キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】SUMMER SONIC 2023 大阪2日目@舞洲ソニックパーク

こんばんは、キタガワです。

前回の記事に引き続き、今記事ではサマソニ大阪の2日目をレポート!この日の個人的な特徴はと言えば『洋楽フェスにも関わらず、観たアーティストが邦楽オンリー』という点。これは前編にも記した通り、コロナ禍でチケットを持っていたのに結局行かなかったアーティストが多かった、というのが最も大きい理由。それこそPerfumeやずとまよはファンクラブで取ったチケットを何度も破棄した(コロナ感染拡大のため)経験があったので、このチャンスは見逃せないと思ったのだ。Two Door Cinema Clubやブラー、Wet Legもめちゃくちゃ観たかったが、今回は我慢……。

この日は元々観る予定だったJXDNがキャンセルになったこともあり、昼からゆっくり観るスタイルを選択。前日は朝からぶっ通しで動き回って、フェスらしい食べ物とはほぼ無縁だったので、2日目はゆったり。飲食店が立ち並ぶエリアで腹ごしらえをして、ちょっと酒も飲んで……。「そろそろ岡崎体育いくかー」と、穏やかな気持ちでの幕開けとなった。多分、この方が肉体的&精神的にも良い気がする。以下レポです(前編の様子はこちらから!)。

 

岡崎体育 SONIC STAGE 12:00〜

楽しみのあまり、ちょっと小走りで移動した先は岡崎体育。真裏がBE:FIRSTとWANIMAという半ば邦楽争いの様相を呈していた中で、完全ソロの岡崎を選んだ人もまた多く、状態としてはバッチリ。SE兼オープナーとして流れた“Open”の時点で会場は「EDMのライブ!?」と思わず感じてしまうほどの盛り上がりで、ステージ上にはiPadと岡崎ひとり、という状況をVJ演出でカバーする手法も、ライブハウスでは決して出来ないサマソニならではの一面だろう。

岡崎体育 LIVE映像「Open」 COMIN'KOBE16 - YouTube

岡崎のライブは、笑いのエッセンスが散りばめられていることでも知られる。そのうちハイライト的な笑いを生み出したのは、現在ライブのみで聴くことが出来る“Call On”。何故この曲が音源化されていないのかと言えば理由は単純、観客との掛け合いがあってはじめて成立するためだ。岡崎はこの楽曲の後半部で、集まった観客に今からコール&レスポンスをすることを明言。しかしながら「今から僕の歌に続いて歌ってください!」と歌われた歌詞は英語詞まみれの長文のもので、当然グダグダなレスポンスに……。そこで急遽今から流れる歌詞を『ナナナ』で歌うよう変更した岡崎だったが、そこも完全崩壊。その都度「違ぁう!」「あっ、もう全然ダメです」と反応する岡崎に、お笑いライブのレベルの笑い声が響くソニックステージである。最終的には手拍子で何とかしようとした岡崎、もちろんこちらもリズムや泊がごちゃまぜの鬼畜仕様のため全員がミス。ラストに岡崎が客席に泣き顔でブーイングする、衝撃的な幕切れとなった。

“Call On”を終え、長らく続くブーイングの声に岡崎は「えっ?間違えたのそっちですよね?みんな岡崎体育の時間にマルして来てくれてるんですよね?なんで予習して来ないんですか?」と喧嘩腰。その発言に更に巨大化する爆笑する、最高の流れである。以降も「『観客のボルテージは一気に最高潮に』っていうのが4回来るのでそこで盛り上がってください」とネタバレしてから音楽ライター泣かせの“Quick Report”、音楽への愛情を海に例えたメロウ曲“サブマリン”と続けば、いつしかその求心力に、誰もがこの場を離れられない状態に。

