キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

映画『ゴジラ-1.0』レビュー(★4.5)

主演俳優が好き、PVが良かったから、有名な賞にノミネートされているから……などなど、映画を観に行く際には大きな理由が存在するものだ。ただ逆に言えば数ヶ月経てばサブスク配信が確約されている現在、わざわざ映画館で観る必要性もない訳である。たとえそれが大絶賛されている映画『ゴジラ-1.0』であっても。

そう。確かに『ゴジラ-1.0』は今の映画の最前線だ。しかしながらゴジラというのはご存知の通り長い歴史があり、その間には様々な作品が出ては消え、出ては消えを繰り返してきた。ただこれまでには『シン・ゴジラ』やら『ゴジラ × メカゴジラ』など賛否両論を巻き起こしてきた作品もある訳で、そもそもの「サブスクでも出るんだし、わざわざ映画館で観る必要があるの?」との問いに微妙な返しをせざるを得なかったのが正直なところ。だが今作は明確に『映画館で観るべき映画』であると、ここで改めて示したいと思う。

今回紹介する『ゴジラ-1.0』は、ゴジラ生誕70周年を記念して作られた作品。舞台は第二次世界大戦後の東京で、命惜しさに戦線を離脱した主人公(神木隆之介)、彼の下に血の繋がっていない子どもと共に居候同然で住み着いたヒロイン(浜辺美波)が慎ましく暮らしていたところに、ゴジラが侵略。一度は戦いから身を引いた主人公が、ゴジラによる様々な破壊を機に奮起、再び戦線へと向かっていく……というのが大まかなストーリーである。

この映画の評価すべき点はいくつかあれど、まず声を大にして言いたいのは昨今の映画では珍しく、起承転結が非常に明確になっていること。要は鑑賞後に「これってどういう意味?」と疑問を抱く部分がほぼ皆無であり、前半の謎がしっかり後半で回収され、展開的にも無駄がないため完成度が高いのだ。また登場人物全員のキャラが立っているので没入度も申し分なしで、終盤では感情移入しつつ流れに身を任せるだけで、ウルッと来たり体に力が入ったりと、自然に映画と一体となっていく感覚も◯。

また圧倒的絶望感と共に襲い来るゴジラの描写も見事。建物の破壊然り、立ち上がった時に人間の何倍もある体然り、「これマジで倒すの無理じゃね……?」という感覚が体を貫く。そのため後の『ゴジラを倒そうとする一般兵』の動きも応援したくなる心境にも一役買っている印象だ。特に今回のCG技術は相当に金がかかっていて、これは劇場で観てもらえば分かりやすいのだが、街がこれでもかと言うほど木っ端微塵にされていくので心底絶望する。そもそも尻尾の薙ぎ払いだけで数百メートル、熱線では遥か遠くのビルまで炎上させるのがゴジラだと言えばそれまでだが、リアル過ぎる描写で描かれた今作は明確に復興の難しさ、人間の脆さを痛感させる形になっていて秀逸だ。

アカデミー賞有力候補で言えば表情と沈黙でシナリオを補完する『PERFECT DAYS』、あえて抽象的に描くことで多面的な解釈が出来る『怪物』……といった作品が注目を集める昨今。それを否定する訳ではないけれども、やはり王道こそが正義というか、誰が観ても絶対に「面白い!」と感じることの出来る作品こそが、映画のスタンダード。今作はそうした道程を地で進むような爽快作で、マイナス点はほぼなし。ドキドキ、ハラハラ、感動と様々な感情が襲い来る力作。観る作品に困ったらこれを!と言いたくなるほど、大衆向けに作られたモンスター映画である。ぜひ。

ストーリー★★★★★
コメディー★★★☆☆
配役★★★★★
感動★★★★
エンタメ★★★★★

総合評価★★★★☆(4.5)

【予告】映画『ゴジラ-1.0』《大ヒット上映中》 - YouTube