キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ゾクッとする、ビックリする、ハッとする……。良い違和感が魅力の曲5選

こんばんは、キタガワです。

曲を聴いているとごくたま、ハッと驚く瞬間が訪れることがある。「こんな歌い方も出来るんだ!」「前のアルバムと全然曲調が違う!」「この歌詞凄く私に刺さる!」などなど……。気付けばその楽曲がたとえ有名なものでなくても、自分の中の大切な1曲になったり、というのも同様に、珍しくはないはずだ。ただ今回取り上げるのは、もっともっと直接的。『ゾクッとする、ビックリする、ハッとする……。良い違和感が魅力の曲5選』と題し、様々な角度から既存の音楽にはまずなかった楽曲をピックアップして紹介していく。もちろん刺さる刺さらないは人それぞれだけれど、きっと何か、これまでにない感覚を味わってもらえることを願って。


Already Gone/Two Door Cinema Club

北アイルランド出身のロックバンド・Two Door Cinema Club。彼らの現状最も新しいアルバムが『False Alarm』。この作品はこれまでロック然としたイメージの強かったツードアが、明らかに別方向に向かったと分かる意欲的な作りで、どちらかと言えばアダルティーな雰囲気。今回取り上げる“Already Gone”はそんなアルバムのラストを飾る楽曲で、最後の最後には何の前触れもなく突然プツリと切れて終わってしまう。

ボーカルのアレックスによれば、この結末に至った理由は「メンバーが曲の再生中に間違って停止ボタンを押したんだ。いきなり音が止まって本当に驚いたけど、同時に面白そうだと思った」と海外のインタビューで答えている。当たり前だったことが突然消え去る恐怖と驚き。本来音楽でそうしたことを体現するのは難しいが、期せずして音楽を以て具現化してしまった、ある意味では偶然の産物的1曲。それが“Already Gone”なのだ。

Two Door Cinema Club - Already Gone - YouTube


Illuminate/Aflojack

今や世界的DJとしてEDMフェスに引っ張りだこのアフロジャックも、集中して聴いてみると思わず「んっ?」となる箇所がある。彼のサウンドは主にエレクトロ・ハウスをフィーチャーしていて、その点に関しては確かに他のDJとあまり変わらない。しかしながら彼の大きな特徴として、ごくたまに『サビのサウンドを一瞬だけ遅らせる』というものがあり、以下の“Illuminate”を筆頭としてサビに絶対的なオリジナリティを隠し味として付随させている。もちろん、ともすれば破綻してもおかしくないこの試みが逆に強みとなっているのは、そもそものジャックのサウンドメイクが印象深いからこそだ。

ピットブルやデヴィッド・ゲッタなど、今なお彼の独創的な曲調に影響を受けて共同制作を行うDJも数しれず。たとえアフロジャックのライブでなくとも、他のDJが彼の楽曲をサプライズで流すことも、今は珍しくもなくなってきた。ひとたび楽曲が流れればすぐに彼だと分かるサウンドを、是非ともこの機会に何曲か触れてみてほしい。

Afrojack, Matthew Koma - Illuminate (audio only) - YouTube 


カミナリワン/ギターウルフ

日本のみならず海外でも熱狂を生み出す荒ぶる狼・ギターウルフ。気付けば30年以上に渡って活動を続ける彼ら故に、もし代表曲を挙げるとなると各自バラバラな楽曲を選んでしまうに違いないが、リスナーに衝撃を与えたという点においては“カミナリワン”を選出するのが最も適しているのではないか。

サブスクでも何でも、今の時代の音源制作に求められるのは決まって音質である。そのためレコード各社がなるべく綺麗な音で、なおかつ臨場感もあり……という探求を行い続けているのが現状なのだが、ギターウルフの楽曲は意図して荒々しい一発撮りに徹していて、ノイズも音のバランスもおかまいなしなのが魅力。その中でも”カミナリワン“はセイジ(Vo.G)による「カミナリワーン!」の絶叫から突如大爆発が鼓膜に襲い掛かる仕上がりで、それが後の轟音のスパイスになるという、彼らにしか成し得ない楽曲として確立。ライブでは更なる熱量で突き進む彼ら、気になった方は是非ともライブへ。