岡崎体育 『Quick Report』Music Video - YouTube

中盤のMCでは、サマソニに対する思いが爆発した岡崎。どうやら彼は住まいが大阪であることもあり、サマソニには何年も前から個人的に参加してきたフェスだったそう。そんな場所で今度は演者として立つことの出来る喜びを、グッと噛み締めている様子だった。「音楽が大好きな人たちが好き!」という心からの叫びも、その思いの具現化のひとつだったはず。

「昨日トラックが出来た曲です」と岡崎が地面の歌詞カードを観ながら最速で届けた未発表曲“Tricker Tricker”を鳴らし、早くも最後の曲に。ラストソングは“The Abyss”。緩急を付けて爆発する、岡崎のライブの代名詞的な1曲だ。雄大な自然をバックに歌い上げたかと思えば、後半は一転してEDMモードに。「全員踊れー!」と焚き付け焚き付け、キラキラな音像で盛り上げるのは流石は岡崎と言うところ。彼がトップバッターとして様々なフェスに出演していることは知っていたけど、なるほど確かに、このライブは幕開けにピッタリだと思った次第。今秋からの全国ツアーも否が応でも期待してしまう、最高の30分だった。

【岡崎体育@サマソニ大阪 セットリスト】
Open
Call on
Quick Report
サブマリン
Tricker Tricker(新曲。仮タイトル)
The Abyss

Perfume MOUNTAIN STAGE 13:10〜

お次は余韻そのままに、マウンテンステージへ。お目当ては今や国民的グループに成長を遂げたPerfume。海外フェスでは「絶対に観ておくべきだったアクト10」に海外勢を抑えて名を連ねるなど、取り分け最近ではそのライブ演出に称賛の声が上がる彼女たちのライブを一目観ようと、会場には多くのファンが。本当に愛されてるんだなあ。

[Official Music Video] Perfume「ポリリズム」 - YouTube

ダイレクトに来る尋常ならざる低音が体を揺らす中、定刻になるとあ~ちゃん、かしゆか、のっちの3名がオンステージ。1曲目に選ばれたのはデビュー曲でもある“ポリリズム”で、この時点で一気に心を奪いにかかる攻めセトリであることが分かる。楽曲の魅力については皆が知るところなので割愛するとして、とにかく驚かされたのはそのVJと音圧。背後のモニターには基本的にアンドロイド風の3人が映し出されており、実際のPerfumeとリンクしてダンスを繰り広げる流れは圧巻で、最先端の映像技術を見せ付けられている感もあって凄い。また音圧は特にローの出が異常で、『ズン』という音が鳴るたびに心臓が持ち上がる感覚があった。家でライブ映像を観るだけでは、絶対に出来ない体験である。

この日のライブは、ライブ鉄板曲を敷き詰めた完全フェス仕様。それも“edge”や“DISPLAY”といった低音特化の楽曲ではなく、世間一般的なキラキラなPerfumeイメージの楽曲が多めでハッピー。衣装はあ~ちゃんいわく「巷ではイワシって言う人もおるらしい」とするギンギラの銀で、また背後には先述の通り、様々なオリジナル映像が投影されていたのも見逃せないポイントだ。

MCではエンタメ性抜群の語りと共に、改めて熱中症の注意喚起を行うあ~ちゃんが光る。まずはお馴染みの広島弁で「みんなよお来てくれたねえ!水飲んどる?せっかく良い場所取ったのに、倒れてしもうたら元も子もないけえ。私らはチャチャッとやってバッとはけますんで……」と笑いを誘うと、「水分補給やっとく?はいみんな水出して!カンパーイ!」と強制給水タイムへと移行。その視線は最前列のファンはもちろん、2階で着席しながら観ている観客にも平等に注がれていたことからも、改めてPerfumeがファンを思って活動を続けていることを理解。

