キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

個人的CDアルバムランキング2020[5位~1位]

こんばんは、キタガワです。


さて、1年の総括とも言える恒例企画『個人的CDアルバムランキング2020』もいよいよ最終回。今回はお待ちかねの、第5位~第1位までを発表していく所存だ。


外出自粛が親しい友人との距離感に陰りを落とし、マスク義務化が他者の目から下における記憶を曖昧にし、日々増え続ける感染者数に一喜一憂する、考え得る限り最も悪い意味での歴史的な年となった令和2年。ただそうした中でも音楽は変わらず日常に寄り添い、前向きな希望と活力を我々に与え続けてきた。約4年間続けてきた今企画が『個人的CDアルバムランキング』と銘打っている事実からも分かる通り、基本的にランキング結果は僕個人の嗜好に大きく左右される。故に今記事の全てを1年の総評とするにはいささか問題があるし、閲覧した音楽ファンの中には「米津玄師が入ってない」「すとぷりはどうした」「SixTONESは?」といった声を挙げる人もいて然るべしであるとも思う。


けれども僕個人が活動当初より確固たる思いとして抱いているのはたったひとつで、それは『音楽と出会う契機は何でも良い』ということ。居酒屋、CM、バラエティー番組。友人とのカラオケで出会う楽曲もあれば、YouTubeのオススメ動画で出会う楽曲もあるかも知れない。そして、そんな新たな音楽への出会いがたとえひとりの音楽好きが記した拙い駄文でも、取っ掛かりとしては十分であると思うのだ。総じて今記事がひとりでも多くの読者にとっての新たな音楽の1ページを開くきっかけとなれば、これほど嬉しいことはない。


それでは以下より、最終ランキングの発表である。なお今記事は正真正銘、今年最後の執筆記事となる。来年もどうか、素晴らしい音楽が響き渡りますように。


・20位~16位はこちら
・15位~11位はこちら
・10位~6位はこちら


5位
Go with the Flow/木村拓哉
2020年1月8日発売

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[キムタク、覚醒の時]

国民的アイドルグループ・SMAPの解散から早4年。特に今年は草彅がYouTuberとしてチャンネル登録者数が100万人を突破し、中居は新会社を設立。香取はソロアーティストとして初のアルバムをリリースするなど各自話題を呼んだが、そんな中注目されたのがSMAPメンバーで唯一ジャニーズ事務所に籍を置きながらも、長らく沈黙を貫いてきた木村の動向だった。だが彼は誰も知らない水面下で、着々と準備を進めていた。そして遂に発表された点と点が線になった一報こそ、待望のソロアルバム『Go with the Flow』のリリースである。


ソロアルバム……つまりは木村がボーカルを担当すること自体は当然ながら、『Go with the Flow』の作詞作曲陣には槇原敬之をはじめ森山直太朗、Uru、いきものがかりの水野良樹らジャンルもイメージもバラバラな豪華な顔触れが並び、磐石の体制を形成。加えて忌野清志郎のカバーや、自身を主人公に据えたPS4ゲームのセルフカバーなど多方面に手を伸ばした関係上、結果としてどこを切っても木村らしさ溢れるボーカルが響き渡る一方で多種多様な楽曲が全体を覆い尽くすという極上のエンタメアルバムとなった。


前述の通り様々な要素に彩られた木村初のソロアルバムであるが、今作における魅力はズバリ、木村によるボーカリストとしての圧倒的地力だ。作曲者が曲によって大きく異なるということは確かに多様性を維持出来るメリットもあるけれども、ある意味ではその作曲者の色に強く染まってしまう傾向にある。実際槇原敬之が作詞作曲を務めた“UNIQUE”などはおそらくは槇原がボーカルを担った時点で完全な『マッキー曲』になるだろうし、多少提供曲としての側面はあれど[Alexandros]の川上洋平による“Leftovers”やB'z稲葉作曲の“One and Only”も同様だ。しかし驚くべきは木村が放つあの艶のあるイケメンボイスが流れた瞬間、一転して『木村拓哉のソロ』になる点。それでいて何でも歌いのける柔軟性も兼ね備えており、ロックは声を前向きに放出させ、対してバラードでは裏声やビブラートを多用した歌声を使い分けての全体を理解したボーカルで魅せる。特にアイドル歌手は『ステージ上の姿』自体が歌声を上回る魅力を担っていることも多いが、木村は明らかな両刀使いと言える。内心「思い返せばSMAPの時もそうだったなあ」と思いつつ、やはりそうした魅力が木村の天性の才能であり、最大の武器なのだろう。


