キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

【ライブレポート】SUMMER SONIC 2022 大阪1日目@舞浜ソニックパーク

こんばんは、キタガワです。


遂に待ちに待った祝祭がきた!当ブログでも何度も何度も綴ってきていたのである意味辟易するレベルだったろうが、ようやくこの日がやってきたのだ。そう。洋楽フェスの祭典こと『SUMMER SONIC 2022』である。……思えば、洋楽好きとしてこのコロナ禍の期間は地獄のようだった。来日公演は一時期全てなくなって、サマソニは2019年がラスト。しかも、もうあれから3年も経ったという……。他国ではもう普通にライブが行われていることにいろいろとストレスも抱えてはいたけど、これでチャラ。出来得る限りの感染対策をし、ようやっとサマソニに再び行けるのだ。


この日、僕は朝5時に地元を出発。ほぼ徹夜状態で新幹線で揺られながら、何とか大阪まで到着した(ちなみに大阪も3年ぶり)。そこから飲み物やら食料などを2000円分ほどパンパンに詰めつつ、本町→コスモスクエア駅ときてシャトルバスへ。乗り場は大混雑で、もう普段通りのサマソニの印象。そこからブイーンと乗って会場に到着する訳だが、やはり一部を除いてほとんどがマスク姿。ただコロナ禍なので確かに会話は控えめで、何というか全力で楽しむんだけど迷惑はかけないように、という感覚すら抱いて、何だかその光景だけで嬉しい気持ちに。


フェス会場の舞浜ソニックパークは、何だか例年通りというかほぼそのまま。精々マッシヴ・ステージの中の着席スペースがプラチナチケット限定ではなくなったくらいで、本当にいつものサマソニがそこにはあった。ここから僕の最高の夏は始まるのだ。以下ライブレポート。

→サマソニ2019レポはこちら。 ・1日目2日目 .・3日目

→サマソニ2018レポはこちら。 ・前日譚1日目2日目

 

 

Easy Life 11:30〜 (MOUNTAIN STAGE)

https://www.easylifemusic.com/

スマホの明かりを最大にしてもスマホ画面がほぼ見えないという異様な暑さの中、まずはスタンドとスタンディングに分かれるスタジアム型のマウンテンステージへ。お目当ては今大注目の若手としても知られるイージー・ライフ。まだ昼12時も回っていないけれど、前方から人はギッシリ。少なくともスタンディングエリアは入場規制ギリギリだ。

 

定刻を少し過ぎて、学校のチャイムのようなSEを経てメンバーが登場。マレー・マトレーヴァーズ(Vo.Key.Syn)が被っている帽子には『JAPAN一番』と日の丸がペイントされており、もうこの時点で観客は大盛りあがり。彼らの魅力と言えば、そのダウナーポップな曲調だろう。例えるとすれば低血圧なのに全力。気だるげなのに楽しそうというか……。一見相反するような精神性が上手くマッチした、彼らにしか成し得ないライブが持ち味。

 

Easy Life - Skeletons (Glastonbury 2022) - YouTube

イージー・ライフのサウンド面は打ち込みが主体。ただ明らかにBPMの遅い雰囲気を重低音が蹂躙してくるのもなかなか面白いなと思ったりして、おそらく大多数が初見であるにも関わらず、気付けば全員が踊っている最高の空間に。もちろんそんな状況なので、メンバーのテンションも高めだ。マレーは2曲目にして「カンパイ!」とアサヒスーパードライを空け、グイグイ飲んで3曲目の頃にはカラになっていたし、5曲目あたりでは早くも客席突入。対象的に暑すぎるあまりだんだんメンバーたちの表情は険しくなっていき、ドラムスが着ている白シャツなんかはもうスケスケ状態。