[Official Music Video] Perfume「エレクトロ・ワールド」 - YouTube

映画タイアップとして知名度を広げる契機となった“FLASH”、最新アルバムからドロップされた“Spinning World”と続き、ライブは“エレクトロ・ワールド”でひとつの絶頂へ。この楽曲は去る『コーチェラ・フェスティバル』でもメディアが大々的に報じた楽曲でもあり、背後には未来世界を闊歩する3人と、歌詞の「Ah Ah」に合わせてグーで殴るエフェクト、画角変化によるスピード感抜群の映像が流れていて、一瞬で引き込む力を備えていたように感じた。……かと思えばライブならではの『P.T.A.のコーナー』では他アーティストの楽曲をアカペラで歌って盛り上げたり、場数を踏んできたこれまでの集大成を見せ付けてくれた。

[Official Music Video] Perfume「チョコレイト・ディスコ」 - YouTube

そして「ここからは盛り上げる曲しかやりません!」と叫び、ライブは“チョコレイト・ディスコ”でシメ。彼女たちの代表曲としての立ち位置で盛り上げつつ、「チョコレイト?」→「ディスコ!」の掛け合いもバッチリ。チョコが溶けそうなレベルの灼熱空間の中歌い踊る3人に、興奮と共に無意識的に追従する観客との双方向の関係性が最高だ。先程の「ここからは盛り上げる曲しかやりません!」のMCからあと1曲やるのかなあと思っていたけれど、ライブは結果この楽曲がラストナンバーで、潔く終わったのもPerfumeっぽいなと。余談だが、ライブ後に一気に観客がハケてガラガラになったマウンテンステージを観て、「みんなPerfumeを観るためだけにここまで来たのだ」と実感した次第。次にサマソニに出るときはほぼメインステージが確定だろうとも思わせる、盤石の40分だった。

【Perfume@サマソニ大阪 セットリスト】
ポリリズム
FLASH
Spinning World
エレクトロ・ワールド
Moon(新曲)
FAKE IT
P.T.Aのコーナー(歯みがきじょうずかな→survival dAnce→ultra soul)
チョコレイト・ディスコ

ずっと真夜中でいいのに。 SONIC STAGE 15:20〜

Perfumeが終わり、一旦ブレイク。本来であればキタニタツヤを観て、ゆっくりずとまよに移動するイメージで動いていたのだけれど、何だか辺りの様子がおかしい。まだライブの1時間以上前にも関わらず、ずとまよTシャツを着た人たちが次々にソニックステージへ移動するのが見えたのだ。その頃の僕はソニックステージの目の前でフェス飯を食べていたのだが、集まる人の数が本当にエグく、「えっ?みんなずとまよ行くんじゃねこれ……」と焦りだし、慌てて予定変更。ちなみにこのずとまよのライブ、入場規制だったらしい。危なかった……。

ずっと真夜中でいいのに。『馴れ合いサーブ』Lyric Video (ZUTOMAYO - Nareai Serve) - YouTube

暗転後にまずステージに現れたのは、射影機のようなテープを回して音を鳴らす音楽集団・Open Reel Ensemble。彼らはACAね(Vo.G.扇風琴)の挨拶をサンプリングした声をテープで変化させながら、来たる主人公の到来を待っている。そして登場したACAねが歌い始めたのは、実質的なライブ初披露となる“馴れ合いサーブ”。この1時間前にMVが公開されることを名言、更には「サマソニではやるのか、やらないのか……」と示唆していたのでやるだろうなとは思っていたけれど、まさか1曲目とは。背後のVJには上記にある通りの卓球試合のようなカオス過ぎる映像が流され(意味不明すぎて爆笑してしまった)、目にも楽しい作りになっていて本当に素晴らしかった。

