キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

リコリスリコイル2期

僕が暮らす島根県はもう25年くらい住んでいる身としても、相当な田舎である。バスは1〜2時間に1本しか来なかったり、高齢化率が全都道府県中トップだったり……。何よりエンタメ的娯楽の不足は、若者の都市部流出を顕著なものにしているように思う。かく言う僕も一応この街に住んではいるけれど、何か大きなきっかけがあれば出るつもりだし、そして多分、この街に住む若者の多くはそうした『出る理由』を考えながら生きている。

なもんで、20歳を超え出したあたりで仲良くしていた友人たちなんかは進学やら就職やらの理由から、大半が都会に出て行った。一度都会に出てしまうとどうやら戻る気もなくなるらしく、会う頻度は減り続け、今では彼らのそうした『ハッピー☆都会生活』の数々をSNSを通して見るくらいの関係性に成り下がってしまった。

そんなある日、ひとりの友人から連絡があった。彼は小学校からの付き合いでありながら、まだ10代の早い段階で都市部に住み始めたため、そこからぱったり連絡がなくなった類の人物。「どげしたやー」と島根なまり全開で僕が尋ねると、彼は対象的な標準語で「ちょっと実家に戻ることになったから」と語った。それが何の理由で、どのくらいの期間なのかは聞かなかったけれど、優しい彼の性格上「心の限界が来たんだろうな」というのは、何となく察することができた。

某日、特にやることもなかったので何となく、彼の実家を訪ねることにした。家に近付くと気配を察したのか飼い犬がキャンキャン鳴きながら、僕を敵意剥き出しの視線で威圧する。ワンちゃんは、どこか帰還した御主人様を守っているようにも見えたが、鎖に繋がれているので悲しいかな、歩みを進める僕の動きを止めるには至らなかった。

約3年ぶりの再会なので不安だったものの、彼は同じ笑顔で出迎えてくれ、そこからは連絡の取らなかった期間の話に花を咲かせた。思っていた通り帰郷の理由は精神面。ネガティブな仕事を耐えながらカツカツの一人暮らしを続け、将来不安が巨大になった瞬間に手元を見たとき、『地元に帰る』というカードがあることに初めて気付いたと、端的に言えばそうした説明をしてくれた。今は数カ月間ほど体を休めて、そこから徐々に動き出そうとしているらしい。

……トークはいつしか変遷し、それから数時間は彼の好きなアニメの話を中心に話を展開した。中でも個人的に好きだった『リコリス・リコイル』というアニメは彼も絶賛しているらしく、それを知ってからは「あのシーン良かったが!」「そういえば今日リコリコのイベントあーが!」といったリコリコの話をずっとしていた。彼と最初に出会った日もアニメの話をするとメチャクチャなマシンガントークになるのが面白くて、アニメの話で盛り上がったことを思い出した。良い意味で、彼は変わっていなかった。

時間が迫り、「来月あたりまた連絡すーわあ」との一言を最後に帰宅の途に着く。距離的な部分は小学校時代に戻ったけれど、これから頻繁に連絡することは多分ないだろうと思う。ゆっくりしたスピードで、連絡があったらたまに会うような、そんな距離感。ただ数少ない友人が地元に戻ってきた事実は、僕の足を少し軽くさせるものでもあったのは確かだった。

リコリコの続編制作決定の報が舞い込んだのは、偶然にもその直後。鼻息荒くラインを送り、彼から「来月じゃないんかい」と突っ込まれたのは言うまでもない。

amazarashi 『帰ってこいよ』Lyric Video - YouTube