面白かったのは、マレーがライブ定番曲の“Skeletons”で無理矢理モッシュを作ろうとした一幕。お分かりの通り彼らの楽曲はモッシュに全く適していないのだけれど、それでも煽りまくるマレー。でも結局は何も起こらず、見かねたマレーが自分からフロアに飛び込む謎展開に思わず爆笑。ただ「ダウナーなの?アッパーなの?」ということ以上に、実は彼らの楽曲は鬱病だったりドラッグ中毒だったりもする訳で、彼らなりにこの楽曲、そして日本の抑圧された雰囲気に思うところがあったんじゃないかと。

 

【和訳】 easy life - nightmares【公式】 - YouTube

最後の曲は“nightmares”。言わずと知れた、彼らが日の目を浴びた契機になった曲である。内容は、睡眠障害によって忍び寄る悪夢。割とフラフラになりながら最後までやりきったイージー・ライフ、マレーは「ありがとう大阪、イージー・ライフでした。日本は宇宙一の国です!」と英語で叫び、ステージを後にしていた。我々的にも相当ハードな時間だったけど、当人たちはもっと暑かったはず。お疲れ様でした……。ちなみにその後物販には長蛇の列が出来ていて、一気にTシャツがハケたことも付け加えておきたい。

【Easy Life@サマソニ大阪 セットリスト】
pockets
sunday
daydreams
peanut butter
sangria
BEESWAX
ojpl
skeletons
dead celebrities
DEAR MISS HOLLOWAY
nightmares

 

Salem Ilese 12:50〜 (SONIC STAGE)

https://salemilese.com/

その後は3OH!3をチラッと見ていたが、どうも周囲の動きが気になる。何故か女性たちばかりが一気に前に進もうとしているのだ。そこで次のアーティストがTOMORROW X TOGETHER(TXT。超人気韓国アイドルグループ)だということに思い至り、これは行ったら戻れなくなると考えて急遽予定変更。ここで考えるのは、ソニックステージの存在。……そう。実はソニックステージはサマソニ大阪で唯一の室内エリア。しかもエアコン完備、座って観ることOK、音響も抜群と三拍子揃った最強の会場なのだ。というわけで後半にかけての体力温存も含めて、ソニックステージのセイレム・イリースを観ることに。邪な考えだけれど、こうした方向転換が出来るのもフェスの楽しみである。

 

salem ilese - (l)only child (official music video) - YouTube

結論から書くと、この判断は非常に正しかったと思われる。ステージに足を踏み入れたときにはもうライブは始まっており、何やら可愛らしげな女の子が中心でくるくる踊っている。もはや言うまでもなく、この人物こそがセイレム・イリースその人であり、露出多めの服にスカート姿で中心に立っていた。そしてその一挙手一投足に、無意識的な「フゥー!」の声が飛んでいる。


TXTの関係でフロアはかなりガラガラだったが、フェスあるあるとして、人が少ない方がかえって満足度も高かったりもする。彼女のサウンドとしてはポップパンクでどことなくアヴリル・ラヴィーンを彷彿とさせるし、脇を固める屈強な3人のバンドメンバーの中心で歌うイリースの対比が面白い。背後のスクリーンには『SalEm iLEse』の文字がブルーやピンクを貴重としてハートマーク付きで流れ続けていて、「この子自分の立ち位置を分かってるな……」と思ったり。

 

salem ilese – mad at disney (official music video) - YouTube

曲名も“Coke & Mentos(コーラとメントス)”とか“Mad at Disney(狂ったディズニー)”、“Hey Siri”など妙に人を食ったものも多く、何故かそこにザ・キラーズ“Mr. Brightside”のカバーも取り入れるかなり凝ったものだったのも最高。最後はとある楽曲の途中でイリースがサンタクロースよろしく、観客に白い袋に入ったお菓子をばらまきまくって「ありがとう日本!大好きです!」の一言を最後にステージから去り、残された我々がバンドメンバーの演奏をただ聴くだけの時間が流れた。めちゃくちゃ良かった。