SMAPが解散し、気付けば今現在音楽に携わっているのは木村と香取のふたりのみとなった。そうした中でも木村は主演映画公開や、中国のファンに向けた中国語での生配信など相変わらずのワーカホリックぶりだが、明らかなハードワークの渦中にあっても再び音楽を選び、あの歌声を響かせてくれることは感謝の思いを禁じ得ないし、是非とも来年以降も続けていってほしいと願う。期待のソロアーティスト・木村拓哉の活動は、まだまだ始まったばかりだ。

 


木村拓哉 -「One and Only」MusicVideo short ver.


木村拓哉 -「サンセットベンチ」MusicVideo short ver.

 

 

4位
eyes/milet
2020年6月3日発売

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[ふたりのラブストーリー]

ここ2年間、アルバムでもシングルでもなくEPを多数リリースする極めてレアな海外的商業戦略を続けてきたミレイ。そうした継続的な認知度の獲得とサブスクリプション時代に沿った実績が評価され、今年は年末に控えた紅白歌合戦にも初出場が内定。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍を続ける彼女の、オリコンチャートを総なめにした記念すべきファーストフルアルバムが今作『eyes』だ。


『eyes』に収録された楽曲の大半は大手科学メーカーのCMや連続ドラマといった多数のタイアップが加わっており、更には全22曲中16曲で公式MVが制作されるというアーティスト的に見てもある種異常な信頼が寄せられている。この理由についてはまず第一に所属事務所であるソニー・ミュージックアーティスツ側の企業戦略は元より、何より自身のツイッターで日々綴られているように、ミレイ本人がそうしたタイアップへの起用を心から喜び、また多くの人に求められる日々に充実感を抱いていることが大きい。


そして彼女のそうした前傾姿勢……具体的にはネガティブな部分を心に押し留めてポジティブに切り替える心の有り様は、今作を語る上でも重要なポイントになっている。今作の登場人物はひとつの例外もなく『わたし』と『あなた』のたったふたりしか存在しない。無論、紅白歌合戦で披露することが決定している“inside you”でもお茶の間に広く聴かれた“us”でも、対象となる『わたし』と『あなた』の正体はドラマのタイアップの関係上、『ドラマの主人公』と『ヒロイン』にそっくりそのまま置き換えることが出来た。ただコロナウイルスの影響により、彼女の心中でその意味合いは少しずつ『ミレイ』と『ファン』との関係性へと変遷を遂げつつある。


先の木村拓哉や前回のナナヲアカリにおける評論にも繋がる話だが、歌に魂が宿るという言葉があるように、個人的にはリスナーの心を打ち震わせてフォロワーを獲得するには何よりも『アーティスト個人の思い』が最重要であると感じていて、そのベクトルで捉えるとするならば、今回紹介する全てのアーティストの中でミレイは歌詞への思いが間違いなく誰よりも強い人物である。ドラマへの感情移入、タイアップへの好奇心、そしてファンへの感謝……全てが内包された作品が『eyes』であり、また様々な視点で愛情をつまびらかにする意味でも、文字通り『eyes』はアーティストとしての精神性を強く思わせる1作と言えよう。