この日のメンバーはACAねの他、菰口雄矢(G)、二家本亮介(B)、伊吹文裕(Dr)、村山☆潤(Key)。管楽器隊として吉澤達彦(Tp)半田信英(Tb)。Open Reel Ensembleから和田永、吉田匡、吉田悠の計10名で送る、ほぼワンマンライブ状態だった。よってその音の広がりというのも圧倒的で、様々な音が駆け抜けるスピード感は、感覚がトリップする極上体験。また背後には『ZTMY』のロゴと元素記号的なタイトル予測(“馴れ合いサーブ”はNa、“残機”はZnなど)が付けられた他、“馴れ合いサーブ”と“綺羅キラー”、“暗く黒く”ではMVがそのまま投影。それ以外の楽曲では火柱に包まれる演出があったりと、とにかく金をかけまくっている40分が今回のずとまよライブだったのだ。

【期間限定】ずっと真夜中でいいのに。『綺羅キラー (feat. Mori Calliope)』(from ROAD GAME『テクノプア』~叢雲のつるぎ~)ZUTOMAYO – Kira Killer - YouTube

ライブではお馴染みのキラーチューンはさておいて、セットリストの過半数を占めたのはニューアルバム『沈香学』から。そのうち新鮮味溢れる楽曲として位置していたのは“綺羅キラー feat. Mori Calliope”で、フィーチャリング相手の不在を自身のラップパートに置き換え、更には自己紹介がてらのオリジナルパートに変化させていたのは驚きであり、ライブ的にも力量を感じさせる代物に。

ずとまよはライブにおいて、MCが極端に少ないアーティストとしても知られる。それはACAね自身が姿を非公開にしている(この日も顔は黒い照明で全く見えず)ことで匿名性を貫いている理由のひとつだとも思うが、この日も唯一のMCは「昨日、太陽の塔のところでお祭りをやっていて……。にんにくマシマシ餃子をたくさん食べました」というもののみ。そこから《ニンニク増しで目指した健康体》の歌詞の“残機”に繋げるあたりは流石というか、ここ数年で場数を踏んだ成果によるものだろうなと。

【期間限定】ずっと真夜中でいいのに。『あいつら全員同窓会』(from ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」) ZUTOMAYO – Inside Joke - YouTube

ラストナンバーは「最後はみんなでシャイなから騒ぎしましょー!」とACAねが語って雪崩れ込んだ“あいつら全員同窓会”。キャッチーなサウンドや歌詞も魅力のこの楽曲、中でも《シャイなから騒ぎ》の「シャイなから騒……」部分でしゃがみ「……ぎ!」で飛び上がるアクションがワンマンライブでのハイライトの恒例だが、この日はフェスなので知っている人も少ない。しかしながら前方にいるファンが後ろに行動を無意識的に伝達し、それを観た観客が理解して動く、という感動的な光景も見られ、本当に素晴らしかった。冗談抜きでこの日、引き込むことに関してはピカイチのライブだったように思う。全国ツアーは既に全公演がソールドアウト、この時点でグッズの大半も売り切れになっている状態だったが、彼女たちを観たファンが「ちょっと俺グッズ買うわ!ライブも今から取る!」とあたふたしている光景もいろいろな場所で観た。個人的にもこの日のハイライト。いやー凄かった。

【ずっと真夜中でいいのに。@サマソニ大阪 セットリスト】
馴れ合いサーブ
お勉強しといてよ
綺羅キラー feat. Mori Calliope
秒針を噛む
暗く黒く
残機
あいつら全員同窓会

SEKAI NO OWARI OCEAN STAGE 17:05〜

ここからはオーシャンステージへ移動し、セカオワことSEKAI NO OWARIを選択。思えばデビュー当初からセカオワはポップシーンの最前線を走り続けていて、何度もチケットを取ろうと思っても取れない状況が続いていたモンスターバンド。当然この日は最前列付近にはファンクラブ的ファン、後方には彼らの音楽を愛するミーハー含むファンが密集し、終わった瞬間にはブワーっとハケていった(つまり遠く離れたこのステージに、多くの人がセカオワのためだけに集まっていた)のが印象的だった。

