キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

現在のノエル・リアム兄弟両名の動きから見詰める、オアシス再結成の可能性

こんばんは、キタガワです。

 
完全無欠のロックンロールバンド・オアシスが解散して早いもので、気付けばもう12年目に突入してしまった。彼らの解散の直接的な原因となったのが兄ノエル・ギャラガーと弟リアム・ギャラガーの壮絶な兄弟喧嘩にあることはもはや語るまでもないけれど、以降の彼らの歩みは対極に位置。ノエルはオアシスにきっぱりと見切りを付け、新たなソロプロジェクトである『ノエル・ギャラガー・ハイ・フライング・バーズ』を始動し全く新しい音楽性を探求する一方、リアムは最終的に空中分解してしまったニューロックバンド『ビーディ・アイ』の後、ソロ活動に着手。解散から12年が経過した今でも兄弟間の関わりは皆無で、ただただ我々が「一刻も早く再結成してくれ!」と願うだけという、稀有な状態になっている。

 

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https://www.sonymusic.co.jp/artist/Oasis/

伝説のバンド「オアシス」ギャラガー兄弟の喧嘩で満席のライブが中止…映画『リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ』本編映像 - YouTube

 

ともあれ、彼らの頭にある考えも全く別物。何故なら至極シンプルに綴るとするなら、ノエルはオアシスを完全に過去のものとして割り切っていながら、リアムは未だに未練があるのだから。実際この数年間、ツイッターでほぼツイ廃的な熱量で「オアシス再結成しようぜ」と言い続けてきたのはリアムのみ。どうやら個人ツイッターを持たないノエルも弟の考えはメディアを通して知っているようだったが、彼は「もし俺の所持金が50ポンドしかなかったとしても、リアムと再結成するなら路上ライブする方がまだマシ」とカメラの前で一蹴、再結成の可能性を改めて否定した。……このノエルの発言により、ファンの間でより一層再結成の可能性が低下したとの見方が強まったのは言うまでもない。

 

 

Manchester crowd joins in with woman singing Oasis after minute's silence - video - YouTube

 

ただ、そうした本人たちの言動は別として、オアシスの勢いは加速度を増してきている。2017年には両名の出身地でもあるマンチェスターで起きたテロ事件を受け、ひとりの一般人が歌った“Don't Look Back In Anger”が涙を携えた大合唱で広がったこともあったし、2020年には突如としてノエルが倉庫で保管していた未公開デモ音源“Don't Stop…”をサプライズリリース。更には数日後の11月19日にはライブ映像作品『オアシス ネブワース1996』が待望のDVD化される。これこそ長い年月を経ても決して収まらないオアシス熱が全世界に存在している証明で、しかも“Don't Stop…”と映画化に関しては我々ファン視点が願ってのものではなく、本当にオアシス公式から発表されたというのだから、期待が高まらない方がおかしいと言うものだ。

 

では現在の彼らは、オアシスのことをどう捉えているのだろうか。その飾らないリアルを綴る前にまずは絶対に必要になってくるのが、ライブにおける最先端の各自のセットリスト事情。理由は彼らはライブの際、必ずオアシス楽曲を組み込むきらいがあり、それが現時点でのオアシスへの見方を表しているからなのだが、とにかくまずは2019年のセットリストと2021年のセットリストを比較して見てみよう。なおオアシス楽曲については(オ)で記載している。 

 


まずは兄ノエルから。以下は2019年の幕張メッセの単独ライブのセトリ。

1. Fort Knox
2. Holy Mountain
3. Keep On Reaching
4. It’s a Beautiful World
5. She Taught Me How to Fly
6. Black Star Dancing
7. Talk Tonight(オ)
8. The Importance of Being Idle(オ)
9. Little by Little(オ)
10. Dead in the Water
11. Everybody’s On the Run
12. Lock All the Doors
13. If I Had a Gun…
14. In the Heat of the Moment
15. The Masterplan(オ)
16. Wonderwall(オ)
17. Stop Crying Your Heart Out(オ)
[アンコール]
18. AKA… What a Life!
19. Half The World Away(オ)
20. Don’t Look Back in Anger(オ)
21. All You Need Is Love

Noel Gallagher's High Flying Birds Live at Isle Of Wight Festival 2019 - YouTube

 