加えて、現時点において大半のリスナーにとってのミレイへの入り口であると共に、歌詞的にもサウンド的にも所謂『ミレイらしさ』がこのアルバムでほぼ網羅可能なことからも、今作の存在意義は極めて大きい。おそらくは年末の紅白歌合戦で彼女の名は更に広く知られるだろうが、間違いなく今作は今後長らく活動を続けるミレイが誇るひとつの到達点。故にこのアルバムを聴くにはまさに今が絶好のタイミングであって、まずもってこの機を逃すことは考えられないと見て良い。

 


milet「inside you」MUSIC VIDEO(先行配信中!竹内結子主演・フジテレビ系ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』OPテーマ)


milet「us」MUSIC VIDEO(日本テレビ系水曜ドラマ『偽装不倫』主題歌)

 

 

3位
ZOO!!/ネクライトーキー
2020年1月29日発売

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[根暗な5人衆、メジャーへ!]

2年前に鮮烈なデビューを飾った『ONE!』と朝日(Gt)のボカロP時代の別名義・石風呂楽曲のセルフカバー集『MEMORIES』を経て早くも届けられたのが、メジャーデビュー1発目となるフルアルバム『ZOO!!』だ。


動物園と言えば、広大な施設内を巡りつつ多種多様な動物と邂逅出来るのが魅力のひとつだが、もっさ(Vo.G)画伯による今作のCDジャケットからも伺える通りサウンドはあまりにも多様性に満ち満ちている。しかしながら実際にスポットを当てている生物はドブネズミや害虫、更には人間に怨みを持つ狸など、確かに『生き物』ではあるが『動物』ではない天の邪鬼さもありと、結果的にはネクライトーキー史上最もカオスに振り切ったアルバムとなった。


ただそうした謎過ぎる選定とは裏腹に、全ての楽曲は一聴した瞬間に口ずさめる程にひたすらキャッチー。考えさせられるメロからサビで真顔に戻される衝撃のオープナー“夢みるドブネズミ”、《北へ向かえば》の麻薬的リフレインが印象深い“北上のススメ”、パンクらしさ溢れる曲名であるにも関わらず何故か今作屈指のバラードとなった“渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進”と、楽曲を聴き進めるたびに異なる形で驚きをもたらす、まずもってネクライトーキーにしか成し得ない独自のテイストが光る。


そんなバンドのイメージ形成に一役買っているのがバンドのボーカルを務めるもっさその人。『ONE!』ではYouTube上に『ハム太郎ボイス』の言葉が躍るなど、その独特な歌声がニューカマー特有の指摘により取り沙汰されることが多い印象だったが、時に激しく時に緩やかに、楽曲ごとに雰囲気をガラリと変える今作におけるもっさの歌唱には、明らかなボーカリストとしての変化が感じられる。ネクライトーキーが朝日ともっさの偶然の出会いからスタートした事実はバンド結成秘話として幾度も本人の口から語られているが、新人バンドとしてはおよそ異様なペースでの認知度獲得の背景には、やはりもっさによるあの歌声が必要不可欠であったのだろう。


今年はコロナウイルスの影響により『ZOO!!』を携えて行う予定で動いていた全国ツアーが全公演中止となり、辛い時期を過ごしたネクライトーキー。けれども彼らは鬱屈した渦中においても歩みを止めることはなく、先日行われたライブでは新曲を次々披露。更には初のアニメタイアップも決定と、渾身の1作『ZOO!!』を経て、彼らは既にネクストステージを見詰めている。ロックでポップな根暗な5人衆の進撃は、来年も続きそうだ。

 


ネクライトーキーMV「夢みるドブネズミ」


ネクライトーキーMV「北上のススメ」


ネクライトーキー MV「涙を拭いて」

 

 

2位
おれは錯乱前戦だ!!/錯乱前戦
2020年3月4日

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[ぶっ飛ばされろ!]