【Salem Ilese@サマソニ大阪 セットリスト】
セットリスト未確定のため記載なし

 

KREVA 14:10〜 (OCEAN STAGE)

https://www.kreva.biz/

続いては海が眼前に見えるオーシャンステージまで走って、Dr.K(ドクターケイ。彼が自分を指す際に使う愛称)ことKREVA。結果から書くと、僕は彼のライブで号泣してしまった。それは何故かと言えば答えは曖昧になってしまうけど、多分ここ数年間の我々の辛さ、思いを一番代弁してくれていたのがKREVAだったから。

 

KREVA 「Finally」MUSIC VIDEO - YouTube

ステージに足を踏み入れたKREVA。灼熱の野外の下で、彼がまず発したのはリリックではなく、自分の本心を語るMC。「コロナ禍で憂う日々、ライブが消えて楽しいこともなくなって。辛いことばっかりだった」と、あくまで意訳だが彼は我々の心を代弁してくれた。そんな中で「やっと会えたな」と彼が一言呟くと、1曲目“Finally”へ。……やっと会えた。何度も書くが、やっと会えたのだ。どれだけの人が苦しい思いをしてきて、その幸福開放の場としてサマソニに来ているのかを、彼ははっきり分かった上でパフォーマンスをしていた。それが本当に嬉しかった。

 

イッサイガッサイ ~2019 Ver.~ - YouTube

かつてはKREVA+DJのイメージが強かったけれど、今回はそのフォーメーションに加えてバンドメンバーが集まるロックver。そのため既存楽曲は2019年リリースのベスト盤『成長の記録 〜全曲バンドで録り直し〜』を再現していて、大舞台にも映える。リリックは基本的にはスクリーンに投影され、“基準”や“ストロングスタイル 〜2019 ver.”といった強いリリックが視界に入ることで、臨場感もプラスだ。中でも感動したのは“イッサイガッサイ 〜2019 ver.〜”。《今年は何かしたくて毎日二人はソワソワしてる》……。この楽曲がリリースされたのはもう随分前ながら、このコロナ禍の今だからこそ、とてつもなく刺さる代物でもあった。いろいろな酸いも甘いも一切合切飲み込んで、この日があるのだと思えた。

 

KREVA「音色 ~2019 Ver.~」(Full Ver.) - YouTube

ゲストとして“ひとりじゃないのよ”の共同作業者であるコーラス・SONOMIを招きつつライブは続き、ラストは“音色 〜2019 ver.〜”。これまでラップを軸とした楽曲で畳み掛けてきたKREVAにとって、最大限の歌メロ楽曲である。サビ部分の《愛してんぜ音色》のリリックには、どうしても音楽への愛情を感じてしまったりもしつつ……。KREVAがポジティブなイメージなのは変わらずだが、今回はやらなかった“存在感”や“成功”にもある通り、実際の本心ではいろいろなことを考えながら心の余白を作っている人間だ。ことこの日においては『音楽フェスに参加する意味』や『我々の生活』に重点を置いたセトリになっていて、素晴らしかった。

 

【KREVA@サマソニ大阪 セットリスト】
Finally
基準 〜2019 ver.〜
ストロングスタイル 〜2019 ver.〜
人生
ひとりじゃないのよ feat.SONOMI
イッサイガッサイ 〜2019 ver.〜
C'mon, Let's go 〜2019 ver.〜
音色 〜2019 ver.〜

 

Yungblud 15:25〜 (OCEAN STAGE)

https://www.yungbludofficial.com/

続いて同会場で、ジェンダーもジャンルも超越した暴君・ヤングブラッドを。このライブに関しては一体何を書けばいいのか、そしてどこまでを書いていいものか……。元々彼は「人間かくあるべき」といった固定観念を破壊しようと画策していて、彼自身が全てを発散する最善手として音楽をやっている。というのを大前提にしても、この日のライブはあまりにもルール無用だった。具体的にはモッシュやダイブ、歓声といったサマソニ公式からの禁止行為を半ば容認。むしろヤングブラッド自身がこれらを積極的に促すという、ある意味では伝説、そしてある意味では出禁レベルの最狂ライブだったのだ。


