キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

三が日とノープラン

11時。けたたましいアラームが鳴り響き、僕はモソモソとベッドから起き上がった。久方振りの休日だったので本来であれば昼過ぎまで寝ている筈なのだけれど、こうして珍しく昼前に起きたのは当然、理由があった。

この日は年末年始で地元帰省しているという小学校からの付き合いの友人Aと、会う約束があった。取り敢えず会ってしまえば雰囲気で何とかなるだろうという、言わば学生時代から続く暗黙の了解じみた流れでその後の流れは考えておらず、「まずはどこかで飯が喰えたらいいな」程度。たまたま互いの予定が空白だっただけの話で成立した1日だが、それすらも僕ららしい。

予定時刻になり、Aと会う。少しばかり前に住み慣れた場所から県外に移り住んだことを聞いていたので勝手に心配していた。が、どうやら考え過ぎていたようで、彼は数年前に会った時と全く変わらない雰囲気で迎えてくれた。「男子三日会わざれば刮目してみよ」とは三國志の呂蒙が放った言葉だけれど、こうして数年間会っていなかったAのポケーとした表情を見ていると、やはり人間そう大きくは変わらないのだろうなと思った。

彼が島根に帰ってきたのが久々ということもあり、昼飯はどこか『島根感』のある場所で食べようと結論する。正直どこでも良い感はあったものの、突発的にどちらかが発した『蕎麦』が分かりやすかったので、適当な店に向かう。しかしながら流石は三が日。店の前には行列が出来ており、明らかに食べるのはあと数十分後であることを瞬時に理解した僕らは近場にあったココイチに向かった。ほうれん草カレーとカツカレー、島根感とは程遠いメニューで、先程までの過程で完全に舌も蕎麦を欲していたが、何故かこれまでのココイチより圧倒的に美味かった。

誰にも邪魔されない、ふわりとした時間。ただ時刻が14時を回ろうとしたとき、ひとつのラインの通知により現実に引き戻されることとなる。そこに記されていたのは別の友人からの「15時に会う?」との一文。そう。よりによってこの日、僕は別々の友人BとCとで晩飯を食べるダブルブッキングをしていたのである。……正確には夕方以降に会う約束をしていたBとCの予定が早まったことで生じたラインのやり取りなのだけれど、これには心底悩んだ。久々に会ったAをココイチだけの食事で帰してしまうのは申し訳ないし、何よりもう少し話していたい感もある。うんうん考えた結果、一度ココイチから僕の家に戻り、BとCが来たらその場で少し全員で話してからお開きにしようという結論に達した。というのも、僕とAとBとCは小中が一緒で、僕ほど深い関わりはないが全員Aとも面識があるのだ。これならどう転んでも楽しめるし、お互い「久しぶりじゃん!」の会話のひとつやふたつはあろう。また、普通に会っても面白くないので、BとCにはAの存在を全く知らせないまま家に招待し、Aがサプライズ的に飛び出てくる形を画策し、新年初笑い(?)を実行に移すこととした。

かくしてドッキリ大作戦は実現に向けて動き出した。直ぐ様僕とAは家に戻ると、Aは階段の死角でスタンバイ、僕は玄関に立って彼らの到着を待った。BとCが来訪する際は決まって「私メリーさん。今近くにいるの……」との謎のライン電話があり、そこから扉をゆっくり開けて侵入するので、今回はそれすらも見越しての完璧なフォーメーションである。暫くするとお馴染みのラインが来て、BとCが襲来。Aの存在を気付かせないよう、取り敢えず「あけおめですー」と言いつつ適当に会話を続ける。無論この時点では全員が玄関にいて、本来であればそのまま僕が靴を履いて一緒に居酒屋に向かって終わりである。

しかしながら、今回ばかりは伏兵が潜んでいる。「じゃあ駅前行くか」といつも通り外に出ようとする彼らの前に、「あ、どうもー」と満を持して姿を現すA。個人的には「ひえー!」とズッこける吉本新喜劇的なリアクションを期待していたのだが、BとCの反応は意外にフラット。その理由が「何か見たことない車停まってたから変だと思ってた」というこちらの作戦ミスであったことは、次回の反省にしようと心に決めた。

サプライズを終えたので、ここでAは帰宅する……。実際Aも僕もそうする算段だったし、そもそも僕とA・僕とBとCの飲みというのは一定数あったにも関わらず、AとBとCの関係はそこまで深くもなかったので、まあこれが妥当かなという考えによるものだった。そんな中BとCは口を揃えて「Aも一緒に行こう」と誘ってくれ、これにて全く想像もしていなかった4人での飲み会が実現した(もちろんひとりはノンアル)。

Aの車を彼の実家に預け、4人で車に乗り込む。どうやら彼らがAと直接合うのは10年以上ぶりらしく、勤務先やら生活やら出身大学やら取り留めのない話が展開され、何だか嬉しい気持ちにもなった。そういえば1年以上、楽しいことよりも辛いことの方が圧倒的に多い生活だった。ただこれまで絶対に交わることのなかった4人が、共に酒を酌み交わす夜。それが僕にどのような思いをもたらすのかは分からないまでも、きっと悪いものではないだろうなと思った。……駅前に車を停車し、繁華街を歩く。年始から少し日にちが経ったこともあってどこも満席、若者を中心に笑い声がそこかしこで聞こえている。この混雑ぶりだとさぞ入店は難しいだろうと思い、ふとBとCに疑問をぶつけてみる。「そう言えば予約とか取っとる?」……。BとCはまるでギャグ漫画のワンシーンのように、両の掌を上にしてふざけた笑顔を見せる。どうやらこちらも、完全なるノープランらしい。

 

amazarashi 『帰ってこいよ』Lyric Video - YouTube