キタガワのブログ

島根県在住。音楽ライター。酒浸り。

[後編]辛い、死にたい、鬱状態のときに聴きたい音楽10選

こんばんは、キタガワです。


今回は前編の続き。『辛い、死にたい、鬱状態のときに聴きたい音楽10選』と題し、残り5曲について書き記したいと思う。


それではどうぞ。

 

 

生きていたんだよな/あいみょん

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「今ある命を精一杯生きなさい」なんて綺麗事だな
精一杯勇気を振り絞って 彼女は空を飛んだ

あいみょんの音楽は、世間一般的には『恋愛ソング』と見られることが多いように思う。


確かに彼女の名をほしいままにした『君はロックを聴かない』や『マリーゴールド』といった楽曲群はその傾向が強いが、この楽曲に関しては恋愛ソングとは絶対に呼べない代物。言うなれば『あいみょん流・社会風刺的メッセージソング』と言えるだろう。


テーマは飛び降り自殺。突然の事件に集まる野次馬も、「ドラマでしか見たことなーい」と語る声も。まるでありふれた日常に落とされた非日常の光景を楽しんでいるようにも見える。しかし中には自殺者へ感情移入し、悲しみに暮れる人もいるかもしれない。


だが「希望を抱いて飛んだ」との一文からも分かる通り、自殺を決行した少女にとってはこれこそが何度も考え抜いた果ての最善の策であり、最期の希望の光だったのである。


そしてそれは今死にたいと感じているあなたにとっても同様だ。もちろん死んだら現在の苦しみから解き放たれ、絶対に楽になれる。しかしそれは考えうる限り最悪のバッドエンドであることもまた、揺るぎない事実なのだ。


『生きていたんだよな』と過去の事柄として名付けられたこの曲は、死にたい人間が未来を生きるためにも聴くべきなのだ。

 


あいみょん - 生きていたんだよな 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 

 

main actor/美波

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少しだけ 少しだけ 少しだけ 少しだけ
1畳でも 居場所が欲しかった
僕だけが 僕だけが 僕だけが 僕だけが
誰かの1番でありたかった

今回の記事のタイトルにあるようなネガティブな気持ちを内包しながら日常生活を送っている人は、自己顕示欲の高い人間であると思っている。


自分の考えを認めてほしい。話を聞いてほしい。一緒に誰かと楽しく過ごしたい……。そうした理想と、周囲に交われない現実の狭間で揺れながら過ごしているはずだ。


とどのつまり、ストレスを感じないハッピーな生活というのは、自身の圧倒的優位性でもってのみ成し得る。いくら性格が悪いと言われようとも、自己嫌悪に陥ろうとも。結局はそうした自分勝手な結論に達するのが必然なのだ。


ただひとつ問題なのは、そうした思いを徹底的に圧し殺しながら生きなければならない点だ。好きで孤独になっているのではない。社会が「そうしろ」と口煩く言うから孤独を強いられているだけで、本当はもっと自分を晒け出して生きていたい。そう。漫画の主人公やアニメのヒーローのように。


『main actor』は、そういった悲しき村人Cレベルの存在感しかない自分を説き伏せるための楽曲だ。貧乏クジを引き続ける背中を優しく擦るような包容力でもって、必ずや『あなたが此処にいる証明』を与えてくれるだろう。

 


美波「main actor 」MV

 

 

太陽4号/10-FEET

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卑しい美意識で 取り乱さないように
笑みを浮かべて つまらないや
心が冷めてる人は 本当の感動を知っています
今夜も眠れない人が たくさん居ます
ああ きっと居ます

大型夏フェス『京都大作戦』の発起人であり、日本ロックシーンを牽引する重鎮バンド。


アーティストというのはいくら全盛期が素晴らしかったとしても、長い年月が経過するうちに動員が落ち込むものである。では彼らがなぜ第一線で活躍し続けているのかと言えば、類い稀なるメッセージ性と熱いライブが大きな理由だ。


彼らはライブ中、全てを悟ったかのような朗らかな笑顔で「辛いこともあるけど、頑張って生きていこうな」という趣旨の発言を必ずする。加えて彼らの楽曲には、困難に立ち向かう強さがこれでもかと秘められている。そして彼らは、そんな楽曲を声を枯らさんばかりの勢いで鳴らすのだ。単純明快だが、そのシンプルさは心を揺らす。


今回紹介する『太陽4号』は、10-FEET史上最も弱者に寄り添った楽曲と言えるだろう。人を傷付けたことや消えてしまいたくなる思い出の果てに今の自分がいる。よって愛すべきは何よりも自分自身であると、はっきりと明言する力強い楽曲だ。


人は変わる必要などない。弱さや苦しさを携えながら、そのまま自分らしく生きていくべきなのだ。

 