SEKAI NO OWARI「炎と森のカーニバル」 - YouTube

聞き覚えのあるディズニー的なパーカッションと共に現れたのはFukase(Vo)、Nakajin(G.Per)、Saori(Key)、DJ LOVE(DJ)の、これまでテレビ画面を通して何度も観てきたあのメンバーたち。なお今回はドラムとベースのサポートメンバー2名を含む、スペシャルセットだ。そしてSEの音がだんだん大きくなり、始まったのは”炎と森のカーニバル“!ライブならではの臨場感という点でも素晴らしかったけれど、やはり実感したのはそもそもの『歌の力』。あのメンバーが、あの歌を、今目の前で歌っている……。もうこの瞬間に全てが勝ち戦で、彼らの音楽が耳に浸透していることを、改めて感じた一幕でもあった。

今回の持ち時間40分は、おおよそ誰もが知るセカオワらしさを見せ付ける時間に。不意を突かれる選曲は“Witch”と“umbrella”らダーク曲のみで、それ以外は基本的に代表曲を惜しみなく入れ込む流れだ。先述の通り、おそらくこの日の出演アーティストの中でセカオワは最もミニマルな構成で組み上げられていて、VJの視覚的効果はゼロ、MCもほとんどなし、更には楽曲のライブリアレンジもほとんどないという、言ってみれば『音源を生披露する場』として確立させていた印象が強い。しかしながら今回のライブはあまりに感動的で、国民的な人気を誇る彼らの、全てを受け入れられる土壌が元々作られていたからだろうなーとグッと来たりも。

 

SEKAI NO OWARI「RPG」 - YouTube

 

1度目のピークは、お茶の間に広く浸透した“RPG”。あのイントロが流れた時点で沸騰する環境ではあったが、更にFukaseは「歌える?」とマイクを観客に向け、天井知らずの大合唱へと繋げていく。本当に右を見ても左を見ても、全員が歌っているこの状況は紛れもなく国民的ソングのそれであり、ある種の余裕すら感じた次第。また実際に《空が青く澄み渡》っていて、《僕らはもうひとりじゃない》と伝えるように全員が歌っている環境には、心底感動した。これはFukase自身が絶望の中にも希望を見出す性格が反映されている歌詞でもあって、多くの人にその思いが伝播しているのだろうなとも。

「あるときにコロナワクチンの副反応で39度の熱が出まして。でもその翌日に歌詞を提出しないといけなくて、結果すごくドロドロした歌詞になりました。でも実際の僕は普通の温和なオジサンなんで……」とまさかのエピソードが語られたバズ曲“Habit”、個人的に何度もこの楽曲に助けられた経験があり、ハチャメチャにボロ泣きしてしまった“RAIN”と続き、ライブはいつしかラスト。

SEKAI NO OWARI - Dragon Night - YouTube

最後に披露されたのは盛り上がりの定番でもある“Dragon Night”!こちらも早い段階で「歌える?」とFukaseがもはや答えるまでもないキューを出し、大合唱続きの状態に。穏やかな笑顔を浮かべるSaoriとNakajinもとても楽しそうで、風も出てきて穏やかになったこのオーシャンステージに、幸福は確かに存在した。……突飛なことはせず、自分たちの色で周囲を染めていくような、どこか今の自分たちの立ち位置を達観しているようにも感じたこの日のライブ。一応は40分で終わったけれど、「もしこのままフル尺のワンマンで聴いていたらどんな感情になったんだろう」と、終わった後に思ってしまった。最高でした。

【SEKAI NO OWARI@サマソニ大阪 セットリスト】
炎と森のカーニバル
Witch
虹色の戦争
RPG
Habit
RAIN
umbrella
ターコイズ
Dragon Night