Guitar Wolf 『カミナリワン "Kaminari One" (Official Music Video)』 - YouTube


ただし、BGM/ニガミ17才

サイケデリックかつポップなサウンドで聴く者に絶大な印象を与えるニガミ17才。彼らの楽曲はとにかく遊び心満載で、毎回新曲がリリースされるごとに驚かせてくれる。例えば擬音を散りばめた”化けるレコード“。中国語っぽい言葉を空耳的に聴かせる”こいつらあいてる“。サイケなバカテク演奏で魅せる”幽霊であるし“……。詳しくは↑の青文字の部分をクリックして視聴もらいたいところなので省略するとして、今回のタイトルの『ゾクッとする』に該当する楽曲はライブの定番”ただし、BGM“。

この楽曲のメロでは、基本的に平沢あくび(Vo.Key)による単音の言葉が随所に流れ続けている。しかもその言葉の数々は敢えて近く聴こえるよう調整されているために、まるで耳元で囁かれ続けていくゾクゾク感を味わうことが出来る。よく聴くと全体としてはかなりミニマルなサウンドのベースとドラムが軸になる中で、しっかりとしたパーカッション的な役割としてあくびの声を取り入れているところも、なかなかニクい。余談だがライブではこの声をあくび本人がサンプラーで流しており、他にもティッシュ(鼻セレブ)をばら撒いたりステージ上で卓球をしたりと自由奔放。稀有さも含めて今最も知っておくべきバンドと言えよう。

ニガミ17才 MV「ただし、BGM」(Nigami 17th birthday!! "tadashi BGM" ) - YouTube


放課後ディストラクション/やくしまるえつこ

年間通して片手で数える程のライブしか行わず、未だデビュー15年ながらも不明瞭な部分も多いバンド・相対性理論のボーカル、やくしまるえつこのソロ。やくしまると言えばその独特のウィスパーボイスと言葉選びに定評があるのは周知の事実として、今回取り上げる”放課後ディストラクション“に関しては、現在YouTube上で公開されている公式MVにフォーカスを当てて記述していきたい。

再生した瞬間に分かる通り、このMVは何と映像が360度。つまり実際にスマートフォンを動かすことで、見える映像が大幅に変化する映像表現を採用している。なお”放課後ディストラクション“はテレビアニメ『ハイスコアガール』のエンディングテーマとして広くお茶の間に浸透したもので、原作者からの逆オファーを受けて実現。そのためMVにも『ハイスコアガール』の場面場面が出現しており、無口なヒロインのイメージを同じく無口なやくしまるが体現するという、ある意味では感動的な映像となっている。ちなみにVRゴーグルを使用すると画面以上に臨場感のある映像を楽しむことが出来るので、こちらを選んで鑑賞するのもオススメだ。

やくしまるえつこ『放課後ディストラクション』360°MV / Yakushimaru Etsuko - AfterSchoolDi(e)stra(u)ction - YouTube


ロックが好き、ボカロが好き、アイドルソングが好き……。音楽に求めるものは人それぞれだ。そしてそんな嗜好をグッと深堀りしていくと、結果「大衆向けじゃないけど私はこの曲が好き!」というディープな選曲になるはずで、特に今回取り上げた5曲はいろいろな観点から、音楽の更なる広がりを知ることの出来る曲たちだと思う。言うまでもなく今後も様々な歌を我々は聴き続けていくはずだけれど、流行に染まらない稀有な曲も意識的にチェックして引き出しを広げていくことが、音楽探求の何よりの道。今記事が読者の方々が新たな音楽に出会う契機となれば、これほど嬉しいことはない。