10-FEET 太陽4号

 

 

サザンカ/SEKAI NO OWARI

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誰よりも転んで 誰よりも泣いて
誰よりも君は 立ち上がってきた
僕は知ってるよ 誰よりも君が
一番輝いている瞬間を

紅白歌合戦には連続出場、総工費億超えの野外ライブツアーも全ソールドアウト。まさに日本国民がみな知るところのポップバンド、SEKAI NO OWARI。


『サザンカ』はそんなセカオワの平昌オリンピックのテーマソングとして、広くお茶の間に響き渡った楽曲であり、ファンならずともサビ部分を聴けば「これか!」と思うことだろう。


サビで何度も繰り返し歌われている通り、この楽曲で主軸となる人物はいわゆる『夢追い人』である。


世間一般、というより日本社会のひとつの性質として、人と少しでも違う行動をする人間は奇異の目で見られることが多い。進学したら勉学に励むもの。友人らと輝かしい青春を送って思い出を作るもの。成人したら正社員になるもの。30を過ぎれば結婚するもの……。


そうした『普通の人』から見る夢追い人はどうだろう。ある雑誌の調査によれば、夢追い人に対して20代~60代までの23.7%もの人が「馬鹿だと思ったことがある」という。本気で取り組んでいる人は報われるかどうかも分からない夢を追いかけつつ、必死に生きている。しかしそんな影の努力も『普通の人』からすれば「何だそれ」と一蹴されるような事柄に過ぎず、その側面には一切触れられない事実がある。


そしてここで言う『夢追い人』とは今絶望に押し潰されそうなあなたに、そっくりそのまま言い換えることができるとも思うのだ。


「自分を認めて欲しい」という思いも、「本当はこうじゃないのに」という葛藤も。全てを包み込んで応援してくれるのが、この『サザンカ』という屈指の名曲なのである。

 


SEKAI NO OWARI「サザンカ」

 

 

世界に一人ぼっち/Suck a Stew Dry

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今日も明日も 変われないんだろうなあ
夢の中でしか 夢なんて見られない
現実は今も怖くて 仕方がないけど
生きていることだけは持っていく

現在はバンド名を改名し『THURSDAY'S YOUTH』(サーズデイズユース)として活動する4人組ロックバンド。


彼らは特異な楽器も使っていなければ変わった奏法を駆使するわけでもない。この一部分だけを見ると「普通のロックバンドじゃん」という感想を抱く人は多いだろう。しかし特筆すべきは、その類い稀なる歌詞にあるのだ。


ボーカルを担うシノヤマの目線は常に俯瞰だ。日常風景をを客観的かつ多面的に見ることで、その裏に隠された部分に気付いてしまう人物、それがシノヤマという男だ。


そんな彼が描く『世界にひとりぼっち』は、徹底して孤独に焦点を当てた楽曲だ。誰にも相手にされない疎外感を内包しながら、「今日も明日も変われないんだろうなあ」と呟く半ば諦めの心持ちでいる。


本当に辛い人間は、辛いことを周囲に明かさない。それどころか取り繕った笑顔を貼り付かせながら生きることで、心に燻った闇を増幅させている。それが世間一般の当たり前。美学だからだ。


極端な話をしてしまうが、寂しがりな人間は彼女がいようが貯金がたんまりあろうが、一生孤独である。これはどんなことをしても覆らない決定事項であり、絶対に抗えない心の闇だ。


そう考えると『世界にひとりぼっち』というタイトルは得てして妙であり、それが分かっているからこそシノヤマは、死に物狂いで孤独を共有する。きっとこの曲が刺さる人はシノヤマと同類であり、世界に居場所のない人間なのだろう。

 


Suck a Stew Dry「世界に一人ぼっち」PV

 

 

……さて、いかがだっただろうか。前後編と続いた今回の曲紹介。


現在日本で『流行歌』と呼ばれる歌はほとんどがポジティブ、もしくは恋愛をトレンドにしているものが大半を占める。そう考えると今回の曲紹介は、日本における音楽チャートの枠からは完全にはみ出たものばかりだと思う。


しかしながら例え共感を得る割合が少なくとも、こうした楽曲が刺さる人も絶対にいるはずなのだ。少しでも気持ちが軽くなったり、生きる活力になったり。感じる思いはそれぞれ違うだろうが、そうした人間にとって今回紹介した楽曲はいわば『希望の光』であり、無くてはならないものなのだ。


世に蔓延る売れ線の音楽。それらももちろん最高だが、ふいに訪れる憂鬱な気持ちを打破したいと思ったときは、今回紹介した楽曲群を聴いてみてはいかがだろうか。きっとあなたの最良の助けになってくれるはずだ。