ライブ開始1分前、そこにあったのは『何もない』ステージだった。せいぜいドラムとマイクスタンド、アンプくらいで、他の楽器は存在しないのである。その光景に疑問を抱いていると、突然爆音が鳴り響き、全力疾走でバンドメンバー(ちなみに楽器は全てジャックケーブルレス!)、そして短距離走かと思うくらいあり得ないスピードでステージに現れたヤングブラッド。マイクスタンドを一瞬でブチ折り「オオサカー!ファッキンクレイジー!!」と絶叫。呆気にとられる観客だが、まさか彼がこのままのテンションで40分やり切るとは、誰も思っていなかったろう。

 

YUNGBLUD - Strawberry Lipstick - YouTube

 

1曲目は“strawberry lipstick”。VJに彼の口が真っ赤に映し出される中、彼は右へ左と全力疾走しながら絶叫に次ぐ絶叫。しかも楽曲の隙間が1秒でもあれば絶叫で煽ったり、ベロを出して睨みつけたりとまるで生き急ぐ猛獣のようで、我々はもう盛り上がるしかない状況に。あまりにも全力で移動するあまり早くも右膝からは血が地面まで滴っているし、楽曲終わりにはサポートギターに濃厚キス!更には手に持ったマイクスタンドを真上に放り投げ、叩きつけられる音が響く。一体これは、なんだ。

 

Yungblud - The Funeral (Big Weekend 2022) - YouTube

以降も彼の傍若無人ぶりは続く。アルコール(とアクエリアスと水)をチビッと飲んで後は丸ごと観客にぶん投げる、というのを全部で10回はやっていたし、「ラウダー!」と歓声を要求。Yシャツは2曲目にしてブチブチ破って、ステージに吐かれた唾は数え切れないほど。極めつけは「モッシュピットー!モッシュピットー!」と、もはやコロナ禍のルール以前に危険な盛り上がり方であるモッシュも強制的にやらせていてヤバすぎる。本当に情報量の多い、カオス空間が延々と続いていく。「誰か止めてくれ」と思いつつも、メンバーもガンガン酒を飲んだり演奏を放棄して写真を撮ったりしていたので、制御は完全に不可能な様子。

 

YUNGBLUD - Loner (Reading + Leeds 2019) - YouTube

……というのを、彼は40分間やり続けたのだ。サマソニのルールに照らせば是非が問われるのは確実として、何というか、ある意味ではとても健全な洋楽フェスのようにも感じた(実際後の彼のツイッターを見ると、全てのルールを理解した上でこのパフォーマンスをしていたことも話していた)。もっと言えばこの鬱屈した制限が続く中で、こうしたルール無用の措置は我々にとっても最上位のストレス開放だった訳で。だからこそ「叫べ!暴れろ!制限なんて知るか!全部俺が許可する!」とするあの行動に救われた人も多いんじゃないかと。賛否両論上等。誰にも止められない暴君が、ここ日本で大暴れした瞬間だった。

【Yungblud@サマソニ大阪 セットリスト】
strawberry lipstick
parents
superdeadfriends
The Funeral
I Love You, Will You Marry Me
weird!
fleabag
fdlfst
I Think I'm OKAY
Loner

 

羊文学 16:30〜 (MASSIVE STAGE)

https://www.hitsujibungaku.info/

ワンオクファンの襲来と逆行するように、押しつ押されつで何とかオーシャンを抜けた僕はマッシヴステージへ。ここは他のステージと違い遮るものがほぼなく、通りがかった参加者も遠目でライブを確認できるという一風変わったステージ。そのため音が流れてきて「おっ!」と思ったらすぐに観ることが出来る柔軟さもある。僕が到着したのはギリギリだったけど、もうこの時点でかなりの客入り。真裏がメーガン、ゲスの極み乙女ということを考えても、この人気は凄いなと。

