キタガワのブログ

島根県在住。音楽ライター。酒浸り。

個人的CDアルバムランキング2019[15位~11位]

こんばんは、キタガワです。


さて、今回は前回に引き続き、『個人的CDアルバムランキング2019』の15位~11位の発表である。今回はロックシーンを牽引するベテランから、今年アルバムのリリース自体が初となる新進気鋭の若手アーティストまで幅広くラインナップ。必ずや「こんなアーティストいたんだ!」という興味関心と共に、新たな音楽との出会いをもたらしてくれるはずだ。


それではどうぞ。

 

→20位~16位はこちら

 

15位
ガールズブルー・ハッピーサッド/三月のパンタシア

2019年3月13日発売

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サブスクの流行や音楽価値の多様化など様々な動きがあった今年の音楽シーンだが、今年はとりわけインターネットシーン初の謎のアーティストが台頭した年であったように思う。


素顔を公表せず、MVの拡散力と楽曲の持つ求心力をベースに認知度を広げていくその様は、新時代の到来を現実的に実感させる一幕でもあり、同時に「メディアの印象操作やファンの大小に関わらず、良い音楽は評価されるべき」という音楽本来の有るべき姿を体現しているようでもあった。


そんなインターネットシーンで今年大きなバズを記録したアーティストのひとりが、三月のパンタシアである。


活動当初より『3月』をひとつのターニングポイントに定める三パシらしく、3月13日に発売された自身初となるフルアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』は、まさに彼女の魅力をふんだんに詰め込んだ名刺代わりの1枚だ。アッパーな“三月がずっと続けばいい”を皮切りに、アニメ主題歌として広く浸透した“ピンクレモネード”など、ポップな音楽にアンテナを張る中高生のツボを見事に突いた今作は予想を遥かに上回る勢いでシーンを駆け抜け、現在ではラジオやスーパーマーケットでも頻繁に流れるレベルにまで達した。


昨今は新たに小説を軸とした独創的な活動をスタートさせ、来年には久方ぶりのライブ開催も決定している三パシ。他のインターネットシーン初のアーティストと比較しても圧倒的にミステリアスに水面下での活動を続ける彼女だからこそ、今後どのような跳ね方をするのか予想できない。彼女を知る絶好のタイミングは、紛れもなく今である。

 


三月のパンタシア 『三月がずっと続けばいい』


三月のパンタシア 『ピンクレモネード』

 

 

14位
MOROHA Ⅳ/MOROHA
2019年5月29日発売

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ギターと声の散弾銃とも言える独特なスタイルで話題のラップグループ、MOROHA。今年はアフロ(MC)のナレーションの仕事が活発化したこともあり、GALAXYやスシローといった多くのCMであの印象深い声を聞いた人も多いはずだ。


MOROHAの魅力はその類い稀なるメッセージ性である。……個人ブログということで好き勝手書かせてもらうが、そこでどうしても『メッセージ性』という面で個人的に対比の対象として脳裏を過ってしまうのはロックバンド、amazarashiの存在だ。


《僕が死のうと思ったのは 心が空っぽになったから》、《自分以外みんな死ねってのは もう死にてえってのと同義だ》と歌うamazarashiが同じく希死念慮と憂鬱に悩む人間の代弁者であるとするならば、MOROHAが歌うのは更にその奥の奥。すなわち生き方の根本的部分である。


MOROHAの楽曲には悩める人間の肩を掴み、唾と汗を飛び散らせながら「本当にお前はこのままで良いのか!」と問う力強さと、「1分1秒も無駄にしてはならない」と聞き手をリアルに急き立てる焦燥がある。《選ばれなかった人間は 自ら選び取るしかないんだ》と語る“五文銭”、《「やりたい」「やってた」じゃなく「やってる」 進行形以外信じない》と叫ぶ“上京タワー”など、今作には今まで以上に赤裸々に思いを伝える気迫が感じられ、聴く人次第では聴けば聴くほど心にダメージを負う。


