありきであると。それに勝るものなど一つとしてない。もしも『音楽ありき』を上回るものがあるとするならば、そのグループはもはやミュージシャンではない、他の何かだ。


最後に今一度、読者貴君に問いたい。


あなたは本当にそのバンド、好きですか?