キタガワのブログ

島根県在住。文筆。rockinon.com外部ライター等。

The Lathums(ザ・ラザムス)が世界的に売れる時代になれば洋楽シーンは変わると思う

こんばんは、キタガワです。


YouTuber、小説家、イラストレーター……。物作りを生業にしている人々は基本的には皆「売れなければならない」という使命感にも似た十字架を背負っているものだ。ただ『売れる』に至るまでの道のりは険しく、今でも多くのフリーランスが世間一般的に言われるところの『一発当てる』ことを懸命に考えながら日々発信を続けている。


そんな多くの人の夢潰える物作りの中でも、売れる売れないの差が如実に表れてしまうのが音楽。一度何らかの手段でバズれば音楽番組に引っ張りだこ、CDショップでも平積み確実な分かりやすい一般層へのアピールが出来るものの、売れないアーティストの生活は厳しい。どれだけ頑張っても報われず、ライブノルマを支払う日々がどれほど辛いことか、想像するのも難しい。実際個人的に関わりがあった人の中で大学卒業後に売れることを目指し、アルバイト終わりに毎日ライブハウスでライブ、深夜に帰宅すればツイキャスで近況報告という過酷なサイクルを数年間続けて体を壊した先輩も知っているし、駅前で「絶対に売れるんだ!」と意気込んで弾き語りを始めたものの趣味の壁を超えられなかった歌うたいもまた、よく知っていたりもする。だが同時に、ひょんなことからブレイクに漕ぎ着けるアーティストというのも絶対に存在するのだから、音楽は面白い。

 

f:id:psychedelicrock0825:20220105033426j:plainhttps://www.thelathums.com/


今回紹介するザ・ラザムスも、予想に反して大ブレイクを果たしたロックバンドだ。まだ活動歴の浅い新人バンドながら、先日リリースされたファーストアルバム『How Beautiful Life Can Be』は海外のアルバムチャートで並み居る強者を抑え何と堂々の1位。ひとたびフェスに出演すればシンガロングの嵐となるなど、まさしく若手界のジョーカー的な立ち位置に一瞬で移り変わった。ただここで気になるのは、何故彼らがここまで飛躍的に認知されたのかという点。そもそも彼らはマンチェスターの田舎出身、大手事務所にコネクションがあった訳でもないのだから疑問に思うのは当然なのだが、それら全ての疑問を破壊する程の求心力が、彼らの楽曲にはある。

 

The Lathums - Fight On (Official Music Video) - YouTube


例えば、最近のライブではオープナーとして鳴らされることの多い“Fight On”。この楽曲は観客全員でシンガロング可能なライブでの一体感を生み出す上でも重要な代物で、実際『How Beautiful Life Can Be』のリード曲に位置付けられているほどのキャッチーさで一瞬で虜にさせられる。よく聴いてみると楽曲も3分以内と短く、「再生ボタンを押してから遅くとも30秒以内にサビが来ないとダメ」とも称されるサブスク時代を攻略している感もあるし、アレックス・ムーア(Vo.G)によるボーカルもサウンドに埋もれずに突き抜けている。どういう経緯でこの楽曲が広まったのかは現地人ではないので不明ながら、きっとこの『再生してからすぐにドカン』な衝撃が伝播したためだろうと思われる。


他にも“Up The Junction”では90年代チックな曲調でゆるっと聴かせたり、最新曲“Krampus”に関してはまさかのトロピカルムードな単音ギターが自然に体を揺らすテイストだったりもするので、全く飽きない。しかも彼らは音楽学校の出で、まだ弱冠10代ときた。今も大量の引き出しがあることだろうし、年齢的にもあらゆるジャンルを試すにはフットワークも軽いだろう。ひとつ懸念点があるとすれば現在彼らはイギリスでは圧倒的な人気を誇る一方、アメリカではあまり知られていないということくらいだが、そこについても今後の活動如何で何とかなるだろう。本当に末恐ろしい若者たちである。

 

The Lathums - Up The Junction (Live From Parr Street) - YouTube

 

冒頭で、筆者は「アーティストが売れることは難しい」とする話を展開した。一度売れても安定とはほど遠く、一生安泰のスタンプを押されるのはビリー・アイリッシュやBTS、エド・シーランといった、遠く離れた国でもある程度は知られているレベルの知名度を誇る者だけなのは揺るぎない。そんな中でザ・ラザムスにはどうしても、大きな方向修正さえなければそれこそ同じ土地出身のオアシスのように、国内外問わずチャートを賑わせる存在になる予感がしてしまうのだ。様々な努力を重ねて一発逆転ホームランを打つのも一興。しかしながら彼らのように生まれ持った才能を持つ若者が、何となしに振ったバットが満塁になってしまうような最高のストーリーも見たくはないか?そして多分、その日はもうすぐ訪れることだろう。