 

羊文学「光るとき」Official Music Video (テレビアニメ「平家物語」OPテーマ) - YouTube

セットリストはニューアルバム『our hope』を大幅にフィーチャーした代物となり、過去作から披露されたのは“あいまいでいいよ”のみというかなり強気な姿勢。全編において共通していたのはサウンドの轟音ぶりと、対照的な塩塚モエカ(Vo)の透き通る歌声で、これこそが羊文学のライブなのだと実感。MCはほぼなく、たまに塩塚が「ありがとう」と呟くのみ。余計なものを排除したロックがここにはあった。

 

羊文学「あいまいでいいよ」Official Music Video - YouTube

冒頭は緩やかに、それでいて次第に熱量が上がっていく様は羊文学の音楽の通例のようにも思えるのだけど。決して観客の腕が高く挙がることもない静かな爆発というか、そうした風景が全てを物語っていたように思う。おそらくは最もキャッチー寄りの“あいまいでいいよ”を終えてシーンとした中、すぐ隣のステージで聴こえるクーラ・シェイカーの音が聴こえてきて、塩塚モエカが「クーラ・シェイカー観たかった……」と笑顔で語っていたのが唯一のMC。そこからラストは「宇宙の曲です」と“ワンダー”。後半部分の永遠に続きそうなノイズにまみれながら、誰もが幸福に酔いしれた。余韻も残すことなくズバッと終わった空間で、塩塚は「ありがとうございました、羊文学でした」とボソリ。観客の拍手はまばらだったけれど、これは間違いなく『圧倒された』という感動が勝ったものだろう。これ、野外じゃなくてもっと小さいライブハウスで聴いていたらどうなっていたのだろう……。

【羊文学@サマソニ大阪 セットリスト】
[リハーサル]
夜を越えて
キャロル

[本編]
光るとき
パーティーはすぐそこ
OOPARTS
あいまいでいいよ
ワンダー

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION 17:40〜 (MOUNTAIN STAGE)

https://www.asiankung-fu.com/s/n80/

羊文学の後は少し時間が空いたので、ビールを飲みながら「次はどのライブ行こうかな」などと考える。というのも次の時間帯はワンオク、きゃりーぱみゅぱみゅ、アジカンという邦楽密集時間だったためだ。で、行き交う人のTシャツを見るにワンオクは人でいっぱいだろうし、きゃりーは数ヶ月前に米子で観たし……といろいろ考えた結果、アジカンを選択。先程のライブの余韻から「塩塚モエカとコラボしての“触れたい 確かめたい”が聴けるかも!」という考えもあった(ちなみにコラボはありませんでした)。

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『De Arriba』Music Video - YouTube

真裏がワンオクの関係上、正直個人的に訪れた2日間のマウンテンステージの中では最も人が少なかった。「おいみんな!あのアジカンだぞ!」とも思ったけれど、これもフェスの面白さかなと。定刻にステージに現れた彼らは、まず1曲目にニューアルバムから“De Arriba”を投下。ゆったりゆらゆら、でも音質は完全にロックなミドルテンポな時間が流れていく。


この日のアジカンは、基本的にはニューアルバムのモード。加えて“リライト”や“Re:Re:”といったアッパーな代表曲は徹底的にセトリから外し、はっきりと知られている曲は3曲目の“ソラニン”のみというあまりにも強気な構成だった。ただ思えば『俺らの今』を取り入れながら何年も活動しているのがアジカンな訳で、ある意味ではとても貴重なライブだったとも言える。「イギリスを代表するバンドに挟まれて。10代の自分に聞かせたら絶対信じないと思う」とのGotch(Vo.G)のMCも感動的。