ロックンロールに取り憑かれた弱冠20歳の少年たちが、遂に全国へ烈風を巻き起こした。初のフルアルバムのタイトルはズバリ『おれは錯乱前戦だ!』……。何とも彼ららしいネーミングセンスである。


まず大前提として、このアルバムで歌われている内容は曖昧模糊を極めており、一切の意味は存在しない。ドンドンとドアを叩くワンシーンのみでストーリーが完結する“ドンドア”から始まり、心を叩き壊そうと目論む“ハンマー”、ペットショップ破壊に衝動を込める“タクシーマン“、1分14秒という短時間でパンクを鳴らす“カレーライス”……。今作に収められた全ての楽曲は何度リピートしても理解不能な代物であって、おそらくは彼ら自身も歌詞に深い意味を込めてはいないだろうし、その時々の勢いに任せて僅か数日で歌詞を書き上げたものであることはほぼ間違いない。更に言えば、例えば印象的なタイトルに驚かされる“カレーライス”や“タクシーマン”にしても、別にタイトルが“クリームシチュー”でも“ファッキンポリス”でも、最悪“夕食”や“人間”となってしまったとしても全く無問題な筈なのだ。


それでは彼らが楽曲制作において最重要視している要素とは一体何なのか。その答えはひとつ。『バンドサウンド』である。YOASOBIの“夜に駆ける”やずっと真夜中でいいのに。の“秒針を噛む”などが代表的だが、巨大なバズを引き起こすアーティストは総じて綿密なアンサンブルを軸とする中錯乱前戦はと言うと、全員が主張し合うドシャメシャな存在証明に終始していて、ともすれば破綻しかねない危険性すら帯びている。けれども今のご時世『こうすれば売れる』という図式が完成している渦中において決して誰にも媚びず、自らのポリシーを貫く姿勢は称賛に値するし、収録曲の過半数以上が3分以内に駆け抜ける異様な性急さもやはり、弱冠20歳の若き焦燥を体現するものであるように思う。


「自分の好きな音楽を鳴らす」という発言自体は未だ美談。しかしながらその実、今や所謂『流行りの曲調』というのも確かに確立していて、更にはSNSを筆頭とした拡散媒体を用いずにブレイクすること自体がほぼ不可能とされる。そんな中SNSを基本的に使わず、流行とは真逆を進む音楽性で大博打を打った錯乱前戦。今作は奇せずしてコロナ禍前のリリースとなったが、おそらくはコロナ禍でも同様な作風であったろうし、今後ある程度歳を重ねた際の彼らの音楽性にも期待が高まる。絶対に聴力が麻痺する寸前の爆音で聴くべき、今年度最大のロックンロールアルバムがここにある。

 


錯乱前戦 - タクシーマン


錯乱前戦 - ロッキンロール


錯乱前戦 - カレーライス

 

 

1位
shiny land/坂口有望
2020年2月19日発売

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[絶望のコロナ禍と希望の未来]

栄光の1位に君臨したのは、19歳のシンガーソングライター・坂口有望(読み:さかぐちあみ)による3rdフルアルバム『shiny land』。ポップなサウンドが鼓膜を揺らし、徹頭徹尾清らかな歌声に包まれる今作は、一見するとポジティブなメッセージが込められた明るいアルバムにも思える。


ただ、今作の類い稀なるメッセージ性に拍車を掛けたのが何を隠そう、コロナウイルスの存在である。《世界は変わったんだろう/想像して途中でやめた》と笑顔で響かせる“ワンピース”や逢いたい人へ会うことが叶わない寂寥をポジティブな思考変換に導く“星と屑”、世界の変遷と共に聴かれる音楽が変わるリアルを綴った“radio”、幸せが一瞬で消え去ってしまう“あっけない”……。『shiny land』に収録された全10曲は、コロナウイルスが世界的な絶望を及ぼした今だからこそ、また違った意味合いを帯びて鼓膜を揺らす。今作のリリース月は2月。つまりはコロナウイルスが蔓延する以前には完全に制作が終了していて、今作に収録された楽曲がコロナについて歌われたものではないということは絶対に間違いないのだけれど、今作『shiny land』は路上シンガーとしての下積みからデビューに至った前々作『blue signs』とも、高校生活のあれこれを音楽に落とし込んだ前作『放課後ジャーニー』とも違う、明らかな熱量が込められている。そして結果として、日々増え続ける感染者数に一喜一憂する今だからこそ、今作に収録された楽曲の全てはコロナの未来を予言するようでもあり、またそんな絶望的な現在に落ち込む我々への、強いメッセージのようにも思えてならないのだ。