Cornelius SONIC STAGE 17:50〜

天秤に掛けた結果セカオワを選んだものの、個人的には絶対に観ておきたいアクトがこの時間帯にあった。それは日本が誇る超技巧派集団・コーネリアスで、この日は「絶対にライブは最初から最後まで観るぞ!」と決めていた中でも、たとえ途中からだとしても観なければならない存在として位置していた。思えば小山田圭吾が活動を自粛してから、もう数年が経つ。元々ライブをほとんどやらない彼を観る機会は少なかったけれど、特にこの数年の喪失は放送中止になった『デザインあ』然り、音楽シーンにひとつの停滞をも与えたように思う。だからこそこの日、彼の復活を絶対に観たかったのである。

CORNELIUS - I Hate Hate - YouTube

猛ダッシュで会場に向かうと、ちょうど“Count Five or Six”が鳴らされている瞬間だった。小山田圭吾(Vo.G)、堀江博久(G.Key)、大野由美子(B.Syn)、あらきゆうこ(Dr)らの音楽は基本的に、MVを背後に投影させながら演奏するものだが、特筆すべきはそのサウンドが完全にリンクしていること。上に載せた“I Hate Hate”のMVで例えると分かりやすいけれど、彼らはポタッとインクが落ちた瞬間に一斉にドカンと音を鳴らす……というのを、本当に1秒の隙もなく叩き込んでいくのだ。これはライブというよりは完全に演奏技術の極みというべき衝撃で、次第に「俺は今なにを観ているんだ……?」とトリップする感覚にもなる。加えてこの日のコーネリアスは音が異常にデカく、体感的には同ステージの岡崎体育やずとまよの1.5倍くらいの音圧が出ていたように思った。

CORNELIUS - GUM (ULTIMATE SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW) - YouTube

ライブは続く“Gum”で最高潮に。歌詞はあるようでまるでなく、五十音の中の一文字の羅列で構成されていて、それがモニターに映し出された口の動きと合致、そこに音の爆弾を加えれば、もうそれだけでOKな『捻じ伏せる力』のようなものすら感じた。かと思えば“いつか/どこか”以降はメロウなムーブ全開な流れになり、小山田のボーカル面に感動したり、ゆったり映し出される星空に視線を向ける時間が続いていく。ちょっとこの体験は文章で伝えるのは難しいので、機会があれば是非ともライブに赴いてほしいところ。

そしてここからは、坂本龍一の死去を受けてかセットリスト入りを果たした“Cue”、更にはMETAFIVEの“環境と心理”のカバー(注:小山田はMETAFIVEのメンバーだったが、あの騒動を経て脱退している)と涙腺に訴え掛ける楽曲を続けてドロップ。特に“環境と心理”はMVを観てもらうと分かるように、他者に引き摺りこまれてしまう今の世の中や、個人主義の難解さ……といった内容があえて抽象的に(ここが重要!)に描かれている。繰り返すが、この楽曲の意味するところは未だ不明だが、今を生きる我々にとっても、とても考えさせられる時間になったのではないか。

METAFIVE - 環境と心理 - - YouTube

最後の楽曲は“あなたがいるなら”。これまでと同様にメロウな音で魅せた他、映像に関しても新VJになり、浮遊する玉が部屋を動き回るものに。ただ、その渦中にもギターの『ピーン』と鳴る音に合わせて波形ができたり、ドラムが『ドン』と鳴ればギザギザ模様になったり、『ポン』で分裂『シャーン』で粒が降る……などなど、映像とのシンクロ率もより高くなっていて素晴らしい。最終的に一言だけ放たれた小山田の「ありがとうございました」にも様々な思いを汲み取ってしまうくらいの、圧巻の時間だった。個人的裏ベストアクト。

【Cornelius@サマソニ大阪 セットリスト】
Mic Check
火花
変わる消える
Audio Architecture
Another View Point
Count Five or Six
I Hate Hate
Gum
いつか/どこか
Cue(Yellow Magic Orchestraカバー)
環境と心理(METAFIVEセルフカバー)
あなたがいるなら