対して、弟のリアム。リアムが2019年に出演した『グラストンベリー・フェスティバル』のセットリストから。

SE. Fuckin‘ In The Bushes(オ)
1. Rock 'n' Roll Star (オ)
2. Morning Glory (オ)
3. Wall Of Glass 
4. Greedy Soul 
5. Shockwave 
6. Columbia(オ)
7. Slide Away (オ)
8. Roll With It (オ)
9. Bold 
10. Universal Gleam
11. The River
12. Cigarettes & Alcohol(オ)
13. Wonderwall (オ)
14. Supersonic (オ)
15. Champagne Supernova(オ)

Liam Gallagher - Roll With It (Glastonbury 2019) - YouTube 


この2019年時点を見るとお互いにオアシス楽曲を多く組み込んでいることが分かるが、ライブ映像に目を凝らしてみると互いのオアシス曲のテンションは大きく異なるものだった。特にノエルはそれが顕著で、基本的に自身がオアシスでボーカルを務めていた数少ない楽曲ばかりを歌い、加えてそれらの楽曲を歌う際は嫌な言い方をすればとてもやる気がなさそうだった、ということ。これは実際に会場でライブを観た筆者としても痛感した事実で、正直「これはオアシス再結成ないな……」と思わず漏らしてしまったほど。ちなみに当時ノエルがオアシス曲を多く組み込んだ背景には「ファンが喜んでくれると思ったから」と後のインタビューで語っており、同時に「オアシス曲ばっかり盛り上がってるのが気に食わなかった」とも吐露している。


そして時は現在に戻り、2021年。まずはノエルのロンドンはデューク・オブ・ヨークの配信ライブセトリ(なおコロナ禍の影響で2020年のノエルは単独ライブを行っておらず、曲数が少ないのはご了承願いたい)を記述する。

1. Fort Knox
2. Holy Mountain
3. It's a Beautiful World
4. A Dream Is All I Need to Get By
5. Dead In The Water
6. This Is The Place
7. Black Star Dancing
8. Wandering Star
9. We're On Our Way Now
10. AKA…What A Life!
11. Don't Look Back In Anger(オ)
12. The Mighty Quinn

Noel Gallagher's High Flying Birds: We're On Our Way Now | The Tonight Show Starring Jimmy Fallon - YouTube 


対してリアムがヘッドライナーとして出演した『レディング・フェスティバル 2021』のセットリストは以下の通り。

SE. Fuckin‘ In The Bushes(オ)
1. Hello(オ)
2. Rock ‘N‘ Roll Star(オ)
3. Morning Glory(オ)
4. Wall of Glass
5. Halo
6. Paper Crown
7. Why Me? Why Not
8. Stand By Me(オ)
9. Fade Away(オ)
10. Greedy Soul
11. The River
12. Once

[アンコール]

13. Supersonic(オ)
14. Acquiesce(オ)
15. Cigaretts & Alcohol(オ)
16. Roll With It(オ)
17. Live Forever(オ)
18. Wonderwall(オ) 

Liam Gallagher - Stand By Me (Reading 2021) - YouTube

 

これらを見てはっきりと分かるのは、ノエルは明らかにオアシスを過去の出来事として見なし、逆にリアムは今すぐにでもオアシスに戻りたいとする気持ちの表れである。具体的には遂にというか、ノエルは代表曲“Don't Look  Back In Anger”以外のオアシス曲を撤廃。対照的にリアムは何故かここに来てセトリの大半をオアシス曲、更にアンコール楽曲に至ってはひとりオアシス状態というある種異様な展開を見せたのだ。 


以上のことから、ここにきてオアシス再結成の可能性はまたもやぐーんと下がってしまった……というのが、ここまで長々と綴ってきた結論である。2020年にかなり本気の口調でリアムが『オアシスは再結成する。ノエルにも許可は取ったぜ』と語っていたのは何だったのか今となっては不明だが、おそらくこれは彼なりの希望を呟きとして具現化したものなのだろうと、今なら推察出来る。オアシスとは別のサウンドを探求するノエルと、音楽性がどんどんオアシスに近付いているリアム。互いの向く報告は違うけれど、いちファンとしてほぼ有り得なくなった可能性を、僅かでも信じ続けながらこれからも楽曲を聴き続けていきたい。