キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

映画『おまえの罪を自白しろ』レビュー(★2.0)

テレビを観ていると、番宣として映画の俳優陣がバラエティ番組に出ていることがある。中でも最近よく観るのが、家族と国家そのものを動かす大事件を描いた『おまえの罪を自白しろ』の人々で、現在様々な劇場で猛プッシュ中……ということで、その評価を確かめるために観てきた。

物語としては、まさしくタイトルにある通り『罪の自白』がキーワードとなる。まず始めに、主人公の姉の子供にあたる人物が誘拐される事件が発生。犯人は要求として、黒い噂が囁かれる国会議員の父に対し「おまえの罪を自白しろ。そうすれば娘は返す」と伝え、以降連絡が取れなくなってしまう。果たして父はどんな罪を抱えているのか。それを自白してしまうのか。そしてその息子である主人公はどう事件に立ち向かうのか、というのが主なストーリーだ。

ただこの映画、全体としては微妙。どこか秀でている部分を探すのも難しいレベルで、個人的には今年の映画ではかなり下の部類の作品に思えた。……実はこの映画は大手レビューサイトでは決して悪くなく、まずまずの評価は得ている作品ではある。では実際に「どこが悪いんだよ!」と問われれば答えられるかと言えばそうでもないのが変なところで、端的に言い表すならば「悪いとこは特にないけど良いとこもない」という。「2時間フワーっと観てたら、エンディングになっちゃいました」的な消化不良感。

そもそも政治や誘拐をテーマに冠した作品は、この世にごまんとある。政治だけで考えてもここ数年は様々で、必然的にそれぞれの武器を有している。例えば『記憶にございません!』では総理が記憶喪失になるギャグ路線、『総理の夫』は主な話を国会から自宅に変更。圧倒的な評価を得た『新聞記者』では逆に、放送レベルギリギリまで国の裏事情に突っ込んだ問題作とした。つまるところ今の映画として政治に切り込むには、もはや王道系の流れではダメ。何か新たなテーマをくっつける以外に、目当たらしさは生まれないのだ。

そこで今作は、政治に『誘拐』のテーマを加えることで、タイトルにもある「政治の罪を告白しないと人が死ぬ」という脅しに繋げた形で、その意気やよし。しかしながらこうなってくると、絶対に『政治』と『誘拐』の2種類が上手くまとまるような展開になるべきで、難易度は跳ね上がる。そして結果、どちらも納得の行く流れにならなかったのは明確なマイナスポイント。

誘拐ひとつ取っても、主に『誘拐する理由』『犯人は誰?』『その結果どうなったか』の3つの情報は必要なものだけれど、そのどれもがモヤっとしていて。ネタバレとして、この誘拐犯は劇中でほんの少ししか出てきていない人物なのだけれど、その人が出てきても我々的には「いや、まずお前知らないし……」と思うし。涙ながらに動機を語られても「いや、そんなことで誘拐したん……?」と思うし。いろいろと詰め込みすぎているかなと。

起伏の少ない平坦な印象も、おそらくそこからだ。我々の中の疑問が解決しないまま、登場人物がどんどん声を荒げられても困るというか。「ここで盛り上げるぞ〜」と制作者サイドが考えるポイントが悉く空振りしている感覚。登場人物も堤真一以外は誰でも良かった気もするし。超駄作な訳ではないが、寝っ転がってビールを飲みながら、CMアリのロードショーで観るのが一番合っている映画だと思った。申し訳ないけど、今のところは今年ワースト映画かなあ。

ストーリー★★☆☆☆
コメディー★★☆☆☆
配役★☆☆☆☆
感動★★☆☆☆
エンタメ★★☆☆☆

総合評価★★☆☆☆(2.0)

映画『おまえの罪を自白しろ』本予告【10.20 FRI ROADSHOW】 - YouTube