個人的な話で恐縮だが、僕は今年MOROHAの当アルバムのリリースツアーに足を運んだ。その中でとあるバンドがMCにおいて「MOROHAに一言どうぞ」と促された際、メンバーが揃って「特にありませーん!」と笑顔で叫ぶ場面があった。後にバンドは「冗談ですよ」と訂正していたが、数分後にアフロはステージに進むなり、地面に頭を叩き付けんばかりの勢いで「俺はあれを冗談だって受け取らねえ!悔しい!悔しいよ俺は!」と絶叫してライブを行っていたのが印象に残っている。MOROHAの全ての楽曲の作詞を担うアフロは、そういう人間なのだ。


総じてこのアルバムが心に刺さる人間は、何かしらの鬱屈した感情と現在進行形で戦っている人間なのだろう。逆に言えば、順風満帆な人生を送っている人間には絶対刺さらない音楽でもある。……さて、読者の皆様はどちらだろうか。是非ともその目で、耳で、確かめてほしい。

 


MOROHA「拝啓、MCアフロ様」Official Music Video


MOROHA「五文銭」Official Music Video

 

 

13位
VIVIAN KILLERS/The Birthday
2019年3月20日発売

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今年活動14年目を迎えたThe Birthday。アルバムのリリースは今作品で何と10枚目となる。


ある種の反則技ではあるが、今回のアルバムは全体的に音がデカい。実際彼らのアルバムの音量は毎回大きいのだけれど、いつも以上にそう感じる一番の理由としてはやはり、徹底してロックに振り切ったサウンドにある。思えば前作『NOMAD』も前々作『BLOOD AND LOVE CIRCUS』も確かにロックアルバムではあったものの、緩やかに進行してサビで熱が入るような、ある種大人の魅力とも言うべきムーディーな雰囲気に満ち溢れている印象が強かった。


だが今作は例えるなら一世を風靡したチバの前身バンド、ミッシェル・ガン・エレファントの時代まで遡ったような、シンプルで爆発力の高いロックが鼓膜を震わせる代物。更に度重なる喫煙と飲酒で限界までしゃがれたチバ(Vo.Gt)の独特の歌声も迫力を増しており、古くからのファンであればあるほど感動もののアルバムに仕上がっている。


ベースの低音がダイレクトに響く“青空”や《このクソメタルババアがよ》とのキラーフレーズで開幕を飾る“DISKO”、一撃必殺のサビが脳内をぐるぐる回る“OH BABY!”など、総じて『VIVIAN KILLERS』はどこを切ってもファンが求めていた等身大のロックバンド・The Birthdayであり、何年経っても色褪せない彼らの魅力を再認識できるアルバムでもある。


今のThe Birthdayはその疾走っぷりも過去最高レベルだ。『VIVIAN KILLERS』リリース後には約半年にも及ぶ大規模な全国ツアーを完遂。更に大小様々な各地フェスにも出演し、同時にチバのソロプロジェクトにも着手し、こちらも今年アルバムを発売している。留まることを知らないThe Birthdayの快進撃だが、今後もセットリストの見所となるであろう楽曲が多数収録された今作は、是非とも今触れておくべき存在であると感じる次第だ。

 


The Birthday「青空」MUSIC VIDEO


The Birthday –「OH BABY!」Music Video (full size)

 

 

12位
Hello My Shoes/秋山黄色
2019年1月23日発売

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2019年突如現れた期待の新星、秋山黄色。インターネットシーンのみならず、インディー音楽シーンを加速度的に荒らし回る彼の初の一手となるのが、今作『Hello My Shoes』である。


テレビアニメ『けいおん!』に影響されて音楽活動を始めたというエピソードこそ平成世代らしいが、サウンドはギターリフ主体で進行する、どちらかと言えばナンバーガール寄りのド直球ロック。