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『今を生きて』 - YouTube

けれども不運だったのは、“ソラニン”のリフから降り始めた雨。次第に強くなっていく雨足に「みんな自分のペースで。辛かったら他にも素晴らしい人たちが演奏してるから、他のステージに移動してもらってもいいし。最後まで楽しんで」と語り、そこからも緩やかな楽曲を進めていくGotch。少しずつ人も減って難しい環境にはなったが、最後に鳴らされた“今を生きて”でその全てが肯定されたような気もした。総じて邦楽シーンのトップに君臨するバンドの、余裕のあるパフォーマンスに誰もが酔いしれた瞬間だった。

【ASIAN KUNG-FU GENERATION@サマソニ大阪 セットリスト】
De Arriba
センスレス
ソラニン 
You To You
エンパシー
触れたい 確かめたい
マーチングバンド
ダイアローグ
今を生きて

 

CL 18:45〜 (SONIC STAGE)

https://www.chaelincl.com/

当然のように、この降りしきる雨はサマソニ大阪の多くのステージに影響を及ぼした。ずぶ濡れになりながらマウンテンを外から見ると、もうほとんど人はいない。マッシヴのどんぐりずのステージは前方2列ほどしか埋まっておらず、多分ワンオクのステージに関しては過酷な状態になっていると推察する。となれば、残る会場はひとつしかない。そう。唯一の屋内ステージのソニックである。……という訳でソニックステージに移動すると、やはり同じことを考える人は多いようで、かなりの密集具合。数十分もすればオーシャンから人が流れていると予想し、急いでスタンド席をGET。あと、徹夜からの島根→大阪移動、以降ぶっ続けに動いた疲れから少し寝る。

 

CL - SPICY (Official Video) - YouTube

その安眠が切れたのは、突然流れたサイレンから。続いては韓国からの刺客・CLだ。ただ冒頭から10数分間CLは登場せず、ひたすらDJがCL楽曲をリミックスして流すスタイルで進行していく。その音圧はとてつもなく、心臓を持ち上げられるような低音が会場を支配。そう言えば今年のサマソニはダンスミュージック系アクトが少なかったので、新鮮にも映る。


DJのプレイが一段落すると、一際大きな歓声が上がる。満を持して登場したのはCLその人であり、以降は数人のダンサーを引き連れてのパフォーマンスにシフトしていく。それこそ我々日本人的にはAvichiやZEDDといった音楽性をEDMと呼ぶイメージだけど、CLが鳴らすEDMはどことなく多国的というか、一風変わった代物なのが面白い。キラキラバキバキ、ではなくボウンボウン鳴る感じというか。

 

CL - ‘HELLO BITCHES’ DANCE PERFORMANCE VIDEO - YouTube

客入りも次第に増え続け、後半には後ろまでビッシリ。そんな大盛り上げのライブは“HELLO BITCHES”でシメ。ステージ前方で踊り続けるCLの熱量も上がっていき、それはファンにも伝播。CL視点で『BITCHE』への思いをぶちまけつつ、ライブは大団円で幕を閉じた。当初は「この雨の影響でここまでの大入りになったのか?」とも思っていたが、終了後ブワーっとハケていく観客を見ながら、如何にCL目当てで集まった人が多いのかを実感した次第だ。

【CL@サマソニ大阪 セットリスト】
〜DJ Solo〜
SPICY
HWA
THE BADDEST FEMALE
5STAR
Chuck
Doctor Pepper
Tie a Cherry
Lover Like Me
MTBD
HELLO BITCHES

 

Carly Rae Jepsen 20:50〜 (SONIC STAGE)

https://www.carlyraemusic.com/

ここでサマソニ1日はラストの時間。単独ライブチケット数万超えのポスト・マローンか。編成変更から初の来日となるカサビアンか。はたまたカナダの最強歌姫ことカーリー・レイ・ジェプセンか……。参加者は究極の3択を選ぶことを余儀なくされる。時間的にもフルで鑑賞出来るのは1組のみなので、さぞ悩んだ人は多いことだろう。ただ、個人的な思いは既に決まっていた。何故なら僕はカーリーが、1日目のキーアーティストだったから。