YOASOBI MOUNTAIN STAGE 19:55〜

当初の予定では、ここでCosmos Peopleを観てゆったり最後のYOASOBIに移動する予定だったのだが、ここで異変が。この日のためにダウンロードしていた公式アプリから、ひとつの通知が届いたのである。そこに書かれていたのは『マウンテンステージ入場規制中』のお知らせ。えっ、まだYOASOBIのライブまでまだ1時間近くあるんですけど。……にも関わらず入場規制とはこれ如何に、と思っている間にも、次々にマウンテンステージへと走る人、人、人。慌ててステージに走った僕らだったが、その時には既にあり得ないレベルの列ができていて、電波も全く繋がらない状況。なんじゃこりゃ……。

無事に入れて安堵するも、ステージを観て更にビックリ。その理由はステージに聳えるライブセットにあり、バックモニターの前にYOASOBI特性のモニター&照明器具が大量に設置された完全ワンマン仕様(上記の写真はセッティング時のものなので載せます)。で、これは後になって分かることなのだが、左右のモニターにも映像が干渉したり、爆発特攻や火柱などのパイロも配置済み。更にはサカナクションの“ルーキー”を彷彿とさせる緑照明(伝われ)も使われたりと、このセットだけでどれだけの金がかかっているのか心配になるレベル。

YOASOBI「夜に駆ける」 from 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』2022.8.06@千葉市蘇我スポーツ公園 - YouTube

照明が落ち、パカッと空いた背後から登場したのは主要人物であるAyase(Key.Sampler.Composer)の他、AssH(G)、やまもとひかる(B)、ミソハギザクロ(Key)、仄雲(Dr)らサポートメンバーたち。そして遅れてマイクを持って現れたのはikura(Vo)で、鳴らされた1曲目はなんと知名度を爆発的に広げた“夜に駆ける”!これまで僕らが何回聴いたか分からないあのフレーズがikuraから発せられた瞬間、興奮と共に「俺今YOASOBI観てるんだ……」という感慨深い気持ちにも。またすっかり暗くなった会場の背後は照明ビカビカ、我々の頭上にはレーザー的な光が当てられまくる空間で、テンションが上がってしまうのもクライマックスならではか。

この日のセットリストは、端的に言えば「今のYOASOBIがベストアルバムを作ったら多分こうなる」という、誰もが思うYOASOBIの中心を射抜いた作り。様々なタイアップ然り、音楽番組での歌唱然り、YouTubeの再生数然り……。何かを鳴らせば必ず知っている曲に当たるような感覚で、彼らがこの数年でどれだけ多くのバズ曲を量産してきたのかを、気付かされるものでもあった。

YOASOBI「祝福」(The Blessing) from 『YOASOBI ARENA TOUR 2023 "電光石火"』2023.6.3@さいたまスーパーアリーナ - YouTube

またライブパフォーマンスに関しても、これまでの全国行脚の経験が活きたものに。“祝福”では早くも「オイ!オイ!」のコールが響き、“三原色”では「みんなタオル持ってる?」とのAyaseの呼び掛けから、会場内にタオルの海が広がっていく。楽曲の流れもバラードやミドルテンポ、キラーチューンを上手い形で配置している印象で、1時間超えの尺中でダレないような工夫が施されていたのも素晴らしい。

MCでは、YOASOBIのライブ感を赤裸々に吐露。「私たちは、昨年のサマソニをコロナ感染で辞退してしまって、今年が始めての出演になります。そして私たちはコロナ禍の中でも昨年からたくさんライブをするようにもなって、改めてライブの重要性を感じた年でもありました。皆さんいろいろなことがある中でも会場に来てくれて……。私たちにとってもライブは生き甲斐です」。ikuraはそう語ると観客全員にスマホのライトを点灯するように指示し、続く“たぶん”でライブの思いを共有。超満員のマウンテンステージがライトに照らされる光景がモニターに映し出されると、バンドメンバーもその光景を見て喜びを噛み締めていた。

