キタガワのブログ

島根県在住。目標は音楽ライターであり、ブロガーではありません。

【ライブレポート】MOROHA『SWEAT 17 BLUES 完成CELEBRATE? TOUR』@米子Aztic laughs

こんばんは、キタガワです。

 

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3月21日に鳥取県・米子laughsで開催された四星球の全国ツアー『SWEAT 17 BLUES 完成CELEBRATE? TOUR』に参加した。今回は先行、MOROHAのライブレポートを記す。


四星球と言えば、日本を代表するコミックバンドとして確固たる地位を築いてきたバンドである。ライブでは観客を抱腹絶倒の渦に巻き込み、終始笑顔に満ち溢れたライブを行う。その姿はまさに『THE・コミックバンド』といった様相だ。


片やMOROHAは、そんな四星球とは対極に位置するグループだ。地を這ってでも前に進む泥臭さや生きる意思、絶対に諦めない頑固さを、血を吐くような勢いでもって叩きつける。そこには笑いの要素などひとつもなく、ヒリヒリとした緊張感が会場を支配する。


だからこそ僕は今日一日のライブのイメージが全く湧かなかった。例えるならば水と油。月と太陽。空と大地……。ジャンルも演奏形態も異なるこの2組のライブは、どんな化学反応を起こすのだろう。ひとつだけ言えるのは「唯一無二の一夜になるだろう」ということだけ。


定時を少し過ぎた頃に暗転。通常、ライブはSEに乗せてメンバーが現れるものなのだが、アフロ(MC)とUK(Gt)はいつの間にかステージに上がっており、発生練習やストレッチに励んでいた。


開口一番「四星球に『お前は眼帯を取った丹下段平だ』と言われました。ギターUK、MCアフロ。MOROHAです、よろしくどうぞ」とアフロ。


朗らかな語り口からスタートした1曲目は、先日動画サイトでPVが公開され話題を呼んだ楽曲『ストロンガー』だ。

 


MOROHA「ストロンガー」MV


〈肩で風をぶった切って 胸を張って出かけよう〉

〈破壊する ぶっ壊す 駄目なものは全部〉


ロボットの如き手数でアコースティックギターを掻き鳴らすUKをバックに、思いの丈を吐き出すアフロ。極めて最小限の演奏形態だが、その姿はさながらエレファントカシマシの楽曲『ガストロンジャー』を彷彿とさせる。血管が浮き出るほど全力で叫ぶ彼の顔面からは、早くも大量の汗が滴り落ちていた。


僕はドリンクコーナーで注文したアルコールのため少し酔った状態だったのだが、気付けば酔いは一瞬にして冷めていた。観客もその圧倒的な迫力からか、演奏が終わっても拍手も歓声も上げないのが印象的だった。静寂に包まれた会場にはアフロの荒い吐息だけが響いており、時折背後で扉を開く僅かな音すらはっきり聞こえるほど。


彼らの音楽は音楽であって音楽ではない。もっとそれ以上の何か……例えるなら一種の演説や説得に近いものを感じた。


この日は新曲を中心としたセットリストで進行。そのため会場に集まった観客の大半が初見の楽曲も多かったと推測するが、力強いメッセージ性でもって届けられる楽曲群に、皆微動だにせず聴き入っていた。

 


MOROHA「上京タワー」MV


『上京タワー』『東京タワー』という意図せずこの日既存曲の扱いとなった2曲は、どちらも東京に進出する切実な思いを孕んだメッセージソング。故郷を離れ、遠く離れた地でもがく痛烈な歌詞が続く。客席からはどこからともなく啜り泣く声が聞こえてくる。


その後もふたりは水分補給もインターバルも一切挟むことなく、驚くべき集中力で演奏を続けていく。「俺らがはるばる米子に来たのは、別に知ってもらうためじゃない。金稼ぎに来たんだよ!」というMOROHAらしいMCの後、貧乏暮らしの葛藤を歌った新曲『米』、かつての彼女目線の悲しき新曲『拝啓、アフロ様』を立て続けに披露。


途中のMCでアフロが語っていたが、今回のライブは四星球側から「絶対にソールドアウトさせたい」という強い思いを受けていたそうだ。そのため他のライブと比べて少しばかり告知に力を注ぎ、四星球の熱意に答えようとしていたという。


結果としてこの日はソールドアウトにはならなかったのだが、四星球の公式ツイッターで『残り僅か』と表記されるまでには売れ、フロアはパンパンの客入り。……そんな光景をアフロは感慨深そうな目で見ていた。


最後に演奏された楽曲はニューアルバムのリード曲でもある『五文銭』だった。

 


MOROHA「五文銭」Official Music Video


〈この先に何があるか なんてことは知らない〉

〈想像を絶する 地獄かもしれない〉

〈俺は弱い すぐに調子のる〉

〈それでも愛された記憶だけは 片時も離さない〉


過去を問い、現在を問い、そして希望に満ちた未来を渇望するこの楽曲でもって、MOROHAは改めて自身の進む道を示した。


思えば今回のセットリストは、5月29日に発売予定のニューアルバム『MOROHA Ⅳ』の収録曲を中心として進行していた。『三文銭』や『革命』といった定番曲は軒並み省かれており、中には否定的な声ももしかしたらあったかもしれない。


そんな今回の40分のライブを観て僕は「MOROHAらしいな」と思ってしまった。もちろん事前に知っていて何度も聴き込んだ楽曲の方が、観客の満足度も高いだろう。しかし常に前を向き、その時々でしか伝えられないメッセージを込めて歌うMOROHAにとっては、それは過去のもの。彼らが求めているのは常に『未来』なのだから。


〈今作のアルバムリリースはメジャー〉

〈ユニバーサル vs 二本の中指だ〉

〈俺たちのために 俺たちが選んだ〉


演奏終了間際「俺は俺のこと幸せにしたい」と繰り返し絶叫したアフロ。この言葉は間違いなく、将来の自分に充てたものだ。


昨今はスマートフォンや飲食店のCMのナレーションが話題となり、注目を集めているMOROHA。それはひとつの形として彼らを知るきっかけにはなるだろう。


だが彼らの真骨頂はやはりライブ。直接目で見て感じることでしか、MOROHAの本質は理解できない。フラつきながらステージを去るアフロを見ながら、僕はそう確信したのだった。

 

【MOROHA@米子laughs セトリ】
ストロンガー
上京タワー
東京タワー
米(新曲)
拝啓、MCアフロ様(新曲)
遠郷タワー
五文銭