フロアは開演前から大混雑。割とガチ目なファン(コスプレをした海外の男性、ティーンの女性など)もいる中で、“I Really Like You”や“Call Me Maybe”といった日本でのバズ曲も多くリリースしてきた彼女らしく、日本人率もかなりのものだ。……そんな中で何故か開演時間を過ぎているにも関わらず、なかなかライブが始まらないソニックステージ。今でも原因は不明だが、おそらくソニックに押し寄せるファンの入場規制的な意味合いが大きかったと思われる。

 

Carly Rae Jepsen - I Really Like You - YouTube

定刻を30分過ぎ、ようやく暗転。まばゆい照明がステージを照らす中、バンドメンバー3名+女性コーラス1名のセッションから呼び込まれたのは、全身が黄金のボディコン的衣装で包まれたカーリーその人。1曲目は最新アルバムから“No Drug Like Me”で、真っ赤な錠剤のVJの前で、あの透き通る歌声を響かせている。当然ながら、それは我々が何度も何度も聴いてきたあの歌声なのだから感動モノ。ファンも大盛りあがり、カーリーも右へ左へと動きながら楽しそう。

 

Carly Rae Jepsen - Now That I Found You - YouTube

最新アルバムと言ってもリリースは2019年。そのためセットリストは2019年の日本単独公演とあまり変わらず、純粋に持ち時間が少し伸びたような印象。具体的にはセカンドの『E·MO·TION』、サードの『Dedicated』の楽曲を中心に、Side Bと新曲“Beach House”も入れ込む形だ。驚くべきは、それら『全ての楽曲』が完全に受け入れられていた点。“Now That I Found You”では飛び跳ねまくり、“Call Me Maybe”はもちろん新曲の“Beach House”まで。カーリーは毎回マイクを観客に向けて、全員がダンス&熱唱という最高空間。中でも代表曲の“I Really Like You”の盛り上がりは凄まじく、「アウィリウィリウィリ……」の大合唱が轟いた。その都度耳に手を当て、「イェア!」と喜ぶカーリー、めちゃくちゃ可愛い。

 

Carly Rae Jepsen - Cut To The Feeling - YouTube

そこからはコーラスの女性が前に出てほぼユニゾンで歌う一幕もありつつ、最後はお馴染みの“Cut To The Feeling”。キュート過ぎるダンスを挟んでラスサビでは大量の紙吹雪が降り注ぎ、誰もが満面の笑顔になっていく様には思わずウルッときたり。個人的には、多分海外から駆け付けたファンだと思われる男性ファンが顔を両手で覆って泣き続けていた姿で涙腺が崩壊しそうになった。最初から最後までずっとハッピーだったカーリーのライブ。それは彼女自身が自分の立ち位置を把握しているからこそ成し得た、極上のポップだった。

【Carly Rae Jepsen@サマソニ大阪 セットリスト】
No Drug Like Me
E·MO·TION
Run Away With Me
Julien
Now That I Found You
Gimmie Love
I Really Like You
First Time
Want You in My Room
Beach House
Too Much
Everything He Needs
Boy Problems
Call Me Maybe
When I Needed You
Cut To The Feeling


カーリーのライブが終わり、シャトルバスでコスモスクエア駅→本町→心斎橋のホテルに帰る。到着した頃には12時を回っていて、こんな素晴らしい日がまだ続くことに幸福を感じつつ、汗だくになった服を着替えてグッスリ就寝した。さて、次回は運命の最終日ライブレポート。初来日のマネスキンやザ・リンダリンダズをはじめ、コロナ禍を経て2年ぶりのライブとなった、The 1975のまさかまさかのライブまでを濃密レポートする。お見逃しなく。