キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ライブにおける紙チケットと電子チケットの話

こんばんは、キタガワです。


2019年に成立したチケット不正販売禁止法、更には新型コロナウイルスの世界的蔓延により、かつてはライブ参加の必需品となっていた『紙チケット』の流通は激減した。言うまでもなく、その代替を担ったのがスマートフォンを提示することで入場パスとする『電子チケット』であり、今や全国各地のライブはこれを基準としているところが多くを占めている。


確かに、電子チケットにはメリットばかりだ。購入時にはメールアドレスと電話番号が必須になる関係上、結果として高額転売は減少したし、同様に「急いでいたらチケットを家に忘れてしまった」というような悲しいポカもなくなった。他にも新型コロナウイルス対策としてもモギリが各自で行える電子チケットの存在は有り難く、様々な観点から考えても、おそらく今後は紙チケットはどんどん淘汰されることになるだろうと思う。これについては別段悪いと言っている訳では決してなく、本当に行きたかった人にチケットが行き渡らず、片や価格を何倍にも釣り上げた悪しきダフ屋に金が転がり落ちる図式にはほとほと嫌気が指していたので「超党派グッジョブ」という感覚ではある。


ただ、何事にも変化の一方では懐古主義的な思いも過ってしまうのも必然だ。それこそ急激に紙から電子への流れが加速したのはこの2年間が契機になったけれど、逆に言えばほんの2年前までは普通に紙チケットを所有していて、それを大切に保管しながら「あの時こんなライブ行ったなあ」と悦に入ることは、ライブを好む多くの人間が行う思い出回顧だった。中には大好きなバンドメンバーに紙チケットにサインを貰った、という人も少なくないと推察するし、ひとつの事実としてこうした恒例がなくなってしまったことには一抹の寂しさを覚えたりもする。


後はやはりと言うべきか、こうした試みが主流となってしまえば今後、アダルト世代のチケットの購入は敷居が高くなるのだろうなと思ったりもする。それこそ先日僕と母親が参加した宮本浩次のワンマンツアーは全て紙チケットで、チケットを70歳近い親に手渡して「これで安心だね」と不安要素を予め消した状態でライブに参戦した身なのだけれど、これがもしも電子チケットであればそうはいかなかったろう。電子チケット用のアプリインストールはもちろん、どう入場して良いかも不明瞭。指紋が消えて操作自体おぼつかない中、かなり難しい参加になったのだろうなということは何となく想像がつく。終了後、母は今回のチケットを大切に思い出として保管していることも含めて、難しいところだなあと感じた次第だ。


こうした電子チケット推奨化は多くのトラブル防止、ひいては我々へのメリットも考えて折衷案を模索した結果だろうから、特に何も言うべきではないのだろう。でもスマチケにダウンロードされたチケットの『公演は終了しました』とだけ記されたそれを見ても、以前のような紙チケットのように感慨深い思いに浸ることはまず出来ない訳で、若干のモヤモヤを抱えたりもする。心底こうした人間が「あの頃は良かった!」というような昔気質の性格になりそうな気もするので申し訳ない部分もあれど、それでも。以上、紙チケットに思い出を託したライブキッズとしてのつまらぬ戯言。

 

折坂悠太 - トーチ (Official Visualizer) - YouTube