YOASOBI「怪物」Official Music Video (YOASOBI - Monster) - YouTube

ステージ全体の映像が1匹の鳥を模した“ツバメ”を終え、ライブはいよいよラストスパート。中でも圧巻だったのは低音打ち込みが炸裂するヒット曲“怪物”。真っ黒なモニターに赤い爪痕が刻まれるホラーな開幕から始まった“怪物”は、打ち込みパートに突入した瞬間に大量の火炎特攻&レーザービームが放射!強制的に引き上げられた興奮そのまま、気付けば1曲が終わってしまう感覚はやはり、ライブが楽しかった何よりの証明なのではないか。

YOASOBI「アイドル」 Official Music Video - YouTube

YOASOBI「アイドル」(Idol) from 『YOASOBI ARENA TOUR 2023 "電光石火"』2023.6.4@さいたまスーパーアリーナ - YouTube

 

そしてライブはこれを聴かなければ帰れない、世界的に見ても最大のヒット曲である“アイドル”でシメ。サイケデリックな掛け声を開幕として楽曲はスタートし、ikuraが《天才的なアイドル様》と発した瞬間、前方の特攻装置がバァン!と大爆発。モニターには歌詞の羅列の他、アニメ【推しの子】の主人公・アイが歌い踊るオリジナル映像がスピード感抜群で投影され、恐ろしい程の盛り上がりに。ステージの中心で歌うikuraは実際のアイドルのようにポーズありで可愛らしく進行、対する我々はと言えば「オイ!オイ!」のコールで焚き付ける双方向的な関係性になっていて、既に“アイドル”が正真正銘、今世紀最大とも言えるバズ曲になっていることを理解。おそらくこのライブも今年〜来年にかけて起こるYOASOBIの躍進のひとつに過ぎないと思うけれど、本当に観てよかった。圧巻でした。

【YOASOBI@サマソニ大阪 セットリスト】
夜に駆ける
祝福
三原色
セブンティーン
ミスター
もしも命が描けたら
たぶん
ハルジオン
アドベンチャー
ツバメ
怪物
群青
アイドル

おわりに

YOASOBIの素晴らしいライブを終え、これにて今年のサマソニは終了。そのままWILLERの夜行バスに乗り込んで帰った訳だけれど、本当に夢かと錯覚するくらいの最高の時間だった。今もあれからかなりの日数が経ったが余韻が覚めないくらいに。

サマソニの主催者であるクリエイティブマン代表・清水直樹氏は、ある日のPodcastにて「中にはサマソニを中心に年内の予定を組んでいる人もいる」と語っていたが、僕もその中のひとり。個人的な話をしてしまうと、僕は島根県という片田舎に住んでいて、基本的にはどのライブに行くにも遠征になり、多くの金と時間がかかる。更には連休がほぼ取れない会社に勤めていることもあって、いつしか大好きだったライブに行くこと自体が『娯楽』のようになった。そんな中でサマソニの存在意義は、自分にとっては大げさでも何でもなく『生きる理由』に等しいものがあったのだ。

大好きなリアム・ギャラガー、ずとまよ、YOASOBIなどなど様々なアーティストに触れた今年のサマソニ。不思議なものでその翌日は普通に仕事だったのだけれど、何故かバリバリ仕事もできていて、改めて「やっぱり僕には音楽が必要だったんだなあ」と思った次第。多分こうした思いを抱いている人は、僕以外にもたくさんいるのだろう。

そんなサマソニは、既に来年の開催も決定している。現時点で清水代表は「ビリー・アイリッシュを絶対に呼びたい」ということ、アジア圏とK-POPの比重が高まる可能性も示唆していて(詳しくはこちらを参照)、今年とはまた違ったラインナップになることが期待できる。また来年も参加できるよう願いを込めて……。本当に開催していただき、ありがとうございました。