メディアに顔を出すことは基本的にないが、片手で数えられるほどの音楽雑誌では貴重な素顔を公開している。そこではアーティスト名に偽りなしの金髪ながらも目を完全に覆い隠し、一切の笑顔を出さない彼のミステリアスな姿を見ることができる。自身について「普段家からほとんど出ない引きこもり」であると語る秋山黄色。“やさぐれカイドー”の《夜中の2時過ぎてやっと俺だ》、“とうこうのはて”での《借金まみれの顔を鏡で また洗っている》といった歌詞に顕著だが、今作で歌われる内容の大半は彼の飾らないリアルだ。しかしながらそれらの事柄に別段同意を求めるわけでもなく、はたまた前を向こうとポジティブに捉えるでもなく、一貫して「自分はこういう人間ですが何か」というある種達観したネガティブさでもって思いの丈を吐き出している。


必然的に声を出す機会も少ないはずだが、とりわけ“やさぐれカイドー”や“猿上がりシティーポップ”、“とうこうのはて”といったロックを前面に押し出す楽曲群には彼の鬱屈した感情が爆発している印象で、サビ部分ではキーの限界まで意図的に声を張り上げた絶叫に近い歌声がダイレクトに響いてくる。そんな初期衝動剥き出しの今作は、どれほど練られたベテランアーティストのアルバムよりも、心を揺さぶられる代物だ。


ツイッターのIDを@Ilikeakairoとし、現在配信中の新曲では更に引き出しを増やしている秋山黄色。反骨精神剥き出しの若き来年の動きに、来年も注目していきたい。

 


秋山黄色『猿上がりシティーポップ』


秋山黄色『とうこうのはて』Lyric Video (Short ver.)

 

 

11位
瞬間的シックスセンス/あいみょん
2019年2月13日発売

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紅白歌合戦への2度目出場は逃してしまった(おそらく実際は自分から出場辞退していると思われる)が、間違いなく今年最も音楽シーンに名を轟かせたのはヒゲダンでもKing Gnuでもなく、あいみょんだったのではなかろうか。


映画『クレヨンしんちゃん』の主題歌に抜擢された“ハルノヒ”や映画『空の青さを知る人よ』主題歌となった同曲、今までのあいみょん像を破壊した“真夏の夜の匂いがする”など、とりわけ今年は彼女のシングルリリースが目立った年であり、また同時に「あの“マリーゴールド”の発売がもう1年も前のことである」という事実にも驚かされるほど、例年にない多作っぷりを見せ付ける年でもあった。


そんな現状を踏まえてのこの『瞬間的シックスセンス』。何とこのアルバムには前述した3曲のシングルは一切入っておらず、それどころかシングルは全てこのアルバムリリース後に発売されている。そう。もうお分かりだろう。あれほどの大ブレイクを果たした“マリーゴールド”も“満月の夜なら”も、今作にて初めてアルバム入りしているのだ。……あいみょん、絶好調である。


言うまでもなく、このアルバムの中心を担っているのは“マリーゴールド”を始めとした耳馴染みのよいポップミュージックな訳だが、ドラムが印象的な“ら、のはなし”、《なんまいだー なんまいだー》のメロが頭を支配する“二人だけの国”、ロックに徹した“夢追いベンガル”も、どの楽曲がシングルカットされていたとしてもおかしくないほどの完成度を誇る楽曲がてんこ盛り。


今年は弾き語り形式でたったひとりで武道館に立ったり、全国ツアーや夏フェスの出演も活発化したりと話題に事欠かなかったあいみょん。来年もこの一種ランナーズハイのような高いポテンシャルをそのままに、突き進んでいくはずだ。冗談でも何でもなく、あいみょんは来年も若者の更なるポップアイコンになるだろう。

 


あいみょん - マリーゴールド【OFFICIAL MUSIC VIDEO】


あいみょん - 今夜このまま【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 

 

……さて、次回はいよいよ1桁台。10位~6位までの発表である。3年間に渡って続けてきた『個人的CDアルバムランキング』だが、次回は何と全アーティストが当記事初登場というフレッシュぶり。乞うご期待。