コロナに関係なく、現代に生きる人間全てに分け隔てなく訪れる憂いも虚無感も受け止めながら、そうした悲観的な出来事を笑い飛ばすでもなくつとめて明るく振る舞う今作における坂口は、歌詞的にもサウンド的にも、また世情的にも強く心に訴えかけている。よもやの渦中での選考を余儀無くされた『個人的CDアルバムランキング2020』。おそらくは文字通り個人的な観点で選択するならば、今年最も1日単位で聴いたアルバムで考えればネクライトーキー『ZOO!!』か錯乱前戦『おれは錯乱前戦だ!』に二分されるであろう。けれども、その時分のみではなく今年全体、アルバム全体の総評としてランキング付けを行うのであれば、直情的な嗜好のみならず全体の作風やアーティストとしての成長、コロナ禍における作品性に焦点を当てて然るべし。そして間違いなく今年ならではの事象として世界を震撼させたコロナ禍を考えた結果、圧倒的に『shiny land』に軍配が上がった形だ。坂口が「人類皆が素晴らしい生活を送れるように」と祈って名付けられたアルバムタイトル『shiny land(明るい土地)』とは意図せずして、対極に位置してしまった2020年の世界。そんな中で今作は総じて、酸いも甘いも引っ括めて希望とし、我々の肩を叩く共感者として誰もの耳に優しく語り掛けている。

 


坂口有望 『あっけない』Music Video


坂口有望 『LION』MV(Short)


坂口有望 『ワンピース』MV(Short)

 

 

……さて、これにて長きに渡ったアルバムランキングは完全終幕。最終ランキング結果は、以下の通りである。

20位……1限目モダン/レトロな少女
19位……Be Up A Hello/Squarepusher
18位……オリオンブルー/Uru
17位……×××/輝夜月
16位……盗作/ヨルシカ

15位……ボイコット/amazarashi
14位……おいしいパスタがあると聞いて/あいみょん
13位……SINGALONG/緑黄色社会
12位……宮本、独歩。/宮本浩次
11位……瞬く世界にiを揺らせ/CHiCO with HoneyWorks

10位……世間知らず/しなの椰惠
9位……浪漫/PEDRO
8位……七転七起/ナナヲアカリ
7位……やっぱり雨は降るんだね/ツユ
6位……Notes on a Conditional Form/The 1975

5位……Go with the Flow/木村拓哉
4位……eyes/milet
3位……ZOO!!/ネクライトーキー
2位……おれは錯乱前戦だ!!/錯乱前戦
1位……shiny land/坂口有望

繰り返すが、今年は新型コロナウイルスの影響により、ライブ的にも制作的にも多大なる制限がかけられた、言葉通り最悪な1年となった。今回のトップ5組で言えば月に何本ものライブを行うことを心情としてきた弱冠20歳の錯乱前戦などは、おそらくは若者特有の猪突猛進ぶりが強制的にストップに追い込まれた関係上、やきもちする思いも強かったと思うが、中には新たなサウンドメイクにトライ出来たネクライトーキーなど、コロナがもたらしたある種のポジティブなクリエイティビティも広く見出だされるに至っていて、総じて「やはり音楽は良いなあ」と改めて感じることの出来た稀有な1年でもあったように思う。


今年の下半期は取り分けこの『コロナ禍の現在』を切り取る動きが多かったが、おそらく来年度は内容自体が『コロナ禍以後』に緩やかに変遷し、ポジティブな広がりを見せることだろう。今年も素晴らしい音楽を聴かせていただき、誠にありがとうございました。来年はコロナが収束し元の生活が戻るよう願いつつ、また新たな音楽と数多く出会えますようにと祈りを込めて。